たんぽぽ娘 (河出文庫)

制作 : 伊藤典夫 
  • 河出書房新社
3.77
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本棚登録 : 816
感想 : 62
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309464053

感想・レビュー・書評

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  • 『たんぽぽ娘』を含むロバート·F·ヤングの短編集。

     私は、アニメCLANADで出てきたフレーズに『たんぽぽ娘』という作品があると聞き、当時読もうとしたら、絶版で高騰してました。

     その後、他作品で取り上げられてりし、再翻訳された走りがこの作品だったと思います。

     当時私も、これは読まなあかんやろということで、発売日に買ったこの作品。

     実は買った当初は『たんぽぽ娘』だけ読んで、そのまま10年寝かせていたみたいで、本棚から見つけて、今度は全部読んでみるかということで、読んでみました。

     まず、率直な感想は良く言えば玉石混交、悪く言えば『たんぽぽ娘』以外ほぼ駄作だなと思いました。

     なんなら中学校2年生が、俺が考えた凄い設定を考えたノートに書いていそうな内容だなと思うものも…

     短編でいわゆる雑誌に書かれた読切みたいなものが多いので、設定がわかりづらいというのもあるし、時代は1960年〜80年代というのもあって、私が、生まれる前のアメリカなので、文化や出来事がピンとこないというのもあるのかもしれません。

     ただ、この中でもやはり圧倒(というか、日本人向け?)なのが『たんぽぽ娘』だなと。

     その他『河を下る旅』、『ジャンヌの弓』、その時の時代が分かれば、『主従問題』が好きかなと思います。

     惑星が出てきたりするやつは良く分からんまま終わってかなぁっていう印象です。

     テーマというか、短編に共通しているのは、ロマンス(特に少女愛?割と成熟した女性には厳しい傾向があるような…)、アンチ戦争、反絶対君主みたいな指導者、セックス(種の保存?)があるように思いました。

     『たんぽぽ娘』が会心の一撃みたいな作品だったんだろうなと思いながらも、基本は雑誌掲載で短編を書いていた作者ですので、書きたいものに当時の流行りのものを無理矢理取り入れ感もなきにしもあらず、当時の雑誌の読者層に合ってたものがこういう作品だったという可能性もあり、当時はこういう作品が雑誌に溢れていたんだろうなと思いました。

     今読むと当たり前で古臭いで一蹴できてしまいそうな古典SFの短編集ですが、発表から50年くらい経った今でも、これは良いなと思える短編が何作かあって、なかでも『たんぽぽ娘』は今読んでも素敵な短編だと思えるだけでも本当は凄い作品なんだなと改めて思いました。

  • 奇想コレクション
    「たんぽぽ娘」時空を超えた愛の物語。
    ロバート・F・ヤング作品では「時が新しかったころ」もおすすめ

  •  13編収録の短編集。

     有名な「たんぽぽ娘」はヤングらしいロマンチックさあふれる作品。未来から来た少女に恋をした妻を持つ男の恋模様を描いた短編で、結末の鮮やかさにはため息が漏れます。

     そのほかでは「河を下る旅」もおススメ!二人の男女が出会いによって希望を持ち、再生していく姿、そしてこちらもラストに息が漏れます。

     「エミリーと不滅の詩人たち」は詩人のアンドロイドの管理をする学芸員の話。詩人たちのアンドロイドでは採算が取れない、ということでアンドロイドは破棄され、新型自動車の展示スペースにされそうになり…
     誰も不幸せにならないオチのつけ方が見事なだけでなく、未来の技術への希望を文学で表現するSF作家だからこそ書けた短編であり、そしてその二つをどちらも肯定する結末を書けたのだと思います。

     「11世紀エネルギー補給ステーションのロマンス」は読み始めたときはハードSFかと思いきや、読み終えるころにはおとぎ話に様変わりしているという、ある意味ビックリの短編。こんな話を書けるのはやっぱりヤングだけだと思います。

     ただ一方で設定が複雑な短編もいくつかあり、そうした作品は世界観がいまひとつ理解しきれず、結局後半に収録されている短編の多くがななめ読みになってしまったのが残念なところ。翻訳ものもそこそこ慣れてきたつもりだったのですが、まだまだ足りないのかなあ。

  • 女子好みのSF、13篇。
    こんなに可愛いSF作品集を読んだのは初めてかも。

    「特別急行がおくれた日」
    「河を下る旅」…男女2人が天国か地獄か、あの世行きの川下りで出会って。。
    「エミリーと不滅の詩人たち」…陰キャ女子と詩人@博物館。
    「神風」
    「たんぽぽ娘」…最後に書きました。
    「荒寥の地より」
    「主従問題」…家のドアから幸福そうな異世界へ…と思いきや。今も昔も異世界は憧れなんですね。
    「第一次火星ミッション」…少年たちの宇宙の旅。宇宙への旅の書かれ方がほのぼのしてて良い。
    「失われし時のかたみ」
    「最後の地球人、愛を求めて彷徨す」
    「11世紀エネルギー補給ステーションのロマンス」
    「スターファインダー」
    「ジャンヌの弓」…未来の王子様が少女を迎えに行く、ようなお話。

    最後に、NO.1はやっぱり表題作の「たんぽぽ娘」です。
    「『ビブリア古書堂~』かぁ。読んだことない。」と思いつつ読了。
    話がもう可愛いすぎる。少女漫画。キュンキュンする。でも、読み終わった後に、「あれ?これ読んだことある…。」と過去のデータを探しました。

    2013/6/14発行のこの作品のみの本で読了していました!このときにも「ビブリアは未読」と書いていて笑ってしまいましたが、表紙が(おそらく)同一人物の女性なんでしょうけど、同じ女性とは思えない(;^ω^)

    https://booklog.jp/users/kei1122/archives/1/4835449479

  • ビブリア古書堂で「たんぽぽ娘」を知り、井上一夫訳の「たんぽぽ娘」を読み、この本を手に取った。

    「特別急行がおくれた日」
    「河を下る旅」
    「エミリーと不滅の詩人たち」
    「神風」
    「たんぽぽ娘」
    「荒寥の地より」
    「主従問題」
    「第一次火星ミッション」
    「失われし時のかたみ」
    「最後の地球人、愛を求めて彷徨す」
    「11世紀エネルギー補給ステーションのロマンス」
    「スターファインダー」
    「ジャンヌの弓」
    以上13の短編が収められている。

    目的はやはり「たんぽぽ娘」にあった。
    本書の訳者は以前読んだものと違い、伊藤典夫氏である。
    翻訳者が違うと、やはりどこか質感が変わるもので、私は伊藤訳の方が好きだ。
    細かい表現がわかりやすいし、ロマンチックな場面はより素敵だと思う。
    「おとといは兎を見たわ、きのうは鹿、今日はあなた」という表現も伊藤訳だ。

    ストーリーはすでに知っていたのではあるが、何度読んでもいいものだと思う。

    他の作品はどうだったかというと、「たんぽぽ娘」に負けない作品ばかりだった。
    嘘偽りなく、本当にどの作品もよかった。
    その中であえて挙げるならばと思っても、「河を下る旅」、「神風」、「主従問題」、「ジャンヌの弓」と絞りきれない状態だ。

    世界観と情景描写はとにかくわたしをわくわくさせるし、物語からは切なさと安らぎの両方を感じられる。
    それでいて、二番煎じにはならない。

    これだけの物語をこんな文章で書けるのなら、さぞ執筆活動は楽しかったことと思う。
    死の前日まで次回作の準備をしていたというのも、それが理由の一つではないだろうか。

    とにかく他の作品を読みたい。
    しかし、4つの長編と200の短編のうち、日本で翻訳された作品はそう多くはない。
    あとがきによると、伊藤氏は次のヤングの短編集を計画しているようだが、彼もすでにご高齢である。

    …私は英語ができない。
    もし英語を読むことができれば、いくつかの作品は手に入る。
    「たんぽぽ娘」の原文を味わうこともできる。
    さて、どうするか。

  • たんぽぽ色の髪の未来から来た少女。
    「おとといは兎を見たわ、きのうは鹿、今日はあなた」
    「たんぽぽ娘」の、甘く切ない読後感。
    SF作家ロバート・F・ヤングの短編集。
    古臭さを感じさせない作品もあり、楽しめます。

  • たんぽぽ娘が日本人にはよく刺さると聞いていたが、自分も好みの作風だった。
    少女、時間旅行、再会という、こういう物語に弱いのかもしれない。

  • SF短編集の中に収録されていたヤングの作品を読んでから、代表作と言われているたんぽぽ娘が読みたかったので購入。少女漫画のような幸せなボーイ・ミーツ・ガールと、圧倒的な世界観が調和している素敵な短編集でした。他の短編も読んでみたい。

  • SF短編集。表題作がやはり秀逸。タイムトラベルものの一種なのだけれど、日本でいうところの「時を駆ける少女」的なセンチメンタリズムというか、甘酸っぱい初恋テイストを絡めてあるのがいい。

    視点として現代からみて目新しさはないものの、ラストの数行のどんでん返しにはやはりハッとさせられる「特別急行が遅れた日」や、途中からもしやこれは・・・?と気づくものの童話的でファンタスティックな「11世紀エネルギー補給ステーションのロマンス」など、基本的にどれも起承転結の「結」の付け方が上手いなあという印象。若干の例外を除いて、恋愛要素のあるものは基本ハッピーエンドなのも安心して読めました。

    ロバート・F・ヤングはかなり昔に『ジョナサンと宇宙クジラ』を読んだのだけれど(表紙イラストが確か川原由美子だったのだけれど検索しても古すぎて表紙絵出てこない・・・)やはり「宇宙クジラ」が登場する「スターファインダー」も面白かったです。同名の長編もあるらしいですが、翻訳者の解説によると、ヤングは晩年少女愛に傾いて成熟した女性を嫌悪するようになったそうで、作品にもそれが反映されすぎ、ちょっと微妙な側面もあるらしい(苦笑)ので、短篇だけで満足しておきます。

    ※収録作品
    「特別急行が遅れた日」「河を下る旅」「エミリーと不滅の詩人たち」「神風」「たんぽぽ娘」「荒寥の地より」「主従問題」「第一次火星ミッション」「失われし時のかたみ」「最後の地球人、愛を求めて彷徨す」「11世紀エネルギー補給ステーションのロマンス」「スターファインダー」「ジャンヌの弓」

  • 奇想コレクション最終回配本。で持っているのに
    文庫本を買ったのは、ざっくりとした短い話で
    ふわっとしたい気分になりたいときに
    ポケットに入れておけるから。
    それにしても、ちょっと前まで
    入手困難な幻の名作がうちに3冊もある。
    ネットで英語版、苦労して読んだ反動だ。

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著者プロフィール

1915年、ニューヨーク州生まれ。53年、デビュー。F&SF誌やサタデー・イブニング・ポスト誌などに200編近くの短編を発表。1986年没。短編集に『ジョナサンと宇宙クジラ』『ピーナツバター作戦』。

「2015年 『たんぽぽ娘』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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