- Amazon.co.jp ・本 (168ページ)
- / ISBN・EAN: 9784904292914
作品紹介・あらすじ
師弟のようなクラスメートのような3人の創作とお話の本。
国民的詩人と新鋭歌人の詩と短歌による「連詩」と「感想戦」を収録。読み合いと読み違い、感情と技術、笑いとスリルが交わります。
【連詩とは】
詩人同士が、詩を順々に読みあいひとつの作品を合作する創作の形式です。今回は、詩人と歌人が紡ぐ、詩と短歌による「連詩」。歌人側は2人が交代しながら受け、具体的には、次の順で行いました。
岡野大嗣(歌人)→谷川俊太郎(詩人)→木下龍也(歌人)→谷川俊太郎 →岡野大嗣 →谷川俊太郎 →木下龍也 →谷川俊太郎 →岡野大嗣……と、これを36番目までつづけ、ひとつの連詩としての作品をつくります。
感想・レビュー・書評
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本書は、短歌と詩を交互に詠み交わす「連詩」と、「感想戦」を共に収録することで、谷川俊太郎さん、岡野大嗣さん、木下龍也さん、それぞれに趣の異なる言葉を味わいながらも、短歌や詩について、より親しみやすさや深さ、楽しさも得ることが出来る、そんな一粒で三度美味しい作品となっております。
そして、これは挙げたいと思ったのが、本書の懇切丁寧な構成であり、まずは、連詩や短歌、詩って何なの? といった、初心者向けの基本的な説明が分かりやすい上、これを谷川さんや木下さんに直接お尋ねして、その言葉を掲載している点に、確かな説得力があり、特に谷川さんの『詩について』の一文には、それを読むだけで、この人にとって、詩とはただ仕事だとか好きだとかいう以前に、自分自身と深く密着した生き方そのものなんだなと感じられた、真摯な姿勢が浮かび上がるようであった。
更に、その後の三人のプロフィールと、これまでに発表した作品の中から掲載された、いくつかの詩や歌を知ることで、ほんの少しでも、それぞれの作品に見え隠れした空気感に潜む、その人ならではの感情の機微に触れられたような安堵感に、この先の連詩も読んでみようかなと、これまで連詩未体験の私には、より間口を広げてくれた効果があるように思われたのが嬉しい。
その安堵感として、いくつか挙げると、谷川さんの詩「芝生」から感じられた、人間として生まれてきたことの喜びや、岡野さんの歌だと、
『そうだとは知らずに乗った地下鉄が外へ出てゆく瞬間がすき』
の、残念感やちょっとした苛立ちを、たちまち覆してしまうような様に、人間のしなやかさを感じられて、木下さんの歌だと、
『詩集から顔を上げれば息継ぎのようにぼくらの生活がある』
の、どちらかというと、人生の大部分である日常の方に、何か逼迫したものがあるのかなといった悲しい心境ではあるものの、だからこそ共感してしまう、夢中にさせるものの存在感の際立つ様が印象に残る。
そして、その次に、掲載された連詩には、誰が詠んだかのみが掲載されており、ここでは一種の詩集や歌集を見ているような感覚で、多少分からない点があっても、自分なりにこんな心境なのかなとか、それぞれに思いを馳せられる点に、小説とはまた異なる楽しさがあるが、時折、詠まれたご本人は、どのような考えや思いで作ったのかといった、解説のようなものがあればいいのになと思うことがあったのも、正直な気持ちとして、これまで持ち続けていたので、その後に掲載された「感想戦」には、また嬉しいものがあった。
「感想戦」とは、まさしく、その創作過程に於ける秘話をご本人から直接伺える上に、三人が一堂に会して、それぞれの感じたことや意見などを交換し合うといった、和気あいあいな楽しさの中にも、それぞれのプロ意識たる真剣さが印象深く、特に、今回の連詩では、三日以上開けないルールがあることから、前の人から渡された作品に対して、自分だったらどう返すかといった点に、それぞれの拘りをじっくりと披露したいけれども時間が無いといった、時間制限があるからこそ生まれてきた、奇跡的な作品も見受けられたようで、そこに面白さがあった。
そして何よりも、改めて感嘆したのが、当たり前なのかもしれないが、プロの方々は、一つの作品を詠むのに、これだけ丁寧に思いを巡らせて、一語一語組み立てているんだなということを実感したことで、それは連詩の始まりである、岡野さんの歌からして、既に凄いものがあった。
『ベランダに見える範囲の春になら心をゆるしても大丈夫』
この歌には、春にしておけば四季でスタートにもなるし、「自分の家の中」という空間から広がるかなといった、連詩全体の流れを考えた細やかさと、『「は」んいの「は」る』と、やわらかく心を許すみたいなことをイメージして音を緩めていた、という技術的なものが見事に合わさった言葉に、私が感想戦なしで、この歌だけ読んでいたら、こういった解釈は浮かばなかっただろうなという、岡野さんの歌に滲ませた、そんな思いの一つ一つを知ることが出来た嬉しさには、これまでの歌集では感じられなかった、一種独特な感動を私にもたらしてくれた。
岡野さんの歌だと、他にも
『分離帯に桜がずっと生えていて前をゆく白バイが事故った』
の、上の句で現在、下の句で過去進行形になるという対比には、「前をゆく白」と「バイが事故った」と『句またがり』することにより、「白」だけが際立って過去のシーンを振り返っているときの見方に近付くんじゃないかといった時間を体感させる凄さに加えて、谷川さんの仰っていた、普通「生えていて」って言わない点にあった、『ちょっと引っかかるところがあるのっていい』という、不穏な感じも滲ませた複雑なものを一つの歌の中に納めている点には、短歌の奥深さを垣間見るようであった。
そして、連詩のタイトルにもなった岡野さんの歌、
『四季が死期にきこえて音が昔にみえて今日は誰にも愛されたかった』
に見られた完璧さに驚き、感想戦でも書かれていたが、聞こえるものと見えるものとを続けざまに書いたことにより、一瞬、混乱した頭が立ち所に冴えわたる感覚というか、聞こえるのも見えるのも漢字で書き分けることで、両方の意味合いを理解出来た、そんな言葉の素晴らしさは、岡野さんの言葉、『誰も口にしたことのないような言い回しを見つけたい』という思いからも感じられた、普通ならば、『誰にも愛されなかった』となるところを、「な」を「た」に変える、たったそれだけで、絶望的な悲しみを希望の叫びへと変換させた、そこに私は、歌人の魂の叫びのようなものを感じられたことにより、そこにしかない叫びに寄り添いたくなると共に、私も励まされて大きな勇気をいただく、そんな短歌ならではの心の交流みたいなものが、私は好きだ。
それから、連詩ならではの楽しさとして、前の歌や詩との直接的過ぎない繋がりを継承していくことがあり、それはまるで、何も無かった真っ白な世界に少しずつ色や形を付け加えていって、様々な拡がりを見せてゆく楽しさだと感じ、それは、谷川さんが突如付け加えた、人の苗字もそうであり、この連詩の特徴をひとつ出したいという思いから生まれた、それは、まさに勝手に一人歩きし出したような、連詩全体の流れに於いても独特な存在感を放っていた様に、人の名前という言葉の力を感じ、それって、ただ言葉で書かれただけなのに、とても活き活きとしていて記憶に留めたくなるのには、おそらく人間自体の多様で複雑な生き様を、読む人それぞれに、思い描くことが出来るからこそなんだろうなと、思わせるものがあった。
また、谷川さんの詩で印象的だったのは、自由詩って、本当に自由で良いんだなということであり、しかも、そこには深みや、あれこれと考えさせられた面白さもあるのが、また感慨深く、たとえば、
『僕らはこれまでもう何千回も出たり入ったりしているけれど
ドアという奴は開けるときよりも閉めるときの方が品がいい』
には、感想戦でも書かれていた、短歌でいうところの『ただごと歌』の難しさのような、『みんながやり過ごす日常の中に詩が潜んでいる』という、まさにそれだなと感じ、確かに想像してみると、自動ドアにしても、開くときはバアーッと勢い良く、閉まるときはスゥーッと控え目なといった、本来ならば同じスピードなのかもしれないが、これって、何だか人間の行動心理にも擬えられそうで面白い。
そして、もう一つ印象的な谷川さんの詩が、
『砂漠のど真ん中にあまりにも真っ直ぐな道が開通した
計画では都市の背骨にあたる道だと言うことだが
始点も終点も既に砂に埋もれている(らしい)』
で、これは、谷川さんの実体験に基づいたものでありながら、その壮大さに思わず想像力が逞しくなってしまう上に、岡野さんが言っていたような、上記のドアの開け閉めの話を思い出したり、SF的なロマンを感じさせる点には、詩の世界にも様々な入り口があるんだなということを実感させてくれた。
それから、木下さんの歌については、歌人紹介の歌でも感じられた、普段あまり意識していないものへの敬意というか、そうした感受性の豊かな方なんだなといった印象が、そのまま反映されたように思われて、それは、
『かなしみのフルコースです前菜はへその緒からのはるかな自由』
でも見られた、自由という言葉から連想させる喜びというよりは、まさに悲しみの始まりだと感じ、母の元から切り離されて、どこにいくのだろうといった心の旅への不安感に、思わずメインディッシュやデザートは何だろう? と想像してしまうような、人生とは何かを考えさせられながら、大事にしまっておいてはいるものの、普段あまり思い出すことのない、『へその緒』の持つ意味合いを、思わぬ形で痛感させてくれた。
また、木下さんの場合、その前の谷川さんのパスの凄まじさもあって、どう繋ぐかといった苦しみもありながら生み出した歌も印象的で、たとえば、前の谷川さんの詩の中の「河童」から連想した、
『とろとろと睡魔にいたぶられているきみにとどめを刺す鳥の歌』
の、「いたぶられている」や「とどめを刺す」等、不穏な言葉もありながら、その裏に確かに見えるのは、木下さんの「きみ」を思う優しさであり、こうした表現には、それをより際立たせるような効果もありそうに思われたのが、印象的だった。
他にも、谷川さんの、大盤振る舞いのサービス精神が意識下で繋がっていたことや、『「メッセージはありません」というのが詩の理想』、『詩は、もうちょっと色っぽいもんだと思ってる』、岡野さん、木下さんの『僕らの短歌って匿名性が強いと思う』といった、詩や短歌そのものの懐の深さにも触れられたことが、これからの作品を読むにあたっての一つの指針とさせられた上に、内容自体も、単純に楽しめるものから深く考えさせられるものまで、多種多様なものが揃った素晴らしさに、初めて読んだ連詩が本書で良かったと素直に思えたし、それは感想戦があるからこそ感じられた、人を知ることの素晴らしさでもあるのだと、改めて感じ入った。
そして更に、本書の素晴らしさは、その後の歌人お二人のエッセイにもあり、そこには、歌の内容からは思いも寄らないであろう、お二人の飾り気のない素顔が窺えたことで、歌人になりたいけれど自信がないという方への、大きなエールになること間違いないと思わせるような、共感出来る様々な葛藤があった上での今があることと、お二人も最初から歌を上手く作れた訳では無かった事実とが重なり合っていた。
木下さんの、『谷川俊太郎に認めてもらいたい』22歳の夏。唯一褒められたのは作文で、小さい頃から物書きになろうと思っていたが、宿題以外で何も書いたことがなかったのは、最初の一行で自分の才能のなさに気付くのが怖かったからだろう、と、自身の率直な思いを述べてくれている。
また、岡野さんの十代の頃の、『書いている瞬間は「自分は特別だ」という気になれてしまうのに、一夜明けて読み返せば自分の平凡を突き付けられる』ことから、『詩に対してアレルギーを持つようになった』こと。それでも「あいうえお」は絵本で覚え、そのバーニンガムやレオニの「やく」のひとの言葉が音楽のようだったと回想する、彼にとって、谷川俊太郎は、「たにかわしゅんたろう」であったことに、何故か泣きそうになる。こんな幼少の頃から、谷川俊太郎には唯一無二の存在感があったことと、改めて実感させてくれた詩と絵本との繋がりは、私の好きな世界同士が、同じ地平で繋がっていることでもあったのだから。
そして、最後の谷川さんのあとがきに感じられた、『コトバ』に対する確かな信頼感には、年齢差など全く関係ない、誰もが表現することの出来るものでありながら、決して干渉される謂われのない、自由な世界であることを教えてくれた、その素晴らしさは、何者にも縛られることがないからこそ知ることの出来る、たとえ目には見えなくとも、世界中に彷徨い続ける、言葉に出来ないものたちの思いや叫びを、そっと掬い出してくれる、詩や短歌の素晴らしさに繋がっているのであろうと思われた。
以上、こんなに長くなるとは思わず、ここまで読んで下さった皆さん、ありがとうございます。
それでいて、大変恐縮なのですが、今回も性懲りも無く、私の作った歌を最後に失礼させていただきます。
『こすずめが一点集中せかせかと見上げし先にサッカー教室』
(実家の近くの図書館の隣に小学校があるのですが、そこの校庭で土日行われている、賑やかなサッカー教室を遠くに眺めながら、その端っこで(でも、私の座っていたベンチからはとても近い)、健気に餌をついばんでいた、一羽の雀を見た時の気持ちです) -
とても楽しい企画本。
世界的詩人の谷川俊太郎さんと、人気新鋭歌人のお二方、岡野大嗣さん、木下龍也さんの異種格闘連詩。
連詩とは、読んで字の如く、詩をふたり以上で次々繋げていくこと。連想ゲームの詩バージョンみたいなものかな、と、私は理解した。
岡野→谷川→木下→谷川……と繋げていく。
ベランダに見える範囲の春になら心をゆるしても大丈夫 岡野大嗣
から始まる、三人でしか作り上げられなかった世界に魅了されました。
その後は三人プラス担当さんで、自分の詩や短歌が作られたときの背景や、互いの作品に関する感想を語り合う“感想戦”
“戦”という漢字がつくけれど、めっちゃ楽しそう。若いおふたりは谷川さんに対する深いリスペクトを感じ、谷川さんの茶目っ気と気遣いが緊張感をフッと緩ませてくれる。
ラストのそれぞれのあとがきも“作品”で、谷川さんに至ってはこの方、口から詩が生まれて来たんじゃなくて、詩から谷川さんが生まれて来たんじゃないか、と思えるほど(←上手いこといったつもり)
岡野さんと木下さん、エッセイ出されてないのかな。
長い文章も素敵なので何か面白い企画のエッセイ、待ってます。
意外だったのは、作品と作者は別に考えてほしい、と、おっしゃられていたこと。短歌はフィクションも多いということ。歌人って、なんて恋愛体験豊富なんだろうと思っていた。
最後に一首。←短歌っぽいものができたので嬉しい。
「好きとしか 書けず指先 さまよって 。に想いを 込めてみるのだ」5552
ブクログに感想を書くときのノンフィクションです…。
「好き」以外の言葉を使って文章を書きたいのに、「好き」以外言葉が出てこなくて、仕方なく「。」に想いを込めることで何とか気分を落ち着かせる様子を現しています。
好き。な一冊となりました。-
111108さん、こんにちは
この本、とても楽しかったです。
感想戦がとりわけ面白かったです。詩人や歌人の創作の裏話は新鮮でした。
...111108さん、こんにちは
この本、とても楽しかったです。
感想戦がとりわけ面白かったです。詩人や歌人の創作の裏話は新鮮でした。
短歌に反応していただき、ありがとうございます♪
そうですねー。恋愛の歌にもよめますね!
一生懸命、文面を考えながらも、「好き」しか思い浮かばない主人公の姿が想像できます。
私のブクログの感想は作品へのラブレターみたいなものなのかもしれませんね。
2022/05/25 -
5552さんお返事ありがとうございます!
〈作品へのラブレター〉これからも楽しく読ませていただきます(^-^)5552さんお返事ありがとうございます!
〈作品へのラブレター〉これからも楽しく読ませていただきます(^-^)2022/05/25 -
111108さん
私も、111108さんのレビュー楽しみにしています!
コメントありがとうございました!
111108さん
私も、111108さんのレビュー楽しみにしています!
コメントありがとうございました!
2022/05/25
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もらった本。短歌のアンソロジーで見かけ気になっていた歌人岡野大嗣さんと木下龍也さんが谷川俊太郎さんとともに連詩を作る。感想戦でのやり取りが面白い。連詩も、今回載ってて改めて読んだ谷川さんの代表作も言葉の力を生々しく感じた。
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たださんの本棚から図書館予約
「連詩」「感想戦」
へー、楽しい企画だなあ
詩や短歌にうとい私ですが
構成がうまくてすっと引き込まれました
言葉に深く鋭く迫っている人ってすごいなあと
改めて思いました
見過ごしている風景や感覚を、こうして文字にされるんですね
フォロワーさんに中にも短歌をたしなむ方がおられますよね
感性を研ぐためにはいいなあ
いちばん好きなのは、やはりタイトルになった短歌
〈 四季が死期にきこえて音が昔にみえて今日は誰にも愛されたかった 〉
≪ 詩の花は 時間のそばに ひらかれる ≫
谷川俊太郎-
はまだかよこさん、こんばんは。
あれだけの長いレビューを気にかけて下さり、ありがとうございます(*'▽'*)
私も決して詩や短歌に詳しい...はまだかよこさん、こんばんは。
あれだけの長いレビューを気にかけて下さり、ありがとうございます(*'▽'*)
私も決して詩や短歌に詳しいわけではないので、「感想戦」を読んでは、「なるほど!」と、その解釈を知ることによって、三人が順番に詠む面白さや、彼らによって少しずつ創られていく、世界の魅力も、より高まっていくのだなと感じることが出来ました。
それから、詩人や歌人の凄さについて、私も同感で、こんな景色もあるのだなと気付かせてくれたことに、とても共感出来るからこそ、詩集や歌集を読みたくなるのだと思いますし、そんな素晴らしいものを見せてくれることには、改めて言葉の持つ、途轍もない凄さを実感いたしました。
タイトルの歌、私も好きですよ!
一文字違いの言葉や、視覚と聴覚がごっちゃになる不思議な感覚がありながら、歌全体としての意味合いはとても哀愁的で、心に染み入るものがありました。2024/03/04 -
たださんへ
いつもきちんと読んだ本に向き合っておられる姿勢に拍手です
上っ面だけの私はかなりハズカシイ(/ω\)
この本は」「わおー、...たださんへ
いつもきちんと読んだ本に向き合っておられる姿勢に拍手です
上っ面だけの私はかなりハズカシイ(/ω\)
この本は」「わおー、すごいなあ」
とため息つきつつ読み終わりました
面白くもないエッセイもどきを書いておりますが
もっと言葉を大切に見つめなくてはなどど反省しきりです
それと たださんのラストの短歌
とってもすてき!視野がふわっと広がって……拍手です
コメントありがとうございました2024/03/05
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詩人谷川俊太郎さんの詩→歌人岡野大嗣さんの短歌→谷川俊太郎さんの詩→歌人木下達也さんの短歌 これを9回繰り返した、詩と短歌の「連詩」が収録されています。
これらを解説した「感想戦」もあるので、詩や短歌が何を意図しているのかがわからなくても「そういうことだったんだ」とわかるようになっています。表紙がさりげなくワイキキになっているのに気づいて、あ、あの詩だな、と笑えます。
本の題名「今日は誰にも愛されたかった」って、めちゃくちゃ違和感があります。
これは谷川さんの詩を受けて岡野さんが作った短歌
四季が死期にきこえて音が昔にみえて今日はだれにも愛されたかった
からきています。
谷川さんの詩があって、それを受けて近すぎない言葉で作られた短歌はわかりにくいように思えるけれど、解説を読んだらストンと落ちてめちゃくちゃいいいなぁ、と思えるから不思議。前の詩や短歌の繋がりが、想像の世界を広げてくれます。
図書館で目について何も考えずに借りた本。詩や短歌が少しわかるようになった気がします。 -
【目次】
はじめに 詩とは? 短歌とは? 連詩とは?
紹介 詩人と歌人とそれぞれの詩と短歌
連詩 今日は誰にも愛されたかった
感想戦
エッセイ 木下龍也「ひとりだと選んでしまう暗い道」
エッセイ 岡野大嗣「ここがどこかになる時間」
あとがき 谷川俊太郎「コトバについて」
感想戦があると、それぞれの意図がわかって面白い。読み違いがさらなる広がりをよぶところもあったりして、読み手次第の自由さが怖くも面白い。
詠まれていない部分の物語にも想像が膨らむ。 -
詩や短歌、書いている人がどういう意図で書いているのかや、他の人の作品をどう解釈しているのか、それらを才能あふれる3人が赤裸々に談義していて、とても面白かった。
谷川さんは超越しすぎてるけど、岡野さんの木下さんは世代が近いから読みやすかったかなぁ。谷川さんとは親子もしくはそれ以上に世代が違うのに、やりあっていて、このふたりすごいなぁ。
好きな作品がいくつかあったけど、またいつか読み返したらまた違うのが好きになるのかな、もっと理解できるかな、違うものが見えてくるのかなと思った。
また何年後化に読み直してみたい。 -
「短歌ください」投稿欄によく名前を見る木下龍也さん、いつもいい詩だ…と思っていたらツイッターで見かけて、なんとプロになっていた。すげ〜。
谷川俊太郎さんはもう詩の巨人だけど、お二人ともしっかりついて行っていて、才気は世代を超えるな…。
冒頭から奥付まで、言葉を大事している方の作った本という風格があり頼もしかった。
世の中にはこんなに大事にしたいことを大事にできるんだな。 -
絵画にしろ音楽にしろ、作品がどんな意図や思い、狙いがあって作られたか、作り手から聞ける機会はなかなかない。そんな貴重な体験をこの本は叶えてくれた。どこを読んでも濃密で、たまにしか食べられない上質なコース料理みたいな本だった。
感想戦を読んでいて、私たち読者は作品に対して普段深読みしすぎていたのかもしれないなとか、誰もが知る巨匠でも迷ったり悩んだりすることがあるんだなと気付かされた。素敵な作品を生み出す三人の人間らしい部分に思わずほっこりした。 -
宝物みたいな本だ 期待を上回ってきた
コメントありがとうございます(^^)
そうですね。
大分、久しぶりで、前に書いたの何のレビューだったかなと、も...
コメントありがとうございます(^^)
そうですね。
大分、久しぶりで、前に書いたの何のレビューだったかなと、もう思い出せませんが(笑)、喜んで下さり、私も書いて良かったなと思いましたし、爽やかで気持ちのいい歌と感じて下さったことには、書いた本人がびっくりしております(^^;)
私としては、活気に満ちたサッカー教室の大勢の子どもたちと、一羽の雀の孤独感との対比を、どう表現したらいいものかと思っていたので、5552さんが感じられたようなものも、この歌にはあるのだなといった気持ちになれたのが、とても新鮮に思われて嬉しかったです。
ありがとうございます(*'▽'*)
確かにタイトルの良さは、私も感じまして、最初に表紙を見たときは、ちょっとした言葉遊びくらいにしか思わなかったのですが、歌と感想戦を読むことでその意味するところの深さを実感出来て、改めて、歌人の方にしか見ることの出来ない世界ってあるのだなと思いました。
私の場合、投稿数が多かったというのもあるとは思うのですが、5552さんからそのように言われると、ブクログを続けていて良かったなと感じましたし、とても嬉しいです。
ありがとうございます!!
レビューを拝読してこの作品を手に取りました。
詩集や歌集は作品だけだと自分勝手な鑑賞になってしまうので、本...
レビューを拝読してこの作品を手に取りました。
詩集や歌集は作品だけだと自分勝手な鑑賞になってしまうので、本書の感想戦のようなものはありがたいです。
自分では見つけられなかった本だと思うので、レビューに感謝しています。
ありがとうございました。
私のレビューをきっかけに読んで下さり、ありがとうございます!
私の場合、自分なりの解釈で楽しむのも...
私のレビューをきっかけに読んで下さり、ありがとうございます!
私の場合、自分なりの解釈で楽しむのも好きなのですが、時折、高尚すぎて全く理解出来ない歌に出会った時、どういった思いで詠んだのか気になるものがありまして(特に好きな歌人は)、本書のような感想戦は、それに加えて技術的なことも知ることで、より詩や短歌を好きになることが出来て、ありがたいです。