- Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480056085
作品紹介・あらすじ
ルサンチマンの泥沼のなかで「神」や「超越的な真理」に逃避するのか、あるいは「永遠回帰」という「聖なる虚言」に賭け、自らの生を大いに肯定するのか?二十世紀思想最大の震源地ニーチェの核心を果敢につかみ、その可能性を来世紀に向けて大胆に提示する、危険なほどに刺激的な入門書。
感想・レビュー・書評
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今までの読書ではないくらい精読をして挑んだ。
ニーチェは聞き覚えのあるキラーワードがたくさんあり、且つその言葉それぞれが力強く既成の概念をぶち壊してくれるような期待感は常々ありました。
徹頭徹尾人間自身の「生」にフルベットしている思想だ、そこには胡散臭いものに一切与しないかっこよさがある。よもすればルサンチマン的境地に陥りやすい世の中だけど、心の片隅にニーチェを潜めながら生きていきたいと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
竹田青嗣 「 ニーチェ 入門 」
ニーチェの思想の特徴〜キリスト教批判、ルサンチマン批判、ニヒリズム、超人、永遠回帰〜を わかりやすく説明した本。
ニーチェ=ナチズム=危険思想という先入観がなくなる。ニーチェ思想を ポストマルクス主義としてアプローチし、権力の解体を思想基盤としている点に、人間的で 現実的な思想性を感じた。
「ツァラトゥストラ」「権力の意志」は読んでみたい
ニーチェ思想=権力の解体
*マルクス主義、キリスト教、ソクラテスを批判〜それらにより 知や認識が絶対化されると 権力を支える道具になる
*ルサンチマン(弱者の心)の批判
*ニヒリズムの克服→ ニヒリズム=神なる超越的根拠の喪失
ニーチェのディオニュソス的人間観
*秩序化、形式化された世界にカオスを賦活
*生の是認=人間は 欲望の本性(生への意志)によって 苦しみを作り出す〜この欲望以外に 人間の生の理由はありえない
*文明は新しい矛盾をもたらしたが、否定すべきでない→人間存在の本質=矛盾を引き受けつつ生きようと欲すること
*悲劇=矛盾に関わらず 人間は生を欲すること
ニーチェの批判対象
*マルクス主義=私的所有と自由市場の廃止→巨大な権力国家を作ってしまった
*ソクラテス=知識と理性により思考→真理に達する→真理こそ ヨーロッパの形而上学を貫く最大の迷妄
歴史の目標を人間以外のものにおくことへの抵抗
*キリスト教=最後の審判、カント=永久平和、プラトン=イデア などが 歴史の目標〜実存しないものを目標とすることに抵抗
*ニーチェの歴史の目標=より高い人間(種)の創出
キリスト教批判
*人間の理想の原型=キリスト教が作った→キリスト教の人間観=ニヒリズム(虚無への意志)
*キリスト教は 自分を思うことは悪。まずは神、次に隣人を思う
*神という超越的理想を向こう側に立て、自分の無価値を確かめる→生を否定する意志こそキリスト教のニヒリズムの本質
「事実なるものはない、ただ解釈だけがある」
*絶対的な見方、完全な観点は存在しない
超人
*キリスト教、哲学の人間のこれまでの理想には ルサンチマンを内包している→生の否定
*神の死=人間的価値の抹消→ニヒリズム
*ニヒリズムを徹底して ニヒリズムを克服するしかない=新しい価値の根拠、新しい価値の目標を打ち立てる
*新しい価値の根拠=力への意志。新しい価値の目標=超人の創出
ルサンチマン批判
*平等主義、平均化思想→他人の幸福を妬む心性→隙さえあれば 自分が上に立ちたい社会→人間の凡庸化
*弱者に必要なのは より高い人間の生き方をモデルとすること
永遠回帰
*永遠回帰の思想=無神論的宗教であり、物理学的形而上学
*世界は同一の状態を永遠に反復している→世界は神によって創造されたとするキリスト教的世界観の否定
*世界は始まりも終わりもなく、目的も意味もない。ただ存在しているだけ→ニヒリズムの徹底により 理想への回帰を封じる -
ニーチェの名前をよく目にするようになったので、少しは知っておいた方がいいかと思い、本の帯にある「最も読まれている入門書です。」という言葉にひかれて買いました。
さて、著者は、恐らく大変分かりやすくニーチェの思想を解説してくださっているのだと思いますが、残念ながら、私にはほとんど理解できませんでした。もちろん、まだ1回読み終わっただけですので、再度、再々度と読み直せば、もう少し私の理解が進むのかも知れません。しかし、予備知識のない身には、理解するには厳しい内容、というのが率直なところです。
そもそも、ニーチェの時代と今の我々とではおかれている環境があまりにも違います。ですから、同じことを考えたとしても、受け止め方に相当違いがあるはずです。p.157に、こんなことが書かれていました。『ところで、現在のわたしたちにとっては、これがなぜそれほど戦慄すべきものであるか受け取りにくい面があるかもしれない。というのは、無宗教が常識になっている社会の現代人なら、誰でもうすうすは、「世界の外側」に「超越的な意味」など何も存在しないし、したがって「死んだらそれきり」であるという感覚をもっているからだ。』これは、「永遠回帰」について説明されている途中に出てくるものですが、キリスト教的な考え方が支配的な当時と、無宗教が常識になっている現代とでは、発想が違って当たり前だと思うのです。ですから、発想のベースが違うので、理解が難しいのです。多分。
とはいえ、道徳に対する考察や、永遠回帰、あるいは美や芸術における「力の意志」という発想は、新しい視点に気付かされた瞬間もありました。これであきらめるのではなく、もう少し探究してみたい気分ではあります。せっかくの10連休ですので、普段は読むことがないであろう本に挑戦できたのは、よい収穫でした。 -
ニーチェさんは、実はちゃんと読んでいないんです。
読んでみようかな、とも思ったんですが、あの手の本は、どうにも訳文が不満なことが多くて、しり込み。
(村上春樹さんあたりがニーチェ翻訳してくれないかなあ…英語ではないから無理だけど)。
と、いう訳で、こういう本をひとつ読んでみようか、と。
読んでみたら、実に面白かったです。ニーチェ、けっこう好きでした。
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●「事実などは存在しない。ただ解釈だけが存在する」
●「真実とは、もっとも強力な解釈のこと」
ニーチェさんはキリスト教が強い時代にあって、まずそれを疑った。
そして、結局、宗教というものを、疑い抜いた。
全ての「誰かが説いた価値」「誰かの語る正義」というのを疑い抜いて、
理性的にニヒリズムに堕ちていく。
ただ、それを、全然否定しない。
ニヒリズムを貫いた向こう側。そこまでいかないと、宗教も、「正義」も、全ては「つらい浮世」「なぜおれは不幸?」「なぜおれはもっと認められない?」「成功しているやつらは狡いんだ」みたいな不平不満感情(ルサンチマン)に溺れてしまう。
キリスト教も「貧しきは善」みたいな救済主張っていうのは、つまりこのルサンチマンにのっとっているだけだ。
まあつまり、ニーチェさんは「だまされるな!」と叫ぶ訳です。
ただ、その先に、どこに向かっていくのか?
この先はもう、ほとんど、芸術というか、詩というか、文学というか。
●私たちの魂がたった一回だけでも、幸福のあまりふるえて響きをたてるなら。このただ一つの幸福があるためには、全永遠が必要だった。そして全永遠は、私たちが「YES」と肯定するこのたった一つの瞬間において、許可され、救済されていたのである。
●人間の苦悩に対して、不満と鬱屈から、「勝ち組は悪い奴だ」とルサンチマンを持つか。それとも、巨大な苦悩にもかかわらず、人生を肯定して、それに「YES」というのか。
というような感じです。
この手のニヒリズムの奥に奥にだけ芽吹けるようなロマンチズム?僕はけっこう好きでした。好みですが。
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そこから先に、更に具体的に「超人」「力への意思」というような謎めいた思想がニーチェに去来します。
ただこれは、本書の著者も書いていますが、解釈がすごくむつかしい。
ぶっちゃけ、分からん(笑)。
ただ、一部に言われるような「ナチスに繋がる選民思想」だったりはしないような気がする、というのが本書の立場。
たしかに、もう正直ぜんぜんわからない何かの「ありよう」に向かって、矛盾を抱えながら、永遠に解けない謎を、果てしなく続く壁を、それと判りながら登り続けるのが人生であって、それにYESと叫ぶのであれば、そういうワカラナイ命題を投げつける理不尽が、ニーチェさん的にはアポロン的限界を破壊するディオニュソス的表現なのかもしれませんね。と、言いながらそれが自分でも分からなくなってきましたが...。
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以下、備忘録みたいに、メモ。
●ニーチェは、キリスト教の自己正当化の中に、後年のナチスやスターリンにつながる危機感を見つけていた。
●ニーチェの思想の柱「ルサンチマン批判」「一切の価値の転倒」「ニヒリズムの克服」。
●「自惚れや傲慢は、ルサンチマンの裏返しである」
●人間は苦悩を「哲学」「芸術」「宗教」でしか慰められない。らしい。
●ニーチェのギリシャ悲劇の研究。
●理性と整理整頓、光明と芸術のアポロン神。一方で酒の神、祝祭の狂騒や陶酔の神である、ディオニュソス。
●火を支配する、人間に火を与えたプロメテウス。
●ニーチェの語る「悲劇」。人間は欲望によって矛盾を生み出してしまう存在だが、その矛盾を引き受けつつなお生きようと欲する。それが「悲劇」。
●恋愛や芸術の体験は、苦しいけれどその苦しさがまた人間の生きる理由になる、ということを確信させる。
●自分が愛されたい、自分を認めて欲しい、という「自我」。これは「他者の承認」によってのみ可能。
●キリスト教のトリックは、「弱者=善」という図式によって、現実人生の不満=ルサンチマンを正当化して、現世がどうにもならないニヒリズムの上に載っている、という。
●「お前が苦しんでいるのはお前のせいだ」という責任のコペルニクス的転化から発生する禁欲主義。
●キリスト教の没落以降の「科学主義」も「真理への意思」を絶対善とする限り、実はキリスト教と変わらない。
●「人類の呪いは、苦悩の無意味ということであって、苦悩そのものではなかった」
●「何であれ一つの意味があるということは、何も意味がないよりはましである」
●「人間は何も欲しないよりは、むしろ虚無を欲する」
●「道徳性とは、個々人における群畜的本能」
●道徳が人間の弱さ、不安、恐怖から出ているのは事実。だがそれは別に道徳を無価値なものにはしない。
●ものごとの「起原」と「本質」はべつのもの。
●ルサンチマン人間=あいつは力がある。したがってあいつは悪い。
●真理は利益で証明される。
●性欲、陶酔、残酷、という三つの要素は、原初の芸術には強く見られる。
●「正義を言い立てる者こそ、最も警戒せよ」 -
ニーチェの思想とは、何かを知るために、この本を読んだか、見事に裏切られた。書いているな内容が理解できない。
キーワードは、ニヒリズム、ルサンチマン、キリスト教批判、永年回帰、、、意味不明。
ニーチェ思想の大きな三つのはしらは、
1、キリスト教および近代哲学の真理と道徳観かんねんへの批判
2、ヨーロッパのニヒリズムについての根本的考察
3、これまでのすべての価値の顛倒と、新しい価値の想像の思想。
これまた、意味不明。
ちなみに、ニヒリズムは人間の理想や価値における神なる超越的根拠の喪失を意味するらしい。-
2011/11/25
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ニーチェは嫌いでした。が、この本を読むと、こういう風に考えることもできるんだなあ、という感じでした。
『ツァラトゥストラかく語りき』などを読むとわかるのですが、ニーチェという人は好感持てねえ・・・というタイプの人です。生理的な好悪を正面に持ち出して人を評価するのはいかがかと思いますが、しかたがありません。
おそらくニーチェが好きでない人の大半は、嫌悪感でニーチェを挫折していると思います。
ニーチェの言葉は難解すぎて、何を言っているのかさっぱりわからないところがあります。この本は、そんなニーチェの思想を削りだしてくれる便利な本です。もちろん、筆者から見たニーチェ像ではあるのですが、ニーチェの原書にひたすら当たり続けるよりも効率はよさそうです。
ルサンチマン、はいわゆる格差社会・現代日本において重要なキーワードであると思います。ルサンチマンの構造がスッパリ書かれている本書は、現代日本においても重要でしょう。 -
理解力が乏しいせいか、複雑でわかりにくい箇所が多かった。とはいえ、入門と題名にあることから、「なるほど、そういうことか」となる部分もあった。
ニーチェの著書はより難解だと思われるので、それと比較すればわかりやすいのかもしれないが、全体的に読みづらさが拭えない。 -
無意味な人生に意味を見出せ。
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ここまで切れ味鋭い問い(ルサンチマン、永劫回帰)を立てた人だとは知らなかった。一方、問いに対する答え(超人思想、力への意志)の質は決して高くないように思う。それでも哲学史上でこれだけの地位を占めているのだから、問いの質というものがいかに大事かを分からせてくれる好例。