夜がどれほど暗くても

著者 :
  • 角川春樹事務所
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本棚登録 : 785
感想 : 101
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758413473

感想・レビュー・書評

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  • 2020.11.21

    加害者家族と被害者家族。
    どちらも辛い立場だけどこういうパターンの作品は珍しい。救いがあるラストで良かった。

    週刊誌の記者として、”追う側”が”追われる”側へと立場が逆転した主人公の煩悶が切ない。

    最後の方でいきなり出てきた、ストーリーにあまり関係ない人物が真犯人かぁ…という展開。暴行してきた中学生の方がまだ面白い犯人だったような。
    ミステリじゃないからなのか、犯人の犯行の動機も背景もサラッとで終わってしまって物足りなかった。
    奥さんにも連絡を取らずに奈々美の保護者的な立場になることを独断で決めてしまうのもどうなのかと少しモヤモヤが残った。

  • 「週刊春潮」の副編集長として活躍していた志賀は、息子が殺人を犯し自殺したため、一気に追う立場から追われる立場になった。加害者家族だけでなく、被害者家族への世間の風当たりの強さに驚く。「良識」「正義」そんな言葉を振りかざし、人は他人に牙をむく。「タレントの不倫をすっぱ抜いたところで、彼女が引退し相手の既婚男性は世間に叩かれ、かといって奥さんの憂さが晴れるわけでもない。記事にする社会的意義は?」と問う若い記者の言葉が正論すぎて印象深い。あり得ないと思える部分もあるが、ラストまで一気に読まされたのは確かだ。

  • 偶然にも息子が死ぬ作品を連続で読んだ。息子の回想シーンでは殆ど同じアプローチだったのが興味深い。もしかしたら、この主人公の心理的な変化は、何か特定の実例に基づいているか、または何かインパクトのある実例に基づいているのかもしれない。
    また、個人的にはICレコーダーの文字起こしにトラウマがあるので、ここの描写は胸に突き刺さった。整文が一番大変で、特に議事録作成をすることを知らずに勝手に発言する人の意図を忖度して纏めるのが大変だった。
    話は逸れたが、殺人の頻度が1回と少なく、最後の殺人未遂までの主人公の心の葛藤が描写の中心というのも新鮮である。殺人の悲惨さよりも絶望感の継続による生殺しの方が心にボディブローの様に効いてくるのも魅力の一つ。各種の社会問題も実名に近い名称を使うことで、作品の背景描写を省略でき冗長な説明文章を読まなくて済む。イメージを正確に捉えるにはある意味効率的なのかもしれない。
    今回の犯人当ては・・・負け。これを当てた人はいるのだろうか。多少の偏見が無いと無理でしょう。今回の後付け説明の中にも社会問題が少々含まれていて考えさせられる。このレベルの後付けが簡単に見通せるようになれば上級読者になれるかな。

  • 被害者と加害者、それぞれの家族の葛藤。
    偽りの正義感を振りかざす者、顔の見えないネットワーク上での誹謗中傷や週刊誌ネタ、個人の憶測が一斉に拡散され、あたかも真実のように触れ回るなどなど、現代社会が抱える問題が山積。
    ストーリー自体はそんなに重くなかった。ラストは少し強引な感じが否めない。

  •  この本も中山さんらしく、現代の問題をテーマにして読者に問いかけているように感じられた。
     読みすすめるのが辛い部分もあり。以前加害者家族が書いた本で壮絶な人生を知り、胸が痛くなったが今回は真犯人がいたので最後は救われた。最後がバタバタとあっけなく真相解明、希望あるラストだから都合が良いといえば良いんだけど、この本で伝えたかった事は弱い立場になった者に対する人々の残酷さ、編集者である主人公が、今までしてきた事と真逆の立場になって気づく、人の冷たさや自分自身のしてきた事、だと思うのでこれはこれで良いのかもしれない。
     

  • WOWOWで放送されるということで購入。

    週刊誌の副編集長の息子がストーカー殺人を犯した上に自殺をしたという。追う側から追われる立場になり、そこから見えてくる苦悩や世間からのバッシング、はたまたメディアとしての在り方が描かれていました。

    ドンデン返しの展開が得意な中山さんですが、今回は事件の解明よりも事件の関係者の心理描写を重点的に置いている印象がありました。
    事件の関係者になって初めて味わう苦悩する姿には同情もしましたが、これを機に改めてほしいという思いもありました。赤の他人が、一つのことをスクープしたために引退や休止に追い込むのは、違和感がありましたし、ちょっと憤りも感じました。もちろん悪いことですが、別の形があったのではと思って仕方がありません。
    何よりも世間が、面白半分に正義を振りかざして、攻撃することも憤りを感じました。顔や名前が明かされていないから何をやっても良いというのはお門違いです。
    その辺の描写が、今とリンクするところがあり、改めて考えなければいけないなと感じさせてくれました。そう思うと、中山さんのメッセージなのでは?とも思いました。

    後半まで、関係者の心理描写を丁寧に描いていますが、事件の真相は?残り少ないけど大丈夫?と段々ヒヤヒヤして読んでいました。
    結果的には残り約70ページぐらいから本格的に事件の解明に奔走しますが、今までのリズムよりも早めのスピードで展開していく印象でした。途中、新たに事件が起きたり、急に犯人の登場だったりと唐突すぎかなと思いました。もちろん犯人は意外でしたが、その余韻を味わうことなく終わったので、無理やり片付けられた感がありました。
    メディアの在り方、我々がどう様々な事件と向き合っていくのか考えさせられた作品でした。

    ちなみに主人公(副編集長)は上川隆也さん、被害者の娘を岡田結実さんが演じるそうです。どう料理されたのか楽しみです。

  • 主人公の行動が納得できない。

    なんとも違和感だらけです。

  •  芸能ゴシップなども扱う『週刊春潮』の副編集長・志賀倫成(しがみちなり)は、校正を終えて夜遅く帰宅した翌朝、突然の警察の訪問に驚く。息子の健輔が、大学の講師をストーカーした挙句にその旦那と共に刺殺、そして自身も自殺したというのだ。これにより志賀の生活は一変する。

     自分が追う側から追われる立場になり、自分の仕事というものがどういうものだったのかを痛感する志賀。今まで叩いていた側だった分、その反動は凄まじい。普通の神経の人なら志賀の妻のようになるのが普通だろう。真犯人が誰か、というのはもちろん大筋でありながら、この作品で描かれているのは健輔が殺した(とされている)男女を父母とする一人娘・奈々美と、加害者遺族である志賀との間のやりとり。興味深くはあるけれど、この女の子が14歳という設定で、1人で暮らして学校に行き続けていたり、志賀たちに噛みついたりと正直あまり現実味がないのがネック。「こんな展開ありえるかなぁ?」というのが終始つきまとい、あまり入り込めなかったのが残念。今回の刑事役は宮藤賢次で、葛城刑事とペアで動いているけど…これ、意外に初めて?

  • 主人公が責められ続ける展開がニガテなので(64とかもそうだけど)、途中までしんどかったけどなんとか完走できた...ドラマ化たのしみ。

  • 2020年11月に上川隆也さん主演でドラマ化される予定の作品。文春砲をモデルにしたと思われる週刊誌の副編集長が、息子がストーカーをして挙句の果てに相手夫妻を殺し、自殺したものと疑われ、自身がマスゴミに追われ、左遷される。正直読んでて現実もそんなんだろうなあと思わせ、胸糞が悪くなる。被害者の残された中学生の娘にも大変なことが起こり、主人公と絡んでいく辺りから面白くなったかな

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著者プロフィール

1961年岐阜県生まれ。『さよならドビュッシー』で第8回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、2010年にデビュー。2011年刊行の『贖罪の奏鳴曲(ルビ:ソナタ)』が各誌紙で話題になる。本作は『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』『追憶の夜想曲(ノクターン)』『恩讐の鎮魂曲(レクイエム)』『悪徳の輪舞曲(ロンド)』から続く「御子柴弁護士」シリーズの第5作目。本シリーズは「悪魔の弁護人・御子柴礼司~贖罪の奏鳴曲~(ソナタ)」としてドラマ化。他著に『銀齢探偵社 静おばあちゃんと要介護探偵2』『能面検事の奮迅』『鑑定人 氏家京太郎』『人面島』『棘の家』『ヒポクラテスの悔恨』『嗤う淑女二人』『作家刑事毒島の嘲笑』『護られなかった者たちへ』など多数ある。


「2023年 『復讐の協奏曲』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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