ブックオフと出版業界: ブックオフ・ビジネスの実像

著者 :
  • ぱる出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784893867964

作品紹介・あらすじ

海外出店、他資本との提携、そして9月株式公開。総店舗数は500に。書店、出版社、取次、古書店…苦悶する出版業界を尻目に、ブックオフはなぜ膨張し続けるのか?ブックオフ・ビジネスの実像。

感想・レビュー・書評

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  • ふむ

  • 2000年刊。著者は出版社経営者。

     刊行時から推して、未だ「密林」は射程範囲に上っていない。そういう意味で最新情報とは言い難いが、70年代中期以降、文庫・新書・雑誌を軸とする大量出版・大量販売・大量返品という書籍販売スタイルの生んだ鬼子が、ブックオフを代表とする新古書店業態なのは確か。
     より正確に言うと、かかる大量出版スタイルは薄利多売を前提とし、結果、薄氷を踏むが如き経営を余儀なくされた出版社と書店(特に小規模)の首を絞めてしまった。
     他方、ユーザーも書籍に関して、所蔵よりも、読み切り雑誌の如く捨て去る傾向が顕著になった。この間隙を縫ったのが新古書店とも言えそうだ。
     実際、捨てるよりは売り渡す方がユーザーには+なのは確かだし。

     さて、委託販売制度が果たして是かという点は疑問なしとしないし、そもそも大量返品受けるような出版を何の問題もなく続けていく(需要予測の力が書籍店にも出版社にも育たない)のも疑問ではある。

     正直、中小規模の書籍店の棚はもう見るも無残で、目利きの役割を果たせていない。
     実際、最近、新刊本の購入(ラノベとコミック、ドラマやアニメなど販促媒体の絶賛展開中の小説は別儀)は、①気になる出版社のHPを定期的にチェック。②内容を大型店でザッピング。③よければその場かネットで購入というスタンス。
     (個人的な偏見あるのを前提にするが)ちゃんとした本を一部の棚にでも置いていた本屋がドンドンなくなり、結局は大型・超大型店に足を運ばざるを得なくなっているのだ(ただし極例外的な専門書だけを置く書店は別。例えば、教育書関連の梅田の清風堂書店)。

     一方、大量販売下の小説等は古書店一択(ただしブックオフは殆ど利用しない。実は品揃えが余りに悪いので)。回転が早いにも拘らず、吃驚する程の掘出し物が埋もれている古書店がある(ここには最大の謝辞を)。

     大量返品を生むシステムは、安価な書籍を多数生み、一般に多大なる恩恵を齎したという。しかし、それが余りに行き過ぎるのもどうかと思う。初版部数を少なくし、また新刊点数も絞りつつ、内容を維持向上させる。
     宣伝は一部のチラ見せ(それがいま電子書籍にあるマンガ第1巻だけ無料サービスなのかもしれないが…)では本当に足りないのかな?。

     なお、委託販売システムで高笑いしているのが新古書店業界と本書は規定する。ゆえに、戦後直後に隆盛した「貸本システム」を壊した現代の委託販売システムに対しては、昨今の現状が正に因果応報なのかもしれない。

  • 社会学の論文を書くつもりでこの本を書かれたというだけあって資料を豊富に使用している。ブックオフの暗部が詳しく書かれている。

  • 08/08

  • 6/26:終盤はブックオフに対する恨み節&反論に終始していて気持ちよいものではないが、ブックオフをパラサイトビジネスと見れるようになった。ふむ、確かに。ブックオフ、CCCが既存のビジネスをぶち壊すのだ。それがビジネスだけではなく、本、音楽といった想像をも破壊しかねないのがそこはなくとなく恐ろしい。この本に書かれていることが本当なら、坂本孝とはタイミングよくのった上昇気流を、あたかも予言していて必然だったと言っているように思える。孫さんとかとは根本的に違うのだろう。
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    6/5:2000年発刊みたいだけど、そら恐ろしい。出版業界、書店業界の死を思わせる。書かれてあった「読書層が喪失し、消費者層に代わった」というところが自分にも心当たりがあり、非常に心苦しい。しかし、ブックオフとは時代が産んだ構造なんだな。大量消費の時代が産んでしまったのだ。

  • 2009/07 図書館で借りる

  •  読んだ本は2008年5月発売の全く同じ署名/著者の本。但し出版は論創社。つまり同じ本が違う出版社から再発行されている。 そんな事は表書きのどこを見てもわからない。この本で謳っている「Bookoffは読者を欺いている」をまずは自ら行っていて、構文の稚拙さと合わせてたいへん説得力に欠ける。 腹が立つから出版業界の問題点用語の解説だけ書いておこう。 「再販制度」 正しくは「再販売価格維持制度」というらしい。要は定価での販売を義務付けること。でも言葉どおりに読むと二回目に売っても同じ値段で売っていいですよ、に見える。やはりよく分からん。 「委託販売制度」 以下はNETで調べた結果のC&Pです。 一定の期間を定めて書店に委託して、その期間内に売れたものの代金を受取り、売れ残ったものは返品してもらう販売システムのこと。トーハンや日販に代表される「取次」は出版社から委託扱いで仕入れ、書店に委託扱いで販売する形式となる。書店は、買切りと異なりリスクが小さく多種類の銘柄書籍を販売することができる。 個人的にはブクオフは嫌いではないです。読みたい本が安く手に入ることのどこが悪いか!!!

  • 分類=出版業界(古本)。00年6月。ブックオフ等の新古書店現象の功罪を検証。

  • ブックオフの話。一番大事なとこは、大躍進の理由は「超好条件(に見える)フランチャイズ展開システム」にあった、ってとこかな?面白かったけど、僕が本の世界が好きだからなだけのような気もする。あんまり関係ないけど、こないだ近くのブックオフで、綿矢りさ『インストール』(ハードカバー)を450円?だかで売っていて、綿矢の『インストール』だけでなく町田康や玄有宗久から黒井千次や河野多恵子など、いろんな人たちの作品の入った文芸アンソロジー『文学〈2002〉』(講談社)を100円で売っていた(汚くないのに)。本を消費財だと思うのはあっちの勝手といえばそうだし、それに乗る消費者がいるんだから仕方ないんだけど、なんか不愉快だよな。だって、アイスクリーム800円、チョコレートパフェ200円っていうメニューを見たら、単純に滑稽って感じじゃなくない?とりあえず、平積みの『インストール』の上に『文学〈2002〉』を置いてきたけど、そんなんじゃ俺の気はおさまらないけどね。今の話に興味持った人はついでにこれも読んでおくれ、という感じの感想にしときます。

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著者プロフィール

1951 年、静岡県生まれ。早稲田大学卒業。出版業に携わる。著書に『新版図書館逍遥』(論創社)、『書店の近代』(平凡社)、『〈郊外〉の誕生と死』、『郊外の果てへの旅/混住社会論』、『出版社と書店はいかにして消えていくか』などの出版状況論三部作、インタビュー集「出版人に聞く」シリーズ、『出版状況クロニクル』Ⅰ~Ⅵ、『古本探究』Ⅰ~Ⅲ、『古雑誌探究』、『近代出版史探索』Ⅰ〜Ⅶ、『新版 図書館逍遥』『私たちが図書館について知っている二、三の事柄』(中村文孝と共著)(いずれも論創社)。訳書『エマ・ゴールドマン自伝』(ぱる出版)、エミール・ゾラ「ルーゴン=マッカール叢書」シリーズ(論創社)などがある。『古本屋散策』(論創社)で第29 回Bunkamura ドゥマゴ文学賞受賞。ブログ【出版・読書メモランダム】https://odamitsuo.hatenablog.com/ に「出版状況クロニクル」を連載中。

「2024年 『出版状況クロニクルⅦ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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