経済学の大きな考え方を産み出した人物12人を、短い伝記と共にその産み出された考え方について紹介している本。
取り上げらえている偉人はケネー、アダム・スミス、リカード、ミル、マルクス、メンガー、ワルラス、マーシャル、ケインズ、シュンペーター、スラッファ、ガルブレイスの12人。それぞれがどういう過程を経てどういう理論をどういう目的で産み出したかが示されている。

経済学で使われている考え方は多種多様でありいろんな人がいろんなところで利用しているけれど、その多くは歪められて使われているように感じる。そんな歪みが無いように偉人の生きた時代背景や生い立ちなどを抑えたうえでわかりやすく理論解説をしている本で、とても読みやすくかつ整理されててわかりやすいものだった。

単なる理論の紹介や解説でなく伝記も含めて考えることでどういうモノを考えてきたのか、どういう考え方をしていたのかといったことが読み取りやすく、巷で溢れているような”歪んだ”理論にならないように配慮されているように感じとても好感が持てた。彼らの求めたものは基本的には真理の探究であって発見ではないと思われるが世の中には彼らが真理を発見したものとして捉えてる人が多すぎなんだろうと思う。
全体の感想としては、かつては食糧生産が圧倒的に足りず必然的に経済は土地に縛られていたので、求めるべき真理もあるべき理想も比較的単純であったがゆえに生み出された理論も追い求めるべき理想も”身近”であったが、時代が立つにつれて経済を取り巻く環境は複雑化した結果、経済学者はいかに現実と理想とを近づけるかといった事よりも「完全」な理論を追い求める姿勢が強くなっていったのかなと思え、結果、理論と現実とが乖離しているのが現代の経済学なんだろうなと感じた。今の時代に必要なモノは彼らが生み出した「理論」ではなくその理論を作り出した「考え方」でもって現代社会を分析して解決策を新たに作り出すことなんだろう。

カテゴリ 経済学史

筆者が物理学の現状に疑義を感じ、いろんな人にインタビューしながら科学とはなんぞやと考えていく話。

「本書は、美意識に頼った判断がいかに現代の物理学の研究を推し進めているかという物語だ」と序文にある通り、いろいろな人が理論の優劣を考えるとき美しいかどうかを気にしてて、けして客観的でない”美”意識に客観的であれと考えている科学者の多くが惹かれている様が、時々挟まるとても皮肉が利いた文章で紹介されててとても面白い。基本的には実験の結果検証をすることで理論を洗練させてきたのだけれど、近年は実験するにも金も手間も時間もかかるモノばかりになり新たに生まれた理論全てを検証することなど実質的に不可能な状況なので事前に選別する何らかの手段が必要だって話もあり、かつてはそれがうまく機能してたが今はそうでもない話がありと、科学の現状と将来について期待と不安を感じる内容だった。

個人的にはところどころ「経済学批判かな?」と思える話を見かけて物理学も最先端の(検証が難しい)話になると同じようなことになってるのだなと思ったりしたのだけれど、後半に剛速球の経済学批判が入ってて大爆笑してたw

2022年7月13日

読書状況 読み終わった [2022年7月13日]
カテゴリ 雑学・教養

とある数学者のぼやきであってあまり教育史って感じはしない本だったが、いろんなこぼれ話や戦前戦後の数学教育の変遷をみれる面白い本だった。
基本的に数学軽視のドイツ(式軍隊教育)は糞、権威に慮って硬直した教育体制糞って話が多く楽しくはあるけれどしんどい本でもあった。

2022年7月13日

読書状況 読み終わった [2022年7月13日]
カテゴリ 雑学・教養

アメリカとの戦争を決定した理由はどこにあるのかを、ある隠蔽された報告書から読み解こうとした本。

経済学者たちのと銘打っているけれど、話の中心は経済学者ではなく秋丸機関。かかわった人物がどういう人か、どういう内容が書かれていたか、為政者側がそれをどう捉えてたかといったことから、状況をどう捉えてあのような判断を下すに至ったのかを求めていく内容。

陸軍の要望で機関が立ち上がり、どちらかというと反政府的思想と周囲から見られてた人が中心人物として動き、国力の差がありすぎて短期的にはともかく長期戦になったら勝てるはずがないですと明確に分析されていたこと、そしてそれは隠すことでもなく世間一般でもなかば常識であったことなどが明かされていき、これでなぜアメリカと戦争しようとなったんやろとなる展開が面白い。
何もわかってなくてああなったのではなく何もかも分かった上でそれでも開戦の選択をしてしまった理由の分析は教訓として現代に生かさないとなと思う話でした。

2021年7月30日

読書状況 読み終わった [2021年7月30日]
カテゴリ 歴史・近代史

宗教をテーマにした社会科の先生が話す小話集
正直タイトル詐欺、読み解けた感じはほとんどない

書かれている内容や読みやすさは良いものだけれど、あくまで学校の先生が語る話であって詳細な資料を基にとか独自視点でとかいったものはなく、本全体としても取っ散らかってる印象が強め。
資料的価値も乏しければ内容もあっさりしすぎてて期待外れ。副読書のコラム集としては文句はないできで文庫本とかで出てたらもっと評価したくなるけれど… といったものでした。手元において何度も読み返す本じゃなかったね。

2021年7月30日

読書状況 読み終わった [2021年7月30日]
カテゴリ 歴史・近代史

日本における所謂人身売買の歴史についての考察本。

日本における「身売り」、奴隷や捕虜の売却から奉公人に至るまでの流れを考える本なんだけれど、やたらと日本にも人身売買はあったって話ばかりで、これこれだから売る人(供給)はあったんだ、一説によると膨大な数がこの時売買されたとやってるが、反対側から見た話、買う人(需要)についてはからっきしでどうにも片手落ち感が半端ない内容。
江戸時代の人身売買禁止令などから日本における「身売り」の倫理観を考えるはなしは良いんだけれど、とにかく一方的な視点のみで話が綴られてて視野が狭いなーって感想。

2021年4月28日

読書状況 読み終わった [2021年4月28日]
カテゴリ 歴史・人類史

タイトルまんまの本なんだけれど、ビジネスマンとして成功した人間が真摯に息子に向けての忠告進言してる内容は呻るもののが多かった。

2021年4月28日

読書状況 読み終わった [2021年4月28日]
カテゴリ 雑学・教養

良くも悪くも「僕の考えた最適なマニュアル」

良いと思うモノは取り入れたいし合わないと思ったのは流せばいい。文章は読みやすいしよくまとまってるし、なぜこういう考えになったのか行動を決める指針はこうだってのがはっきりしているので、判断はしやすい本でした。

2021年4月28日

読書状況 読み終わった [2021年4月28日]
カテゴリ 雑学・教養

富裕層の資産管理をしている人はどういう人かについて書かれている本。

著者自身は学者でしかないのだけれど、実際に資産管理をしている人の信用を得るために資格を取ってインタビューしていたりととっても実学的な内容。
興味深かったのは、富裕層の資産管理に最も重要なのは運用成績なんかよりも依頼者のとの信頼関係で、資産防衛の相手は国が一番なんだけれど、家族や友人も多くの場合対象になって、だからこそ金庫番は家族以上の信頼がおける人が望まれるみたい。ひたすら金儲けに走るんじゃなくて信用が重視される状況を中世の騎士の関係になぞられて話がなされるさまは、時代が変わっても基本は変わらないのだなぁって思わされた。

富裕層けしからんと思って読むと印象が大きく覆されるような内容だった。

2021年4月28日

読書状況 読み終わった [2021年4月28日]
カテゴリ 雑学・教養

実際に国債の現場で働いてた人間によるコラム集

筆者は金額の大きさのみでもって日本の借金は膨らみ続けて大変だー財政はとっくに破綻してるんだーなんて主張を持っているみたいでげんなりしたけれど、中身は国債の現場で働いていたからこその臨場感を感じる面白い読み物だった。
財政は税を財源として国債に依存しないって話は当初はかつての戦争からの反省で、財政拡大させない≒戦争をしない保証だって考えがあったからであって初めは財政拡大そのものは絶対悪としては考えられておらず、なんだかんだで理由をつけて国債依存を高めてきた歴史が垣間見れる内容で、これでなぜ財政破綻だーって主張になるのか不思議なくらいに国債を巡る環境変化を知れる内容だと思う。

惜しむらくは国債の発行が日本の金融市場を育ててきた面があったとしながら財政拡大の歴史のみしか見ず財政赤字削減金融自由化を前提も現状も関係なく無条件で良いこととしてしか書かれてないところで、国債消化手段について変化した結果の影響等こそ現場目線で書くべきことだと思った。

2021年4月26日

読書状況 読み終わった [2021年4月26日]
カテゴリ 経済学

人の歴史経済にとって「負債」がどのように影響を及ぼしていたかを考察している本。

膨大な知識量でもってぶん殴ってくる内容で、「お金」とは「負債」とはといった事を深く考えさせられる本でした。
お金の起源は戦争等で雇った傭兵に支払うための報酬、それがもとで税金が起源だって話だったり、庶民はお金を使わないで経済活動やってる方が基本だって話だったり、貴族にとってお金≒恩賞≒名誉なのでお金を数字としてやり取りする商人は嫌悪対象だって話だったり、十字軍や新大陸で行われた虐殺は借金返済が動機(実行犯は金持ちになってない)って話だったり面白い話が盛りだくさん。

言い回しが遠回りだったり話があっちこっちに飛んだりとにかく分厚いと読みやすい本とは言い難いけれど、巻末に訳者による整理があるのでそれを参考に読んだりすれば読むのはそれほど難しくないと思う。必要なのは根気w

2021年4月26日

読書状況 読み終わった [2021年4月26日]
カテゴリ 経済学

かつての奴隷度今の労働者にどんな違いがあるのって問う本。正直身も蓋もない話。

アダムスミスのころの社会における奴隷感をはじめ奴隷の状況や奴隷について書かれた思想など広範囲にわたる側面から「奴隷とは」と論じられるのを読むと、改めて奴隷とは自由とは労働とはについて考えたくなる内容だった。

面白いのは奴隷労働が真っ盛りだった当時、”自由”な市民よりも快適な生活環境の奴隷が多くいたりした状況でも「自由」があるから市民は奴隷よりも良い環境にいるといった考えが博愛的とされる人の思想だったりすることで、価値観や物の捉え方考え方は同じ言葉であっても時代が変わると変わったりすることに注意を払わないといけないのだと思う。

2020年10月12日

読書状況 読み終わった [2020年10月12日]
カテゴリ 経済学史

タイトルのまんまの本。雑草の生存戦略についてのザックリとした説明が書かれてる。

どこにでも生えてきてどれだけ対処しても駆逐することのできない雑草は、一見するととても生命力が強いと思われがちだけれど、実は生命力が強いとはいえずむしろ弱いという説明はとても興味深い内容。弱いがゆえに様々な環境でも耐えうる戦略をとっている、中には同じ種なのに環境によって育ち方が大きく変わる戦略をとってるモノもあったりと、植物における生存競争の多様性に驚かされるものだった。
将来科学技術が発達しても雑草との戦いが無くなることはないのだろうなと言うぼやきは雑草を研究してきたからこその実感のこもったものなんだろうと思う。

2020年10月12日

読書状況 読み終わった [2020年10月12日]
カテゴリ 雑学・教養

本好きによる本好きの人に向けた本。

この世にある本全てを読むことなんてできないんだから自分にあった本に出合うためには好みに合う本を紹介してくれる人を探せから始まって、欲しい本全て購入するのは物理的にもお財布的にも無理なんだし図書館を有効活用しよう図書館も良いぞ、本の読み方も色々あるよなどと続くのだけれど、後半になるほどハウツー本の皮をかぶった本を読んで変わった己の心情の吐露がこれでもかと書きなぐられてて、本を読む面白さ(≠本の面白さ)はこういう事なんだなって感じることが出来る一冊。
多くの本を「それを読んで自分がどう動いたか」に焦点あてて紹介してて、知識を集めるのではなく本を読むとはこういうことだという筆者の思いが伝わってくるものだった。

2020年7月19日

読書状況 読み終わった [2020年7月19日]
カテゴリ 雑学・教養

話の大筋は序盤のどんな物語なんだろうと思わせる所から中盤のどう転がるんだろうとなって最後のそうなるかーとなるところまでとても面白いと思ったけれど、全体としては好みに合わなかった。

国の名前が”アン”ユナイテッドキングダムとなってたりとか、英語文化圏で英語で読めたらまた違った感想になるのかなって感じるものはあったけれど、中世的な話やらファンタジーやら商業主義やらが同時に存在するための調整はなくバラバラなまま混ぜ込まれてて他の場面と矛盾しませんかってなって、ノリと勢いだけで楽しめるweb小説としてならいいけれど一度読めば十分だなって。

2020年7月19日

読書状況 読み終わった [2020年7月19日]

人間社会において”正しさ”は外部からでしか定義できない。かつてはそれを担っていた”神”を人は近代になって殺したとされるが、”正しさ”を定義するモノはやはり外部、”神”の亡霊として存在し続けているといった内容。

かつて公表したエッセイをまとめて、足りない部分に注釈を足した形なのだが、本文よりも注釈の方が多くなってて、良い意味で自分の書いた教科書で授業する大学教授の授業を味わえる本w
文章自体はエッセイとして発表されたモノを基にしてるのでとても読みやすいけれど、理解が簡単かといえばなかなかなモノなんだと思う。少なくとも私は理解したと胸を張れない。
問いと答えが整理されて書かれてる本ではなく、筆者の考えを整理して筆者だけが納得してる本なので、読者は考え続けることが求められる。

近年は世界中で”正しさ”を振り回す話が過激さを増し続けているけれど、”正しさ”とはなんなのだろうと考えるのにとても良い内容だと思える本だった。

2020年6月16日

読書状況 読み終わった [2020年6月16日]
カテゴリ 雑学・教養

明治の歴史を人物に焦点を当てて整理して書かれている本。当時の有名人21人について書かれている。

正直一人で一冊書けるようなのを無理やり一冊にまとめて、しかも書いてる人が人物ごとで違う人なのでバラバラ感と物足りなさは否めない。
同じ出来事でも違う人物の視点では違って見えるのは面白いモノだっただけに、もう少し全体としてまとまりが欲しかったなーと。

2020年6月16日

読書状況 読み終わった [2020年6月16日]
カテゴリ 歴史・近代史

明治の歴史をテーマごと二十講に整理して書かれた本。

正直一テーマだけで一冊書けるようなものを無理やり一冊の本にした、またテーマごとに書いてる人が違うのもあって全体としてバラバラで物足りないのは否めない。
更に詳しく知るための参考文献が紹介されてるしで勉強したい人はそっちもどうぞって内容なんだけれど、これだけで分かった気にはなれないので正直しんどい。

掃討勉強しないと逆に混乱の基になってしまうものの、色んな人のいろんな視点が見れるので今まであった思い込みや偏った見方の整理のは良い本でした。

2020年6月16日

読書状況 読み終わった [2020年6月16日]
カテゴリ 歴史・近代史

私が実践してる知的生産・知的創造のための手法・考え方が書かれている。

あれこれと書かれているが、私はこのようにするのが良いと考えている以上のものは無いので腑に落ちたら真似たら良いし、そうでなければ別の手法考え方を模索するのがいい話。
帯に「核心を説く決定版」なんてたいそうに銘打ってるけれど、誇大広告だなとw

2020年6月16日

読書状況 読み終わった [2020年6月16日]
カテゴリ 雑学・教養

経済学者の提言は役に立たないところか有害だーって内容。どんな考えが有害なのかがわかりやすく書かれている。

世界を破綻させたとあるが、実際は破綻してるわけじゃないのでまあタイトル詐欺なのは否めない。
経済学者がいかに間違った提言を自信満々に、臆面もなく、予測どころか実証すらかけらもなく、検証に耐えられない状態であるのにも関わらず垂れ流しているのかはとてもよく書かれているのだが、なぜそうなってるのかというと「間違った考えに固執してるから」としか書いてないのがちょっと残念かな。
基本的に政策提言は採用されなければただの戯言にしかならないものなので、なぜ採用されるのか、(正しい政策が)なぜ採用されないのかまで触れないと、経済学者が間違った考えに固執できるのかが謎のまま。

経済学者が”お墨付き”を与えた”間違った”政策を望んだのは誰、それで得をしているのは誰なんだろうね。

2020年6月16日

読書状況 読み終わった [2020年6月16日]
カテゴリ 経済学史

物部氏がヤマト王権でどのように扱われていたのかを中心に、物部氏について、また、古代王権の特性や宗教感といったことを推考している本。

蘇我氏との権力争いに敗れた勢力扱いであまり研究されてる話が無いけれど、よくよく調べてみるとヤマト政権に対する影響力がとても強い立場にいたことや、仏教推進派の蘇我氏と仏教否定派の物部氏との争いと単純化されがちだがその見解だといろいろ矛盾が生じたり実情と違ってるなんてことが書かれてて古代史の魅力が伝わる内容だった。

2020年4月17日

読書状況 読み終わった [2020年4月17日]
カテゴリ 雑学・教養

どういう経済学者が受賞してきたか、受賞される理論はどのような変化があったのかを丁寧に考察している本。

大まかな理論解説とともに当時の状況や学者同士の関り、思想的対立などを踏まえて整理されているので、経済学理論がどのように発展してきたのか、どんな対立があったのかがとても分かりやすくなる良い本でした。

読書状況 読み終わった
カテゴリ 経済学史

イスラーム教徒である著者による人生論。

判りやすい言葉でありながら内容は剛速球w
内容はとても論理的、なのに小賢しさは感じられないので受け止めるのは結構大変かも。
言ってる事は難しいことじゃないんだけれどね。

>人が知るべきは「自分が何をしたいのか」、そして「自分には何ができるのか」の二つしかありません。
>本書を読み終えて「自分が何をなすべきか」が気になり始めたあなたとは、主がお望みなら、またどこかでお会いすることになるでしょう。

内容に賛同するも反感を持つのもあるのだろうけれど、前書きにあるこの言葉は真理なのだろうと思う。

子供の悩みにイスラーム学者が答えたらこうなった。この謳い文句が素晴らしいと思いましたw

Q&A形式でいろんな質問に答えてるのだけれど、正しいかどうかを判断できるのは”神”だけ、世の中にあるのは所詮人が作ったただの仕組みでしかないのだから損得を考えて行動しようといった姿勢を崩さず丁寧に剛速球投げてる様は素晴らしいです。

読書状況 読み終わった
カテゴリ 雑学・教養
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