- Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152090515
感想・レビュー・書評
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<哲>
前作『グッドラック』とほとんど同じような語り口で物語は進む。活字の大きさは相変わらず9ポイント+二段組で読書速度は記録的に遅い。会社昼休み記録で書くと15ページ/25分が限度。少し込み入った内容だと10ページも読めない。
戦闘シーンはすこぶる玄人く書けていてかなり面白いが,それ以外はまるで哲学書。もしすかすると神林長平のSFは哲学と紙一重の存在なのかもねw 「空想科学哲学書」なのだ!
従って読んで全部を理解するのはやはり無理。わかんなくても割り切ってドンドン先へ進む。進むんだけどやはり読書速度は遅い。手ごわい奴だ。笑う。
【以下、いつもの私的無駄蛇足話です。すまぬ】
普段はケータイ電話でしか電話しなくなってしまって、それは知らない番号から掛かってきた電話にはとりあえず出ない、という習性をみんな身にまとう結果を生んだ。もう固定電話は個人宅からはほぼ無くなり会社の電話にもほとんど掛かってこなくなっている。
そこで僕的にちょっと困った問題が。お客様や取引先から掛かってくる会社の電話は取った時に「はい株式会社○○です。」というのが今までの常識だった。今だってもちろん掛かってきた電話をとることが業務の一つとなっている人達はその通りやってくれるが、そのような職種はもはや絶滅寸前。だって掛かってこないのだから。
で、それでも稀に掛かって来ると たまたまそこにいた人がとる。その時の第一声は前出の「はい、株式・・・」ではなくて「もしもし」なのである。自分から名乗ることを無意識/自然に躊躇しているのだ。個人情報は自分の方から明かしてはいけない!ってなもんだ。
僕はどうにもこの様な対応に慣れなく、かつ小心者なので、会社に掛けた電話でとった相手が会社名を名乗ってくれないと、まず「あっ、ヤバ番号間違えたかっ!?」と思ってしまう。ほんとに僕は小心者なのだ。で、いやいやそもそも番号なんてプッシュしていないし。スマホの会社名で探して選んで掛けているだけなのだから、と思い直すのに約3秒。
その間に相手がこちらのとまどう雰囲気を察してくれた場合は「あ、株式会社○○です」と名乗ってくれる。でもそうでない場合はさらに僕の沈黙は続き、およそ5~6秒後に「あのぉ、○○さんですか」と小さな声でやっと言える。
なんだか僕が小心者である話になってしまったが そうではなくて、この会社の電話が掛かってきたら、まず会社名を名乗る、という対応は守って欲しい。そういうところからその会社への印象は固まって行って、その後も贔屓にするかどうか等の対応が自然と決まるのだ、という事を慎重に認識し直して欲しい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
さらにどっぷりとはまった感じ。小説を読む面白さを存分に味わった。
時間的にはグッドラックのラストシーン直後から数時間分という短い期間の話なんだけど、文字と思考の密度はとっても濃い。
人間を生体モニタとして使うって面白い考えだ。
機械知性体の感じる時空の捕らえ方も新鮮だ。
登場人物の過去や思ってることがじっくり書かれていてとても興味深かった。それには仕掛けがあるんだけど…。
会議での雪風の「問い」に、作者がどう答えるのか楽しみでならない。
それにしてもラストの雪風は美しいなあ。
雪風シリーズ3作通して読み、神林氏のほかの作品もいくつか読んでみた。娯楽としても十分楽しい作品だけれど、なんだかいろいろ哲学っぽい思考を知らないうちにさせられてる。たとえば…機械とか言葉とか人間も、創り出したものが生み出したその人には理解できる、というのは傲慢な思想なんだな。それを認めて受け入れることで、なにか違う世界が広がるのかもしれない…そんなこと。 -
いやあすごい。すごいすごい。
そんなとこまで行っちゃうとは。
神林長平氏が持っている想像力は凄まじいなあ。
そして、それを確実に言語化していく能力の卓越さ。
最高ランクのSF作家とはこういうものかと感嘆した。
まったく説明の無いまま、あまりにも高速に切り替えられていく「主観」。
「人間」が持つ一切の常識が通用しない、あまりに桁外れの展開に、付いていくのがやっとだった。
「雪風」という存在から見た世界を、こうも鮮やかに書けてしまうことに、ただ賞讃を送りたい。
表現とはこういうもんだろ、という絶対的な説得力でねじ伏せられた気分。
そして表示される<blockquote> <you have control... Lt.FUKAI> </blockquote>ここに、「戦闘妖精・雪風」の魅力が完全に詰まっていると思った。
いやあ、すごい。この瞬間の感覚は、ちょっと言葉じゃ言い表せない。
一気に視界がクリアになった感覚。
モノクロだった視界が、突然色鮮やかになったかのような感覚。
そして、<blockquote>おれは人間だ。これが、人間だ。わかったか、ジャム。</blockquote>という一文。
震えが来た。
そして迎えるラストシーン。
あまりに、極めて鮮やかに描き出される、あまりにも美しすぎる風景。
その光景が、脳裏にはっきりと刻み込まれたような気がする。
紺碧の空を切り裂いて、疾けていく黒い機影。
いやあ、本当に素晴らしい作品だった。
そして、本当に素晴らしい作家さんだなあと改めて思った。
この人の作品を、これからもずっと読み続けていきたい。 -
面白かった。哲学でSFだった。絶対完全に理解できてないと思うけど、物語として読みにくいわけでは全然ないのがすごいと思った。
クーリィ准将がどんどんかっこよくなるよね。彼女自身の変化というより、零の認識の変化と連動してるのかな。ジャムにしろ雪風にしろ、ここまで世界の認知の仕方が異なってる存在と、どんな関係に着地するのか想像できない。物語の結末まで書ききってほしい。 -
73:まともに向き合う自信がなく、発売後すぐに買ったものの約1年積んでいました。ようやく着手……読了。読み始めると面白くて止まらないのですが、これはなかなか人に勧めにくいですねー。言葉と意識、機械、世界、観測と固定、そして戦い。他の作品とも共通するテーマで、ファンとしてはウハウハなのですけど。
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「雪風」シリーズ3作目。
ストーリーはより深い意識的で時間の概念を超えた世界に突入。
難解で哲学的。しかし斬新で美しい内容。
深井零をはじめ登場人物たちの心情の変化や成長も顕著。
機械知性体と人間とジャムの意識(言語)が空間を超えて混ざり合い、まるで「言葉」で形成された迷路に迷い込んだような感覚になる。
そしてラストの雪風の飛翔シーンが相変わらず神々しいほどカッコイイ。 -
意識とは何か、言語とは何か、存在とは何か。はたまたすべてが夢の中?難解な哲学的な内容で綴られる物語を経ての、ラストでの収斂が素晴らしい。零の、リンの、存在の符丁が一致した瞬間、胸の高まりが抑えきれなかった。
小ネタとしては、「戦艦大和」の話がさらっと出てくる。(分かる人には分かる) -
2012年2月17日読了。シリーズ3作目、「ジャムの側に付く」と宣言し、FAFに対し抗戦を開始したロンバート大佐に対する特殊戦の戦い、と書くとスターウォーズのように光線銃や剣、戦闘機が飛び交うSFアクションを想像するがこれは全然違う。間違っていきなりこの「アンブロークンアロー」から読み始めた読者の反応を見てみたいものだ・・・。「ジャムとは何か分からない⇒ジャムを認識できない⇒人間にとって、認識できないものは存在しない」ため、ジャムと闘うこともできない人類に対し、「ジャムと闘う」ことを目的として作り出された戦闘機械の雪風(およびFAFの戦術コンピューター)は「ジャムに勝つためにどうすればよいか」をシミュレーションし、人類の感覚を雪風の感覚に置き換え、ジャムとの接触を図っていく・・・。あまりに哲学的で完全に内容が消化できない。この物語がどういう決着になるのか。恐ろしく気になる。「ジャムか、非ジャム(=雪風)」しか、世界にとどまる手段はないのではないか・・・。