- 事故物件怪談 恐い間取り3
- 松原タニシ
- 二見書房 / 2022年7月11日発売
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事故物件住みます芸人、松原タニシさんの事故物件本の3冊目。
冒頭に驚く。勇気ある構成だ。
自分が住むことになった事故物件に関しては、感情の揺れはあるものの、聞いた事故物件の話に関してはものすごく淡々としてる。怖がらせるような要素を廃した書き方。なのに怖い。少ない情報から「あれ?」と前のページに戻るような。新耳袋を読んだときに近い気もする。
いつか自分も死ぬ。そうすると高い確率で事故物件になる。事故物件だから怖い、ではなくて、ただそこで人が死んだことがはっきりしてるだけの物件なのかも。(地球創世記から考えれば、生き物が何一つ死んだことの無い場所はない気がする)
2022年9月11日
- あなたがひとりで生きていく時に知っておいてほしいこと ひとり暮らしの智恵と技術
- 辰巳渚
- 文藝春秋 / 2019年1月11日発売
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ひとりで暮らすということ、自立するということを丁寧に書いている。
出版された経緯を読むと非常に思いの強い本に思える。
巻末の解説を読むと胸が痛い。
2021年8月2日
- 52ヘルツのクジラたち
- 町田そのこ
- 中央公論新社 / 2020年4月25日発売
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人生詰んだ。と思うことが過去にあった。それでも今まだ生きているのだが、頑張れば頑張るほど、そのことに集中すれば集中するほど、詰みがちな気がする。つまり、頑張らないから詰まない、なんてことはない。
さて。この本の主人公のおかれた状況と過去から「えっ、それどうするんだよ」となるわけなのだが、何をどう書いても陳腐なネタバレにしかならないので割愛する。
面白かったなぁ。
2021年8月2日
- 逃げ出せなかった君へ
- 安藤祐介
- KADOKAWA / 2019年3月30日発売
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ブラック企業に勤める、タイトルの通り「逃げられなかった者たちへ」なので、1話は重い。あまりの重さにこの先を読むのをやめようかと思ったくらいだ。
けれども、2話以降、1話の後も生き続けているひとたちを見ていると、生きていれば、未来は開けるのか……という気持ちになる。
1話は重いけれど、その先もあきらめずに読んでほしい。すごかった。
2019年10月12日
読点は作家の呼吸だという。
若い作家は読点が無く一気に読ませ、年を取ると読点が増えるそうだ。
そうして脳性まひの著者の書く文章は、未だかつて読んだことのないリズム感だった。浮遊感があるというか、意図して作るには無理がある、著者にしかできない呼吸を刻んでいるのだと思わせる。
全身が常に痛み、声を出すのにも苦労し、そうして、夫に先立たられた千夏ちゃん。この表紙の笑顔が美しいなぁと思う。
2019年10月12日
- この地獄を生きるのだ うつ病、生活保護。死ねなかった私が「再生」するまで。
- 小林エリコ
- イースト・プレス / 2017年12月15日発売
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ブラック企業に勤めて鬱になり、生活保護を受けた女性のお話。
病気であるという弱さに付け込む仕事は怖い。
そして人は回復するのだなぁというしみじみとした感動がある。
生きてるってすごい。
2019年10月12日
- 女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと
- 西原理恵子
- KADOKAWA / 2017年6月2日発売
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タイトルから自己啓発書かと思ったらエッセイだった。
生きるというのは己の身を削る行為なのだなぁ。
2018年12月13日
- ここは、おしまいの地
- こだま
- 太田出版 / 2018年1月25日発売
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「夫のちんぽが入らない」で衝撃デビューを飾ったこだまさんのエッセイ。おしまいの地と呼ばれるその場所は、西原理恵子さんの語る地に似ているのに、西原理恵子さんが生々しい極彩色だとしたら、こだまさんはモノトーンの静かな情景のなか、1点だけ強い色を発しているかのようである。
笑えないのに噴き出してしまう。
個性の大事さが叫ばれる昨今だが、やはり今も枠の中で生きる事が望ましいとされているようだし、そんな中、こだまさんの我が道を生きざるを得ない姿が美しい。我を張る、というより流される事が多いような気もするが、それでも、気づいたら書いていて、秘密を抱えたまま、飛行機に乗ることをやめないのはすごい。あと、文章のテンポが単純に面白い。
2018年5月15日
- されど愛しきお妻様 「大人の発達障害」の妻と「脳が壊れた」僕の18年間
- 鈴木大介
- 講談社 / 2018年1月25日発売
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脳が壊れた著者と、その妻である大人の発達障害の彼女。
簡単に言おう。誰彼かまわず読んで欲しい本だ。
ライターの著者が発達障害を持つお妻様と出会い、ともに暮らすものの、障害のある彼女のペースに合わせることは出来ず、家事のほとんどをやりつつ、仕事を詰めに詰め、脳梗塞で障害が残る=脳が壊れるまで無理を続けることとなる。そして脳が壊れた著者は、初めて「やらないんじゃない、出来ないのだ」と気づく。そこで妻が言う「やっと私の気持ちが分かったか」と。
そうして脳が壊れた著者と、お妻様でどうやって暮らしていくのかを試行錯誤しつつ、そして「一緒に生活するのが楽しい」とお妻様に言われるようになる。
どうしようも無い奇跡の上に成り立った幸せ。
私は「どうして出来ないの?」と言ったことがある。やれば出来ると思っていたから。また「なんで出来ないの? 馬鹿なの?」と言われたこともある。言われたときは(馬鹿って言って出来るようになれば楽だけど、言っても良くならないのに馬鹿だな)と思っていた。
今まで、私はどれだけ人の成長する機会を奪ってきたのだろう。また、どれだけ奪われたのだろう。
自分の不寛容さ拙速さについて、ほんとうに耳が痛い。けれども読んで良かったと思う。
けれど、人はいつでも成長できる。そして生きることが出来ると力づけられる。すごい。
この著者の本は「脳が壊れた」から読んでいるのだけれども、こちらの方が圧倒的に情緒に満ちあふれていて文章がみずみずしい。脳が回復したのだろうか。いや、むしろ成長しているのではないか。すごい。
再読しよう。
2018年3月13日
- 未来への地図: 新しい一歩を踏み出すあなたに
- 星野道夫
- 朝日出版社 / 2005年4月1日発売
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アラスカの村長にたどたどしい英語で手紙を書き、返事が来れば、単身アラスカに向い写真を撮る。自然を撮り続ける。
そして、ヒグマに襲われて亡くなった写真家の講演を本にまとめたもの。
写真展に行ってから手に取った本なのだけれど、過酷な環境で生きてる動物たちを撮るということは、いつか自分もその輪の中に落ちることを覚悟していたんじゃなかろうかと思う。
そしてこのレビューを書く前に、死の顛末をネットで調べてみたのだけれど……。本当に、経験だけではわからないことや、ちょっとした違和感や忠告は大事だなぁ。
いや、すべてのことに気を配ったとしても、どうしようもないことがあるのだと感じた。
2017年3月7日
- 聲の形 コミック 全7巻完結セット (週刊少年マガジンKC)
- 大今良時
- 講談社 / 2014年12月17日発売
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人には悪意がある。害意もある。悪意なく人を傷つけることもあれば、他愛のないことで傷つくこともある。
この物語には善意だけのヒーローもいなければ、明確な悪役もいない。
悪意があっても、弱くても、それでもなお生きる、もがく人たちの物語だ。
なんというか、すごい。
2017年2月2日
この本がどんな物語なのか、うまく説明する言葉出てこない。
ひとりの科学者が、西洋文明圏の人たちが、まだ、誰も知らぬ地に足を踏み入れる。
その付近の村での神話のような自体に出会う。それは命そのものの皮肉さだし、人生や成功への皮肉さでもある。
この物語は、その科学者の手記と、その手記を読み解説を付け加えた人物によって描かれるフィクションだ。作り話だ。
派手なアクションがある訳でもなく、大いなる謎が解き明かされる訳でもない。淡々と科学者が、過去を振り返る。
なぜ、こんなにも、切なくなるのだろう。
読まないとわからない物語なのだろうなと思う。
すごい。
2016年11月9日
- 少年の名はジルベール
- 竹宮惠子
- 小学館 / 2016年1月27日発売
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風と木の詩といえば、少年愛の漫画として一世を風靡した作品であるし、ほかにも地球へ…やファラオの墓など有名な作品がある。
これを読む前は、いわゆる39年組の人気少女漫画家さんの印象だった。しかし、読んでみれば萩尾望都と同居し、ポーの一族などの全盛期にを共に過ごすというのは、漫画家としてすごいきついんだろうなぁと胃が痛くなる。
そんな中でもただひたすらに書き続け、今は脚本術などの技術を使いながら表現者を育てる側になったことに納得する。
あの時代で書き続けたこと、手を止めなかったこと、続けることの大切さを感じる。
2016年9月1日
- 夜と霧――ドイツ強制収容所の体験記録
- V.E.フランクル
- みすず書房 / 1985年1月23日発売
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ユダヤ人の心理学者による、ドイツ強制収容所の体験記録である。
最初の解説が全体の1/4を占め、それがつらい。
どうしたらこんなことになるのか。わからない世界だ。
けれども、一歩道を踏み誤れば(例えば自分の身内以外は敵だ、人じゃないと思えば)、簡単にそちら側に転げ落ちてしまう気もする。
なぜなら、過去にここまでの非道を行った実例があるのだから。
長い長い解説を超え、本編に入ると、極限状態においての人の強さというか、生命力というか……生物としての生きる強さと、人間としての理知の力を示されるので、少しほっとする。ユーモアすごい。
これを読めるのは、著者が感情的ではなく冷静な目線で記しているだからなのか、翻訳だからなのか、どちらだろう。おそらく前者だろうなぁ。
2016年5月5日
- 100歳、ずっと必要とされる人
- 福井福太郎
- 日経BP / 2013年5月23日発売
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2015年2月9日
- 失踪日記2 アル中病棟
- 吾妻ひでお
- イースト・プレス / 2013年10月6日発売
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これを普通に笑いながら読めるんだけど(密度は濃いから読み進むのに時間がかかるの)、けれど、実際にアル中病棟に入院したのが作者であると思うと……なんというか、じわじわくる。
自分の内面についてじぃと見つめるでもなく、ただ、淡々と作品としてこの本を仕上げた精神力はさすがギャグ漫画家であると思う。ストーリー漫画家であったら、物語にしてしまい「よい話」になってしまったんじゃなかろうか。
アルコール依存症からの回復は20%程度に留まる。
つまりそれは、何度も何度も再発するということを示している。出てくる人たちは当たり前のように普通なのにどこかおかしい(おかしいというと失礼なのかもしれないし、漫画的な誇張もあるのだろうけれど)。
特別な理由があるから、アルコール依存症になったのではなく、アルコールを飲み続けるうちに依存症になってしまった。アルコールが無い生活を感柄レ無くなったというのが近いんだろうか。
眠れない……というのは本当に恐ろしいことなんだろうな、と感じた。
2015年1月20日
- 明日この手を放しても (新潮文庫)
- 桂望実
- 新潮社 / 2010年4月24日発売
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普通の物語ならば、目が見えなくなった主人公を家族が支え、新たなる人生の光を求める美しい展開となるんじゃなかろうか。
しかしながらヒロインの凛子は、目が見えなくなり、白杖をついて外に出たい理由が掃除用具を買いに行きたいという位の潔癖症で有り、ことある毎にウェットティッシュで手を拭いている。「もっと周りが目の見えない人のことを考えるべき」と、ことある毎に主張し、論理立てて兄を論破する。
兄の真司は、顔は悪くないけれど常に振られ続け、不満があればそれ口にし、当たり散らす。
こんなところから始まる2人の物語は、なんと言えばいいのか、ひどく日常的でありふれていて、愚かで、そして途方もなく尊い。
ドラマティックな事件や感動は起きず、何かの出来事で劇的に人は変わらず。それでも生き続けるし、関係性は変えていけるという、時のちから、前を向く人間の生命力の強さを感じる。
最初の1~2章について行けないものを感じたとしても、ぜひ最後まで読んで欲しい。
2015年1月20日
- シャバはつらいよ (一般書)
- 大野更紗
- ポプラ社 / 2014年7月14日発売
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前作の困っているひとが「病になるということ」に観点を置くとしたら、本作は「それでも生きること」に観点を置いている。
私にとって、ただ、普通に日常を送り、当たり前のように生きるということが難しいという現実を知ることはまず無い。
病気になれば入院し、その間にお見舞いに行き、治ったらまた普通通りに働いて生活をするひとばかり見ているからなのだと思う。
このシリーズがいつまでも続いて欲しいと思うと共に、新たに入った院生生活が実りあるものであることを願うばかりです。
2014年10月26日
- カタツムリが食べる音
- エリザベス・トーヴァ・ベイリー
- 飛鳥新社 / 2014年2月25日発売
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ひとの時間とカタツムリの時間。
狭いけれども広大な世界。
自分の殻に閉じこもること。カタツムリの生き方。
ただ、見つめるという静かなちから。
映画を見ているような本でした。味わい深い。
おそらく写真を増やしたりもっとキャッチーに売りだすことも可能だろうが、そうしたら安っぽくなってしまうんだろうな。
文字の力を感じる。
2014年7月31日
- 赤ちゃん取り違え事件の十七年 ねじれた絆 (文春文庫 お 28-1)
- 奥野修司
- 文藝春秋 / 2002年10月10日発売
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いわゆる「取り違え」の家族にインタビューをした作品。
自分の育てた子は、血縁的には他人の子どもだった。では、どうするのだ?
読み進めてみると、最初予想のしていた展開とは全く異なる。たぶん、これを読むだれもが想像する「取り違えの物語」ではない。
これは、家族の話であり、一人の人間がどう生きるかという戦いの物語でもある。
読んでいてぞわぞわした。
いや、もう、すごいものを読んだ。
生まれは選べないけど、どう生きていくかは選べるのだな、と感じた。
2013年12月22日
- 飼い喰い――三匹の豚とわたし
- 内澤旬子
- 岩波書店 / 2012年2月23日発売
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ごく簡単に言うと、3匹の豚を飼い育て、食べたという記録。
しかしながら、あまりにも育てることに忙しくて、ゆっくり悩む隙はなさそう。
数年後に振り返って書き下ろした本を読んでみたい。
2013年4月29日