- Amazon.co.jp ・本 (404ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488024949
作品紹介・あらすじ
この国は戦争に負けたのだそうだ。占領軍の先発隊がやってきて、町の人間はそわそわ、おどおどしている。はるか昔にも鉄国に負けたらしいけれど、戦争に負けるのがどういうことなのか、町の人間は経験がないからわからない。人間より寿命が短いのだから、猫の僕だって当然わからない──。
これは猫と戦争と、そして何より、世界の理のおはなし。どこか不思議になつかしいような/誰も一度も読んだことのない、破格の小説。ジャンル分け不要不可、渾身の傑作。伊坂幸太郎、10作目の書き下ろし長編
感想・レビュー・書評
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ファンタジー。
ネコもネズミも喋ります。
いろんな事が分からないまま進行して、後半一気に全て回収される感じです。
大きなテーマがあるよーな、ないよーな...
あたしにはあんまり合いませんでした
(。-_-。)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
閉鎖された世界で、間違った情報で操作される怖さ。
今ならネットで色々な情報が手に入るから、誤情報に惑わされない…なんて期待出来ない。どれが正しくて正しくないかなんて本人の判断に任されるし、おかれた状況でその判断も鈍ることもある。
正しい情報を手に入れたとて、戦争中の日本とか、今のロシアのように、自身の考えも口にする事も出来ない。
トップに立つ者でいきなり考えが変わったりもする。そういう意味では日本の政治て長年変わってないなーそれはそれでいいのか??
私は今、間違った情報を信じてはいないだろうか?どうやって確かめたらいいのだろう?
クーパーはいるのか? -
モーツァルトのオペラ作品で言えば『魔笛』、
シェイクスピアで言えば『テンペスト』のような、寓意に満ちた物語。
数ある伊坂さん作品の中でも、
リアルな道具立てで緻密に紡がれるタイプの作品がお好きな方には
「なんじゃこれ???」かもしれませんが、私は好きです。
さりげなく並行して描かれる鉄国と「この国」、猫と鼠との関係に
支配し、支配される社会の縮図やいじめの構図が浮かび上がり、
語り部となる猫トムの視線に、伊坂さんらしい風刺と批判が静かに滲み出て。。。
冒頭で、喋る猫トムが一番に主張するのが
一見吞気で太平楽に見える猫の欠伸が、実は不安や恐怖を感じて
なんとか落ち着こうとしている時であったりするのだ、ということだったり
為政者の首がすげ替えられた途端、あっけなく激変する社会の欺瞞を見抜くのが
たくさんの目が模様として帽子の鍔についている「複眼隊長」だったり
積み重ねられるエピソードの中で
自分の目線や常識に捉われて、何の気なしに下していた判断が
実は如何にあやふやなものであったか気づかされます。
猫らしい気儘さ、クールさを持ちながらも人間のために奔走し
鼠との約束を律儀に守ろうと生唾を飲んで耐えるトムがなんとも愛おしく
複眼隊長の「みんなで帰るか」の台詞は震えるほどかっこよく
帰りたい場所は自分で選択するもの。
そこに向かって一歩踏み出すのもまた自分なのだ、と深く胸に刻む
伊坂さん渾身の「夜の国」の寓話でした。 -
独特なテンポでゆったり語られる寓話的な作品。
何か頭をかき回されて、考えさせられるような内容。
猫の視点での部分が、かわいくて面白い。
悩みを抱えた「私」は、仙台から舟をこいで海に出たが。
気がついたときには蔓でぐるぐる巻きにされ、胸の上には子猫が乗っていた。
トムと名乗る猫に、話しかけられ‥?
猫のトムが住む国では、鉄国との8年にわたる戦争が終わり、鉄国に支配されることになったらしい。
鉄国の兵隊が乗ってきた馬というものも、初めて見る動物だった。
王である冠人(かんと)が心配することはないと広場で皆に話していたのに、鉄国の兵隊は冠人に銃を向ける。
冠人の息子の酸人は、鉄国に取り入ろうとする様子。
外出禁止令が出るが、人々はひそかに頑爺の家に集まり、今後のことを相談する。
猫達も何気なく傍にいて、ずっとそれを聞いていた。
国の外にある杉林の中で、巨大な杉が一本だけ、ある日動き出すという現象が起きるという。
クーパーと呼ばれるその杉を谷底に落とすために選ばれるのが、クーパーの兵士。
それは名誉なことだったが、兵士が故郷に戻ってくることはない。
ただ本当に大変な危機になったとき、クーパーの兵士が町に戻ってくるという言い伝えもあった。
猫にとっては、鼠は、見れば身体に震えがおきて追いかけずにはいられなくなる存在。
ところがトムは鼠に話しかけられ、襲わないように約束してくれと頼まれる。鼠が話せるとは知らなかった猫達。
本能だから、仲間を説得するのも難しいのだが。
クーパーの兵士は本当にいるのか?
鉄国との戦争とは?
鼠と猫の関係は変わるのか?
どっちへ転ぶかわからない前半は、??と思いつつ、ひたすら読み進むしかありませんが~後半の展開はなかなか読ませます。
2012年5月発行。
書き下ろし長編としては10作目だそう。 -
完成まで2年半かかったと言う物語、なかなか含蓄に富んだ様々に連想させてくれる小説ですね♪
なぜだか見知らぬ地に漂着した平凡な役所務めの、妻と上手く行ってない男が、目覚めてみれば猫と会話出来ている!この猫が住む町の在る国がメイン舞台で、平穏だった国に鉄国(敵国 笑)が攻め込んでくる苦境に立たされている。猫の語りと人間の語りでワクワクのストーリーが進んで行きます。一味違った伊坂幸太郎作品だった♪ -
書いた御本人がミステリーやと言うてはるから、これはミステリーなんでしょうが
ミステリーて何やったっけ?
登場人物の名前やら猫のセリフやらにいちいち引っ掛かかって違和感満載、置いてけぼり喰らって寝落ち、を繰り返しました。ラスト間近で色々回収され、ホッとしたわ(頑張った)
それにしても伊坂幸太郎さんの書く「国家・政治家」の「悪」はブレがないわ(笑) -
杉の木がさなぎになって化け物になって、それが谷底に落ちるときに水をとばしてきて、それを浴びた人間は透明になってしまう…次々と不思議な要素が出てきて、置いてけぼりになりそうだったが、必死に追いつこうとした結果、いつの間にか作品の世界に飲み込まれてしまった。「クーパーの兵士は透明となり、この国の人間を助ける。」真実を知ったとき、これまでの世界は反転し、全く異なる姿が見えてくる。そんな仕掛けを象徴する一文だ。本格ミステリー度が高い自信作だとは著者の伊坂さんのコメント。ミステリーってなんだっけ。わからなくなった。
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妻に浮気を打ち明けられ、憔悴する男の前に喋る猫が現れる。猫が語り出す戦争の物語とは…
黒金虫の毒などの策を弄するも鉄国との戦いに敗れ、国王冠人は射殺、その息子酸人は保身のため鉄国の戦士側に媚び…。不安や怒り、恐怖に慄く人々。
唯一の希望は「クーパーの戦士」が透明になって戻ってきた可能性のみ。蛹に変態し、 凶暴化する杉の木クーパーを追い詰め、その体液を浴びると透明になるという言い伝え。
猫と鼠。本能によって狩るものと狩られるもの。強者と弱者。見えていた世界が色を変える瞬間。
新年になり、立て続けにこんな作品を手にしたというのは何らかの示唆なのだろうか。今まで信じてきた価値観、思い込みについて改めて考え直す転機なのかもしれない。 -
これは読むのに時間が掛かった作品。時間が掛かった理由として、まず序盤が難しいんだけど、それ以上に常に深読みしてしまうしんどさがあった。難解な序盤をぐっと堪えて読み続けることが出来たなら、おぼろげにその形が見えてくる作品。
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はじめのうちはだるかった。よくわからん・・・
突然わかった気がした。これは寓話だ。自分の生きる国、日本のことを書いている。鉄国はアメリカ、国民のことを考えている風で実は売国奴である冠人は安倍、どうしようもない息子の酸人は岸田。そしてクーパーは仮想敵国と位置付けられて国民の不安を煽るために利用される中国や北朝鮮。
作者にそんな気があったかどうかは知らないが、うまく付合する。大きなクーパーが日本を正してくれるかどうかはわからないが。