超常気象 異形コレクションLⅣ (光文社文庫 い 31-44)

  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (616ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334794583

感想・レビュー・書評

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  • ホラーのアンソロジーでテーマは『超常気象』
    ひと作品はそんなにページが多くないけれど、15人の先生が書かれているのでページ数が多く、読むのに時間がかかりました
    かなり読みごたえがあります
    大島清昭『星の降る村』澤村伊智『赤い霧』坂入慎一『三種の低気圧』平山夢明『いつか優しい首が……』が特に面白かったです
    どの作品も『超常気象』というテーマをしっかり練られていて、なるほどこうきたか~となる作品ばかりでした
    ただのホラーという枠に収まらない作品も多くて全体的に面白かったです
    このコレクションが好きでついつい買ってしまう

  • 超常気象をテーマに15名の作家さんによる短編集。誰から読むかも楽しみだし、一編が短いので少しの待ち時間でもサクッと読める。長編だとおどろおどろしさに辟易する事もあるが、どれも面白く読みおえた。

  • 全編ハズレなしで素晴らしい!
    「気象」という人の手に負えないものが怪異になる恐怖、切り取り方の違いでこんなに多彩な作品群になるなんて。

    柴田勝家『業雨の降る街』、篠たまき『とこしえの雨』、平山夢明『いつか、やさしい首が……』が特に好き。

  • 大島清昭「星の降る村」
    活動休止して消息を絶ったアイドルの手足や首が降ってくる村の話
    男の娘アイドルいいやん

    篠たまき「とこしえの雨」
    マヨイガみたいなとこである男に出会う話
    食べられることの良さを異コレ進化論「書樓飯店」から学んでいたので良いと思った。

    宮澤伊織「件の天気予報」
    件が天気予報教えてくれる話。
    文がポップ
    百合感ある

    柴田勝家「業雨の降る街」
    六年に一度、業雨という雨が降る土地の話。
    業雨の降る日はそれまでの六年間に殺した相手が降ってくる。
    これも百合感ある

    澤村伊智「赤い霧」
    心霊スポットを調査する三人組が出くわす赤い霧の話。
    いたずら電話がすげ~生々しくて良かった
    澤村伊智おもしろい

    斜線堂有紀「『金魚姫の物語』」
    降涙という、特定の個人にのみ(その人物が死ぬまで)雨が降る現象に見舞われる人の話。
    斜線堂有紀、設定が奇抜で話も面白いけど毎度文章が感傷的すぎる印象

    坂入慎一「三種の低気圧」
    SS三話
    「雷が落ちても」
    自分に害のある人間に雷が落ちる女子の話
    これも百合感ある
    自分のせいじゃね~しっていうのがめっちゃいい、好き
    「骨が降る」
    クズ男が蒸発したあと庭にそいつの骨が降ってくるようになった女の話
    これも良かった、好き
    「二人きり」
    恨みを抱いて死んだ人間が「祟り神」という台風みたいな存在になるって話
    ソウルジェム濁って魔女になったらえらいことになるのと一緒
    モラハラ夫がまったく眼中になくて良かった
    全体的に自分のために行動していてスカッとした趣がある、三話それぞれ好き

    空木春宵「堕天児すくい」
    自殺した子供が空から降ってくる街の話
    碧とカガリそれぞれの文の違いが良い

    上田早夕里「成層圏の墓標」
    毎日夕方から12時間雨が降るようになった世界の話

    田中啓文「地獄の長い午後」
    地獄が正常に機能していないため釈迦が様子を見に行く話
    地球の長い午後のもじりだ~!
    釈迦つよい

    黒木あるじ「千年雪」
    毎日雪が降るある村での話
    これ好き

    井上雅彦「彩られた窓」
    よくわからん

    朝松健「怪雨は三度降る」
    陰陽師のせいでえらいことになる話。
    これこの土地の人めちゃくちゃとばっちりじゃないか?かわいそうすぎるが

    平山夢明「いつか やさしい雨が……」
    首が降るようになった国の話。
    救いがなさすぎて力が抜けた。
    平山夢明って基本的に救いはないけど希望はあると思っている、でもこれはどっちもなかった。
    なんかチーコが壊れてない平山世界の子供とは違うタイプだから余計にきつい。
    チーコ自体が希望のようだったから、例えば祈りが届くとかするのかと思った。
    これほんとに嘘ついたら降るのか?
    まじで救いがなさすぎる 無慈悲

    加門七海「虚空」
    瓶に入った空の欠片を逃してしまった男の話。

    てっきり「異常気象が怪異を引き起こす」のかと思っていたら「気象自体が怪異」である話が多くてイメージと違った。
    確かに「超常気象」ならそうなるか。バラードの結晶世界とかもそうなるのかな。全体的に湿度の高い終末っぽい暗さがあって良かった。

  • 書き下ろし ホラー短編集 豪華
    篠さんの短編はこわい

  • 前半に好みの作品が多かった。

    特に好きなのは「業雨の降る街」。
    歪なひと夏の友情とラストがとても好きだった。

    あとは

    「『金魚姫の物語』」
    「三種の低気圧」の中の「雷が落ちても」

    が好きかな。

  • 雨が降るというシチュエーションが共通しているホラー短編集。いろんな雨が降ります。雨じゃない何かも降ります。
    どの話も気持ち悪くておもしろい。

  • 降る話が多くて、照る話がないのが物足りなかった。せっかくのアンソロジーなのに、傾向が同じだともったいない。
    『とこしえの雨』甘美でグロテスクでエロティック。
    『業雨の降る街』こういうドライなロマンシスは大好き。大親友!ってほどべったりしないけど、お互いしかいない関係。
    『三種の低気圧』全部好き。『雷が落ちても』の2人も素敵。『骨が降る』は、骨より主人公が怖い。でも喫茶店のシーンは正直スカッとした。『二人きり』すごくいい。祟り神になる現象自体も気に入った。祟り、恨まれるより、無視される方がずっと辛い。
    『いつかやさしい首が…』分からないし、解決もしないただの絶望。なんだか現状とリンクして恐ろしかった。

  • それぞれの面白さがあったけど、
    個人的には怪雨は三度降る、いつかやさしい首が…、三種の低気圧、赤い霧、地獄の長い午後がお気に入り。

    以下、一作ずつの感想。

    ●星の降る村 大島清昭
    字面だけで読んでると面白いんだけど、想像すると怖すぎ。屍体集めたり、売買するって。でも屍体とはなんなのか、を考えさせられる。唯一無二の肉体でないなら、それはもはやただの「もの」なのか。じゃあ私たちがいつも恐れる屍体とはなんなのか。死者の奢りのことを思い出しちゃったり。

    ●とこしえの雨 篠たまき
    the・怪談!恐怖は官能と隣り合わせ。こういうのを今の作家さんが書いてるってのが面白い。雨、エロい。旅館は、思ったより高級旅館でウケた。

    ●件の天気予報 宮澤伊織
    好き。繋がりそうで繋がらない怪異の諸々が愛実(ちゃんと生きてる人間?)と件の天気予報を起点に、現実と異界の境目をぼやかしながら蠢いていく感じがいい。オチをSiriでつけることで他のあやふやなものがあやふやなままにされて、とても良き。

    ●豪雨の降る街 柴田勝家
    怪奇現象に科学的な根拠はあるものの、本人に「見える」ことに変わりがない、というところから生まれるラストの恐怖。本物?幻覚?わー!なんで?!っていうのが、百合的な関係とあいまって、甘い恐怖の読後感。

    ●赤い霧 澤村伊智
    都合の悪いことをなかったことにしながら今を謳歌することが罪だとするなら、この話は罪を罰する怪奇現象だ。「怖くなかった」っていう言葉がなん度も出てくるんだけど、他人の罪を罰するものだから神様みたいなもので、怪奇だとしても別に怖くないんだろうね。小心者で、でも自分勝手な人間が追い詰められていく怖さだな〜廃ニュータウン、っていう舞台もとても効いてて、こういう言い方良くないかもだけど、うますぎる。

    ●『金魚姫の物語』 斜線堂有紀
    無差別に突如訪れる不幸について、現実をいくら見つめても仕方ない。出来るだけ美しく、『物語』ることだけしか供養にならない。希望の物語が逆にそら恐ろしい事実を突きつける。

    ●三種の低気圧 坂入慎一
    低気圧の中で守りぬかれる私(たち)だけの世界、三部作。少しズレた世界の怖さ。おもしろかった。

    ・雷が落ちても
    世界を破壊に導く百合ユートピア。世界観好み。

    ・骨が降る
    主人公が少しおバカな設定であることが、この短い話の中でこの展開を納得させるに効いている。

    ・二人きり
    偏執的な主人公が怖いはずなんだけど、おかしいだろ!が効いてて、面白くなってる。霊媒性低気圧しかかたん。

    ●堕天児すくい 空木春宵
    ラストシーンのエモさ。LIMBOの世界感が完成してて、怖いというよりは、イメージ小説。

    ●成層圏の墓標 上田早夕里
    SF。雨坊の登場シーン怖い。生成AIの例えが面白かった。

    ●地獄の長い午後 田中啓文
    笑かし方の強弱(細かいパロディとしょーもないダジャレ)も絶妙で、最後の展開も秀逸。地獄が舞台なのも効いてる。短編集にこういうのが一作入ってるとよいですね。

    ●千年雪 黒木あるじ
    イメージはキレイだけど、ギミックの理解がちょっと難しい。どこからどこまでがループしてるんだろ?チユは人魚のイメージで語られてるけど、雪女の美しさある。ホラーと衝動的に動く自分勝手で小心者の男とは相性がいいんだなと思った。

    ●彩られた窓 井上雅彦
    登場人物たちの名前、部室のイメージ、小道具、どれも幻想的で麗し。過去と現在の対比から始まり、事件の真実が明らかにされていくごとに逆にそれがないまぜになっていく感じがよき。

    ★怪雨は三度降る 朝松健
    怖すぎるー泣!!!これぞホラー。
    味覚で恐怖を感じさせるってなに?怖過ぎる。
    なんの罪もない(とは言えないかもだけど)、人々が非情な怪と暴力に飲み込まれていく。歴史とはそういうものだし、権力とはそういうものなのかもしれない。
    斜線堂有紀の『金魚姫〜』が極私的で内向きの救いのなさだとすると、これは大きな時間の流れの中で社会が持つ外向きの救いのなさ。前者に祈りはあれど、後者に祈りは通じない。祈りとは個人のものなのか。そういう意味で恐ろしすぎる。

    ★いつか やさしい首が… 平山夢明
    とってもよかった。小学生女子目線の日常的な描写がとてもよくて(ビックリしておなら出ちゃった、とか)、災難は日常にこうやってやってくるのだな、という恐怖がせまってきた。最初の解説に、ウクライナの子供たちに、というのがあって、小説のチカラへの信頼を感じた。

    ●虚空 加門七海
    空のかけら、確かにヨガの人なら持ってそう。仙人的な。ラジオの感じがよかった。結構長い年月の話、というのが肝で、日常が変わっていく感じのリアル感あってそこがこの小説の一番怖いとこかもしれない。


  • 一つもハズレがない全部面白い

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著者プロフィール

鳥取大学大学院 医学系研究科

「2019年 『公認心理師 実践ガイダンス 2.心理支援』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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