- Amazon.co.jp ・本 (443ページ)
- / ISBN・EAN: 9784620105802
作品紹介・あらすじ
犯罪が犯罪を呼び、増殖し続けるレディ・ジョーカー事件。犯人たちの狂奔と、それを覆い尽くす地下金融の腐臭は、いつ止むのか。そして、合田雄一郎を待つ驚愕の運命とは-高村文学の新たな頂点を記す、壮大な闇の叙事詩、ここに完結。
感想・レビュー・書評
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※途中で犬が登場しますがこの子は無事です。
同じ組織人でも、合田と半田は「警察」に絡め取られて煩悶しているのに対し、城山社長や倉田さんは「大企業」のしがらみはありつつも自分で自分の落とし前をつける権利を持ち、それを行使しました。
加納の検察(またはそれが位置付けられる社会機構)への悲嘆も併せて考えると、組織との折り合いの付け方としてこれは相当にハッピーエンドと言っていいのではないでしょうか。
私はある種の爽やかささえ感じました。
コン・ゲームっぽい始まりのわりに、犯行中の犯人視点が全くなくて珍しいなと思っていたのですが、下巻に入って納得です。
とりたてて描写する必要もないほど、平熱の犯行だったんですね。
半田は例外ですが。
あと終章に関しては、根来さんどころか司祭も薄々感づいてたんだと思いました。 -
名作でふ。
WOWOWドラマも映画も見ました! -
社会や人に巣食う大きな闇。その闇に何度も絡めとられそうになりながらも、ページを捲る手が止まらなかった。ミステリとしても人間の奥深さを描いた作品としても間違いなく第一級。いやもう、ほんっと生きててよかった、この本に出会えてよかった。いろいろな意味で素晴らしい余韻。義兄と雄一郎はイブに幸せになったんだと信じとく。
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読んでも読んでもすかっとせずにどんどんと陰気になっていくストーリー。
ようちゃんだけが救い。ようちゃんとかももとかキャラ作りが素晴らしい。
労働者問題、差別問題、搾取や地下で蠢く巨額の裏金、金融システム、権力と組織と個人。山ほど現実が盛り込まれていながら最後は合田の同性愛に行き着くという・・・。
多分文中にもあったが、人間は感情なのだ。論理で理解するのではなく、感情で理解するのだ。
最後の、結局どこにも抜け出せない人生。これはきた。
終始低調で、劇的な突破口を作らずに終わる本作はこちらが考える部分も大きく、あとからじわじわ来るし、読み直したくなるが、
マークスの山の方が個人的に好きだ。愛と悲しみを感じる。リズムとひかりを感じる。 -
クリスマスイヴが気になってしょうがない。
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この作品の感想は上巻の方で。特に何かが書いてあるわけでもありませんが。
ところで、高村さんの作品って、男同士の熱すぎる情が必ずありますね。
既婚者だろうが工作員だろうがヤクザだろうが女装してようが。
それで作者は女性なのかなと思ったのですが。
(作者には然程興味がないので作者紹介はほぼ読まない。)
この作品もそうだけれど、「李歐」は究極でしょう。あ、「リヴィエラを撃て」とか「黄金を抱いて翔べ」とかも
結構なもんなんですが。社会派な作家なのに、高村薫と聞いて思い浮かぶのはまずそこです。 -
このタイトルがどこからきてるのか。
深すぎて痺れる。 -
ストーリーの緻密さにはやはり舌を巻きます。
ほんとにおもしろい!
こんな骨太の作品は高村薫にしかかけないと思う。 -
「グリコ・森永事件」を題材にした小説と世間一般には
いわれている作品です。
が、何分「グリコ・森永事件」について、当時幼かった
のでそれ自身については考えず、
企業恐喝+警察小説
として読みました。
上巻は企業恐喝を実行する5人の、実行に加わる
動機にいたるまでの心情を、共通の趣味である
競馬の丹念な描写に重ねて描いています。
そして日之出ビール社長誘拐の実行。
誘拐された社長自身の心情、恐喝された
企業の身動きとれない現状等々が加わっていき、
高村作品らしい緻密な描写が恐ろしいほど細かに
かかれていきます。
この事件を単なる現在の事柄への復讐劇に
せず、戦後50年の日本社会の歪みが生んだ
ともいえるものを背景に描いているところが、
高村作品らしいなあと思わされます。
作品は犯人たち、企業、報道、そして警察の
視点から構築されていきます。
高村作品お馴染みの合田警部補が、
代金の受け渡しなく開放された日之出ビール
社長の城山の警護役という名の偵察役に
つき、任務の中で城山と心通わせたり、
警察という仕事に熱意をもてなく脱線していく
様子など、他の作品同様に、決して文体は
軽くなく緻密。でもやはり読み出すと止まらない。
読書に没頭したいときにお薦めの作品です。