- Amazon.co.jp ・本 (414ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488010737
感想・レビュー・書評
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嘘を養分にして成長する木を巡る科学者の抗争に挑む少女が主人公。
フェイスの頭の回転の速さと、行動力に感服です。時代が時代だけに女性が、しかも少女が声をあげることは許されないのだろう。でも、現代でもまだまだ同じような捉えられ方なんだろうな…
SFチックな植物の設定だが、時代背景から読み取る社会情勢、貧富の差など、ドキドキのファンタジーでは終わらない、考えさせられる物語でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
図書館で。
ヴィクトリア朝?という事を念頭に置いてもちょっと娘、お父様を盲目的に信頼しすぎでしょ、と思わなくもない。でも教育も洗脳みたいなものだし仕方ないんだろうなぁ。
嘘の木の設定は非科学的だけれども嘘を吐いた人間の心理とか、嘘が段々と人の心に浸透していく様子は非常にリアル。主人公にも登場人物にも特に感情移入はしないのだけれどもところどころ共感出来るところがあり、こうなっちゃイカンよなと思う所ありそのバランスが絶妙でした。
個人的には女性というだけで男性陣に何を言っても右から左に聞き流される辛さとか、意見をするとお前何言ってんだ、みたいな顔をされる屈辱はとても理解出来る。その割に切羽詰まった時は君だけが頼りだ、みたいに言われてつい舞い上がってしまう所とかも。色々痛い話でしたが最終的に女性にも色々あるのね、と主人公が理解したのは救いでした。ミス・ハンターいいじゃないか! -
高名な博物学者、エラスムス・サンダリー師が、化石の偽造スキャンダルに追われるようにして、ヴェイン島に渡るが、娘のフェイスに手伝わせてと洞窟の奥にに謎の植物、嘘の木を隠した直後、何者かに殺されてしまう。フェイスは、父の日記から、嘘を養分として育つ嘘の木の秘密を知り、嘘の木を使って犯人を突き止めようと嘘の噂が島に広まるよう画策する。
十九世紀後半、ダーウィンの進化論に揺れる英国。創世記物語を信じる敬虔なキリスト教徒と科学が解明しつつある生物の進化の葛藤。そして、強烈な女性蔑視社会の中で、聡明な主人公フェイスが苦悩する姿や、その母親の逞しくも対照的な生き方がとても印象深かった。
それにしても、 冷徹な父親の「娘にできることは」「返せない借りを埋めあわせるために、本分をわきまえ、感謝と謙遜な気持ちを忘れずにいることだけだ。父親がそれくらい求めてもいいだろう?」という言葉が酷すぎて、フェイスが可哀想。 -
ダークな雰囲気が漂うユニークな作品でした。
展開が進むにつれどんどん物語のイメージが変わり、それが謎を深めていくようでもある。
主人公の少女は賢くすごい行動力を見せワクワクさせてくれるが、“嘘” が自ら肥大化していくような危うさを感じ心配にもなる。
打算的、また意地の悪い、そんな印象ばかりだった大人の女性たちが、最後には誰もが心から憎むことのできない、気高い存在にも思えました。 -
サンダリー師はアンチダーウィンだったのか。宗教者としての信念の方が、科学者として真実を見極める目より上回る?そしてフェイスはそんな父を軽々と越えて行くだろう。科学に理解あるとは言えない母の方が、父が生きていたよりも、フェイスの力になってくれるだろう。一種のMeT oo文学だな。フェイスやポール、ハワードといった子供達以外は皆裏の顔を持つ。左利きはこの時代の英国でも差別され、矯正されたのか。少女科学者兼名探偵。少女時代のキュリー夫人+ナンシー・ドルーみたいな?
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薄気味の悪い「嘘の木」が全てを狂わせたような気がする.父の死の真相を求める14歳の少女フェイスの生き生きとした活躍がハラハラするとともにわくわくもして,最後まで一気に読んだ.それにしても,父親の卑劣さ自分勝手さが浮かび上がり,父親を慕うフェイスがかわいそうだった.そして,女性が貶められていた時代に,果敢に立ち向かっている人々もいることでは,少し心が温かくなった.
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19世紀ダーウィンの「種の起源」に揺れるイギリス.主人公は女の子.父は化石を偽造したため一家は小さな島に逃げていく.全体的になにやら重厚な感じが漂う一冊である.
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嘘を養分に育つ木、ファンタジーというジャンルに分類されてはいるが、女性がまだ社会に進出できないし時代に、突然の父の死の真相を知ろうとするフェイスにはミステリー歴史小説のよう。
母マートルの家族を守ろうとする力、弟ハワードの環境変化に怯える姿、島の人々など、伏線もしっかりし、読み応えはあった。
政治家などが育てたら、嘘の木はどこまで育ってしまうんだろう。