螢 (幻冬舎文庫 ま 3-2)

著者 :
  • 幻冬舎
3.53
  • (110)
  • (248)
  • (277)
  • (62)
  • (14)
本棚登録 : 2219
感想 : 247
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (438ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344410350

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 2つの叙述トリック、見事に騙されました。
    視点錯誤のトリックに関しては、伏線が結構あり、何で気づかなかったんだろーという感じ。
    そして千鶴は"男"と偽って参加していたという"逆叙述トリック"も面白い。
    雨の音が全部同じメロディーに聞こえるというのが本当に可能なのかは気になる。

  • 個人的には、うーむ。という感じが拭えない。文章が読みづらいのと、第1の殺人までP130を越えないといけない。そのせいか全体的にダラダラがずっと続いてしまって正直、読むの辛かった。

    そして、後半はもう何だか脳内がごちゃごちゃで腑に落ちないまま、読了。(私の理解力が足りないせいなんだろうけど)

  • これから読むひとに言いたいのは「この作品は信じていいぞ」ということ。
    違和感が雑な描写によるものなのかわざとなのか、きちんと結末するのかと疑いながら読み続けてしまった。
    男尊女卑丸出しに思える描写が多かったのも最後まで読むと、それかー、と清々しく騙されていて、読み終えてからもう一度読むと、あー!あー!あああ〜と、引っかけとヒントの繰り返しだと気づく。やられた〜!2回目が面白い。良くできてる。面白かった。結末の謎については「身許がわからない女性」であれこれ考えた結果、こうだろうなと勝手に考えたけど合ってるかはわからない。お疲れ様でした。

  • 所々違和感を感じつつも、最後まで気付きませんでした。
    また、実現可能かどうかは置いておいて、音楽を奏でる館は行ってみたいと感じました。

    てっきりLGBTの方かと勘違いしました・・・。

  • 長崎が全然出てこないと思っていたんですが、ずっと長崎のターンだったんですね笑
    完全に叙述トリックにハマっていました。

    そして最後のオチもふぇっ?!となりました笑

    若干読みにくさはありましたがもう一度読み返したくなる作品です。

    最後生き残ったのは誰なんだ!

  • 玄人受けする本。
    トリックありきでいろいろ設定が決まった感じ。

    10年前に連続殺人の現場となったファイアフライ館を成金の先輩が買い取り、大学のオカルトスポット探検サークルのメンバー(名字が長崎の地名縛り)が合宿に訪れる。
    で、館の持ち主の先輩が殺される。
    初日から雨が降りやまず、唯一の橋は不通になって、クローズドサークル完成。

    私はあまり填まらなかった。
    トリックの良し悪しというより、館に隠し階段があって地下には鍾乳洞が広がってたりと、「そんなの聞いてないよ」的設定が後から披露されるところが受け付けなかった。

    諫早視点の三人称に見える地の文章は、実は長崎の一人称なわけだけど、最初のモノローグは一人称にしか思えないのにいきなり諫早視点の三人称(に勘違いするような文)になるので、なんか文章が下手なヒトみたいで「麻耶さんどうした?」と思ってしまった。しかも、「三人称だと勘違いしたオマエが悪い」と言える余地を残す曖昧な文体だから、結果、余計に不自然に感じる。
    まぁでも結局騙されて諫早三人称だと思って読み進め、全員揃ってる場面でも明らかに長崎に関する描写がないので、全員いるんだよね?とか数ページ戻って確かめたりした。
    これだけ違和感を感じつつも諫早三人称を疑わなかった自分は見事に術中にはまったわけだ。
    それでも、島原が平戸に推理を披露してるところを立ち聞きするあたりで(やっと)諫早じゃないんじゃね?と思い始めた。(遅っ)

    もうひとつのトリック、千鶴は実は男装してて作中人物はみな男だと思ってた、っていう一周回って戻っきたみたいな斬新なトリックも、「ボクっ娘!」とか「百合!」とか不都合を勝手に解釈してスルーしてて、さすがに、2つある風呂をわざわざ1つしか使わないのには違和感覚えまくったけど、それでも全く見抜けなかった。
    その上、この「千鶴を女だと知ってた問題」は、犯人を確定する重要な要因なくせに、そのロジックが細かすぎて、イマイチ沁みて来なかった。

    諫早の自殺(に見せかけた他殺)が発見された際の、登場人物達の冷めた態度もいただけない。ジョージの共犯者に同情の余地はないとしても、もう少しショック受けてあげてほしかった。
    なぜ諫早は佐世保に彼女を捧げたのか、って核心には全く触れられなかったけど、多分ターゲットに定めてから彼女にしたのかなと。恋人を殺された元彼氏にしては事件のこと普通に語ってた違和感はそれで払拭される。

    そしてラスト。10年前の連続殺人も今回の殺人も見事に解決したのに、さらっと土砂崩れでみんな死亡ですか。また真相は闇の中じゃないですか。(麻耶さんらしい)
    絶望ですよ。

    生き残ったのは誰か問題、名前から長崎って説と、松浦って説に分かれてるらしい。
    佐世保と学生たち7人が遺体で発見されて、うち女性1人の身元が不明、1人生き残り。合計8人になる。学生は6人しか居なかったから、1人は小松響子かフミエ、でも地下の鍾乳洞が警察に発見されるとは考え難いから(死臘は土砂かぶったら粉々だろうし)フミエ、ってのが大方の説。
    確かに素直に読めば、身元不明の女性がフミエで、松浦が助かったように読める。ここであたかも女性は1人みたいにミスリードしちゃうけど、男女の内訳は書いてないんだよね。
    島原は、フミエは諫早によって橋付近の雑木林に埋められたと推理している。これが事実なら、土砂崩れでもさすがにファイアフライ館の面々と車で数分離れたとこに埋められた死体とが一緒くたにはならないだろう。
    てことは、身元不明の女性1名が千鶴、ってことにはならないだろうか。
    ここで思い出されるのは、冒頭、去年はいつの間にか1人増えてた、ってくだりである。
    もしかして、これ大きな伏線で、身元不明の女性は千鶴で、今年もどこかでいつの間にか1人増えてたってことはないよね? まさかね? でも麻耶さんならやりかねないよね? あの分かりにくい地の文のどこかでやらかしてない? と、またしたも前に戻って探ってしまうのだった…

    ☆3つの割にはいいように翻弄されたな私。

  • 麻耶雄嵩さんがどんな作家さんなのか、まだ数冊しか読んでいないので、掴んでいる最中なのですが…この本も麻耶さんらしさが存分に詰まっている一冊のような気がしました。

    1人だけ、あれ、おかしいな。全然でてこないなと思いながら読んでいたのでなんか怪しいとは思っていましたが、長崎の視点の地の文のところが、うまいこと諫早の視点かのように読ませる書かれ方をしていて、違和感はあったもののその中身には最後まで気づけませんでした…。

    そして、千鶴の性別のトリックに関しては、思わずえ!?っと叫んでしまうほど驚きました…。斬新なというか、ミステリや叙述ってこういうものと思いこんでいた根底を覆されたというか、とにかくしてやれらた~!という感じでした。

    探偵役の2人がよかったな、また何か他の作品に登場しないかなと思いながら読んでいたらまさかのエピローグ。容赦なく後味悪く終わるのも、麻耶さんらしさなのかな~。

  •  オカルトスポット探検サークル「アキリーズ・クラブ」の学生6人が,同サークルのOBが所有している黒いレンガ屋敷ファイアフライ館にやってきた。この屋敷は,10年前,作曲家の加賀螢司が演奏家6人を殺害した場所だった。
     また,アキリーズ・クラブのメンバーの一人,対馬つぐみは,「ジョージ」と呼ばれる殺人鬼に惨殺されていた。
     アキリーズ・クラブのメンバー6人と同サークルのOBであり,ファイアフライ館のオーナーである佐世保左内が宿泊した嵐の夜,オーナーの佐世保が何者かに惨殺される…というストーリー。

     探偵役を務めるのは,アキリーズ・クラブの4回生,平戸久志と1回生,島原駿策。平戸は,アキリーズ・クラブのメンバー以外の外部犯人説を主張し,島原は,アキリーズ・クラブのメンバーに犯人がいるのではないかと疑う。

     この作品には,二つのトリックが仕掛けられている。一つ目のトリックは,物語の視点を誤認させるというもの。長崎直弥が盗聴をしていること,会話のタイミングなどの叙述を駆使し,アキリーズ・クラブの2回生である長崎直弥の視点を,あたかも,同2回生の諫早郁夫の視点で描かれていると誤認させるように記述している。
     物語の途中で,ジョージという殺人鬼の正体が佐世保左内であることが分かる。そして,佐世保の共犯者がアキリーズ・クラブに存在していることが分かる。読者には,物語の視点が諫早郁夫であると誤認させているので,読者は,諫早が共犯者とは思い難い。しかし,諫早が共犯者だったという真相が暴かれる。これがサプライズの一つ。

     もう一つの叙述トリックは性別誤認トリック。性別誤認トリックといえば,本来は女性である人物を,叙述トリックにより,読者に男性と誤認させるというものが有名である。しかし,本作は,登場人物表に「松浦千鶴」という名前と「S女子大学1回生」と明記し,長崎の視点において「紅一点」などと女性であることが明らかであるように描く。そして,物語の登場人物の会話などでは,松浦千鶴の性別は明らかにしない。こうすることで,松浦が,読者と長崎以外の人物には男性だと誤認させていたという事実を伏せているのである。これは,読者に性別を誤認させるというトリックを知っているほどサプライズが大きい。物語の登場人物内の「つまり真犯人は,松浦が女である事実を知っていたのです。」,「何だって!」という会話を読んだとき,見事に引っかかってしまったので,完全に「え?」と思ってしまった。

     物語の設定や性別誤認トリックなど,綾辻行人の館シリーズを思わせる。物語の語り手の誤認トリックと性別誤認トリックをベースは見事だが,物語全体は突拍子がないストーリーで,嫌いな人は嫌いな作品だろう。麻耶雄嵩らしいといえばそれまでだが。

     個人的には好みの作風。★4で。

  • 叙述トリックが詰まった内容。読み進めていくと若干の違和感に気づくが最後の方でトリックが分かりもう一度読んでいくことで詳しく分かっていく。最後のエピローグでは、ファイアフライ館で過ごした5日間が嘘のように終わってしまう儚さ、学生たちがもういない現実が寂しくさえも感じるぐらい内容に入り込んでしまいとても面白かった。

  • かつて演奏家6人を惨殺し謎の言葉を残し人生を終えた作曲家:加賀蛍司。 10年後、惨劇の痕の残る屋敷に肝試しに来た大学のサークルメンバー達。 世間を賑わす殺人鬼「ジョージ」。 雨の山荘での殺人から何かが始まる・・・。

     トリック自体は真新しさはないのだけれど使い方が非常に上手かったですね。 登場人物のまともさ、がっつり王道な館クローズドサークルものなのは麻耶雄嵩っぽくないなと思ったけれども最後の最後にやってくれます。 

全247件中 11 - 20件を表示

著者プロフィール

1969年三重県生まれ。京都大学工学部卒業。大学では推理小説研究会に所属。在学中の91年に『翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件』でデビューを果たす。2011年『隻眼の少女』で第64回日本推理作家協会賞と第11回本格ミステリ大賞をダブル受賞。15年『さよなら神様』で第15回本格ミステリ大賞を受賞。

「2023年 『化石少女と七つの冒険』 で使われていた紹介文から引用しています。」

麻耶雄嵩の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×