- Amazon.co.jp ・本 (414ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488010737
作品紹介・あらすじ
高名な博物学者で牧師のサンダース師による世紀の大発見。だがそれが捏造だという噂が流れ、一家は世間の目を逃れるようにヴェイン島へ移住する。だが噂は島にも追いかけてきた。そんななかサンダース師が謎の死を遂げる。自殺ならば大罪だ。密かに博物学者を志す娘のフェイスは、父の死因に疑問を抱く。奇妙な父の手記。嘘を養分に育ち、真実を見せる実をつける不思議な木。フェイスは真相を暴くことができるのか? コスタ賞受賞。
感想・レビュー・書評
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翼ある人類の化石、謎めいた手記、嘘を養分に育つ奇怪な木、高名な博物学者の不可解な死。時代の枷に反発し真実を求める少女は真相を暴けるのか? コスタ賞受賞の超大作!
(出版社HPより)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
この本が児童書のカテゴリーにあることが信じられない。ものすごく重厚なミステリーファンタジーとも言うべき読み応えのある内容だった。
ダーウィンの『種の起源』が発表され、創造主である主の存在を否定するかのような恐怖に震えた時代。女性が自我に目覚め始める時代。科学とキリスト教。一家と島民。嘘と真実。そして娘と母親。
いくつもの対立が描かれるなか、父の死を追求する主人公フェイスが自分の中のいろんな面を曝け出していく姿に力強さとともに恐怖も感じる。
嘘を栄養とする木をめぐるファンタジーな面と、ミステリー要素が見事に融合してページをめくる手が止まらない。
本当にすごい話しだった。(図) -
☆4.2
高名な博物学者の父を持つ14歳のフェイスは、尊敬する父の影響を受けて博物学を好んでいる。
しかし、父が発見し世界を熱狂させた"翼を持つ人類の化石"が捏造であると新聞に記事が出てしまったことで、人の目を逃れ一家でヴェイン島に移住する。
島の人々は一家を歓迎してくれたのだが、捏造の噂はすぐ島まで届き、その狭い人間関係はめちゃくちゃに。
そんなある日、父親が死亡してしまう。
周りはみな自殺と疑わないが、娘のフェイスは何かを隠していた父の様子から疑問を持ち、父の突然の死について調べ始める。
暗闇の中で嘘を養分に育ち、実った実を食べた者に真実を見せるという"偽りの木"についての研究資料を見つけ、しかもその木は島に持ち込まれていると気付く。
きっとこの木が父親の真実を教えてくれる。
フェイスはこの木を使うことに決めた。
フェイスの噴飯やる方ない思い、そして忸怩たる思いといったら。
子どもであること、女であること、姉であること。
自らを縛る鎖に苦しみ怒る。
単なる"思春期"なんて言葉だけでは表せない、複雑でコントロールできない思いが、フェイスの胸にはつまっている。
この思いは、読んでるこちらをも息苦しくさせる。
まだ難しいことはわからない弟へ向ける気持ちも、かわいいと思うそばから憎らしくなる相反する現象にも共感しつつ胸が痛くなる。
何よりも父親へのひたむきな心が傷だらけに見えて、その心に占める存在の重さがもどかしい。
それでもフェイスは知りたい。
愛する父親に何があったのか。
偽りの木に実をつけさせるためにする行動には、結構したたかなところもあって、偶然に助けられながらもフェイスの手腕が光る。
本当にすべてが体当たりで、そこにできる傷跡も愛おしい。
読み終わった時には、フェイスはその広がった視野でこれからを生き抜いていくんだろうなと思えた。
暗くじめじめしていた世界を切り裂いて、太陽の光さす世界が見えたラストだった。
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「高名な博物学者で牧師のサンダース師による世紀の大発見。だがそれが捏造だという噂が流れ、一家は世間の目を逃れるようにヴェイン島へ移住する。だが噂は島にも追いかけてきた。そんななかサンダース師が謎の死を遂げる。自殺ならば大罪だ。密かに博物学者を志す娘のフェイスは、父の死因に疑問を抱く。奇妙な父の手記。嘘を養分に育ち、真実を見せる実をつける不思議な木。フェイスは真相を暴くことができるのか? コスタ賞受賞。」
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異色のダークファンタジー。思っていた以上に暗くて児童小説だということに驚いた。本筋としては汚名を着せられたまま死んだ父の死の真相を少女が暴く、というもの。しかしその材料として登場するのがタイトルになっている嘘の木。これは人間がついた嘘を養分に育つ、という奇怪極まりない植物なのだ。この設定がまず面白いのだが、この「嘘」というのがキーになってくる。真実を知りたいがためについた嘘が独り歩きし始め島の住人たちの暗部に迫るようになる。この何とも言えない空気感が読ませる。また母親の存在が絶妙。いい味を出している。
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はじめ四分の一は、海外作品だからなのか主人公一家に馴染めず、読むのがしんどくなったけど、主人公が父の死の真相を調べ始めるあたりからは、面白くなり、どんどん読み進みました。他の作品も読んでみたくなりました。
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ダーウィンの進化論がキリスト教徒を脅かした頃のイギリスが舞台。高名な学者の偽造疑惑と、父の汚名を削ぎたい少女と、嘘を養分に育つ木の話。タイトル通り「嘘の木」というファンタジー要素が主軸にありつつ、物語自体は謎解きが中心。ラストの母親との会話が印象的。
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こんな長い話を児童小説に区分する理由がわからない。小説自体は感動も無く暗い絶望の残滓を辿るのみだだ。多くの賞を受けているらしい。しかし
はっきり言って駄作だ。 -
博物学者である父の死の謎を追う少女のお話。
父親が研究していた「嘘を養分にして育つ木」それになる実を食べると新実を知ることが出来る。
嘘の内容に応じて知ることのできる真実が変化する。女性が蔑まされる時代の中で女性としても、大人としても認めてもらえない少女の奮闘が良い。
父親の見つけた化石に捏造疑惑がかかり、非難の目をから逃れるため島に来た一家。
主人公は賢いが長女であるため、まだ幼い弟よりも冷遇されている。
母親からも常に怒られ、自由な行動は制限されている。
新地での生活、主人公の立ち位置の不安定さ、フワフワした不安感が漂う。
父親が殺される事件が起きて、主人公は謎を解くためパートに入ると主人公はこのフワフワとした状態を逆手に取り"亡霊"としてひっそりと行動を進めていくことになる。
序盤の色々が徐々に様々な要素に効いてきます。
嘘で成長するのは木だけではなかった。
どこからこんな設定の発想とテーマを結びつけたのか…面白かった。