ほかに誰がいる (幻冬舎文庫 あ 29-1)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344410770

感想・レビュー・書評

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  • あのひとのことを考えると、わたしの呼吸はため息に変わる。
    十六歳だった。
    あのひとに出会うまで十六年もかかってしまったという気持ちは、後悔に少し似ている――

    同級生の玲子を好きになったえり。玲子と親友になって幸せな気分もつかの間、思いが募るほどにどんどん壊れていくえり。
    えりの壊れ具合、信じられない行動の数々にゾッとする。そして、やっとある計画が成就したと思った矢先に知る残酷な現実・・・・

    とんでもなく危なくて、狂気にとらわれたえりを途中から応援したくなるのが不思議。
    ラストシーンは背筋がヒンヤリ。でも、えりはやっと思いどおり玲子を独り占めできたんだとちょっと嬉しい。

    これは朝倉かすみさんの初めての書き下ろし長編らしいけど、それから13年、同じ作者が愛の方向性が全く違う「平場の月」を書いたというところがなかなか感慨深い。

  • 図書館で。
    読み始めて高校生の恋愛モノかよ、と軽く読み始めたら一目ぼれの相手が女の子でびっくり。それから、なんか良い意味で作者の思惑に乗せられてズルズルと世界観に引き込まれました。いやぁ、でも無いわって感じのヒロインである意味強烈。

    それにしてもガシュウさんだったかな?彼女は可哀想だよなぁ。こんなヒロインにとりつかれてしまった悲劇というか。でもヒロインはヒロインで彼女が意図的に恋に落ちた訳でもないし。不可抗力って怖い。そして不幸だ。全然幸せじゃない。

    最後も正直ホラーなんじゃなかろうか。おおこわ。
    でも、読後の感触は悪くない。不思議な作品だった。確かに、他に誰が、なんだなぁ。


  • “一目惚れ”した相手への想いが猛烈に強く純粋であるがゆえに、言葉では足りないほど狂おしく痛みや貪欲さを感じる。

    「わたしの心をこんなに強くしめつける存在が、あの人のほかに、いったい、誰がいるというのだろう。」


    思考回路や行動とともにここまで狂ってしまうほどの一目惚れをわたしはしたことがない

  • 美しさは常に歪と隣り合わせだ。突き詰めると、歪んでいて不気味なものになりかねない。
    「好き」という一方では美しく、踏み間違えると危ない感情。
    純愛とはあまりにも聞こえが良い。狂気といえば、そうかもしれない。
    一目惚れではあるが、恋でも愛でもなかったように感じる。まるで大人になって思い返した思春期の恋愛のように。まるで、というよりそのものだ。大抵は一瞬で終わる恋をここまで強い気持ちで想い続けられるものなのか。
    この結末は必然だろうか。いや、泡沫の想いに狂って破滅することに何の悔いがあるだろう。これでよかったのだ。

    ヤンデレの小説で調べて、読んでみたんだけど、ヤンデレ…とはちょっと違うな。

  • 欲しいものは、いつもこうやって少しずつ形を変えて手に入る。
    哀れな想いだと思いました。

  • テンポがよく、3時間くらいで読了。
    最後のどんでん返しは切ない。

  • 女の子が女の子を好きになる(恋愛的な意味ではなく)のって、むしろ恋愛感情で誰かを好きになるよりも一目惚れだったり直感だったりするような気がする。
    わたしの場合学生時代この人となかよくなりたい!!って思っても、結局その人とはあまりお近づきになれずに終わったけど。
    もしも相手も同じように感じてくれてたら傾倒してしまうのもわかるし、離れていってしまったら…狂気が生まれることもあるのかもしれない。

  • あの人の声は『びろうど』のよう。だから私はあの人を『天鵞絨』と呼ぶことにした。私は私たちになるために、数々の苦行をつんだけど上手くいかなかった。私は生まれ直さなくてはいけない。

    ううむ、何と言えばいいのか。一人の女の子が同級生の女の子と一つになろうと行う行為がエスカレートしていき、破滅へと向かっていく。恋い焦がれると言っても性的な感じではなく、むしろ盲信的に神を崇拝する信者のよう。彼女の為なら痛みも」厭わない。
    その行為も心情も理解できないけれど、ある意味凄い。

  • 百合成分はゼロ。展開に吐き気がするのは私が耐性ないからだが、文章も下手だし評価できる点が見当たらない。

  • おっさんになった今、こういう物語を読んで、16歳の自分の記憶や感覚を思い出せない。こんなに誰かを好きになったことあるかさえもわからないほどに、恋愛とは遠い記憶だ。
    むしろ、おっさんの立ち位置で考えるとネズミの王様の若い女への執着心の方がリアリティがある。狂気の主人公を取り巻く現実はありがちで、余計に主人公の異様さが強調されていた。
    最後にどんでん返し的な事実を知らされたところで、読者の自分まで愕然とした。そういう意味では主人公に感情移入していたのかもしれない。

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著者プロフィール

1960 年生まれ。北海道出身。04 年「肝、焼ける」で第72 回小説現代新人賞、09 年「田村はまだか」で第30 回吉川英治文学新人賞、19 年「平場の月」で第35 回山本周五郎賞受賞。

「2021年 『ぼくは朝日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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