菊と刀 (光文社古典新訳文庫 Cヘ 1-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (545ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334751692

感想・レビュー・書評

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  • 山口周さんの本の中に出てきた「欧米人の罪の文化に対して、日本人は恥の文化」というのが気になって読んでみました!

    第二次世界大戦中に米国戦時情報局の依頼を受けた文化人類学者が、日本の気質や行動の研究・考察をまとめた本。いまだにベストセラーってすごい

    日本の外からだからこその着眼点とか、逆にちょっとずれた解釈とか、どちらにしてもいちいち詳細で深掘りしてあってびっくりする。戦時中だから日本に調査に行くこともできない中、どうしたらこんなに鮮やかに描き出せるんだろう…!
    同じ日本人でも時代がかなり変わっているし、恩とか忠とかの話は途中から難しくてついていけないところも多々あったけど、外国から見た日本の特異性って自分たちではなかなか気づけないからおもしろいな

    なにより、日本人の理解できない行動や思考を、自分たちの持つ価値基準とは異なる価値基準にあるとしてそれを解明しようとする姿勢、めちゃくちゃ格好いい


    わたしは何か理不尽なことやイラッとしたことがあった時に、心の中で相手に「恥を知れ!」って言うことが多いのですが笑、これって日本独特な考え方なのかな!?というのに興味が沸いて…
    結局恥の文化も一読ではぜんぜん理解できてないのでそのうち再チャレンジしたい笑


    ー日本人を描写するために、「その反面…」という言い回しが数え切れないほど繰り返されてきた。世界中でこれほど頻繁にこのフレーズを適用された国民はないー
    これらの矛盾はいずれも日本に関する書物の縦糸と横糸であって、すべて真実である。菊も刀も、同じ日本像の一部なのであるー

    最初のこの導入の文章が大好き!

  • 半世紀以上前の書物なので細かい慣習や思考法の例には「んん??」となる部分も大きい。それでも漠然としているけど普遍的な「日本人論」を外の視点から説いてくれる貴重な本。

    個人的には、留学中、「日本人って〜だよね〜」って言われたり、反対に「アメリカ人は〜だよな〜」って思ったりしてその度にもやもやしていたからその辺りのもやもや感を多少消化できたのが良かった。

  • 角田安正訳は歴史的、文化的背景が踏まえられた訳語の選択が秀逸、かつ平仮名ー漢字表記のバランスがよく、すらすらと読めました。

    「昔かたぎの日本人は、飲酒と食事を厳格に区分する。酒が出される村の宴会で米飯を食べたら、酒を飲むのはもうやめたという意思表示になる。つまり。別の『領域』に足を踏み入れたということになる。」

  • 太平洋戦争終結時に敵国日本がどのような態度に出るかを予想するために、アメリカ軍情報局が文化人類学者に指示し編纂された軍事報告書が元になっている本書。

    当時、アメリカ軍は不可解な敵国「日本」に困惑していた。
    最高の礼節を身に着けている にもかかわらず 思い上がった態度の大きい国民である など、これほど「~にも関わらず」という言葉が多用された民族は他にない。

    極めつけは、戦争終結前に国民の大半が徹底抗戦を肚にくくっていたのに、戦争が終結するや否や、進駐軍に笑顔を振る舞いている。

    この急激な態度の変化にアメリカ軍は面食らった。

    以上のような状況を踏まえ、日本人がそのような態度を取るもしくは取り得る文化的背景を解明し、今後の占領計画に反映するというのが本書制作の背景である。

    内容は
    ・戦時下の日本
    ・応分の場を占める事
    ・明治維新
    ・過去と世間に負い目があるもの
    ・万分の一の恩返し
    ・義理ほどつらいものはない
    ・汚名をすすぐ
    ・「人間の楽しみ」の領域
    ・徳目と徳目の板挟み
    ・鍛錬
    ・子供は学ぶ
    ・敗戦後の日本人

    で構成されている。

    ルース先生自身、日本に来ることなく本書を書き上げている。
    よって日本人からするとさすがにそこまで社会的圧力によってばかり生きているわけではないよ。
    と反論したくなる部分はあるものの、中にいるからこそ
    見えない視点も多く、学ぶところの多い書だった。

    70年近く前に書かれた本だけあって、現代日本人に当てはまらない部分も多いが、当てはまる部分もある。

    私たち日本人は大きな変化を経験したが、完全に入れ替わったわけではない。
    日本人という民族として連綿と続いていると改めて実感した。
    だからこそ、悪習も残ってしまっているのだが。。

    以下、簡単な論旨。

    ・日本は古来、階層社会である。

    ・侵略戦争を経験しなかったため、周りとうまくやり、役割を回すことが生き延びる上で最善であった。(だから土着信仰である神道が今に至るまで根付いている)

    ・社会構成員にとって重要なのが「義理」と「恥」である。

    ・社会的規範を遵守する外への義理がある。基本的には恩の授受をバランスよく行う事と、義務を果たすことである。

    ・もうひとつ、自分の名誉を守る内への義理がある。これは強烈な攻撃性を発揮してでも守らねばならない。

    ・以上の義理を守れないものは「恥さらし」「恥知らず」として最低位の非難を受け、これは母集団からの排除につながる。これは個人的な死より恐ろしい。

    ・このように制約ばかりであるが、人間的な楽しみで義務に反しない限りは大いに自由が認められている。

    ・ある義理が義務と対立するとき、注意深く両方の義務を全うするか、片方の義務を全うできなかった責務を受け入れる(自害)のが美徳とされた。

    ・目的が明確でない苦難を日本人は「修行」という見方で捉え、何をするにも役立つという見方をすることにより耐えている。

    【ここが一番大事】
    ・日本人は幼少期に自由で奔放に育てられる。だから家族が大切な拠り所になる。
     しかし家族は同時に義理や義務を強制する。それを放棄すれば居場所を失う。その恐れから困難な義務や義理を受け入れる。

    ・この自由奔放な幼少期と緊張と規律ばかりの青年期の大きなギャップが日本人独特の2面生を形成する元となっている。


    以上の理屈を現実に応用すると、過去の振る舞いもだが、現代日本人の振る舞いにもある一定の説明が付く。

    最後にしびれたのが表題。
    菊から制約となる針金の輪を外す
    錆に侵されやすい身内の刀を錆びつかせないよう

    作者の一番の願いが表題に現れていました。

  • 偏りはあるものの、
    客観的に日本人を捉え、分析したことを
    日本人として読むのは面白い。

  • よくぞここまで研究したもんだと感心した。
    が、研究結果と論文の出来は別物で前述で完結したものとばかり思っていた言葉が二度も三度も繰り返して別の例でくどくど蒸し返すのでテンポの悪さが目立つ。
    日本人特有の特徴をうまく表現しているだけに例えば忠臣蔵のくだりなど、どこまで論文から離れて忠臣蔵の詳細を延々と書くのだろうと胸焼け気味。
    最後の菊と刀はタイトルにするがためのこじつけたかのような印象を受けるが日本好きな外国人らしいかなと目を瞑ることにして星3つ

  • 500P超えの大著。
    アメリカの文化人類学者ベネディクトによる『菊と刀』

    アメリカとの第二次世界大戦中に、
    敵国日本の情報収集の意を担ったこの研究は、
    表層的な日本の軍事行動ではなく、
    日本人の行動原理を深層から理解するために、日本人の文化発祥から当時に至るまでの歴史的観点で、日本人ならではの文化特性を鋭く考察した著書だ。

    この本は1996年の時点で日本語版だけで230万部を売る、1946年からのロングセラーとなっている。
    1945年第二次世界大戦終結の翌年に出版されている。

    日本人をアメリカ人の社会文化構造の価値観の中から判断するのではなく、
    日本人の社会文化構造の根底からの理解に努め、その流れや枠組みを汲み取り対象を見ようとしており、だからこそのアメリカとの違い、日本人であるからこその様々な特徴が浮き彫りになって見えてくる。

    日本人とはこうゆうものなのか、逆に日本人が日本人を理解するような、非常に腑に落ちる感覚になる。


    秩序と階層的な上下関係を重んじる日本人。
    自由と平等を重んじるアメリカ人。

    ジョン・ロックの『市民政府論』などに見える「自由」、「平等」の自由主義や民主主義的なバックボーンをもつアメリカとは、日本は背景が違うのだ。



    戦後70年以上たつ今観るからこそ、
    アメリカナイズされた日本、だがアメリカナイズしきらない日本、どこに日本人本来の特性があるか。その一点が眼前に観えてくる。

    時を経ても「忠臣蔵」に対する義理を重んじる姿に感銘を受けずにはいられない。
    今もまだ日本人には「義理」の心が息づいている。


    こういった日本とアメリカの本質的な違い
    ということをテーマにおかれた主題

    アメリカ人にとっては理解不能な、一見矛盾しているように見える日本人の行動原理には、日本人には矛盾ではなくそこに秩序があり

    そういったようなことを真に理解していくには
    物事の表層的なことだけを捉えても理解は浅く、
    歴史、宗教、政治、経済などのあらゆる全人間的知識を総動員して読み抜く必要がある。

    そういった気概で向き合う価値のある骨太な良書である。

    本質を見抜くには、多角的視点は不可欠だ。

  • 日本人としてはごく当たり前のことではあるのだけれど
    その指摘の鋭さに、しかもほぼ全編に渡って文献研究のみ、というところに
    ただただ感心しきりの1冊でした。

  • 心理学に興味を持つきっかけになった本。
    初めて読んだのは高校生の時で読書感想文を書くために渋々読み始めましたが、想像以上の面白さで一気に読みました。
    それから何度も繰り返し読んでいますが、読むたびに新しい発見、共感、考察が生まれます。

  • 学生時代に旧訳で読んでわかりずらく、とうに忘れていたものを光文社新訳シリーズに期待して再読。
    取り上げられているテーマは面白いものばかりなのだが、これは文化論ではなく文学か?と思わせる内容。
    座学/聞き取りでこれだけのものを書けるということは、想像力たくましいとの表れか。
    といっても、日本でも今尚、書店にて「嫌○/親○本」が堂々と並べられそれなりには売れているらしいので、当時としては何をか況や。
    各章がぶつ切りな印象を受けるので、どこから読んでも良い気がする。

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著者プロフィール

Ruth Benedict 1887―1948。アメリカの文化人類学者。ニューヨークに生まれ、コロンビア大学大学院でフランツ・ボアズに師事し、第二次世界大戦中は、合衆国政府の戦時情報局に勤務し、日本文化についての研究を深める。晩年にコロンビア大学の正教授に任じられる。主な著書に、『文化の型』『菊と刀―日本文化の型』など。


「2020年 『レイシズム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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