- Amazon.co.jp ・本 (199ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480804303
作品紹介・あらすじ
少女の目に映る世界を鮮やかに描いた第26回太宰治賞受賞作。書き下ろし作品『ピクニック』を収録。
感想・レビュー・書評
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表題作の方ではなく『ピクニック』の方の感想。
第三者の目を通してある人物とその周辺の人達を語るスタイルなので、読者は真実が完全にはわからない部分ができることで、不穏でよりざわざわした気持ちが増す。
何ていうか、クラスのヒエラルキーの頂点にいる女子達がオタクの子をニヤニヤしながら持て囃すのを見てるような居心地の悪さなんだけど、そこまではっきりとした悪意が見えないのが余計に怖い詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「こちらあみ子」
あみ子はあみ子の世界の中でそんなに不幸でもないんじゃないか。
「ピクニック」
副乳をできものと本人が信じているからと、秘密にしようとするというエピソードそのものが全てを象徴しているようだった。 -
今村夏子さんの作風が好き。
いつも、ちょっと不思議。でも自分の日常で出会ったことがありそう。いい線を突いている。 -
☆高校生のあみ子が主人公だが、この本はYAではなく一般向けの小説だろう。
「あみ子は、少し風変わりな女の子。優しい父、一緒に登下校をしてくれ兄、書道教室の先生でお腹には赤ちゃんがいる母、憧れの同級生のり君。純粋なあみ子の行動が、周囲の人々を否応なしに変えていく過程を少女の無垢な視線で鮮やかに描き、独自の世界を示した、第26回太宰治賞、第24回三島由紀夫賞受賞の異才のデビュー作。書き下ろし短編「チズさん」を収録。」
著者等紹介
今村夏子[イマムラナツコ]
1980(昭和55)年生まれ。「あたらしい娘」(「こちらあみ子」に改題)で第26回太宰治賞を受賞。単行本『こちらあみ子』で第24回三島由紀夫賞を受賞
『とんこつQ&A』を読んで、心がなんだかザワザワして、(『とんこつQ&A』は、普通の、むしろ「いい人」の、無意識に出てくる醜い部分をちょい出ししてくる短編集。)、他の今村夏子さんの作品も読んでみたくなってデビュー作を手にとった。
クセになってるー。だって、なんかリアルに人間を描いているもの~。もっと読みたい~ 笑
「こちらあみ子」
・・主人公、良かれと思ってやることなすこと裏目に出てしまう。あみ子はおそらく発達障害。空気をよむこと、人との距離感、世間の常識、場にあった発言、こういうことが、あみ子はできない。わたしもきっとあみ子といるとつらい。
だが、「良かれと思って空回り」は、自分だってやりかねない。あみ子痛いよ、あみ子やめてよ、あみ子ちょっと~と、ハラハラするのは、私の場合は、「なんだか他人事じゃないから」だった。なんか不安になった。
そして、あみ子の幸せを願うわけでもなく、あーぁ・・。思いながら読み終えた。
ただ。一人、坊主くんは、あみ子を理解し、あみ子のそばに居続けた。2人の会話にぐっときた。
メモ
「いちから教えてほしい。気持ち悪いんじゃろ。どこが」
「どこがって、そりゃあ」
「うん」
笑っていた坊主頭の顔面がふいに固く引き締まった。それであみ子は自分の真剣が、向井合う相手にちゃんと伝わったことを知った。あらためて、目を見て言った。「教えてほしい」
坊主頭はあみ子から目をそらさなかった。少しの沈黙のあと、ようやく「そりゃ」と口を開いた。そして固く引き締まったままの顔で、こう続けた。「そりゃ、おれだけのひみつじゃ」
引き締まっているのに目だけ泳いだ。だからあみ子は言葉をさがした。その目に向かって何でもよかった。やさしくしたいと強く思った。強く思うと悲しくなった。そして言葉は見つからなかった。 p114
ここ読んでほんとよかった。
「ピクニック」は、
テレビに映る芸人とは恋人だと語る七瀬さんという女性が主人公。七瀬さんは恋人についての話が上手で、それをいつも同僚の女の子たちは楽しく聞いて、恋の応援をしている・・・の・・か???
いや違うな・・。
「虚言癖」な人は、存在するのだろう。本人に嘘をついているという実感がない場合もあれば、単なる性格ではなく、その背景には何らかの障害や疾患が関係している可能性もあるそうで。
そういう人が、同じ職場に現れたとして。
私はどう接するだろう。ルミになるのか、新人になるのか。いや、どちらでもなく、七瀬さんを理解するでもなく、「え、何あの人怖・・」と関わらないようにするのではないかなと感じた。これもまたどうなのか。新人がいちばんまともなのではないかと思えてきた。
いろいろ後から考えさせられる本はいいな。後味は悪いが、いい読書だったな。人にはあまりおすすめできないが、読んでよかった。 -
面白かった。奇妙で。
だらだら読むばかりだった読書が、久しぶりに一気読みをしたなあ。
あみ子は、人との会話で普通の人が無意識に感じ取れる文脈を理解することができず、学校にも馴染めない少女。
継母の死産をきっかけに、産まれてこなかった「弟」のために木の棒に弟のお墓と、好きな男の子ののり君に書いてもらってから、母は心を病みあみ子を見ることをやめ、兄は不良になった。
あみ子は中学生になって同級生からはキモイと言われ、授業にもろくに参加せず、謎の物音に支配され生活もままならず、ある日保健室で出会った大好きなのり君に好きだと伝えて、殴られた日。
兄の不良になった不器用さと、こちらあみ子と投げかけに応答してくれた優しさ。
あみ子の話に付き合ってくれたクラスメイトの男子の素朴さ。
他短編のピクニックも面白かったー。
ローラースケートでウエイトレスをするお店の従業員の女の子たちと年上の七瀬さんの妄想癖劇場。
あみ子みたいな子は、どこにでもいるわけで。
一瞬村田さやかさんかと思ったけど、今村さんの本だった。
妙な違和感を書けるなんて、すごいなあ。 -
【ピクニック】
七瀬さんとルミたちが夏の用水路に通う辺りの描写のみずみずしさ。ゆったりとした時間が流れていていい。終わりに向かうにつれて、それまでの何でもなかった日常を意識させられるのが良かった。
「3-4x10月」「ソナチネ」のゆったりした時間が流れる日常のシーンをなんとなく思い出す。スピッツ「夏の魔物」、ユニコーン「自転車泥棒」を聴いてるときの感情とも近い。 -
善意と悪意の曖昧な境界を、その恐ろしさ哀しさ愛おしさを見事に描写している。
『こちらあみ子』では内から
『ピクニック』で外から
ラストのエッジの鋭さに胸が張り裂けそうになる。 -
何度も見かけた印象的なタイトルと表紙、今村さんのデビュー作をようやく手にしました。しかし。。。。これはなかなか難しい。
文庫の「BOOK」データベースの内容紹介には「あみ子は、少し風変わりな女の子。優しい父、一緒に登下校をしてくれ兄、書道教室の先生でお腹には赤ちゃんがいる母、憧れの同級生のり君。純粋なあみ子の行動が、周囲の人々を否応なしに変えていく過程を少女の無垢な視線で鮮やかに描き、独自の世界を示した、」と書かれています。
しかし、多動性で他人の気持ちを推し量るのが苦手な(おそらく発達障害の)あみ子の直接行動を純粋と言って良いものか。さらにそのあみ子が「否応なしに変えていく」兄は不良になって家に居付かなくなり、母は鬱状態になり、最終的に父親はあみ子を手放す。
しかし、何とも不穏で不思議な魅力を持つ本です。
デビュー作の時から、いつも今村作品を読み終えて思う感想「不穏は不穏のまま、可笑しさは可笑しさのまま受け取って『深読み』しない。それで良いのでは無いかと考えています。」だったのですね。 -
複雑な感情になる 「こちらあみ子」
悪意を感じる「ピクニック」 の2作品。
あみ子も七瀬さんも一途なんだけど……(つд;*)
とにかく、抱きしめて「大丈夫だょ」って声をかけてあげたい。そんな人になりたぃ。って思える話でした。
「特技というか、絵を描くのは好きですけど」
広島弁と【絵】と言ぅキーワードが怖すぎる(泣)