まだ温かい鍋を抱いておやすみ

著者 :
  • 祥伝社
3.65
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本棚登録 : 1999
感想 : 155
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  • Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396635855

感想・レビュー・書評

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  • だれにも嫌われないっていうのは、誰にも選ばれないってことに似てるんですね。

    結婚したら、頭がおかしくなるほどに悲しいときも、家族に気をつかって生きなきゃならないの?

  • 何か人間として欠けていたり、人と違った考え方を持っていたりする主人公が初めてだったから新鮮だった。初めて綾瀬さんの作品を読んだが、マイノリティーな人たちの立場に立って、細かく心情描写できる凄い人だと思った。

    「ひと匙のはばたき」
    周りに馴染めない女の子が、自分の中に鳥を飼うことで周りの考えを理解できるようになる。"この人から鳥を感じる"というのが、実際に身体の中に鳥を飼っているという切り口がファンタジックで予想外だった。

    「かなしい食べ物」
    彼女が枝豆パンを作って欲しい理由。居心地が悪い彼女の実家。それらを知った彼は別れるんじゃないかなと思ってしまった。自分を受け入れ、同じ速度で歩いてくれた人だから自分も同じようにしてあげたい。そんな風に思える心を単純に凄いと思った。

    「ポタージュの海を越えて」
    母親は自分の好物をわかってくれているが、自分は母親の好物は知らない。母親の見方を考えたことがなかった。家族のことを想い、今日もご飯を作る母。もっと母親の好きな「食」を知って食べさせてあげたいと思った。

    「ミックスミックスピザ」
    旦那も子供も好きだけど、ふと思い立って不倫をした女性。ノコノコついてきたのは何故か聞かれた際の「前食べたラブホのミックスピザが美味しかったから」という回答は、センスがあってある意味カッコいい。明暗どちらも含んでいるような終わり方が印象的だった。

  • 人はどうしようもなく醜いなと思う時がある。
    でもそういうところが面白いんだとも思う。
    誰しも他人には見せたくないような
    歪みや凹みがあって、
    傷つきやすくてそのくせ傷つきたがってて、
    彩瀬まるさんのお話を読むと、人のそんな醜いところも嫌いになれないと思えてしまう。
    自分に対する嫌悪感でいっぱいになってる時は読めない作品だなぁとも思うけど好きだなぁ。

  • ・かなしい食べもの
    「「ああ俺のためのものだ。俺を待っていてくれたんだ」というものが立っている。それはほんかもしれないし音楽かもしれない。技術かもしれない。学問かもしれない。メリーゴーランドかもしれない。俺にとっては、人の形をしていた。」
    この文がいいな。必ず人ではなくて、他にもいろいろありうるけれど、
    たまたま俺の場合は人だったというところがとても良い。

    ・ミックスミックスピザ
    弦巻くんは何に執着したんだろうか。

    ・ポタージュスープの海を越えて
    「よく冷えた炭酸が、金色の流星群さながら喉をすべり落ちていく。」
    シュワシュワ感とスッと流れていく様子、キラキラ明るい気持ちを連れてくるような
    飲み物を飲む描写だけの描写で感覚が広がってゆくのすごいな。

    ・大きな鍋の歌
    思ってもフィルターにかけて外に出さないことが
    無神経とか無関心に繋がるの、実際そういう風に考えてフィルタリングしている
    んだけれど、難しいな。
    シチューにかぶを入れたことなんてないけれど、
    鶏肉とかぶを入れたシチューをつくって食べたくなるな。
    いちばん最後がいい匂いで終わるったのがよかった。

  • 良かった。

  • 良い短編集だった。最初の話がちょっと不思議な感じだったが、他はそういうわけてはなかった。かなしい食べ物はほんとにかなしい。

  • 食べ物が出てくる本が好きだ。
    それも、とびきり美味しそうな描写があるもの。
    なるべく手作りのもの。登場人物の思いを語りながら、トントンコトコト調理したり、美味しそうに食べるもの。食べることで、また頑張ろう、気持ちを新たにしよう、と生きる活力や乗り越える力を得る物語。

    はー
    よかった。すごくよかった。
    私の中の「食べ物が出てくる良書ランキング」にランクインした。きっと上位。(前回ランクインは『さんかく』)

    最初の話と、シュークリームタワーで待ち合わせが好き。一緒に鳥がいる。非現実的だけれど、それがまたいいんじゃないですかね。
    シュークリームタワーは、友人が「強くなれるように」と美味しい食べ物をいくつも作ってくれるのがいい。家庭内のルール、既婚者になると変わるもの。あるある。それを「わたしには分からん!」と突っぱねる主人公、多分近くにいたら敬遠するわ笑 でも、物語としてはこんな強い友人、なんて頼もしいのだろう。優しいのだろう。

    そして、『水やりはいつも〜』でも出てきたのだけれど。子どもが産まれて、妻にないがしろにされてる気がする夫、夫はパートナーだけど対等とは思えない妻。はい、ワタクシです。夫、最近病んできたし。(散々遊びに行かせてるのになんでだ)
    物語で読むと、あー大切にしてやらなきゃなー、って思うのにね。翌日には態度いつも通りになるっていうね。すまんね。
    流行りかね、この話系。

  • 収録された短編「シュークリームタワーで待ち合わせ」の主人公が、余りに"アンチ家族"なので、彩瀬さんて独身?と思ったら、結婚されて娘さんも居ました。まあ「ミックスミックスピザ」は(間違いは犯すけど)良い夫婦関係の話ですしね。
    本も収録された短編のタイトルも全て料理絡みですが、料理は脇役で人間関係が主題。世間的とか、しがらみ的とか、忖度を要求するような人間関係を強く否定し、上下関係などを伴わない個と個の人間関係を肯定しています。こんな書き方をすると、なんか堅苦しい様ですが、実際には食べるという事を通して生きる"愛おしさ"が感じられる物語です。
    いつも彩瀬さんを読むたびに「女くさい」(悪い意味では無く「男くさい」の対語ととって下さい)作家さんだと思うのですが、「大きな鍋の歌」は男性の友人関係が主題になっていて珍しい作品でした。

    「ひと匙のはばたき」店の常連の美人さんが身にまとった「世知」を脱ぎ外した時・・・
    「かなしい食べもの」同棲する彼女に作るよう頼まれた「枝豆チーズパン」は家族のしがらみからの逃避の記憶だった
    「ミックスミックスピザ」鬱になった夫と育児。精神的に追い込まれた小百合はふとした事から不倫を犯すが・・。
    「ポタージュスープの海を越えて」子供の栄養とか旦那の好みとか食費ばかり忖度したメニューに疲れ切った主婦二人の逃避旅行
    「シュークリームタワーで待ち合わせ」事故で子供を亡くし、夫からはモラハラを受けた友人を食べ物で救う料理研究家
    「大きな鍋の歌」不治の病に侵された友人の為に差し入れする料理人とその娘。建前と本音の付き合い。

  • 前半3章は感情移入出来ず読み進みしにくかったけど、後半3章は子供が絡む話ともあってスイスイ読めた。
    全体を通して身近な話ではなかったかなと。(そうであってほしくない話を含め)

  • 【読んだ目的・理由】おいしいご飯の描写が読みたくて
    【入手経路】買った
    【詳細評価】☆3.8
    【一番好きな表現】こういうことがあるんだなあ、と思う。ゆっくりと歩いてきた道のかたわらに、「ああ俺のためのものだ。俺を待っていてくれたんだ」というものが立っている。それは本かもしれないし音楽かもしれない。技術かもしれない。学問かもしれない。メリーゴーランドかもしれない。俺にとっては、人の形をしていた。(本文から引用)

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著者プロフィール

1986年千葉県生まれ。2010年「花に眩む」で「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞しデビュー。16年『やがて海へと届く』で野間文芸新人賞候補、17年『くちなし』で直木賞候補、19年『森があふれる』で織田作之助賞候補に。著書に『あのひとは蜘蛛を潰せない』『骨を彩る』『川のほとりで羽化するぼくら』『新しい星』『かんむり』など。

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