- Amazon.co.jp ・本 (175ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309019413
感想・レビュー・書評
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「でも、所有という概念がなければ、盗みの概念もないのは当たり前だろ? 世界にたった一人でも飢えた子供がいたとしたら、全ての所有は悪だ」
「子供の頃から、俺は花火大会が好きだった。貧乏人にただで見せてくれる、最高の娯楽だよ。…全ての人間に等しく、あの火花は空に上がるんだ」
『当時の僕は選択を目の前にした時、静止よりは動く方を、そして世界から外れる方を選んだ』
「脅す武器には、日本刀を使う。拳銃ではリアリティがないし、人間を短期間で脅すには、でかい刃物が一番いい。」
「消えたよ。跡形もない ー 正確にいえば、歯だけ残ってる。身体は焼いて、骨も焼いて白い粉末になった。歯は東京湾のどっかに散らばってるだろう。あれを砕くのはなかなか面倒だから。どこかに死体が埋まってるんじゃない。文字通り、消えたんだ」
「この人生において最も正しい生き方は、苦痛と喜びを使い分けることだ。全ては、この世界から与えられる刺激に過ぎない。」
『そんなに深刻に考えるな。これまでに、歴史上何百億人という人間が死んでる。お前はその中の一人になるだけだ。全ては遊びだよ。人生を深刻に考えるな。』
『世界は理不尽に溢れている。世界中で、生まれてすぐ飢えて死ぬ子供が大勢いるだろ。大地の上でバタバタと。そういうことだよ。』詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「…それで私は熱と一緒に白くなるんだ。でもそうなる瞬間に、何か高いものがある」
彼女がそう言った時、僕は彼女の顔を見た。
「…光る、長いものが、外の高いところにある。どこかの外に、私は出たみたいになる。そして、それを見ながら、あれはなんだろう、と思う。それは綺麗で、雲より高くて、先が見えない。それで思うんだ。私はあそこにはいけない、この煙みたいに熱くなる今のこの白が、頂点だって。 -
作者のダークな世界への興味が前面に現れた作品。
芸術的なスリをする主人公にも 人間としての情があり、だけど、やっぱり闇の世界へと引き摺られていく嫌な感覚。
(私の人生に関わらないでほしい)と思う人間たちだった。 -
主人公は掏摸(スリ)の達人。
その手腕ゆえ、より権力のある悪の目に止まり、抗えない歯車の中で任務をこなすことになる、悲しい小説です。
主人公が悪であり、他には彼を操る絶対的な悪と、どうしようもない女が1人とその子どもがいる。
このあたりの設定は韓国映画に完全一致します。
全編に渡るヒリヒリ感もまた同じ。
何が違うかというと、もうそれは中村さん無二の文章力。やっぱり凄い。
人が、追い詰められた時にどう考え行動するのか、
そういった問答の描写は特に痺れます。
終盤走った感じがあったので、もう少し木崎とのやりとりが見たかったのはありますが。
何にせよ、恐ろしくエンタテイメント!!オススメ。 -
最近体重が落ちませんw
ってな事で中村文則の『掏摸 スリ』
中村さんは教団Xを初めて読んだんで、ちょっと抵抗あったけど、何のなんの読み易いし面白かった♪
若い時から掏摸を生業としている『僕』は裕福な人からしかスらないし、必要なお金しか取らずカードや財布は郵便ポストへ入れれば警察経由で本人へ戻る……。
そんな僕の師匠が有る仕事の後に行方不明に……。
そんな仕事を仕切る木崎といつの間にか引き込まれ仕事をさせられる。
勿論、断ったり失敗すれば命の保証も無い
無理難題な仕事もこなしていた僕だったが……。
2016年25冊目 -
雰囲気がクール。派手な展開が無い分、心情や暗喩が充実している。
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木崎を魅力的に感じます。
臨場感もすごかったです。