- Amazon.co.jp ・本 (150ページ)
- / ISBN・EAN: 9784939029141
感想・レビュー・書評
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あらすじを読んで非常に興味を持った。なんといっても、登場人物が帽子ときゅうりと数字の2!ホテルカクタスという名の3階建ての古いアパート。その3階の一角に帽子、2階の一角にきゅうり、1階の一角に数字の2が住んでいる。
何と表現したら良いか…とにかく、それぞれがとてもそれぞれらしい。帽子は帽子らしく、きゅうりはきゅうりらしく、数字の2は数字の2らしいのだ。三人(?)は一緒に飲んだり、競馬に行ったり、旅したり。その時の行動も本当にそれぞれらしい。私は数字の2に共感。割りきれない事は好きじゃない。
江國さん、よく帽子ときゅうりと数字の2にしたな!と感動するくらいキャラがピッタリで、人間の話じゃないのに共感できてしまう不思議さ。本の半分を占めている挿し絵(佐々木敦子さんの油絵)も素敵でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ある街の東のはずれに、ふるいくたびれたアパートがありました。灰色の石造りの建物。中に入るとひんやりとして、とても気持ちがいあのでした。
ホテル・カクタス、ホテルではなく、このアパートの名前でした。
中庭には、黒猫が一匹。
このアパートに、きゅうりが 引っ越して来たのです。
これは、アパートの住人、帽子と、数字の2と、きゅうり という、三人の友の、些細な日常の お話しなのです。。
きゅうりの部屋にやって来て、それぞれにくつろいで過ごす3人。家族ではない。とくに事件も起きない。レコードをかけたり、詩人ごっこしたり、恋をしたこともあるけれど、ただ、お互いを知る日々を過ごしているような。でもそれは、ホテル・カクタス というアパートに流れる時間や、光、湿度がこの徒然感を産んでいるみたい。。
私は、ハードボイルドな帽子が好きですけど、父が14 母は7 という、数字の生い立ちにも惹かれるんですよねぇ。。 -
「僕はきみたちに胸衿を開いている。[...]この物騒な世の中で、ほんとうに胸衿を開くことの出来る相手に、出会う確率がどのくらいあると思う?」(60ページ)
同じアパートに住む帽子、きゅうり、2。
性格や個性が全く異なることにも関わらず、
お互いの深い所に寄り添いあう友情を育んでいく。
遠い昔の、ある記憶。
そんな思い出のような物語り。 -
大人のための童話という感じ。
ホテルカクタスという名前のアパートに住んでいるきゅうりと帽子と数字の2の友情の話。
不思議な感じながら、リアルな感じもあり、するすると読み終わり、しばらくボーッとして過ごした。 -
まず主人公たちの設定が独特ですごく印象に残る。
所々にある表現も、絶妙に想像できる。
さすが江國香織さんの世界観。
やわらかく温かさがあるところがとても好き。
また読みたい。
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絵本のようだった。時は流れていく。変わらないものはない。
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ほんの一瞬でも心を許し合った人と共に過ごした記憶は消えない。たぶん、一生消せない。ホテル・カクタスに住む数字の2が、階上に引っ越してきた者がやかましいので物申しに行くと、きゅうりが出てくる。彼が悪びれないのでさらにその階上へ意見を求めに行き、帽子と出会う。異なる性格にもかかわらず三人はたびたび集まるようになり、同じ女性に恋したり、出かけたりする仲になる。そして別れの時がきて、ひとり、またひとりとアパートを去ってゆく。共に過ごした日々がかけがえのないものに思える日が、いつかきっとくるのだろう。
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古いアパートの奇妙な住人たち。大人のメルヘン。