- Amazon.co.jp ・本 (359ページ)
- / ISBN・EAN: 9784758438452
感想・レビュー・書評
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変わりばえのない毎日で、自分が自分の一部であるような感覚を抱いていた梨花。
自分自身の人生の設計図を立てられず、何も実現もできない。
夫婦の間にある違和感もそのままにして慣れてしまう。
単調な日々の中での、満たされない気持ちや認められたい気持ち。
それらを埋め、万能感を感じられるのが、デパートでの買い物や光太との不倫だったんだろう。
その流れの中で、いとも簡単に、横領を繰り返していくー。
あまりにも簡単だから、身近に感じて、些細なことでもきっかけがあれば、明日は我が身みたいな恐ろしさがあった。
単調な日々を送る中での閉塞感って、私にも身に覚えがある。
だけどそれに甘んじて過ごしてきたのは自分自身。
いいこともわるいことも全て自分でやってきたことであって、簡単にリセットできるものではないんだよね。
梨花に関しても、結局は自分の中の問題で、坦々と鬱々としてた気持ちのやり場が、たまたま光太に向けられただけに感じる。
光太から求めたわけではないけどいつのまにかそれが当たり前になった。
だけどそれは健全な関係ではないのは明白で。(お金で囲うってこういうことかと。囲うって表現が的を射ているよねと感心)
アムステルダムのお土産がマスタードとチーズだったっていう描写がなんともいえない梨花と光太の浅はかさを表してていいね。
さて、表題の「紙の月」、気になって調べてみたら「まやかし」や「紙で作ったものだけど本当に信じればそれが本物になる」という意味があるらしい。
この物語においては後者の意味が強いのかな。
読後感は、うわぁ、なんか…スッキリしない…。です。
私の理解力の問題が大いにあると思う。
映画の方も見てみたい。 -
どこにでも居るような普通の女性が堕ちていく姿をリアルに描いた非常に怖い小説。
二十五歳で結婚し、専業主婦となった梅澤梨花が銀行でパートとして働き始める。真面目な働きぶりが認められ、契約社員になった梨花は顧客の預金を着服し、そこから抜け出せない泥沼にはまっていく…
悪女として描かれる梅澤梨花だが、彼女の知人や友人も一歩間違えば、彼女と同じ悪の道へと堕ちていきそうな危うい状況にあり、それがこの小説のリアルさにつながっているようだ。
そんな儚さと危うさが、『紙の月』というタイトルに象徴されている。 -
■映画→小説の順で読みました。
映画をみたけど、アラフォーが大学生に恋する?過程がどうしても雑すぎて理解できず、原作を読みました。
ストーリーはスリリングで面白く(面白いと言っていいのか分かりませんが)、原作では主人公の梨花視点からだけでなく、梨花に関わったことのある人たち視点の展開があるのが映画とは違い、読みごたえがありました。
ただ、読み終わっても共感できる点はなく、こんなに価値観の違うつまらない夫なら、さっさと離婚した方が勝ちなんじゃないかと思いました。
銀行で働ける能力もあるし、なにが問題だったのだろう?
欠点をあげるとすれば、自分も他人も本当に大事に扱えてないことかな…。お金は生きていくために必要だけど、労働の対価であって何でも使えば幸せになるわけではない。
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共感ポイントがなくて、、、。
人のお金で服や化粧品、エステに当たり前に通い、必要以上の見栄を張って若い男の子と一緒にいる、、、
わからなかった
同じ年齢の私としては現実的に考えられないってことが多すぎて星3にしました
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夫がNHKのドラマで観ておもしろかったと言っていたので、読んでみた。
一気に読めた。 -
周りから見た梨花の印象と、梨花自身の人柄や考え方がピタッとマッチして表現されていてどんどん移入していった。と一緒に胸が苦しく傷むような感覚も強くなった。梨花とはそこまで因果関係が強くない周りの人達と梨花自身の、お金を巡る価値観が形を変えて展開されており、どこに目を当てても既視感を感じた。
人が求めているものはお金で生み出される豊かさでは無い。梨花の夫も、最初は梨花の収入を馬鹿にし見下すことで自分の存在価値を確かめていたが最終的には何のプライドも無いほど梨花をお金として扱ったし、光太の無垢で無邪気ならしさも、ダメにした。対価を得る道理として目に見えて満たされる一瞬は、自慰でしかない。
今あるものを今の自分だと等身大で受け入れ、手にしているもので目の前の人を幸せにする手段や、細やかな幸せの価値を忘れることなく生きたいなあと思う。
面白かったー。映画見よ! -
ー蜃気楼みたいな「ほんとう」の果てに
20代で結婚し、専業主婦となったが子どもには恵まれず夫との間にズレが生じてしまうようになった梅澤梨花。しばらくし、銀行でパート勤めを始めるようになった。成績は好調、お金持ちとの顧客との関係も良好。そんな中、顧客の孫と出会い、今までの自分の生活にはなかった刺激を感じ始めるようになる……。そしてその刺激への欲求は次第に大きくなり、自分の持っているものでは足りなくなっていく。
映画化されたことは知っていて、お金の話ね〜くらいに思っていました(宮沢りえの周りにお金舞ってる広告から予測)。
もうこれは衝撃的です。
だって、「わたしの中にも梨花がいる」ことに気づいてしまうんです、、、。
手にしたものが「ほんもの」になること、言葉にしたことが「ほんとう」になること、それが自分が自分として最も解放される瞬間になり、彼女は満たされていきます。
でも、その「ほんもの」たちは手に入れた瞬間しか効力を発揮しない。
お金って、ただそれを手に入れるためだけのツールですが、魔物だ……そう思いました。
最初に現在の梨花が描かれているので、結末は分かってるのに、どきどきが止まりませんでした。
でもページをめくる手は止まらない……。
角田光代さん、初めて読みましたが、描写に圧倒されました。人間の機微がよく分かる。
かわいい表紙で、この中身。お手上げです。
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梨花は一体、何を手にしたのか、何を手放すことができたのだろうか。
銀行の契約社員であり主婦の、梅澤梨花、41歳が、一億円を横領した。
子供の頃から、ずっと真面目に日々を過ごしてきた。
そんな彼女が、どのようにして、犯罪に手を染めたのか。
それは、誰にでも起こりうる、ほんの些細な出来事だった。
1「人のお金で遊んでるような罪悪感がある。」
近年、専業主婦ではなく、働く女性が増えている理由の一つであると思う。
でも、その考え方は至極真っ当で、扶養してしまう時点で、平等な関係は成り立たない。
2「かつては非日常だったものがすっかり日常になってしまうと、今度はかつて手にしていた日常が非日常に思われる。」
結局、人間の欲望が最大限に満たされる事は無いのだ。
莫大なお金を手にして、自分の欲望のままに行動してみても、まだまだ満たされない。
完全なる自由は、どこにも無いのだと思う。
3「お金というものは涸れることのない湧き水のようなものに思えた。必要な人が必要なだけ汲んでいっていいもの。」
化粧品を買うために一時的にお金を借りた、あの時から、梨花の感覚が狂ってしまった。
梨花には、お客さんを騙してやるという思いもなければ、罪悪感もない。
梨花にあるのは、欲望だけ。
遊びたかったから、遊んだ。それにはお金が必要だった。ただそれだけだった。
どこにでもいる女性が、持っている欲望を全て叶えていってしまう。
これは、善でも悪でもない物語だと思う。
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角田さんの小説は、言いようのないもどかしさを感じさせる作品が多い。
今作も言葉で説明できない不快感や寂しさを感じるシーンが多くて辛かった。
無欲で自分に自信のない梨花が仕事をしていく中で、少しづつ自信を取り戻すまでは良かった。いったいどこで狂ったんだろう…。きっかけはほんの少しのことで、誰にでも堕ちる可能性はあって、それをすごく身近に感じさせる新しいジャンルのホラー作品のように感じた。
私は小さな事で喜べる人生を送りたいT_T