サロメ

著者 :
  • 文藝春秋
3.75
  • (103)
  • (260)
  • (196)
  • (23)
  • (2)
本棚登録 : 2010
感想 : 246
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163905891

作品紹介・あらすじ

現代のロンドン。日本からビクトリア・アルバート美術館に派遣されている客員学芸員の甲斐祐也は、ロンドン大学のジェーン・マクノイアから、未発表版「サロメ」についての相談を受ける。このオスカー・ワイルドの戯曲は、そのセンセーショナルな内容もさることながら、ある一人の画家を世に送り出したことでも有名だ。彼の名は、オーブリー・ビアズリー。保険会社の職員だったオーブリー・ビアズリーは、1890年、18歳のときに本格的に絵を描き始め、オスカー・ワイルドに見出されて「サロメ」の挿絵で一躍有名になった後、肺結核のため25歳で早逝した。当初はフランス語で出版された「サロメ」の、英語訳出版の裏には、彼の姉で女優のメイベル、男色家としても知られたワイルドとその恋人のアルフレッド・ダグラスの、四つどもえの愛憎関係があった……。退廃とデカダンスに彩られた、時代の寵児と夭折の天才画家、美術史の驚くべき謎に迫る傑作長篇。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 2023年、最後の読了?
    原田マハさんの本は大好きですが、表紙からずーっと敬遠してた作品です。
    実際、読み進むと姉のメイベルの欲望に怖さを感じながら、引き込まれ、流石、マハさんというのが率直な感想です。

  • <幸福な王子>という童話で知っていた、オスカー・ワイルドにこのような物語があったことに驚きました。
    <サロメ>という戯曲と、その挿絵画家のオーブリー・ビアズリーという18歳の青年、そしてそのひとつ年上の姉で女優のメイベル・ビアズリーの物語です。
    あっという間に、ストーリーに引き込まれました。

    父親のない貧しい家の姉弟で、病弱なオーブリーは挿絵を描くのが天才的に上手く、運をつかむやいなや、その才能を男色家の作家、ワイルドに見出されます。
    そして、ワイルドとの仲が発展し、ワイルドの戯曲<サロメ>の挿絵と英訳(フランス語で書かれていたため)を任されます。

    <サロメ>というのは、聖人の首を欲する狂気の女性です。狂おしい片恋を成就させるために、恋する男の命を奪うという倒錯。自らの思いを遂げるために、王に聖者殺害という究極のタブーを犯させます。
    メイベルは売れない女優でしたが<サロメ>を演じたいという野望を持ちます。
    またメイベルは、弟を心配して暗躍します。オーブリーはワイルドとの仲を引き裂かれ、失意のどん底に陥ります。

    そして、ラストに待っていたものは。
    愛憎に狂った者たちの狂気の物語です。
    どこまでが、事実で、どこまでが創作なのか全くわかりませんが、凄みのあるストーリーに感服しました。
    決してドロドロとしたテイストの話ではないのですが、<幸福の王子>からは全く想像のつかない物語でした。

    • くるたんさん
      まことさん♪こんばんは♪

      まことさんのレビューに惹かれて読んでみました。

      狂気が見事ににじみ出ている作品でしたね。サロメとの見事なブレン...
      まことさん♪こんばんは♪

      まことさんのレビューに惹かれて読んでみました。

      狂気が見事ににじみ出ている作品でしたね。サロメとの見事なブレンド、堪能しました♪

      マハさんのアート系作品は初だったので、こんなに楽しめてうれしいです。
      ご紹介ありがとうございました(*≧∀≦*)
      2019/07/24
  • 「サロメ」を読んでるの?と、つぶやかれ、「知ってるの?」と聞くと、「うん。新約聖書の本で読んだよ。」という言葉を残して、消えてしまった。数分後、目の前に現れた1冊の本とともに「海外の小説なり、海外のことについて書かれているものを読むなら、聖書のことは知っておかないと、本当の意味がわからないよ。」とダメ出しされた。渡されたその本はカバーがボロボロで、かなり読み込んでいるようだ。「面白いから今もたまに読むんだ。」と一言。私の視線を感じたからか、ボロボロの説明があった。

    この作品は、オスカー・ワイルドの戯曲・妖姫「サロメ」を世に送り出された天才画家・オーブリーと姉・メイベル・ビアズリーの愛憎関係が渦巻く物語である。
     
    恥ずかしながら、今まで聖書に関心を持つようなきっかけがなかったため、聖書に関する知識がまったくなかった。
    それゆえ、宗教的な背景があるこのような作品では理解できないことや理解できていないことすらわからないことがあるということが今回よくわかった。
    例えば、異母兄弟の妻・ヘロディアスの美貌にほれ込み、兄から奪って自分の妻にし、自分とヘロデヤとの不倫を弾劾した洗礼者ヨハネ(ヨカナーン)を投獄するが、民衆に人気のある彼を処刑できない。民衆に人気というだけで、王はなぜヨハネを殺せなかったのか。それは王自身も民衆と同じようにヨハネを預言者と思っていたこと、また民衆の暴動を避けるためであったようだが、王を含む民たちが預言者を崇める理由が、当初は理解できていなかった。
    他にも、ワイルドのサロメは、ヨハネに恋慕していたという、耽美主義的な話になっているが、聖書で描かれている「サロメ」とワイルドの「サロメ」の違いがもたらすインパクトが当時に生きる人の中でどれほどのものであったかたも量ることができない。

    異端児のワイルドを納得させるあるいは超えは才能を知らしめるその挿絵画家オーブリーはそれ以上の狂人なのであろう。

    その狂人の姉・メイベルが弟を守ろうとしてアルフレッド・ダグラスと共謀し、フランス語「サロメ」の英語訳出版から弟を引き離した真実の裏事情があるのではないかと、勘繰ってしまう。例えば、メイベルがワイルドあるいはオーブリーに恋愛感情を持っているとか。

    精神に病んでいる時には避けたい本であるが、心に訴えかけるインパクトは大きい作品であった。

  • 文句なしに惹き込まれる世界だった。

    芸術の世界は縁もなければ知識もない。
    もちろん、ワイルドも「サロメ」も耳にしたことがある程度。
    なのにひと目見たら忘れられないオーブリー・ビアズリーのペン画とマハさんの描く世界に瞬く間に心は鷲掴みにされた。
    妖しさも美しさも滲み出ているオーブリーの挿絵と心の奥底が疼くような戯曲の中の台詞が心を刺激してくる。

    モノトーンのペン画。なのに渦巻く想いが色へと姿を変え、何色も混ざり合った色に取り囲まれるような感覚と
    「あたしはおまえの口に口づけするよ、ヨカナーン」こんなシンプルな言葉なのに何倍もの感情の波が押し寄せてくる感覚に襲われた。

    この史実に基づいて描かれた世界と、ワイルドの「サロメ」の戯曲との見事なブレンド。

    あり得ない例えだけれど背骨に鳥肌が立つような読後感。


    こちらのサイトで出会えた作品。出会いに感謝です。

    • あいさん
      こんばんは(^-^)/

      マハさんは最近絵画系ばかりで他は読んでないなぁ(〃∀〃)ゞ
      これは芸術系?「サロメ」って聞いたことあるけど...
      こんばんは(^-^)/

      マハさんは最近絵画系ばかりで他は読んでないなぁ(〃∀〃)ゞ
      これは芸術系?「サロメ」って聞いたことあるけどどんな話かわからないなぁ。
      モノトーンのペン画素敵だね。
      私はマハさんの新刊が絵画系なので読もうと思っているよ(^o^)v
      2019/07/27
    • くるたんさん
      けいたん♪おはよう♪

      私は逆にアートのマハさんは初(*∩ω∩)
      これはスタートからひきこまれたよ♪
      サロメも聞いたことある程度、表紙の絵、...
      けいたん♪おはよう♪

      私は逆にアートのマハさんは初(*∩ω∩)
      これはスタートからひきこまれたよ♪
      サロメも聞いたことある程度、表紙の絵、なんとなく見たことあるような…程度だったけど見事にマハさんの世界に連れ込まれたよ♪
      愛と狂気が描かれた作品だった(*≧∀≦*)


      あ、新刊、タブロー?私も予約中だけど125番目(´□`; 三 ;´□`)気長に待つわ〜。
      2019/07/27
    • あいさん
      こんばんは(^-^)/

      そうなんだ!「サロメ」もよさげだね♪
      そうそう、タブロー。
      125番目(⊙⊙)‼ それはまだまだだね。
      ...
      こんばんは(^-^)/

      そうなんだ!「サロメ」もよさげだね♪
      そうそう、タブロー。
      125番目(⊙⊙)‼ それはまだまだだね。
      私はKindleだと安いので購入しようかなと思っているけど、「たゆたえども沈まず」の方がよかったって聞いて、ちょっと先送りになってる。
      「たゆたえども沈まず」が凄く好きでね…。
      まだ余韻に浸っていたい。
      くるたんより先に読むかなぁ。
      2019/07/27
  • 表紙は予言者ヨカナーンの首に口づけをしようとするサロメを描いた一枚。
    本書はこの挿画を描いたオーブリー・ビアズリーと彼の姉・メイベル、そして戯曲「サロメ」を生み出したオスカー・ワイルドを巡る物語です。

    物語のはじまりから、ビアズリー姉弟が堕ちていく気配が満ち満ちているのです。
    誰かを想う気持ちと大きな成功への渇望に突き動かされるように、どんどんねじまがった方向に事が進んでいく様子は、怖いと思いつつ目が離せない魅力がありました。
    ラストシーンのどろりとまとわりつく蜜のような甘やかさにぞくりと鳥肌が立ちました。

    散りばめられた”禁忌”の気配に酔いしれながら読了。

  • 戯曲<サロメ>は、オスカー・ワイルドが書き下ろし、
    オーブリー・ビアズリーが挿絵を描いて、後世に残した作品である。

    21世紀。
    画家 オーブリー・ビアズリーの研究をしている甲斐祐也は、ロンドンに赴任中。
    彼のもとに、作家 オスカー・ワイルドの研究者、ジェーン・マクノイア
    という人物から、会って話をしたいというメールが届く。
    ジェーンは、甲斐に見せたいものがあると、バッグからある物を取り出す。
    それは、舞台の床下から発見されたという ”未発表の<サロメ>“ だった。 
    そこに描かれていた挿し絵の首は、
    戯曲<サロメ>に登場するヨハネの首ではなかった。
    「これが、ほんとうの <サロメ> だとしたら、新発見、いえ、事件です」

    この序章の後、真っ黒なページがあらわれ、時代は19世紀へと遡る。
    この黒いページは、戯曲の 暗転 なのだろうか?

    ここからは、ビアズリーの姉の目線で、
    弟オーブリー・ビアズリーとワイルドの物語が展開される。
    オーブリー・ビアズリーは、
    ワイルドと 彼の戯曲<サロメ> に魂を奪われ、憑りつかれる。
    そしてその執着が、誰も見たことがない絵を描き続ける原動力となるのだが…。
    語り手である姉のメイベル・ビアズリーは、
    全身全霊でワイルドから弟を守り抜こうとする。
    しかし、彼女自身も異様で容赦のない執念を見せる。

    最後から二つ目の暗転のあと、21世紀に戻る。
    ジェーンが甲斐に ”未発表の<サロメ>“ が発見された舞台を案内するのだが、
    発見された場所である舞台の床の上に立つジェーンは、
    時空を超えた存在のように仄めかされる。

    そして最後の暗転が明けると、舞台は1900年へと遡る。  
    ここで、「これが、ほんとうの <サロメ> だとしたら、新発見、いえ、事件です」
    と語られた意味が暗示される。

    破滅的、妖艶、そして耽美的な物語だった。

  • 今まで読んだマハさんの本の中では私にとって一番難しかったです。

    「楽園のカンヴァス」、「暗幕のゲルニカ」に続く作品と紹介されていたのですが、期待していたものとは違いました。
    現代から謎に迫るパートが圧倒的に少なくて、私には物足りなかったです。


    ファムファタル、怖い女ですね。
    すべては彼女の思いのままにだったのでしょうか。


    This book opened the new world of art.
    Books written by Maha always tell me many things I don't know

  • 「その淫靡さゆえ、邪悪さゆえ、目を逸らせなくなってしまうのだ。誰の心にも潜んでいる罪深きものへの興味、怖いもの見たさ、人間の原初的な感覚に、オーブリーのナイフはまっすぐに切り込んでくる。彼の<サロメ>をひと目でも見てしまったら、もう逃げられなかった。」

    オスカー・ワイルドの代表作の一つ戯曲「サロメ」の挿絵を描き、19世紀末のデカダン芸術の異端児にして天才と位置付けられたオーブリー・ビアズリーの愛憎に満ちた劇的なたった25年の人生を、彼の姉メイベルの視点から描いた原田マハさんの作品。

    正直、作中プロローグで設定された、21世紀を舞台にしたミステリー要素はかなり肩透かしだし、キーパーソンと設定されたのが女のメイベルであるためか、全体的にあまりにもメロドラマ的でちょっと食傷気味になってしまう。

    でも、マハさんの他の作品を考えても、この方のキュレーターとしての経歴的にも、こういう設定が本当に好きなんだろうなと思う。

    とはいえ、ビアズリーの作品の特色だけでなく、「サロメ」にとどまらない人生の転機も丁寧に捉えています。
    先に時代に名を馳せていたワイルドという奇抜な天才が、ひと世代下の異端の天才であるビアズリーの人生を絡め取ったようで、その実、ビアズリーの才がワイルドを踏み台に食ってしまったというのは興味深い。
    どちらも不幸になるのだけど…。

    ビアズリーの画集を眺めながらその人生を簡略に知る文芸書としては読みやすくていいと思います。

  • 未発表版「サロメ」の挿絵についての相談を受けた甲斐。
    彼の研究の対象は、その絵を描いたオーブリー・ビアズリー。
    場所はロンドン。そして過去に遡り、姉メイベルの目線で
    彼のセンセーショナルな半生が語られる。
    25歳で夭折した天才挿絵画家、オーブリー。
    姉で弟を溺愛する女優のメイベル。
    稀代の奔放な作家、オスカー・ワイルド。
    貴族の子弟でワイルドの恋人、アルフレッド・ダグラス。
    四人の愛憎劇の幕が上がる。それは「サロメ」の如く・・・。
    書棚から「画集ビアズリー」を引っ張り出し、
    絵を確認しながら読みました。
    ほんの5年の活動期間にあった出来事のフィクション化で、
    実在の人物を盛り込まれています。
    弟の才能のため、かつ、自分の女優への道のために奔走する
    姉メイベル。仲の良い姉弟の前に現れた“怪物”オスカー。
    彼と歩もうとし離れていくオーブリーへの想いが、
    メイベルを“運命の女”に変容させていく・・・その過程の怖さ。
    怪物は、怪物を生み、怪物を昇華させる。
    退廃とデカダンスに彩られた、それは劇。主役はメイベル。
    「あたしはおまえの口に口づけするよ」むぅ、ドラマチック!
    時空列が前後する中に盛り込まれたミステリー感が見事でした。

  • “「楽園のカンヴァス」「暗幕のゲルニカ」に続く野心的傑作長編”という帯と、オーブリー・ビアズリーの蠱惑的な表紙絵に惹きつけられて、手に取った本書。

    内容は、タイトル通りオスカー・ワイルドの問題作「サロメ」をめぐる物語です。
    スキャンダラスな危険要素を持つ作家オスカー・ワイルドと才能あふれる若き画家オーブリー・ビアズリー。二人の運命的な出会いあったからこそ、“聖人の首”という、聖書の中のタブーエピソードを戯曲にした「サロメ」という作品がセンセーショナルを巻き起こしたといえます。
    たとえそれが、関わった者の運命を狂わせようとも・・。
    話は、オーブリーの姉・メイベルの視点で展開しますが、メイベル自身もオスカーとオーブリー、そしてオスカーの恋人・アルフレッド・ダグラス(男)との愛憎劇に絡んできて、もう正直ドロドロなのですが、全然下品ではないところが流石です。
    ただただ、破滅的な展開に惹きつけられて、どんどんページを繰ってしまいます。
    それにしても、原田さんは、情景描写も心理描写も手に取るように伝わってきて、“実際に見てた?”という感じです。勿論フィクションなのですが、そう思わせないリアルさがあります。敢えて言わせて頂くと、オスカー・ワイルドの悪魔的な部分がちょいとぼんやりしていたかな、と思わないでもないですが、ビアズリー姉弟やアルフレッドを狂わせた“何か”を読者側で感じて。という事なのかもしれません。

  • 読ませる、読ませる。
    なのに、★四つにしたのは、出来るならばもう少し長く、この作品の中に存在していたかったという、贅沢な物足りなさからである。

    『サロメ』を巡る、ワイルドとビアズリー姉弟の物語。

    今回は現代パートは限りなく省かれていて、ほとんどが姉メイベル・ビアズリーの視点で語られている。
    『サロメ』の話自体は知っていたけれど、ワイルドの『サロメ』と、ビアズリーの挿絵にそんな大きな関係があったとは知らなかった……。

    なのに、その二人をも凌駕してしまうメイベルの化け物感が凄すぎる。
    結局、誰が誰を愛し、憎しみに駆られたのか。
    もちろん原田マハの得意とする絶妙なフィクションが織り交ぜられているとはいえ、こんなドラマがあるのなら、ワイルドの『サロメ』を読まずにはいられないなぁ……。

    『楽園のカンヴァス』からずっと、驚かされている原田ドラマ。
    ああ。今回も素敵だった。


    20170817

    早いけれど、再読。

    クライマックス〜エンディングがパッと思い浮かんで来なかったので、自分のために詳しく残す。
    以下、ネタバレ注意。

    メイベルの執念。
    弟を愛することと、自らが光を得ることの両方を遂には肯定し、ワイルドとダグラスを舞台から引きずり降ろすことに成功する。

    彼女が求めたのはオーブリーの首だったのか。
    ダグラスに英訳を求めたと嘘を吐くことで、オーブリーが喀血をした際の口付けに由来する。

    そして、姉の計略によって遠からずオーブリーは亡くなってしまう。

    そのオーブリーが求めた首は、今回の核になっている「ワイルドの首」だった。
    エンディングでたった一夜、たった一人の観客を前にサロメを演じたメイベルは、その演技を以てワイルドの息の根を止める。
    そこに、絵を埋めて。

    手に入らない愛しき男の首を欲するファムファタル。
    幕間が非常に上手い。

  • 面白くてグイグイ引き込まれた。
    ワイルドとビアズリー、こう言う関わりがあったとは知らなかった。史実では仲が悪かったと言う事になっているらしいが、知ってしまったら妄想せずにはいられないでしょう!

    主人公はワイルドとビアズリー…と見せかけて、実は二人ともメイベルの手の上で転がされていただけ。メイベルとオーブリーの関係も妖しくて複雑。メイベルは望み通りサロメになったのね。

    ただ、劇場の床下から発見された絵と原稿って事になっているから、やはりこれを書いたのはメイベルなのか?
    絵の方は印刷物の顔だけが描き加えられて晩年のワイルドになっているって事だけど、メイベルって絵も描けたって事?謎は残る。
    ビアズリーの画集を借りて来てしまった!夭折してしまって残念。

  • 真の芸術家になりたければ、君がやるべきことは、たったひとつ。地獄に落ちることだ。
    ーこの私と一緒に…。

    19世紀末のイギリスを代表する作家オスカー・ワイルドはド派手な言動とルックスで世間を騒がせていた。
    そのワイルドの作品『サロメ』の挿絵を担当することになったオーブリー・ピアズリー。
    オーブリーが生み出す絵は黒のみのただ一色のペン画。
    なのに艶やかな色彩を思い起こさせ見る者を圧倒する魅力を持つ。
    この二人の出逢いはやがて破滅へと導いていく。

    この時代の究極のタブーと知りながらも、自分の美学を疑わずひたすら自分の道を突き進む彼らの渾身の作品『サロメ』を見たくなる。
    『サロメ』の魔力にとりつかれ全てを失った彼が最後に欲したもの。
    手に入れて満足できたのだろうか。

    あの時代の上質の、激しくも儚い闇の世界を堪能できた。

  • サロメ──抗いがたい魅力を纏い、挑発的で魅惑的で、周囲を掻き乱す悪魔、化け物とも呼べる役──は、この本では誰が演じているのか…?ページをめくる度に惑わされまくりました。

    誰もが自身のうちに、渇望するモノを秘めていて、それを手に入れるためなら、罪を犯し得ない危うさがある……というのが、美しく生々しく表されている作品なのかな、と思います。

    登場人物各々の想いが交錯していてドロッドロだなぁと思いつつ……メイベルとオーブリーの母親が娘息子達を献身的に支える描写が所々挟まれるのですが、いい感じに箸休め(?)的な役割をしていて、なんとか読みきれました笑

    勝手な解釈かもしれませんが、章と章の間のページが、真っ黒なのも、、演出が凝っているなぁと。舞台を魅せられてる感覚でした。

    美しい!危ない!笑

  • サロメは私にとって高2の吹奏楽コンクールで演奏した思い出の曲。当時の私たちにはサロメの愛憎のことはわからなかった。

    サロメの裏にあるオーブリーとオスカー・ワイルドとメイベルの愛憎物語。
    サロメの話がこの3人に重なる展開は、気味悪さを感じます。真っ黒のページもめくるのが怖い。

    抜きんでた才能って儚くて怖い。

  • 少し前に
    荻原規子さんの「樹上のゆりかご」を読み、
    「サロメ」という言葉に目が止まったので。
    (恥ずかしながらそれまでは全然しらなかった)

    主人公が日本人なのかなって思ったのに、
    急に舞台が暗転して
    気づいたら過去のロンドンに飛ばされてた。

    実在した人物たちの物語だからこそ
    自分もその場に居合わせているような感覚で
    海外のことなのにかなり入り込んで
    読めてしまった。

    メイベルのことが、
    わからないようでわかるような。
    暗いところに連れて行かれるのがわかっているのに
    やめらられない、逃げられない。

    そんな気持ちで読了。

    もうひとつのサロメ
    本当にあったりして。



  • あゝ!
    あたしはたうとうお前の口に口づけしたよ、
    ヨカナーン、お前の口に口づけしたよ。


    なんて蠱惑的な文章なのだろう。

    先日、「累」という映画を観てサロメを知った。その後、美術展にてサロメの絵を見てどぎまぎし、最近気になってる原田マハさんがサロメという題の本を書いていると知り、迷わず手に取った1冊。

    この物語がどのくらい史実に基づいてるのか分からないけど、1種の解釈として本当に面白かった。読んでる途中で何回も表紙のサロメの絵をまじまじとみてしまった。

    今ではサロメが醜い顔のイメージが当たり前だけど、それを作り出したのはビアズリーだったのか。
    恋する女性は醜いのか…むむ、なるほどなぁ…

    美術をもっと学びたいと思った。原田マハさんの他の本も読んでみたい!

  • 何冊目かの原田マハさん。
    やっぱり美術といえばマハさんです。

    読者が続きが読みたくなるツボをご存知で、ストーリーを引っ張るドロドロ感と緊迫感はさすがとしか言いようがない。
    そして圧巻のラストの演出。
    虚構か、現実かといろいろな意味で考えさせられる。
    本書の題が「サロメ」なのも一つの仕掛けなのだと思います。

    美術に関心がなくても、オスカーとオーブリーの関係や、メイベルのちょっと行き過ぎた兄弟愛にハラハラさせられます。
    絵と音楽のそれっぽさを伝えるのは至難の技だと思うんですが、オーブリーの絵の妖艶さをうまく表現しています。

    登場人物の誰にも共感できないストーリーでありながら、何かを渇望したり、禁忌の恋や関係性に溺れ、愛憎を向ける相手へのドス黒い欲望が読み手を惹きつけます。
    危険な香りのする本ですが、やっぱり文体や人物描写は王道的なところもあり、万人が読める形にも落ち着いています。

    人間の泥ついた感情を描いて入るけれど、描き方が絵画的。作られた作品なんだな、フィクションなんだな、そういう安心感もあるんですよね、
    悪く言えばリアリティがあんまりないとも言えるんですが…。たぶん、あんまりにも台詞も人物描写も芝居がかったように感じてしまうことからきているのかも。

  • ビアズリーの画集を見たくなるし、学生時代以来ぶりにオスカーワイルドを読み返したくなる。

  • オスカー・ワイルドとビアズリー姉弟…原田マハさん、そうきましたか。
    史実とフィクションをうまく組み合わせて、もしかして本当にそうだったのかも!と思わせる物語でした。

    「サロメ」に関してはリヒャルト・シュトラウスの楽劇で知っていたので、ワイルドの台本を読んだことがある、といってもいいのかな。歌詞が台本通りなので。
    楽劇の解説書に、ビアズリーの挿絵やモローの絵画について触れてあり、シュトラウスの衝撃的な音楽とナラボート役の甘美な声、そしてワイルドの刺激的すぎる台本(当時中学生)を見聞きして、なんて作品に出会ってしまったのかと呆然としたことを思い出した。(この作品で嗜虐性、被虐性、露出症、ニンフォマニア…等の言葉も初めて知った)

    ワイルドとオーブリーが惹かれあったのは、天才的な才能の持ち主同士当然の流れで、そこに他者が入り込むことは、許しがたい罪。メイベルはオーブリーを愛しながら引き裂いてしまった。サロメがヨカナーンの首を撥ねさせたように。
    うーん、なんてドラマチックなんだ。

    • breadandbookさん
      こんばんは。ジヴェルニーに行ったことがあるなんて、羨ましいです。時間とお金があるなら私もゆっくり名画の世界を回ってみたいです(夢)。とりあえ...
      こんばんは。ジヴェルニーに行ったことがあるなんて、羨ましいです。時間とお金があるなら私もゆっくり名画の世界を回ってみたいです(夢)。とりあえずは、国立新美術館の「至上の印象派展」は行こうかなあと。原田マハさんの本読んで学習しておこうかしらね。
      2018/02/10
  • サロメ。フランスの戯曲を初めて知った。
    病弱で絵の才能ある弟の人生を支え続けた、一途とも狂気とも言える姉の愛。それは息子を想う母親の洗脳とも言える。時代背景が古いにも関わらず、クラシックな描写が少ないおかげで、自分の知識の範囲で想像を膨らませて読むことができた。

  • 読む人を選ぶ作品かも
    背景についての予備知識があったほうがより楽しめたのかな?
    ちょっと難しく感じてしまったよ

  • 黄色の紙にビアズリーの装画とサロメというタイトル、オスカーワイルド『サロメ』の翻訳なのかと思ってしまう。
    ところが全然違った。
    もちろんオーブリービアズリーとオスカーワイルドの事実をベースに彼らが登場するのだけれど、サロメというのは象徴で、原田さんのサロメが展開される。
    オーブリービアズリーの姉が語り手となって、オーブリーとワイルド、そして自分(メイベルビアズリー)の関係を吐露するという筋書き。だからメインは姉のメイベル。つまりサロメは……という展開。

    姉目線!そう来たか!と一本取られたような感じで溜息が出た。そして、後半になるにつれこの小説の全貌が見えてきて、そういうことですか!と今度はおでこをぺしゃりと叩きたくなるほどその発想と構成に唸った。なかなかの傑作だと思う。

    真実と想像のバランスが良かった。他の小説の芸術家達同様、原田さんの小説の芸術家は人物が生きている。絵だけしか知らなかったオーブリーが生きていて、こんな子だったのかも知れないなぁと感慨深くなる。
    原田さんは芸術に近い人だから、芸術家の人物像に違和感がない。事実からの推測がリアル。

    本書の場面転換に挿し込まれた黒い紙がとても効果的で、ビアズリーの絵の雰囲気や物語によく合っていて素晴らしいアイデアだと思った。

  • 19世紀末の大英帝国ヴィクトリア朝時代の倫敦と巴里を舞台に、実在した人物の心理を縦横無尽に語らせた物語。<聖人ヨハネの首>を巡る戯曲『サロメ』の作者オスカ-・ワイルド、その挿絵を描き一世を風靡した若き天才画家オーブリ-・ビアズリ-と舞台女優に憧れる姉のメイベル・ビアズリ-が織り成す物語は、【原田マハ】の仕掛けた漆黒の扉の奥にひそむ妖艶で陰惨な<サロメ>の世界へと誘われていき、固唾を飲んで読み耽ってしまいました。

  • サロメを知らなかったが、物語の中に入り込めました。きっとサロメを少しでも知ってる人はもっと面白かったのかなと思います。
    また、本の厚さはそこまで分厚くないのに、二倍、三倍に感じられる本でした。
    読み終わった後、登場人物を検索してしまいました。

  • サロメができるまでのハラハラ感と、その後の顛末がおもしろい!

  • オスカー・ワイルドの戯曲『サロメ』、
    挿画を描いたオーブリー・ビアズリー、
    オーブリーの姉で女優のメイベル・ビアズリー。
    19世紀の重く暗い英国、退廃的な仏国パリ。
    濃厚で妖艶なフィクション。

  • 面白かった。
    オスカーワイルドじゃなくて薄命の画家と姉にフォーカスをして紡がれる物語。
    ギリギリのラインを、正常と狂気のギリギリのラインをたゆたう感じ。
    前に読んだゴッホの話は結構イッちゃってたと感じたんだけど、イッちゃうギリギリ攻めてるからなんか結構わかる部分もある、のが良かった。

    2019.5.13
    74

  • 表紙の絵に見入ってしまいました。ピアズリーのサロメの挿絵。ビアズリー姉弟の危うい生き様に目が離せませんでした。オーブリーもまたサロメだった?
    原田マハの絵画モチーフの小説はどれも面白いです。

  • 19世紀を代表する作家オスカー・ワイルドと彼の代表作「サロメ」の挿絵を描いたオーブリー・ビアズリーの物語をオーブリーの姉・メイベルの目線で描いた物語。時代の寵児と言われたオスカーと急速に仲を深めていくオーブリーに嫉妬するメイベルが恐ろしい…どこまで真実かは分からないけど、男色家として世間をあっという間に追われるオスカー、それに巻き込まれるビアズリー姉弟。そういう時代が確かにあったんだと実感する力作。物語にぐいぐい引き込まれ、長編とは思えないくらい、一気に読み終わってしまった。

全246件中 1 - 30件を表示

著者プロフィール

1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。森美術館設立準備室勤務、MoMAへの派遣を経て独立。フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活躍する。2005年『カフーを待ちわびて』で、「日本ラブストーリー大賞」を受賞し、小説家デビュー。12年『楽園のカンヴァス』で、「山本周五郎賞」を受賞。17年『リーチ先生』で、「新田次郎文学賞」を受賞する。その他著書に、『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』『常設展示室』『リボルバー』『黒い絵』等がある。

原田マハの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×