- Amazon.co.jp ・本 (309ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488024581
感想・レビュー・書評
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物語の豊かさとミステリの衝撃を合わせ持つ傑作。
とある高校の文化祭で起きた、校舎屋上からの転落事件で物語の幕が上がります。
今作でも、前作『七つの海を照らす星』同様に保育士・北沢春菜が『日常の謎』とも言うべき様々な出来事を、春から季節を駆け抜けるように解決していきます。個人的には『晩秋の章 それは光より速く』が、いままでと趣向が違った脱出劇風で面白かったです。サプライズもありました。
しかし冒頭の事件はさらにいつもと様相が異なっています。シリーズ初となる犠牲者と犯人という構図。重層的に織り込まれた大小数々の伏線が導きだす真相とは。
『七つの海を照らす星』で凄い作家が現れたと思ったら、2作目でさらに上を行くものを出してきました。複雑な構成を見事に書ききり、さらに大技をかましてくれます。登場人物達も多面性を持ちながら物語の中できちんと息をしています。そしてなにより、胸を締め付けられるような痛ましい事件であるにもかかわらず、どこかに温かさや希望を感じさせるのは作家の才能でしょう。『アルバトロスは羽ばたかない』の真の意味を知った時はちょっと感動しました。
次回作が本当に待ち遠しいです。
最後に、未読の方は両方の物語を楽しむためにも『七つの海を照らす星』『アルバトロスは羽ばたかない』の順で読むことをおすすめします。 -
高校の文化祭で起きた転落事故。
被害者は一命を取り留めるも、意識不明のまま。
これは事故なのか事件なのか。
その謎を解くのに、児童養護施設・七海学園で起きた
4つのエピソードが鍵となってきます。
所々違和感を感じる箇所が出て来るかと思います。
しかし、伏線が回収されていくにつれ、パズルのピースが
カチリとはまっていくような快感が。
気付けば気持ちいいくらい、綺麗に騙されました。
そして、ミスリードされたであろう箇所を再読し、
その巧みさに感嘆してしまいました。
なお、前作『七つの海を照らす星』を読んでいれば、
より一層大きな衝撃を受けると思います。
図書館スタッフ(学園前):あんりみ0
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帝塚山大学図書館OPAC
https://lib.tezukayama-u.ac.jp/opac/volume/707338 -
おわわわわああああああああ!!!
って言いたくなる本だったのですよ
まさか……まさか……?と嫌な予感がした頃には、それすらも爽やかに裏切られるなんて思わなかったのです
これは前作必至
読み終わってから、もう一度辿りたくなるのですよね?これはパラパラ見直してる人も多いハズ
どこまで書いて良いのでしょう……とちょっと躊躇してしまう
基本は短編。と見せかけて一連の事件?事故?のお話がちゃんと続いているのがまた嬉しい。
1つ1つのお話は、前作同様に豊か。
そう。豊かな感じなのですよ。
トリックも、登場人物も、読んだ後も豊か。(変換が雄嵩になってびっくりしたのです)
登場人物や環境はやっぱり同情を禁じ得なくて、そこはやっぱりズルい……!と感じてしまうのですが、前作から一貫して続くこの純粋で凛とした感じ。
なかなか味わえないミステリだったのでした。
やっぱりもう一度読みたい。 -
多分こういう話は好きなんだな。最後にはどんでん返しというか、まさかの展開!みたいなのが待ってるんだけども、まぁそういうのが大事なストーリーというよりは、キッズがもがき苦しみながらも前に進んでいく、っていうのとかね、酷い大人もいるけど、ちゃんと考えてくれてる大人もいるんやで、みたいなのとかね、こう書いてしまうとあまりにも陳腐だけども、そういうのって大事だよね。って言ってる自分は疲れているのか、それとも日常の中にそういうものを失っているのか、はてさて。
とはいえ最後はキレイなハッピーエンドというわけでもなく、そういう流れもかなり好み。
しかしアホウドリは羽ばたかないっていう話で、実際どうやって飛ぶんかなー、と思ったけど、意外や動画がほとんどなく。でもとりあえず飛ぶまでの姿が必死でなんだか健気なのであった。 -
七河迦南の最高傑作、噂に違わぬ傑作なのでミステリファンなら読んでおきたい一冊。前作を読んで置くと、心情描写も優れていることが解る。よくよく読んでいくとかなり細かい表現まで作り込まれていることがわかり、前作を超える衝撃過ぎる痛烈なサプライズに繋がっていることがよく理解出来、感嘆する。ここまで読んだなら、ぜひ次作も読んでおくべきだろう。
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このミスベスト10、2011年版9位。文庫化されてないので、このミス特有のあかんやつかと覚悟して読んだけどとても面白かった。主題となる事件とは別に連作のような短編っぽい4つの章があってそれぞれ日常の謎系の事件があるんだけどそこがとても良い。北村薫や加納朋子、その他ラノベっぽいやつとか、日常の謎を安樂椅子探偵が解決するってのは好きなジャンルです。この本も読み易いし、それぞれ意外なオチがあってかつメインの事件にもつながる構成で良くできてる。そいで、メインの事件についても最後に大技がかかってビックリするしこりゃスゲーと思うんですが。やっぱり少し無理筋のような。。どうなのかなと思って、冬の章だけ少し最初から読み返してみたのですがⅡのあたりですでに破綻してるように思うのですが。文庫化で書き換えてキズをなくそうと考えてもどうしても解決できず文庫化できないのではと思ったり。ちょっと惜しいです。
んで、自分にとってはそんなことよりもずっとミステリアスなのは、偶然、一つ前に読んだのと同じ「女子高生が校舎の屋上から転落する事件」についての謎解きだってことです。前の本で最後に明かされるトリックがこっちの本では途中で却下されたり、どっちも、そっち系のトリックが中心だったり、とんでもない奇遇が発生しております。人生においてほぼ無数に小説読んでるけど、そんなシーンに今まで出会ったことなかったのに何故2冊続くの?あり得ない。以前に古本屋を舞台にした小説を2冊続けて読んだときもビックリしたけどもうそんなレベルじゃないです。これもともと、2年続けてこのミスのベスト10に入った本同士なんだけど、こんなの偶然じゃ起らないですよね。でも、ネット見ても盗作とかオマージュとか2冊の類似性(というか全く同じネタ)が全然話題になってないのが不思議でしかたないんですが。一体どういうことなんでしょ。これが一番ミステリアスです。 -
2日かかって読んだ
とてつもなく衝撃的な展開が待っていてあまり整理が
できないままに書いている
文字数は多めであり一般的な文体だった
登場人物の名前は少し頭に残りにくい
内容は上手に作られていた。各章ごとに季節が進んでいくという構成がされていて[冬]に解決する
複雑そうに見えるが人物の考え方を理解できれば、違和感なども消えると思う
コメントありがとうございます。
たったいま、まろんさんのレビューを拝読してコメントを寄せてきたところです。
もう『空...
コメントありがとうございます。
たったいま、まろんさんのレビューを拝読してコメントを寄せてきたところです。
もう『空耳の森』が控えているのですね!
なんだかワクワクしてきました。
まろんさんがおっしゃるように、七河迦南さんの大胆かつ繊細な手腕には驚きます。
クロースアップもイリュージョンもできる大魔術師ですよね。
喜んで頂けて嬉しいです。
まろんさんのレビューから、ファンの輪が広がっていけばいいなぁ、と思っています。
コメント失礼します。
『アルバトロスは羽ばたかない』をおススメして頂いてありがとうございました!
“できることなら僕の本を...
コメント失礼します。
『アルバトロスは羽ばたかない』をおススメして頂いてありがとうございました!
“できることなら僕の本を差し上げたいくらいです”
と、までおススメして頂かなければ、たぶん文庫化されるまで買っていなかったと思います。なにぶんケチなもので(苦笑)
『アルバトロスは羽ばたかない』ですが、ミステリーとしても小説としても一級品の作品でしたね!ぜひもう一作だけでもこの「七海学園」の物語を書いてほしいな、と読み終えて自分は思いました。その時は迷わずハードカバーでも買おうと思ってます(笑)
kwosaさんのアドバイス通り、『空耳の森』は読まずに取ってあります。近いうちにそちらにも挑もうと思います。
コメントをありがとうございます。
『アルバトロスは羽ばたかない』
お読みになったのですね。
文庫派のとし長さんが、文庫化を...
コメントをありがとうございます。
『アルバトロスは羽ばたかない』
お読みになったのですね。
文庫派のとし長さんが、文庫化を待たずして読んでくださり、しかも絶賛までして頂いて、おススメした身としてはこんなに嬉しいことはありません。
とし長さんがおっしゃる通り、ミステリとしても小説としても一級品ですよね。
こんな素敵な作品に出会えたのも、実はブクログのおかげなんです。
僕も他の方に教えて頂きました。
『空耳の森』楽しみですね。
とし長さんの本棚にもおじゃましますね。