- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101117188
感想・レビュー・書評
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ある漁村の民俗風習である、座礁した船の荷物をせしめる、破船。そのために、火を焚き誘導し、神仏にも祈る。恐ろしい題材。実在した村が、あるのか。
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生きるために苦しみ、苦しむために生きる。
そこに、生きる意味はあるのか。
貧しい漁村で起こった、悪夢の様な出来事。
生き残った者たちは、何を見て、何を感じたのだろう。
まるで、贅肉を削ぎ落としたかのようなストイックな文章が心に響く。 -
惨惨惨・・・・。
吉村昭さんの作品ということは、フィクションではあってもかなりの部分が事実や記録に基づいているのだろうと推測。
藩船がどうたら…ということは、江戸期のお話だということ。舞台となった漁村の貧しさ、貧しい中で必死に生をつないでいく日々。自ら破船を誘い込み、乗員を殺めることすら「天の恵み」と言わなければならない生活。
その一方、江戸や京都の都市部では、衣食住に困ることなく綺麗な着物に身をつつみ華やかに暮らす人々もいる・・・。
そんな一握りの人たちではなく年貢に汲々とした農村部ですらが、ここに描かれる人々から見たら極楽のような暮らしなのだろうと考えると、身につまされる。
★3つ、7ポイント半。
2018.12.02.新。 -
二冬続きの船の訪れに、村じゅうが沸いた。しかし、積荷はほとんどなく、中の者たちはすべて死に絶えていた。骸が着けていた揃いの赤い服を分配後まもなく、村を恐ろしい出来事が襲う……。嵐の夜、浜で火を焚き、近づく船を坐礁させ、その積荷を奪い取る――僻地の貧しい漁村に伝わる、サバイバルのための異様な風習“お船様"が招いた、悪夢のような災厄を描く、異色の長編小説。(裏表紙)
災厄は、約束されていたようにも思います。
超常現象や過剰な描写はないにもかかわらず、やはり、怖い。
…本文には全く文句なく素晴らしいのですが、解説がストレートにネタばらしをされているので、少し注意が必要です。 -
近代国家の道のりを歩み始める前の日本の閉鎖した貧しい漁村の物語。
伊作というまだ年端もいかない主人公の目線で淡々と語られるその生活は、現代社会で暮らす我々には想像もできない過酷なものであるが、あたかも本当に当時の人間が語っているような自然な語り口のリアリティーにより違和感なく読者はその生活に入っていく事が可能となる。
自然のリズムに身をゆだね、そのもたらす恵みにより細々と命をつないでゆく人々。
生活は厳しく、身売りも普通に行われている。
生きるための非情な選択として灯火により交易船を岩礁地帯に誘い込み座礁させ積み荷を奪うという犯罪行為を村ぐるみでおこなっている。
これらの村の暮らしが丹念に無駄な情感を排した文体により語られる事により、物語にリアリティーを与える事に成功している。
異なる時間と世界を体験させてくれることが小説の醍醐味と言えるのならば、まさにこの本はそれを体現しているといえる。 -
物語はフィクションであろうが、舞台にとっている設定は必ずしもフィクションとも言い切れないのかも。
貧しい漁村が生きるために、冬の荒れた海を航行する船に向かって火を灯し灯台と勘違いさせて座礁させその積荷を奪ったという苛酷な生きる知恵とその悪行に対する大きな報い。 -
一人前の漁師/大人になるという自覚が芽生え始めた少年が主人公。出稼ぎ(身売り)により父が不在の三年間を描く物語。
読み進めて早い段階から、自然現象に左右される寒村という共同体の、心細さと危うさが重くのしかかり息苦しさが続く。それでも、主人公が徐々に成長して生活は安定に向かうのかと思った矢先、ついにお舟様が到来し、寒村の日常は狂い始め、あまりにも悲劇的で無情な幕引きへ。
村人の自死シーンでサラッとギョッとすることが書いてあったり、村人達の犯す大罪がテキパキ機械的に進んだり、文体/描写はかなり淡々としていて、だからこそ抵抗できない暴力の怖さ不穏さを強く感じた。一方で、クライマックスの母の健気な強さには胸を貫くような切なさがあり、あわや落涙するところだった。
230ページとは思えないくらいズシンと重厚/濃厚な一冊。 -
既に記憶も定かでないが、ひと月ほど前、
どこかで絶賛レビューを読み、興味を持ったので購入、
読了。
しかし……
そのレビューを最後まで読まなければよかったと後悔。
何だかよくわからない状態で本編を読み進めた方が
終盤の衝撃が大きかったのでは……と。
そう、つまり、当該レビューは
ガッツリとネタバレしてくれていたのです……(怖)。
もっとも、購入時点で帯の煽り文句を読んだら、
ネタバレレビューに接しなかった人でも
オチには見当がつくはずで……。
作者の名前はぼんやり見知っていた程度。
で、(未読だけど)
かの有名な『羆嵐(くまあらし)』の作家か、
そうだったのかと今回初めて認識(←ぼんやりしすぎ)。
さて。
藩という語が出てくるので、設定は江戸時代と思われる。
九歳の少年・伊作(いさく)の目に映る、
生まれ育った海辺の寒村。
三人称一視点で淡々と進行する、さして長くない物語は、
容赦なく貧しい村の厳しい状況を活写する。
飢えから家族を守るため、性別問わず若くて体力のある者は
年季奉公という名の身売りで村を離れていく。
伊作の父も三年契約で峠を越えた。
父が報酬を得て達者で帰るまで、
伊作は母と共に幼い弟妹を守らねばならなかった。
伊作は漁に出、
民(たみ)という名の少女に仄かな恋心を抱き、
製塩にも携わり、弟・磯吉に漁の手ほどきをし……
やがて、行事を通して村落の秘密に接する――。
終盤の大惨事は、村民一同が長年に渡って積み重ねた
罪業に対する罰のようにも受け取れる。
もう少し詳しいことを
後でブログに書くかもしれません。
https://fukagawa-natsumi.hatenablog.com/-
このレビューを読んでいたので、前知識なく、本裏表紙のあらすじも読むことなく、全くの前知識なしで読めた…!ありがとうございます。あらすじも、し...このレビューを読んでいたので、前知識なく、本裏表紙のあらすじも読むことなく、全くの前知識なしで読めた…!ありがとうございます。あらすじも、しっかり読後に読んだほうがいいですね。2023/10/28
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いらっしゃいませ、フォロー・♥・コメントありがとうございます。
ある程度の情報がなければ興味を引かれることもないわけですが、
あまり詳し...いらっしゃいませ、フォロー・♥・コメントありがとうございます。
ある程度の情報がなければ興味を引かれることもないわけですが、
あまり詳しく教えてくれるのも考えものだなぁ……
と思うことが多々あります(苦笑)。
難しいですよね。2023/10/28
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帯に「本屋大賞超発掘本!」とあったので、気になって買ってみた。
貧しい生活の村で、幸をもたらす「お船様」。簡単に言うと荷を多く積んだ商人の難破船のことだが、難破船をあえて呼び込むための方法もこの村には伝わっている。
これを読むと人々の生活は誰かの犠牲の上に成り立っているのだなということが実感される。
しかし、難破船が必ずしも幸のみをもたらしてくれるものではなく、時には災厄ももたらしてしまう。因果応報と言ってしまえばそれまでだが、そうでもしないと生きられない厳しい環境下に置かれた人々の苦しさもある。
かなりのパンチ力を持っている作品。 -
極めて悲劇的。貧しい村の暮らしを丹念に描くことで、船が来て欲しいと読者に思わせる手法がすごい。短いながら読み応えがすごい作品。名作!