- Amazon.co.jp ・本 (521ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488276058
作品紹介・あらすじ
ホロコーストを生き残り、アメリカ大統領顧問をつとめた著名なユダヤ人が射殺された。凶器は第二次大戦期の拳銃で、現場には「16145」の数字が残されていた。司法解剖の結果、被害者がナチスの武装親衛隊員だったという驚愕の事実が判明する。そして第二、第三の殺人が発生。被害者の過去を探り、犯罪に及んだのは何者なのか。ドイツで累計200万部突破の警察小説シリーズ開幕。
感想・レビュー・書評
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アウシュビッツを生き残り、アメリカで大統領顧問を務めた男が、ドイツで射殺された。
司法解剖により、ユダヤ人のはずが、ナチスの武装親衛隊員だったと判明する。
オリヴァー&ピアシリーズ第3作。
ナチスとユダヤ人の問題がテーマになるあたり、ドイツらしい。
後半、人物関係が複雑になって、やや読むスピードが落ちる。
冒頭の家系図と登場人物一覧を、何度も見返す。
最初から、好感をもてる事件関係者がおらず、読んでいてむかむかする事件だった。
犯行の悪質さ、身勝手さに、ぞっとする。
最後に少しだけ救いがある。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
シリーズ3作目。前の2冊より断然面白かった。
作者の真価がわかるという理由で、日本ではこの本がシリーズ中最初に出版されたというのも納得だ。
殺人事件の被害者はホロコーストを生き延びた大物ユダヤ人で、それがなんとナチスの親衛隊員だったことが判明する。事件の裏に一体何が、と気になるのはもちろん、捜査や会話から少しずつ手掛かりが与えられて、あまり唐突な感じやとっ散らかった感じがしなくて引き込まれた。
タイトル通りの深い疵は、私には想像しきれないほどで、震える。殺人を否定できない気持ちになってしまった。
捜査チームに新しい人も加わったし、いけ好かない同僚の様子も気になるし、次も読みたい。 -
これは良く書けてるなあ。この作者はすごくバランスがいい。話はかつてナチスの親衛隊が個人的な恨みと財産乗っ取りで無実の人達を自分達の利益だけために無差別に殺害し、なに食わぬ顔で60年ばかし生き延びて生きてきた歴史を暴くという、壮大なドラマ。死人が出るが、むしろ昔の事件を暴くためと復讐のための行動に裏付けられたもので、警察側は無駄に撹乱させられる。普通に面白かった。このシリーズ追いかけるぞ。
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ドイツで人気の警察小説の初紹介。
オリヴァーとピアの出てくるシリーズとしては3作目。
評価の高い作品からということのようです。
ホロコーストを生き延び、アメリカで大統領の顧問にまでなった92歳の老人ゴルトベルクが殺された。
司法解剖で実はナチスの親衛隊員だったことがわかる。生き延びるために過去を偽っていたのだ。
警察署長は政治に関わるまいと、オリヴァーに部下を帰すように命令。
(えっそんなことありうるの!?と驚いていると)
何と連邦上層部からも停止命令が来る。
被害者家族は有力なコネがあるらしい。
老人の手帖に名前が残っていたヴェーラ・カルテンゼーは地元の名士で、聞き込みもすぐには出来ない。
ホーフハイム警察の主席警部オリヴァーは、名字をフォン・ボーデンシュタインという貴族。
いつもきちんとした背広とネクタイという格好で、性格も穏やか、仕事を持つ妻との間に3人の子がいて、年の離れた末っ子はまだ赤ちゃん。
妻も貴族で、その関係から上流階級の捜査も進めていくことに。
(ドイツの貴族って?イメージなかったです)
部下の警部ピア・キルヒホフは2年前に離婚、10ヶ月前に今の恋人に出会った。
元夫は気難しい性格で、よく我慢したと今になって思っている。
元夫ヘニングはフランクフルトの監察医で、司法解剖の第一人者、ピアの依頼ですぐに現場に来てくれたのだが。
オリヴァーとピアは二人とも感じはよく、事件関係者の不幸とは好対照な境遇。
ユーモアもあって楽しく読めますが~ある意味、幸せすぎて感情移入しにくいかも?というのが3作目から翻訳したための弱点ってところかな。
捜査本部も設けられないまま、オリヴァーらは困難な捜査を始めます。
老いても一家に君臨する女実業家ヴェーラ。
長男のエラルドは大学の教授で若く見え今も女性に人気があるが、母親とは不仲。
事業を継いでいる次男は、地味だが母親に尽くしている。
娘は議員となっている野心家。
トーマスはヴェーラに長年仕えた秘書だが、放り出されて恨み、一計を案じている。
ヴェーラの旧友や一家の庶子、関係する人たちの間で、連続殺人事件の様相となっていくが‥?!
次々に視点が変わる構成で、ややわざとらしいミスリードも含め、ヒントはちりばめられています。
ドイツ人の名前が覚えにくい点がなければ、重層的な構成はとても面白いんだけど。
ネレという作者名が女性とは気づかず、途中であれっもしかしてと思いました。
訳文はお見事で、登場人物の個性を生き生きととらえています。
後半でわかったことは、あまりにも深い疵だった‥
スリルとずしっと来る読後感も含め、読み応えがある作品でした! -
初ドイツミステリー。
冒頭とラストの50頁は一気に読める面白さ。ただし、全500頁強あるため、途中で読むのを止めてしまうとなかなか次に読むのをためらう類いの内容だった。(重い、暗い、捜査がなかなか進展しない)
そしてこのジャンルのお約束を知らないせいか、はたまた私がアガサ・クリスティーばかりを好んで読んできたからか、思ったほどの大どんでん返し、ではなかった。真犯人はわりとはじめから、あの人ではないかなとあたりがつけられる。
しかし誰も彼もが犯人に見える(読める)中盤から、終盤の一気に事件が転がって帰結する流れは是非とも一気に続けて読んで欲しい。これは秀作。
訳者あとがきにもあるように、本文で投げられた謎が全て解かれて終わり、ではなくいくつか疑問が残った終わりだったので、もう一度読み直して自分なりに考察する楽しみもある。さて、もう一回読み直そう。
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オリヴァー警部は、今回とんだ災難だったな 警部が飲まされた液体エクスタシー(無色透明)が気になる すんごい威力やな 日本で商品化したらバカ売れしそう
ピアのヘニング(元夫)と、クリストフ(現夫)どちらがいいか…?
ピアには、ほっとできて癒してくれるクリストフがいいんだろうな
私はヘニング派ですけどねw
腹黒女ユッタにも最後ギャフンと言わしてほしかった -
一気に読み終えた。面白い!
老いと秘密の物語。過去は常に現在を追いかけ、時に追い抜いてしまう。
あるいは、いい同僚が最高のバディに変わるまでの物語。
ご当地ものミステリというラベルも捨てがたい。訳者のあとがきにも語られているように、それは単なるご当地では済まない。ドイツだから。「歴史」というほどもなく目と鼻の先の過去に、深い傷がある。
偽証、詐称、乗っ取り、裏切り、怨嗟、恐怖、愛憎。
一筋縄ではいかないストーリー。
このミステリでは、誰も幸せにはならない。
追記。
キャラの書き分けがかなりわかりやすいし、警察の人たちで重要な人は繰り返し出てくるので、登場人物一覧を見ながら読み進めれば何の問題もない。
多くて困る!というほど不親切でも、技量がないわけでもない。訳も上々。 -
ホロコーストを生き残ったユダヤ人の老人が射殺される。現場には謎の数字。しかも、老人は元ナチスの親衛隊だった。それは事件の発端に過ぎず、謎が謎を呼ぶ重厚な物語が展開する。
過去の亡霊…殺人鬼…
オリヴァー&ピアシリーズの第一弾。リスベッド・サランデルは登場しないが『ミレニアム』を彷彿させるようなストーリー展開、面白さ。これは次作も期待出来る。
同時期に創元推理文庫から発売されたキャロル・オコンネルの『吊るされた女』より数段面白かった。 -
これもドイツもの。当地では大人気シリーズという警察小説。高齢ユダヤ人の連続殺人事件と思いきやなんとロシアとナチスドイツがからむ積年の報復処刑という深い背景があった。表面的な事実から真相をたどるのはオリヴァーとピアを中心とする刑事グループ。体裁だけを繕う無能上司やら一癖も二癖もある同僚たちなど鉄板の構成。二人の息の合った捜査ぶりもまずまずで警察小説としては及第点。ミステリとしてもあまりにも意外な殺人者の正体と引き裂かれた人間関係の悲痛さ、そして最後の息詰まる対決と見どころ十分で高評価。「ハイニ?」「ここだよ母さん」、結末の悲しいヒューマンドラマには思わず落涙した。