嘘の木

  • 東京創元社
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感想 : 117
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  • Amazon.co.jp ・本 (414ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488010737

感想・レビュー・書評

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  • 博物学者である父の死の謎を追う少女のお話。
    父親が研究していた「嘘を養分にして育つ木」それになる実を食べると新実を知ることが出来る。

    嘘の内容に応じて知ることのできる真実が変化する。女性が蔑まされる時代の中で女性としても、大人としても認めてもらえない少女の奮闘が良い。

    父親の見つけた化石に捏造疑惑がかかり、非難の目をから逃れるため島に来た一家。
    主人公は賢いが長女であるため、まだ幼い弟よりも冷遇されている。
    母親からも常に怒られ、自由な行動は制限されている。
     新地での生活、主人公の立ち位置の不安定さ、フワフワした不安感が漂う。

    父親が殺される事件が起きて、主人公は謎を解くためパートに入ると主人公はこのフワフワとした状態を逆手に取り"亡霊"としてひっそりと行動を進めていくことになる。
    序盤の色々が徐々に様々な要素に効いてきます。

    嘘で成長するのは木だけではなかった。

    どこからこんな設定の発想とテーマを結びつけたのか…面白かった。

  • かねてから気になっていたフランシス・ハーディング初読。
    コスタ賞児童書部門及び全部門最優秀作品受賞、ガーディアン賞、カーネギー賞最終候補。

    児童文学作品だったのね。

    しかし『自由研究には向かない殺人』だったり、本書だったり英国というのは”児童文学”という枠が広いこと。
    日本のいわゆる児童書コーナーにこんなの並んでたら”え!?”って思うけど、確かに中高生くらいになると、あのコーナーではちょっと幼い気もするし。
    その中間くらいの棚、ラインナップがあるのでしょうかね。

    さて、本書は『種の起源』が発刊直後の英国を背景にした、考古学者エラスムス・サンダリーがスキャンダルから逃れるかのように越してきたヴェイン島で繰り広げられる、彼の不審死と彼の残した謎の植物”嘘の木”にまつわる冒険ファンタジー。
    主人公はエラスムスの娘フェイス。

    正直、”嘘の木”が出てくるまでが長い。
    もったいぶり過ぎ。
    ”嘘の木”登場後はフェイスの動きも躍動感を増し、エラスムスの不審死の真相究明、”嘘”の本質やそれがもたらす害悪への示唆、宗教学や女性の社会進出前夜といった時代背景がいい具合に相まってぐいぐい進む。

    ”嘘の木”のファンタジー要素を十分に活用しきった良き冒険ミステリ。

    • しずくさん
      とても印象に残る大好きな作品でした!
      とても印象に残る大好きな作品でした!
      2022/12/17
    • fukayanegiさん
      しずくさん、こんばんは。
      コメントありがとうございます!

      フェイスの躍動ぶりが、めざましい一冊でしたよね。
      嘘のもたらす怖さもぞわ...
      しずくさん、こんばんは。
      コメントありがとうございます!

      フェイスの躍動ぶりが、めざましい一冊でしたよね。
      嘘のもたらす怖さもぞわぞわして、今でいうフェイクニュースの根源を描いているような感じもして興味深かったです。
      2022/12/17
  • 児童向けファンタジー。
    個人的にあまり好みではなくて読み進めるのにものすごく時間がかかった。
    ことの真相も最後の方に突然新たな名前が出てきてそらわからんわとおもった。

  • 女性が評価されず、虐げられ、人権を無視されている時代の話だと思う人もいるだろう。でもこの話は、この令和の現代も社会で起こっている事実だ。もし女性の話を書くなら、生理や出産などの話も絡めてほしかったけど、それでもたくましくいきる女性はいつの時代もいることに少しだけ勇気付けられる。

    ミステリー要素もありつつ、時代背景と合間って数週間の話が壮大なストーリーとなることを体感した。何より著者の言い回しが美しく、目の前で観客として見守ることができる。しかも、映画よりもすごい。匂いや感触や音…轟くような耳鳴りまで…体験できるのだから!

    夏の避暑地の読書に一冊いかが。

  • 少し長めだけど、児童ファンタジーということで児童文学、YA、一般向け。嘘の木に取り憑かれていく主人公は人間の性なのかな。

  • 大きな「起承転結」の「起」にあたる部分までに130ページ近くかかり、主人公フェイスの周りの人間が全員嫌な奴すぎるのと、いわゆる「フェミくさい」みたいな感想を持つ人がいそうで脱落者が多そうだと感じた。
    私は大好き。
    フェイス(恐らくfaith、信仰という意味?向こうの人はすごい名前をつけるな)は賢すぎる女の子だから苦労の連続。母親も父親もそんな彼女を邪険に扱いがちで、父親は一見味方のように見えてとんでもない傷を彼女につけていく。父親の激した瞬間は苛烈でつらい。やってきた島の医者は学者でもあるくせに「女は頭蓋骨が小さいから脳も小さくて劣ってる」なんてことを平気で言う。たまたま出会った同じ年頃の男の子はいきなり凄惨な場面の写真を見せたりする。新しい使用人もどこかいけすかない。
    読み切って良かった。すべてがきれいにひっくり返りました。母親も考えなしなわけではなく強かに女の戦いをしていたし、ミス・ハンターやミセス・ヴェレの違う一面をフェイスはもう知っている。ポールとくっつくラストにならなくて本当に良かった。くっついてたら絶望した。
    誰も彼も「Aさんには見せてる顔をBさんにも見せるとは限らない」わけだなあと思いました。
    「この時代にありがちな時代にそぐわない女性蔑視」という感想が見えたりするけど、現代でも割と見かける言葉が多いです。男脳女脳とかいまだにあるじゃないですか。
    ミセス・ランバントやミセス・ヴェレ、ミス・ハンターなとが「自分の固有の名前で呼ばれず、姓で呼ばれる」のとかもねー。まさにって感じがします。
    キリスト教のお葬式を知らないので黒い聖書とやらにワクワクしました。

    • しずくさん

      いいねをありがとうございました!
      『嘘の木』は本当に引き込まれました。まるもっちーさんの感想を拝読して、自分が書いたレビューをもう一度...

      いいねをありがとうございました!
      『嘘の木』は本当に引き込まれました。まるもっちーさんの感想を拝読して、自分が書いたレビューをもう一度読み返しました。台風が上陸した3年前の深夜、停電にならないようにと祈りながら明け方まで読み続けたのを憶えています。大型台風だったのに怖さを全然感じさせなかった『嘘の木』でした。
      2023/07/23
    • まるもっちーさん
      コメント気づかず返信遅れてすみません!しずくさんの感想本当に頷きながら読みました。とてもいい本ですよね。私にとっても大切な一冊です。
      コメント気づかず返信遅れてすみません!しずくさんの感想本当に頷きながら読みました。とてもいい本ですよね。私にとっても大切な一冊です。
      2023/10/21
    • しずくさん
      まるもっちーさん、おはようございます!
      全然OKよ。
      お気になさらずに、私も気づかずに半年遅れで返信したことがありますもの(*'ω'*)...
      まるもっちーさん、おはようございます!
      全然OKよ。
      お気になさらずに、私も気づかずに半年遅れで返信したことがありますもの(*'ω'*)
      私にとっても印象深い一冊だったのでついコメントしたくなったの。
      2023/10/23
  • めちゃくちゃ大きいスケールの話やのに、ほんまに横で見てるような感覚でお話が進んでいく。
    登場人物の心の内がわかってくるにつれてどんどん面白くなっていくし、どんどん広がるように展開していって止まらない。
    児玉さんの訳がまためちゃくちゃ好きやった。
    女性の生き方を決められ過ぎた世界にこんな人が居てくれたからちょっとずつ女性の世界が広がっていったんやろなぁ。
    ハーディングさんの本をもっと読みたくなった!!

  • ヤングアダルト
    少女の成長物語と19世紀のミステリー
    フェミニズムも?

    崇拝していた父が皆を騙していた
    嘘の木から真実を求める為に

    その父が何故皆を騙したのか、父を殺した人間は誰か、を1人で嘘の木を使って探していく主人公


    "お父さまはけっして、わたしを理解しても、許してもくれないだろう。でもわたしは、お父さまを理解できるし、いつかは許すことができる。"

    "でも、そうではない。ほかのご婦人がたもひとりひとりちがうのだ。"

    "「わたしは悪い例になりたいの」
    「そう」
    「そういうことなら、すばらしい一歩を踏みだせたんじゃないかしら」"


    とても清々しい少女の成長物語

  • ダークファンタジー好きにはたまらない、
    人がつく嘘を食べて成長する“嘘の木”
    嘘が大きくなればなるほど木は成長し、
    不思議な果実をつける
    果実を食べると…真実が夢となって現れる

    ジメジメした地下洞窟、ペーパーシアターの悪夢、
    閉ざされた島の閉ざされた住人と隠された真実…

    19世紀後半のイギリスで抑圧される女性たちや
    発表されたばかりのダーウィンの進化論とキリスト教の対立など、当時の揺れるイギリスの世相がダークファンタジーに散りばめられている

    主人公フェイスは好奇心豊かな14歳の女の子
    将来は尊敬する父のように自然科学者になる夢をもつけれど、結婚するか寂しく独りで生きるかしか選択肢がない現実
    女性にとってはツライ時代

    今後フェイスが不思議な動植物を見つけるシリーズや“嘘の木”がいろんな時代で人間を翻弄するシリーズになっても面白そう

  • ファンタジーで、嘘を養分に育ち、食べた者に真実を見せる実のなる不思議な木、というのが気になり読んでみました。
    牧師と博物学者である父、女であるが故に知識を持つことも賢くあることも許されない娘のフェイス。
    まだ女性差別のひどかった時代のイギリスが舞台という事で、特に前半はなかなか感情移入しにくい。
    父の死の真相をフェイスが追い始めてから、物語の勢いは加速していき面白くなった。
    嘘の木が見せるものは本当に真実なのか。
    木との出会いによって、退屈でいい子の幼いフェイスは、行動する少し大人の少女へと変化していく。
    アダムとイブの林檎をイメージしているのだろうか。

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