ホテルカクタス

著者 :
  • ビリケン出版
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本棚登録 : 837
感想 : 133
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  • Amazon.co.jp ・本 (150ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784939029141

感想・レビュー・書評

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  • あらすじを読んで非常に興味を持った。なんといっても、登場人物が帽子ときゅうりと数字の2!ホテルカクタスという名の3階建ての古いアパート。その3階の一角に帽子、2階の一角にきゅうり、1階の一角に数字の2が住んでいる。
    何と表現したら良いか…とにかく、それぞれがとてもそれぞれらしい。帽子は帽子らしく、きゅうりはきゅうりらしく、数字の2は数字の2らしいのだ。三人(?)は一緒に飲んだり、競馬に行ったり、旅したり。その時の行動も本当にそれぞれらしい。私は数字の2に共感。割りきれない事は好きじゃない。
    江國さん、よく帽子ときゅうりと数字の2にしたな!と感動するくらいキャラがピッタリで、人間の話じゃないのに共感できてしまう不思議さ。本の半分を占めている挿し絵(佐々木敦子さんの油絵)も素敵でした。

  • ある街の東のはずれに、ふるいくたびれたアパートがありました。灰色の石造りの建物。中に入るとひんやりとして、とても気持ちがいあのでした。
    ホテル・カクタス、ホテルではなく、このアパートの名前でした。

    中庭には、黒猫が一匹。

    このアパートに、きゅうりが 引っ越して来たのです。

    これは、アパートの住人、帽子と、数字の2と、きゅうり という、三人の友の、些細な日常の お話しなのです。。

    きゅうりの部屋にやって来て、それぞれにくつろいで過ごす3人。家族ではない。とくに事件も起きない。レコードをかけたり、詩人ごっこしたり、恋をしたこともあるけれど、ただ、お互いを知る日々を過ごしているような。でもそれは、ホテル・カクタス というアパートに流れる時間や、光、湿度がこの徒然感を産んでいるみたい。。

    私は、ハードボイルドな帽子が好きですけど、父が14 母は7 という、数字の生い立ちにも惹かれるんですよねぇ。。

  • 「僕はきみたちに胸衿を開いている。[...]この物騒な世の中で、ほんとうに胸衿を開くことの出来る相手に、出会う確率がどのくらいあると思う?」(60ページ)

    同じアパートに住む帽子、きゅうり、2。
    性格や個性が全く異なることにも関わらず、
    お互いの深い所に寄り添いあう友情を育んでいく。

    遠い昔の、ある記憶。
    そんな思い出のような物語り。

  • 大人のための童話という感じ。
    ホテルカクタスという名前のアパートに住んでいるきゅうりと帽子と数字の2の友情の話。
    不思議な感じながら、リアルな感じもあり、するすると読み終わり、しばらくボーッとして過ごした。

  • まず主人公たちの設定が独特ですごく印象に残る。
    所々にある表現も、絶妙に想像できる。
    さすが江國香織さんの世界観。
    やわらかく温かさがあるところがとても好き。
    また読みたい。

  • 絵本のようだった。時は流れていく。変わらないものはない。

  • この物語に甲斐あるものは無い。ただ流れていく。
    だからこそ何も無い時間に読んでいる。
    何も無い時間に読める本は、そんなに無い。

  • ほんの一瞬でも心を許し合った人と共に過ごした記憶は消えない。たぶん、一生消せない。ホテル・カクタスに住む数字の2が、階上に引っ越してきた者がやかましいので物申しに行くと、きゅうりが出てくる。彼が悪びれないのでさらにその階上へ意見を求めに行き、帽子と出会う。異なる性格にもかかわらず三人はたびたび集まるようになり、同じ女性に恋したり、出かけたりする仲になる。そして別れの時がきて、ひとり、またひとりとアパートを去ってゆく。共に過ごした日々がかけがえのないものに思える日が、いつかきっとくるのだろう。

  • 古いアパートの奇妙な住人たち。大人のメルヘン。

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著者プロフィール

1964年、東京都生まれ。1987年「草之丞の話」で毎日新聞主催「小さな童話」大賞を受賞。2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞、2010年「真昼なのに昏い部屋」で中央公論文芸賞、2012年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、2015年に「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」で谷崎潤一郎賞を受賞。

「2023年 『去年の雪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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