もぎりよ今夜も有難う (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344422308

作品紹介・あらすじ

映画「かもめ食堂」の初日挨拶で、シネスイッチ銀座の舞台に立ったとき、かつて銀座文化でもぎりのアルバイトをした7年間がキラキラした宝物のように思い出され-。「映画館の出身です!」と自らの出自を述べる俳優が、映画が活況だった頃の懐かしい思い出や、旅先の映画館での温かいエピソードをユーモアとペーソスを交えて綴る名エッセイ。

感想・レビュー・書評

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  • 日本映画界きっての名脇役であり、
    個性派女優の片桐はいりさん。

    噂には聞いてたけど、
    まさかこれほどまでに映画好き、
    そして映画館好きだったとは思いもしなかった。

    エッセイって
    好きな作家のパーソナルな部分が見えて余計に好きになったり、
    逆に自分が抱いていたイメージとギャップがあり過ぎて落胆したり、
    そういうのが面白い。

    自分は何冊か同じ作家の小説を読んでハマったら、
    次はエッセイを読んでみるのです。

    そのエッセイを面白いと感じたら
    その作家は自分にとっての生涯お気に入りになるし、
    エッセイがイマイチやと小説も次から読む気なくしたり(笑)

    自分の『好き』が本気かどうかを計る
    「踏み絵」的なものが
    僕にとってのエッセイなのです。

    ということで、はいりさんは
    小説家ではなく女優さんだけど
    コレ読んでますます好きになりました。


    それにしても
    なんという映画館愛!
    みずからの出目を問われたら、
    演劇でも映画でもなく、
    『映画館です!』と胸を張って答えたいと語る
    はいりさんがホンマカッコいい。


    18歳の頃から7年間、銀座文化劇場、今のシネスイッチ銀座で
    「もぎり嬢」として過ごした日々の思い出。

    映画『かもめ食堂』の初日舞台挨拶で
    東京での上映館は当初一館だけだったにも関わらず、
    昔の職場だったシネスイッチ銀座に役者として帰ってこれた奇跡。
    (しかももぎり嬢時代の憧れだった小林聡美さんと同じスクリーンに!)

    お客さんの笑い声が爆風となって
    映画館の重い扉をバタンバタンと押し開けたというエピソードで分かる
    昭和の映画館の異常な熱気。
    (「劇場が息をしてるよ!」は映画を愛す者だからこその、的を得た表現ですよね)

    昔の映画館はゲイやレズの人たちの発展場だったという話。
    (自分も何度も襲われた経験があります汗)

    指紋を付けないよう触る
    映画のパンフレットマニアの話。

    うらやましくなる映画館を巡る地方遠征の旅。

    そして一番ビックリしたのは
    映画館好きが興じて
    ナント今でもはいりさんは
    もぎり嬢をゲリラ的にやらせてもらってるとのこと!

    一目見れば忘れられない(笑)
    インパクトある容姿のはいりさんだけに
    お客さんのビックリも想像できるし(笑)


    自分もはいりさん同様に
    薄汚れた路地裏にひっそりと佇んでるような
    昭和の香りがプンプンする映画館が大好きでした。

    昔は入れ替え制じゃなかったので 一度入場すればあとは観たいだけ観れたし、
    (面白い映画は3連チャンとか普通に観てました笑)

    80年代頃までは映画と言えば
    2本立て3本立てが 当たり前で
    一日中大好きな映画に浸っていられた。
    (トトロとほたるの墓とかロッキーと角川映画とかね笑)

    今ではほとんどなくなった手書き看板の味のある絵。
    あの輝くスクリーン。
    ポップコーンのバターの香り。
    映画が始まる前の 『ビィー』というブザーの音。
    映写機から出る光の反射ぐあい。
    今から僕はあの甘い闇の中で
    映画を観るんだ!という
    ドキドキ感、期待感がたまらない魅力だった。

    家でまったりDVD鑑賞もいいけど、
    映画館でしか得られないもの、
    それは『生の体験』です。

    当たり前なんやけど
    苦労してお金をかけて自らの足を運んで観たもののほうが
    あとあとになっても
    『記憶』として残っているということ。

    客の入りやどういう客層が来てるかによって
    時代の空気をも肌で感じられる。

    1人でDVDを観るのとは違って、 映画館特有のみんなで笑ったり泣いたりを共有できる感覚 (ライブ感)も
    映画館だからこその醍醐味です。

    そんな映画館の良さを人に伝えるため、
    今日もどこかの映画館で
    もぎり嬢をしてるはいりさん。

    たった二時間で、
    学校では教えてくれない様々な経験を
    疑似体験させてくれる映画という表現。

    そして人々に生きる活力や希望を与えてきた
    映画館という甘ぁぁ~い暗闇に 
    改めて感謝!


    さて、僕が名画座の支配人なら
    どんな映画をセレクトしよう。

    好きな俳優や監督で縛るのもいいし、
    美味しそうな食べ物やお酒が出てくる映画をセレクトしても面白そうやし、
    ああ~!また寝れんくなるなぁ~(笑)( >_<)

    • 円軌道の外さん

      アセロラさん、あったかいコメントありがとうございます!
      顎や指など身体中の骨を骨折したりしたんで
      かなり長引いてしまいましたが、
      ...

      アセロラさん、あったかいコメントありがとうございます!
      顎や指など身体中の骨を骨折したりしたんで
      かなり長引いてしまいましたが、
      今はリハビリしながらなんとか職場復帰してます。
      ご心配感謝です(泣)(T_T)

      わぁ~、さすがアセロラさん!
      『100分de名著』見逃してたなぁ~((((((゜ロ゜;
      まさか小川洋子さんが出てたなんて!(悔)

      あっ、今、角田さんのゴロウデラックス、YouTubeで見ました!
      小学校一年生から嘘を書いてまで1日20もの作文や日記を書いてた話とか
      九九ができないのに大学に入れた話とか、
      仕事は仕事部屋まで毎日通勤して、
      1日の執筆時間は9時から5時までと決めてるとか
      めちゃくちゃ意外で面白かったです♪
      アセロラさん、教えてくださり
      ホンマありがとうございます(^^)

      ロック好きでボクシング好きで猫好きな
      角田さんとは話が合いそうだし、一度でいいから
      じかに会ってみたいなぁ~(笑)

      あっ、『サラメシ』も面白いですよね(笑)
      またいい情報ありましたら
      よろしくお願いします(笑)

      アセロラさんは今ハマってるドラマやテレビ番組ってありますか?

      2015/04/25
    • アセロラさん
      こんにちは~、O型のさそり座の女・アセロラです(笑)
      大雑把で適度に前向き、しかしウェット、というところでしょうか(笑)
      今まで仲の良か...
      こんにちは~、O型のさそり座の女・アセロラです(笑)
      大雑把で適度に前向き、しかしウェット、というところでしょうか(笑)
      今まで仲の良かった人はふたご座さんが多かったので嬉しいです♪

      今ハマってるドラマは、この間始まった『天皇の料理番』ですね。
      『ごちそうさん』と同じ脚本家さんだからなのか、時代背景も、天才的な味覚でそれ以外はからっきしな主人公なのも似ています(笑)
      (『天皇の料理番』は実在の人がモデルですが)

      あとは、BSプレミアムで放送中の『植物男子ベランダー』です!
      これ、本当に面白いですよ!イイ意味で、地上波では放送できない代物だと思います(最大級の褒め言葉ですw)
      自宅の都会のマンションのベランダで植物を育てている主人公(田口トモロヲさん!)が心の中ではハードボイルド気取ってるんですけど、端から見ると挙動不審でwww
      周辺の人たちも皆変な人ばかりで最高ですw
      円軌道さんも絶対気に入ってくださると思うので、機会があればぜひ!

      あと、お知らせです。
      今夜のゴロウ・デラックス、ゲストは『鹿の王』で本屋大賞を受賞された上橋菜穂子さんなんですが、
      コメントVTRに片桐はいりさんが出る…かもです(同級生だったそうですよ)
      2015/04/30
    • 円軌道の外さん

      アセロラさん、遅くなりましたが
      こちらにもありがとうございます!

      実は昔付き合っていた彼女が同じくO型のさそり座で、
      そういえ...

      アセロラさん、遅くなりましたが
      こちらにもありがとうございます!

      実は昔付き合っていた彼女が同じくO型のさそり座で、
      そういえば唯一本好きだったなぁ~と遠い目で思い出してしまいました(笑)(^^;)

      あっ、『天皇の料理番』はずっと録画したまま
      まだ見れてないんですよ…(T^T)
      明治・大正・昭和の初期の話って
      みんなこれからの日本に期待してるし、無条件に夢が叶うって信じてて貧しくてもみんな心が豊かで、いろいろなことに気づかせてもらえるし、単純に力をもらえますよね。

      あと『植物男子ベランダー』はNHK総合の番宣で見て
      すっげー気になってたんですよ!
      BS見れない環境なのでNHK総合で再放送してくれへんかな~( >_<)
      トモロヲさん、大好きやし、怪演っぷり見てみたいです!(笑)

      あと、ゴロデラ情報感謝感激です!(*^o^*)
      あまりに嬉し過ぎてアセロラさんの本棚にも勢いでコメントしてしまい
      申し訳ないです(汗)!
      はいりさん、やっぱVTRコメントで出てましたよね(笑)
      つか、上橋さんとただ同じクラスなだけじゃなく、かなり仲良かったみたいでビックリしました。
      そんな有名人が揃う偶然ってあるんや~って(笑)
      上橋さんは頭いい方なのにまったく偉そうにしないし、意外とサバサバした男っぽい方で(笑)
      一気に親近感わきましたよ~♪

      又吉直樹の回も録画したんで
      見るのが楽しみです!
      いつもホンマ素早い情報ありがとうございます!


      2015/05/12
  • 【感想】
    この本を手に取ろうと思ったきっかけは、原田マハ著『キネマの神様』のあとがきにて、片桐さんが若いころにもぎりのアルバイトをしていたエピソードを語っていたからだ。そして、その語り口が本当に楽しそうで、つい「片桐はいりさんって素敵な文章を書くなぁ」と心惹かれてしまったからである。

    本書はそんな片桐はいりさんの内面を知ることのできる一冊だが、やっぱり前評判通り優しい人である。片桐さんは映画が好きであるのと同時に、「映画を取り巻く文化が好き」な生粋の映画人だ。もぎりとして高場に立ち続け、休憩と称して劇場内に入り、バイト仲間たちと観て観て観まくる。ときには色恋目当てのゲイの社交場となり、ときには外回りをサボるリーマンの休憩所となるカオスな空間なのだが、そこには濃密な「人の営み」があったことは紛れもない事実だ。

    片桐さんがもぎりで働いていたのは80年代前半だから、もう40年近く前になる。彼女の口から語られる情緒あふれる銀座文化は、私にとって知らない世界だ。しかし、片桐さんの滔々とした語り口と綺麗な文章のおかげで、あの時のノスタルジーさというか、レトロでディープな感じというか、とにかく雑多としていながらどこか居心地のいい雰囲気が、目の当たりにしたこともないのに不思議と眼に浮かんでくるようだった。

    ――「この町に映画館ありませんか?」とたずねると、ゆきずりの町の人たちはたいてい嬉々として「ここにあった」「いいや、あすこにあった」と走り出し、そしてその町の思い出や、自らの映画との思い出などを幸せ顔で語りはじめるのだ。そんな姿を見るたびに、わたしはいつもあらためて映画の力を思い知らされた。
    この国にはまだどんな小さな町にも必ず、映画館とそれをめぐる記憶がうもれているもので、「この町に映画館ありませんか?」のひと言から、わたしはほんとうに多くの得がたい体験をさせていただいた。

    <キネマの神様のレビュー>
    https://booklog.jp/users/suibyoalche/archives/1/4167801337

  • いつしか時が過ぎ、すっかり時代は変わっていました。
    少しずつ世の中が変わっているので、あまり実感はなかったのですが、改めて言われてみると本当にそうです。
    学校に石炭ストーブ、石炭庫があり、日直が石炭をバケツに汲みに行っていましたし、映画館は、そうそう。立ち見で見るくらい普通でした。
    怪しい噂のある映画館、ありましたね。
    襲われるとか。
    そんな映画館もなくなりましたし、2本立てでどれだけ居座ったか友達と話すようなこともなくなりました。
    映画を録画すると、いつでも見れるから、逆に観なくなる、ってほんとですね。

    Kindleで読んでいたのですが、皆さんのマークした箇所が(ここは20人がハイライトしています。。。)なかなか、そうだよな、と思わせてくれておもしろい。。。

    やっぱり俳優さん魂、プロとして活躍されているはいりさん、素敵です。
    スポットライトが当たる花道、ぞくぞくするだろうな~

  • 片桐はいりさんのエッセイ集。
    想像どおりの人柄でした。
    映画が映画館が大好きで、誰に対しても平等、態度を変えないそんな彼女の映画館にまつわる話は映画の作品に絡められている。
    懐かしかったり、知らなかった映画館の世界を知れて楽しかった。
    芸能活動をされていても、もぎりのお仕事も機会があればされていたなんて知っていたら行ってみたくなる。
    これは他のエッセイも読みたくなります。

  • 無類の映画好き、そして映画好きが高じ銀座の映画館で7年間も "もぎり嬢" のアルバイトに勤しんでいた著者は、映画館自体にも深い深い思い入れがある。

    本書は、そんな著者が各地のレトロな映画館を巡り、映画館愛を語るノスタルジックなエッセー。「キネマ旬報」連載。

    「人生は長く静かな岡」で東急文化会館(五島プラネタリウム、パンテオン、渋谷東急…)の閉館、解体に著者が涙する姿には、強く共感した。下北沢もそうだが、再開発で思い出深いかつての(とてもいい雰囲気の)街並みがすっかり壊されしまったのが悲しい。

    「一日もぎりいたします」はユニークで面白い。本書のお陰で地元の映画館から引く手あまたになったとのこと。そりゃそうだよな。キネカ大森、大分前に一度行ったことがあったと思うが、また行ってみたくなった。「映画館がわたしの実家」、「老後も映画館に次ぐ通い続けたい」と語る著者の映画館偏愛ぶりが何だか羨ましい。

  • 「グアテマラの弟」「わたしのマトカ」とはいりさんのエッセイを手にしてきた以上、本書「もぎりよ今夜も有難う」を手にしない訳にはいきませんでした。

    はいり節が本作も全開です。

    「映画」「映画館」にまつわるはいりさんの愛が詰まっています。

    「映画館の出身です!」と自分で言えるはいりさんは学生時代から映画館でもぎりのバイトをしていたそうで、仕事の合間をぬって訪れた地方都市の映画館へも足をのばされているとのこと。

    いやぁ〜愛ですなぁ。

    「一日もぎり」のはいりさんにどこがで会える日を楽しみに。

    説明
    内容紹介
    映画「かもめ食堂」の初日挨拶で、シネスイッチ銀座の舞台に立ったとき、かつて銀座文化でもぎりのアルバイトをした7年間がキラキラした宝物のように思い出され――。「映画館の出身です! 」と自らの出自を述べる俳優が、映画が活況だった頃の懐かしい思い出や、旅先の映画館での温かいエピソードをユーモアとペーソスを交えて綴る名エッセイ。
    内容(「BOOK」データベースより)
    映画「かもめ食堂」の初日挨拶で、シネスイッチ銀座の舞台に立ったとき、かつて銀座文化でもぎりのアルバイトをした7年間がキラキラした宝物のように思い出され―。「映画館の出身です!」と自らの出自を述べる俳優が、映画が活況だった頃の懐かしい思い出や、旅先の映画館での温かいエピソードをユーモアとペーソスを交えて綴る名エッセイ。
    著者について
    一九六三年東京都生まれ。成蹊大学卒業。俳優として、舞台、映画、テレビと幅広く活躍している。主な出演作に舞台「キレイ」「ニンゲン御破算」「オイル」「R2C2」、映画「かもめ食堂」「なくもんか」、ドラマ「あまちゃん」など。DVDに「片桐はいり4倍速」、著書に『わたしのマトカ』『グアテマラの弟』などがある。
    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    片桐/はいり
    1963年東京都生まれ。成蹊大学卒業。俳優として、舞台、映画、テレビと幅広く活躍している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • 片桐はいりさんのエッセイ3冊目。かつて銀座で映画館のもぎりをしていたというはいりさんの映画愛に溢れた一冊。「キネマ旬報」に連載されていたものだそう。
    そういえば子供の頃は、映画館に指定席も入れ替え制もなく、上映途中から入って最後まで見て、また次の回の途中見始めた所まで見て映画館を出る…なんて普通だったな~と思い出す。いつの間にかシネコンだらけで小さい映画館が次々と閉館になって行くのは悲しい。私が好きな単館系映画館は、どうか長く歴史を刻んで欲しいと願うばかり。

    余談だが、私が初めて片桐はいりさんを見た(認識した?)のも映画だった。子供の頃に見た光GENJIの映画(笑)世の中には、こんな人がいるのか!と衝撃を受け、肝心の映画の内容はさっぱり思い出せない…。

  • 18歳のころから銀座の映画館でもぎり嬢をしていたはいりさんが、雑誌『キネマ旬報』にて連載していたエッセイをまとめた1冊です。
    私はもともとあまり映画を観ないほうだし、いざ観に行くときはショッピングモールの大きな映画館に行くことがほとんど。
    だから、はいりさんが綴った20年ほど前の映画館の姿は、人の温かさと俗っぽさが混在する、とても魅惑的な空間に感じられました。

    はいりさんが旅先で訪ねた劇場のエピソードもいろいろ紹介されています。
    その土地その土地の映画館はそれぞれが個性的で、"その場所で"映画を観るという特別感があるのが素敵でした。
    我が故郷・静岡の今は無き映画街にもはいりさんは足を運んでくれていたとのこと…嬉しい!
    その一方で、各地の小さな映画館がだんだんと無くなっている現実に寂しさも感じました。

    映画のタイトルをもじったエッセイの表題ににまにま。
    はいりさんのユーモアセンス、好きです。

  • 女優になる以前に銀座の映画館でチケットのもぎり嬢のアルバイトをしていたという筆者の、当時のこと、女優になったのちの映画館との関わりのこと、旅先での映画館のこと、を綴ったエッセイ集。
    片桐はいりさんのこと、女優さんとして特別ファンというほどではなかったけれど、観る作品に出演しているとついつい気になる、という存在だった。

    エッセイ読むと人柄がわかるからいい。片桐さんがいかに映画や映画館を愛しているかがよくわかるエッセイ集だった。
    俳優だけど映画観ない、とか、ミュージシャンだけど音楽聴かない、とかいう人もたまにいるし、確かに同じジャンルから吸収するのって限界があるのかもしれないけれど、そういうのとは別で単純に好きだから触れる、っていう初期衝動みたいなものって大事だと思う。

    単館系の映画館、今はシネコンに押されて(とくに地方都市は)少なくなったように思う。
    私の地元も同じで、最後にそういう小さな映画館に行ったのは中学生の時。その後郊外にシネコンが出来て、高校生以降は映画を観るときはほとんどそのシネコンになり、小さな映画館は消滅してしまった。
    今思うと、あのうらぶれた雰囲気がまた良かったんだよなって懐かしく思う。
    このエッセイはそういう小さな映画館のことも綴られていて、味のある文章とともに「こういう雰囲気の映画館なのかな」と想像出来る。
    私の住んでる隣の市には一軒だけミニシアターが残ってて、たまに行くけれど、なくなって欲しくないなとこの本を読んで強く思った。

    DVDやBlu-rayで映画を観るのも便利でいいけれど、記憶に残るのはやっぱり映画館で観た映画。
    本のタイトル、各エッセイのタイトルも何かの映画のタイトルをもじったものになっているのも、映画愛を感じました。

  • 単行本で読んだのだけど、文庫版あとがきが読みたくて購入したら、まあ、そのあとがきがすごく良かった!(もちろん、はいりさんの映画愛あふれる本篇がすばらしいのは言うまでもない。)あとがきでは、本の出版後、思いがけないご縁がつながって、映画ファンとして最高の夢が現実となった顛末が綴られている。

    「映画館で観たい映画を好き放題かけられる立場に立つには、興業会社に就職するべきか、映画会社にするべきか、真剣に悩んでいたあの頃。あの頃のわたし、やったよ!わたしはあの頃の夢のすべてを手に入れた!」

    そう、はいりさんは近所の名画座で「はいりさんセレクション」を上映できるようになったのだ。実にこれは映画ファンの夢だろう。おまけに、時折はやはりもぎりもしているそうだ。単行本を読んだときも思ったが、ふと入った映画館のもぎり嬢が片桐はいりだった!というオドロキを経験した人がうらやましい。

    あとがきの終わりの方にこんなくだりもあって、ちょっと切なくもあり、でも、はいりさんらしくすがすがしい思いがした。

    「ふた親を送ってからは、身寄りのない人間が行き場にまどう年末年始も映画館で過ごしている。ある年は、キネカの仲間と年越し蕎麦を食べ、お正月は蒲田にお年玉をいただきに行った。こうなるともう、映画館がわたしの実家、と言えなくもない」

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片桐はいりの作品

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