菊と刀 (光文社古典新訳文庫 Cヘ 1-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (545ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334751692

感想・レビュー・書評

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  • /////感想/////
    上下関係を重んじるのは今でも通用する認識だが、天皇への忠誠心、ところどころ「古い人間についての説明」に聞こえる。
    この本を読んだからといって何が変わるのかがいささか疑問に思った。
    //////////

    多くの東洋人と異なって日本人は、文を綴ることによって自分自身をさらけ出そうとする強い衝動を備えている。
    日本が戦争を正当化するために依拠した前提ですら、アメリカの考え方とは正反対であった。国際情勢の解釈の仕方が異なっていたのである。アメリカの考え方に依れば、戦争の原因は中枢国の侵略行為に会った。略)日本は戦争の大義を他の観点から見ていた。つまり、各国が絶対的な主権を持っている限り、世界の無秩序は一掃されない。日本は国際的な上下関係を確立するために戦う必要がある。そのような階層の頂点に立つのは、もちろん日本である。
    日本人の生得の信念で、半永久的に変わらない物がある。そのうち最重要の物は、階層的な上下関係に対する信仰である。 平等を愛するアメリカ人にとって、それは疎ましいものである。
    日本人は秩序と階層的な上下関係に信を沖、アメリカジンは自由と平等に信を置く。
    日本人は、常に上下関係を基準にして自分たちの世界を秩序立てる。家庭や個人的な人間関係においては、年齢・世代・性別・階級ごとの作法に従わなければならない。政治・宗教・軍隊・産業においては、身の置き所が改装に沿って区切られており、上のものも下の者も、おのおのの分を超えると必ず罰せられる。
    直接の競争をできるだけさけようとする傾向は、日本人の生活の隅々人まで浸透している。
    日本人は汚名をすすぐという義務にかくも力点を置いているが、それゆえに実際の生活では、できるだけ侮辱を感じなくても済むように事を運ぶ。
    日本人は、失敗すること、また、人から悪く言われたり拒絶されたりすることに対して傷つきやすい。そのため、えてして他人を責めるより自分自身を責めがちである。教養のある日本人は過去数十年、鬱屈した気持ちを募らせた挙句、怒りを爆発させて憂さを晴らすことが良くあった。日本の小説はこのような感情のパターンを幾度となく描いている。

    アメリカジンは自殺を非難する。それは、自暴自棄になって絶望に身を任せることに他ならない。だが、日本人は自殺に対して敬意を払う。
    西洋の哲学に依れば肉体と精神という二つの力は、それぞれの人間の営みにおいて優位を争おうとする。だが、日本人の哲学においては、肉体は悪ではない。肉体の楽しみを満喫することは、いささかも罪深いことではない。
    日本の戦争映画を鑑賞したアメリカジンは往々にして「今まで見た反戦映画の中で最高の作品だ」と評する。これはアメリカ人の典型的な反応だ。なぜなら、それらの映画はもっぱら戦争に伴う犠牲と苦痛を主題としているからだ。
    日本人は鍛練が自分の利益に繋がると力説する。しかし、日本人の規範がしばしば要求する極端な行動は、彼ら自身にとって正真正銘の深刻なフラストレーションの原因となる。
    ヨーロッパでの苦行の目的は、肉欲を克服することで会ったり、神の慈悲を請うことで会ったり、光陰状態を呼び起こすことで会ったりする。日本人が好む寒行にも夜明け前に身を着るように冷たい滝に打たれるとか、冬、一晩に三回冷水を浴びるなどの行がある。しかしそれは、目的が異なる。意識する自己を鍛え、苦痛を感じない境地に達することをねらいとしているのである。求道者の目的は、迷走が途切れることなく続くように己を鍛えることにある。冷水を浴びても衝撃を覚えない。夜明け前の寒さの中にあっても、身体の震えを覚えることがない。その境地を切り開いた時、達人になるのであった。見返りはそれだけである。

  • 【日本に一度も来たことない/アメリカ人女性による/70年近くも前に書かれた】本のはずなのに、「あーね」「分かるわー」「それな」連発。参りました。笑

    少し前の「そのツイート玄関に貼れますか?」事案もそうだが、表面は変われど本質は変わってないんだろうな、日本人って。ベネディクトさんまじ慧眼。

  • 日本に来たことがないだけあって、ややまとはずれな点もあるが、なんとも日本人の特質をとらえている。
    分別をわきまえる文化を世界に広めようとした結果があの戦争だとするのは大変興味深い。終戦についても、明治維新についても、変わらない日本人の根っこのようなものをとらまえて分析している。表面的には右から左への転向にみえても、何かに狂信的なほど従うという国民性は変わらないという日本人だけでは気がつかない日本人のおかしさがきちんと描かれている。

  • 【引用】
    「日本人は、つねに上下関係を基準にして自分たちの世界を秩序立てる」

    ある日本人作家は次のように述べている。「日本人は、家を非常に大事にしている。しかしだからといって、家族一人ひとりを——あるいは、家族一人ひとりを相互に結び付けるきずなを——大いに尊重しているとはとても思 言えない」  

    ・・・・・・・・・・・

     ま、書かれた時期からいって、本書に登場するのはいかにも古典的、土着的な日本人像で、現在ではかなりモデルチェンジが進んでいるのではないかと・・・

    後半はたんなる生活スケッチのようになっていくな。

    春が根の輪や剪定がなくても美しく咲く菊=自由と、侵略の象徴ではなく自己責任を意味する刀。日本人の意識はこの二つに分裂しているというのが本書の結論か。

  • はじめに驚いたこと、
    結構多いみたいですが、著者は女性(!)だということ。
    そして、一度も日本に行ったことはないこと。

    確かに誤っている部分はありますが
    それでも、十分すぎるほどに
    日本人、というものを鋭く捉えています。
    しかもこれが書かれたのはおよそ70年前。
    驚きですね。

    そして、遠い未来は予測されてますね。
    もしかしたらこれを読んで
    「いけない」ということを学ぶことが
    ある種の鍵なのかも…

  • 名著として読む価値はあると思います。学生時代に読んだときは挫折してしまいましたが、改めて読むと「菊」と「刀」にはそういう意味が込められていたのかと感心。日本人として疑問に思う箇所は多々ありましたが、滞日経験なくこれだけの考察をまとめ上げたのはすごいです。禅の「公案」による悟り(p387~)は初めて知って興味深かった。

  • 日本人論の古典的作品として有名な本書、学生時代に読んでみた時には翻訳が難解すぎて、数ページ読んだだけであっけなく挫折。新訳書が出ていることを知り、ウン十年ぶりに再挑戦したら、読みやすかった。
    もっとステレオタイプな日本人論が展開されているのかと勝手に思っていたが、日本人の行いや心理への目のつけどころが鋭く洞察が深い。特に、日本人自身も明瞭に説明しずらい天皇制についての考察は興味深い。
    戦後生まれの世代には、名実ともに「古典」となってしまっている日本人の習わしも分析されているが、子供の頃の昔話を聞いているような懐かしさがある。

  • すごく精緻な日本人の分析だった。日本人あるあるネタもあるし、自分が考える所以となった背景が分析されていたのはすごく興味深かった。

  • 昔からこの著書のことは知っていたが「日本語の論理」(外山滋比古氏)に書かれていたので読んでみたいと思った。訳者泣かせの難解な部分があり、途中何度も読みずらいと感じた。しかし、これを超える優れた日本論はなかなか現れないというのはうなずける。学問的裏づけ、方法論をもった著書である。題名の「菊」と「刀」の意味がわかるのは終盤である。読者それぞれが自分のイメージをもって読むと面白いかもしれない。マッカーサーと天皇の話にもふれられていて、戦後処理を知る上でも興味深い。

  • 下層だった商人の台頭で封建社会のヒエラルキーが崩れても、商人組織で成り立つ企業の中は結局年功序列の階層社会。
    自由と平等に憧れながらも階層社会に安定感を見出だす日本人。

    平重盛いわく「忠ならんと欲すれば孝ならず、孝ならんと欲すれば忠ならず」
    忠臣蔵では主君への義理を仇討ちで果たし、自ら命を絶つことで幕府への忠をも示した。
    二者択一でシンプルな答えを出すのではなく、両者その身に抱え込んで生きるのが日本人。

    来日したことなくても優秀なスタッフがいるだけで、こんなにもまとめられるものかね。
    賛否両論ある日本人論らしいが、70年近く前でこのクオリティならいいんじゃないすかね。

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著者プロフィール

Ruth Benedict 1887―1948。アメリカの文化人類学者。ニューヨークに生まれ、コロンビア大学大学院でフランツ・ボアズに師事し、第二次世界大戦中は、合衆国政府の戦時情報局に勤務し、日本文化についての研究を深める。晩年にコロンビア大学の正教授に任じられる。主な著書に、『文化の型』『菊と刀―日本文化の型』など。


「2020年 『レイシズム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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