まいまいつぶろ

著者 :
  • 幻冬舎
4.15
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本棚登録 : 1184
感想 : 120
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344041165

作品紹介・あらすじ

暗愚と疎まれた将軍の、比類なき深謀遠慮に迫る。口が回らず誰にも言葉が届かない、歩いた後には尿を引きずった跡が残り、その姿から「まいまいつぶろ(カタツムリ)と呼ばれ馬鹿にされた君主。第九代将軍・徳川家重。しかし、幕府の財政状況改善のため宝暦治水工事を命じ、田沼意次を抜擢した男は、本当に暗愚だったのか――? 廃嫡を噂される若君と後ろ盾のない小姓、二人の孤独な戦いが始まった。

感想・レビュー・書評

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  •  胸が熱くなり、涙の川を必死に漕いで渡り切りました。徳川家の中で、ほぼ無名の第九代将軍・家重を題材にした感動物語です。
     強固な絆で結ばれた主従の家重と忠光が実在したという歴史的事実を、これだけ面白く感動的に提供してくれた村木嵐さんに感謝です。

     八代将軍・吉宗の嫡男・長福丸(後の家重)は、生まれながら片手片足や発話に問題があり、他と意思疎通ができません。また度々尿を漏らし、歩いた跡が残ることから「まいまいつぶろ(かたつむり)」と蔑まれていたのでした。
     そこに、長福丸の言葉が判る少年・大岡兵庫(後の忠光)が現れます。長福丸にとって唯一無二の存在となり、物語は大きく動き出していく展開です。

     周辺には、忠光の忠義を疑い、家重の外見に失望し器を疑う等、世継ぎを覆そうと企ても持ち上がりますが、家重と忠光の確固たる絆によって、敵対する者の邪心が覆り、周辺の様相が変わっていく描写が小気味良いです。

     蔑まれた家重の聡明さ、洞察力、優しさ。そして家重の苦悩に鏡のように寄り添い支えた忠光‥。身分の違いを超え、心から通じ合う2人の絆を丁寧に描き切っており、胸に迫ります。

     個人的には、謀略渦巻く政(まつりごと)中心の後半よりも、家重の幼少から青年期の口がきけない、思いが伝わらない苦悩を経て、真の理解者となる兵庫、正室・比宮との出会いを果たした僥倖を描いた前半に、多くの感動を覚えました。
     歴史好きには家重の再評価、初心者には新知識を与えてくれますし、また新たな読者層獲得という点でも、大きな価値ある作品だと思いました。

  • もう一度生まれても、私はこの身体でよい。
    忠光に会えるのであれば。

    あ〜泣けた〜〜〜(;´༎ຶД༎ຶ`)

    第九代将軍、徳川家重と大岡忠光の絆の物語。

    暴れん坊将軍吉宗の事は知っていたけど、その嫡男である家重の事は何も知らなかった。

    生まれながら脳性麻痺で、口や手がきかず誰にも言葉が届かない。
    そのうえ頻尿で尿意を制御できない身体のため、歩いた後には尿を引きずった後が残り、"まいまいつぶろ"と呼ばれ蔑まれた君主。

    そんな彼の言葉を理解出来る小姓が現れた。
    家重の耳や目になってはいけない。
    あくまでも家重の"口"になる事だけに徹する忠光。

    この二人のお互いを思いやる熱い絆に胸を打たれた〜(TT)
    二人を見守る忠音にも(TT)

    後継は嫡子長男にこだわった徳川一族だったが、障害のため危ぶまれ反対する者も多かった。
    どの様にして、家重は将軍になったのか。

    しみじみ心打たれるお話だった。




    • 1Q84O1さん
      mihiroさーん
      これ手元にあります^_^
      けど返却期限間近です…
      やばい!急いで読まないとΣ(゚Д゚)
      mihiroさーん
      これ手元にあります^_^
      けど返却期限間近です…
      やばい!急いで読まないとΣ(゚Д゚)
      2024/03/06
    • mihiroさん
      一休さ〜ん、おはようございます(^-^)v
      あはは!あるあるですね〜!
      私も図書館本は焦って読んだり、そのままリターンしてしまったりよくあり...
      一休さ〜ん、おはようございます(^-^)v
      あはは!あるあるですね〜!
      私も図書館本は焦って読んだり、そのままリターンしてしまったりよくありますσ(^_^;)
      時代小説ですが、とても良かったですよ〜!
      間に合えばいいですが、無理せずタイミング合う時にぜひぜひ〜♡♡
      2024/03/06
    • 1Q84O1さん
      ラジャー(`・ω・´)ゞ
      ラジャー(`・ω・´)ゞ
      2024/03/06
  • そりゃあ調べたくなるよね~

    徳川家重&大岡忠光!

    徳川家重は近年再評価
    大岡忠光は清廉潔白で藩主としても有能だったみたい
    うーん、好き!大岡忠光好き!

    いやこれ歴史小説としては相当レベル高いんじゃなかろうか、史実をあまり曲げずにエンタメ作品として成立させて尚且つ泣かす!そしてめっちゃ深く調べたくなる
    でもって人生の教訓も得られて
    いやーすんばらしい

    それにしても徳川家康ってやっぱすげーな
    徳川将軍って「家」付くのめっちゃ多いもんって評価のポイントそこかよ!

  • 日本史は苦手です…

    徳川幕府で知っているのは、
    初代家康、五代綱吉、八代吉宗、十五代慶喜ぐらいかも…


    九代将軍徳川家重なんて知りませんでしたw

    っていうか、あなたも知らないでしょ!
    えっ!知ってるって…(;・∀・)

    ウソおっしゃい!
    絶対に知らないでしょ!家重なんて!



    家重(幼名・長福丸)は産まれながら障害をもち、手足には麻痺がある
    舌はほとんど動かすことができない
    そのため家重の言葉を聞き取れるものはいなかった

    しかしそこへ突如、家重の言葉を理解する者が現れる

    その名は大岡忠光(幼名・兵庫)
    はい!もちろんこの人も知りません!w
    あなたも知らないでしょ!

    忠光は家重の口となり仕えることになる
    そこから家重と忠光の二人三脚の人生が始まる


    で、このふたりの関係性が素敵すぎる!
    最後に家重が忠光に伝えた言葉に涙ですよ
    。・゚・(ノД`)・゚・。

    「まいまいつぶろじゃと指をさされ、口がきけずに幸いであった。そのおかげで、私はそなたた会うことができた」

    「もう一度生まれても、私はこの身体でよい。忠光にあえるのならば」

    この言葉でわかります
    ふたりの関係は主従関係ではないんです

    ふたりの関係は友!

    それも最高の友なんです!


    九代将軍徳川家重
    大岡忠光
    ふたりの名は覚えました、そして忘れません

    • ひまわりめろんさん
      かなさん
      こんにちは!

      あ、わいのレビュー見てしまったのねw
      なんか申し訳ない
      自分でも見直してみたらよっぽど一Qさんのが詳しく書いてるっ...
      かなさん
      こんにちは!

      あ、わいのレビュー見てしまったのねw
      なんか申し訳ない
      自分でも見直してみたらよっぽど一Qさんのが詳しく書いてるっていうのが判明して切ない気持ちになりました
      そちら方面でもなんか申し訳ない

      そしてコメント欄でも松子さんへの対応とおびのりさんへの対応が違い過ぎて
      さらに申し訳ない

      反省の日々です

      かなさんの『まいまいつぶろ』のレビュー楽しみにしてますよ!ってこのままじゃいつあがったのか分からないのでフォローします( ̄^ ̄)(なぜ威張るのか)
      2024/03/13
    • 1Q84O1さん
      かなさん
      4人待ちでしたか
      でしたらすぐまわって来そうな感じですかね^_^
      江戸のBL楽しみにしていてください!w
      そして、ひま師匠のレビュ...
      かなさん
      4人待ちでしたか
      でしたらすぐまわって来そうな感じですかね^_^
      江戸のBL楽しみにしていてください!w
      そして、ひま師匠のレビューはスルーでいいでよ!w
      真面目なレビューは10〜20冊に1冊ですので!
      ですよね、ひま師匠!w
      2024/03/13
    • かなさん
      1Q84O1さん、おはようございます。
      4人待ちといっても、貸出期間は2週間
      そして、貸出可能になってからの保管期間は2週間あるんで、
      ...
      1Q84O1さん、おはようございます。
      4人待ちといっても、貸出期間は2週間
      そして、貸出可能になってからの保管期間は2週間あるんで、
      それで助かっている面もあるけれど、
      長く待たされることもあるのが、私が利用する図書館です(^-^;
      でも読むのは楽しみです♪ありがとうございます。

      そして、こちらで失礼して
      ひまわりめろんさん、おはようございます(^^)
      フォロー頂きありがとうございます♪
      いつか、実は私からも
      フォローのお願いをしようしようと思ってました!
      これからよろしくお願いします。
      2024/03/14
  • 2つの賞を受賞した上に直木賞の候補となっている。ぜひ直木賞を受賞して欲しい作品。
    生まれた時の障害か、幾つもの障がいを抱えて将軍となった家重。大岡忠光が偶然聴き取った家重の言葉が切っ掛けで、二人三脚の人生が始まる。誰も聴き取れない家重の言葉を通訳する忠光。この忠光の通訳自体を疑われることが生涯続くことに愕然とする。
    オシッコを漏らして歩く姿から「まいまいつぶろ」と侮辱される将軍。親戚の大岡忠相からの忠告である家重の通訳に徹して、家重への侮辱を本人に伝えず生涯を過ごす。
    黒子に徹すること約34年。忠光の引退は家重の引退でもあり、最後の二人のやり取りに涙が溢れる。自分の意見を言わずに黒子でありながら大名までになった忠光。壮絶な一生に感動する。

  •  皆さん高評価のこの作品…図書館予約してようやく手にすることができました。私、時代小説は苦手だったんですが、ブクログのおかげで少しずつですが読む機会が得られるようになりました。

     時は江戸時代、第九代将軍の徳川家重と、その小姓である大岡忠光…ふたりの生涯を主軸にして描いた時代小説になります。家重は生まれつき半身が不自由な上に頻尿で、足を引きずるように歩きそのあとは尿で濡れている様があり、“まいまいつぶろ”と蔑まれてきた。そのうえ家重は言葉も不自由で、家重の言葉を理解できる者がいなかったため、時折癇癪を起こすことから、家重を廃嫡としその弟の宗武への期待が高まっていた。そんな中、家重の言葉を理解できる大岡忠光が現れた…。忠光は、家重の“口”になることに徹し、時には謂れのない疑惑に曝されながらも、互いに唯一無二の存在になっていく…。

     泣かされる場面が沢山ありました!!本当に沢山あって、レビューに残しきれないくらいです。家重が思っていることが伝わらないもどかしさを考えると…なんて言ったらいいのか、孤独で悲しくてさみしくて苛立ちもあって、諦めの感情もあったと想像します。忠光が家重の言葉が理解できるとわかった場面は、感動しました!!家重と正室の比宮が愛を育む場面とかは、読んでいてぱぁ~っと明るい気持ちになりました。出逢いもあれば、別れもある…人とのつながり、結びつき、絆を感じさせてくれた読後感も清々しい良作です。

    • 1Q84O1さん
      かなさん
      読まれましたか〜!
      泣かされる場面たくさんありますね
      。゚(゚´Д`゚)゚。
      これはほんと良い作品でしたね!
      かなさん
      読まれましたか〜!
      泣かされる場面たくさんありますね
      。゚(゚´Д`゚)゚。
      これはほんと良い作品でしたね!
      2024/05/02
    • かなさん
      1Q84O1さん、読みましたぁ〜!!
      やっと読めましたよ!!
      ホント、いいお話でしたよねぇ…
      いろんな場面で、たっぷり泣かせられました...
      1Q84O1さん、読みましたぁ〜!!
      やっと読めましたよ!!
      ホント、いいお話でしたよねぇ…
      いろんな場面で、たっぷり泣かせられました(´Д⊂グスン
      徳川家重と大岡忠光、知りませんでしたよぉ…
      この作品で知ることができてよかったです。
      ありがとうございます♪
      2024/05/02
    • 1Q84O1さん
      私も徳川家重と大岡忠光知りませんでしたよ( ・`ω・´)エッヘン
      (威張ることではないですねw)
      けど、これを読んでふたりの素敵な素晴らしい...
      私も徳川家重と大岡忠光知りませんでしたよ( ・`ω・´)エッヘン
      (威張ることではないですねw)
      けど、これを読んでふたりの素敵な素晴らしい関係に涙涙でした。゚(゚´Д`゚)゚。
      2024/05/03
  • 言葉が通じぬ苦しみを知っているが故に、百姓たちの誰にも伝えられない思いに耳を傾ける。
    生まれながらに身体に重い病があり、片手片足はほとんど動かすことができず、口をきくこともできない。歩いた後には尿をひきずった跡が残るため、まいまいつぶろ(カタツムリ)と呼ばれた君主。
    しかし「もう一度生まれても、私はこの身体でよい、忠光に会えるのならば」と言えるだけの大切な出会いがあった。
    子供が生まれたり、その子がしゃべった時などなど、自分のことの様に喜べました。
    そして感動のラストでした。

  • 歴史的評価とあまりにも違う第九代将軍・徳川家重の姿に戸惑いながらも、ストーリーに引き込まれました‼️
    賢く思慮深い家重を始め、ただただ家重を思い身を捧げた兵庫(忠光)、家重の見方になろうとした比宮、子を思いながらも将軍としての責務を全うする冷酷さも持ち合わす吉宗などなど、登場人物が皆魅力的でした。悪役もいかにも時代劇の悪役っぽくて、好きです。

  • 享保の改革から8年後、八代将軍吉宗の嫡男、長福丸(のちの家重)は病気のため喋ることができず尿意も我慢ができない。座った後がまいまい(カタツムリ)のようだ、と臣下からは蔑まれていた。次期将軍は弟の小次郎丸の方が相応しいのではという声が上がる中、大岡兵庫(のちの忠光)には、長福丸が話す言葉がわかると言う…

    ファンタジー要素がある上に時代物としての読みごたえもありました。色々な登場人物からの視点で書かれていてまるで大河ドラマを観ているようです。
    忠光が通詞となったことで、周りの人たちが家重の後継ぎとしての素養と聡明さに気づきます。やがて家重は将軍になり、享保の改革を行った吉宗の跡を継いで、まいまいつぶろのように、のろのろと、大きな殻を見事背負いきって人生を歩みきります。家重と忠光の、互いの立場を思いやりながらも職務を全うする高潔さに心が洗われます。

    日ごろから登場人物が覚えらない上に歴史に疎い私としては、しょっぱなに出てくる大岡越前守忠相(ただすけ。あの大岡越前!まさに暴れん坊将軍!)から人の読み仮名が覚えられず、ノートに
    P17松平乗邑(のりさと) 忠相のはとこ 老中
    P41 水野監物(けんもつ)50半ば 財政係さん 老中
    とか書きながらなんとか読んでいきました。忠〇さんがいっぱい出てくるので、書いていたおかげで助かった。時間はかかりましたが、将軍を目指すよう進言する酒井讃岐守忠音をはじめ、味があるキャラクターが出てきて、充実した読書時間となりました。

    表紙に薔薇(バラと読まずにそうびと読む)が描かれています。家重と比宮の愛がとても初々しくて、この表紙っていいなぁ、と思います。比宮さんの決意と言葉を越えた愛が素敵でした。

  • 第170回直木賞候補作。第9代将軍、家重とその障害のために決して目や耳とならず、「通詞(通訳)」としてのみ仕え続けた大岡忠光の物語。時代的にも戦闘シーンなど出てこない展開でまるでドキュメンタリーを見ているように淡々と時が流れていく。本当に忠光は聞き取れているのか?家重は自らの意思表示ができることで、廃嫡を免れて将軍となれるのか?決して二人の側から物語が語られないことで、最終章の息子たちの会話に深い余韻が残りました。

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著者プロフィール

一九六七年京都市生まれ。会社勤務等を経て、司馬遼太郎氏の夫人である福田みどり氏の個人秘書を十九年間務める。二〇一〇年『マルガリータ』で第十七回松本清張賞を受賞し、作家デビュー。

「2022年 『せきれいの詩』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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