「まほろ駅前」の三浦しをんによる、人形浄瑠璃の世界を舞台にしたお話。
若い義太夫である健は、変人であると評判の三味線演者の兎一とコンビを組むように師匠に命じられ、困惑する。方やボランティアで浄瑠璃を教えている小学校でも様々な出会いがあり、様々なドラマに巻き込まれながら芸の道を歩んでいく。
「まほろ駅前」でもそうだったが、登場人物は軽やかに役割を演じでおり、本作では人形浄瑠璃という伝統芸能を扱いながらも、なんというかポップな感覚で読み進めることができた。浄瑠璃の演目を知っている人ならさらに楽しめるだろうが、まったくその分野に明るくない自分でも、よしながふみの漫画を読むように楽しめた。
最後は、浄瑠璃の世界観と、現代に生きる主人公たちの思いがリンクして、何時の時代も人の思いや感情がひしめきあって社会ができているんだなあと、じんわりとした感慨を覚えた。

2015年6月14日

読書状況 読み終わった [2015年6月14日]

天皇御前試合を含むあらゆる試合で15年無敗、伝説の、不遇の柔道家について、調べられる文献と可能な限りのインタビューを元に著された、まさしく入魂の一冊。
木村政彦の子供時代から、戦前の全盛期、戦後のプロレス時代、力道山に敗れてからの放浪時代、拓殖大学師範時代、そして晩年と、話は進んでいく。
柔道やプロレス、空手や総合格闘技の格闘技の歴史書でもあるし、師匠の牛島辰熊、因縁の力道山、弟子の岩釣兼生、さらに最終章では岩釣と関係のあった石井慧まで登場し、世紀を超えた人間ドラマのようにも思える。
本当に強く、人間的魅力にあふれた木村政彦の人生に感動すると共に、本当にすごい本を生み出すことができるもんだ、と著者の力量・努力にも関心した。

2014年8月31日

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読書状況 読み終わった [2014年8月31日]

面白かった。一気に読んでしまった。昼は会社の敵、夜は家族を守るため見えない敵と戦う一人の平凡な男。舞台はセンター南、武蔵小杉と身近なところばかり。自分も自分の人生の中で頑張ろうと思うのだった。

2014年6月7日

読書状況 読み終わった [2014年6月7日]

映画にもなってたな、という知識だけで、図書館で何と無く借りてみた。
不倫相手の赤ちゃんを誘拐した女と、その赤ちゃんが成長した後の話。主要な登場人物は女性ばかりなので、感情移入しようもなかったが、女性が母になる苦しみや葛藤、喜び、救いのようなものが見事に描かれていたように思う。読んで疲れてしまった。。。

読書状況 いま読んでる

ロードレースを題材にした小説は珍しいのではないかと思う。
スポ根的な話かなと思って読み始めたが、途中からミステリー仕立てになってくる。
展開はある程度読めるが、それよりもその犯行の背後のドラマにまんまと感動させられた。ロードレースは一人のエースをゴールさせるために、チームの他のメンバーがアシストを勤め上げる。それが1つのサクリファイスなのだが、もう一つのサクリファイスが爽やかな感動を呼び起こす。
解説で作者はロードレースの観戦したことなく、ロードバイクに乗ったこともなかったとの記載があり非常に驚いた。

 最近、選挙違反でニュースで取りざたされる徳洲会。その創業者についてのルポ。
 徳田虎雄は鹿児島県徳之島の出身、貧しい家庭で医者にかかれず弟が死んだことで医師を志したという。苦学した末医師となり、34歳という若さで開業、その後、全国規模の徳洲会グループを一代で築き上げる。80年代には政界にも進出し、医師会と真っ向から対立しながらグループを拡大した。現在はALS(筋萎縮症)にかかり、唯一動く眼球で文字盤を追い、グループの指揮を執っているという(2013年10月のニュースでは理事長退任とある)。
 著者の青木理は、丹念にインタビューを重ねていく。彼の幼少期を知る徳之島の住民や、政治家として親交のあった石原慎太郎、宿敵とも言える医師会の人間等。あらゆる角度からの意見を聞き、この怪物と言って良い人物の人生を浮き彫りにした。
 80年代にも徳之島町長を巡る選挙でも選挙法違反があり、この2013年の事件も珍しいことではないようだ。法を犯してしまうというと、悪人のようであるが、離島、僻地にも誰でも受けられる医療を提供したいという一念で行動しており、自民党と癒着した医師会に対抗するには政治に打って出る必要があり、自民に勝つためには手段は選ばない、と本人の中ではその志は一貫している。
 とてもお付き合いしたい人物ではなく、自分には真似できないのだが、このような豪傑の奥深い人物像を知ることができ、良い読書体験ができたように思う。

2013年11月3日

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読書状況 読み終わった [2013年11月3日]

 資生堂名誉会長の著者による、読書について論じた本。
 著者が幼いころからどのように本に接して来たかから始まり、影響を受けた本の紹介、読書がいかに重要か、そして現代の本・出版を取り巻く問題点まで、内容は多岐にわたる。

 影響を受けてきた本の章では、ガレア戦記や方丈記等の古典、陰影礼賛などまで、厳選された数々の本を紹介している。単なる紹介ではなく、その本を読むことの重要性や、その本の中の名文などが語られ、本当にその本に慣れ親しみ、愛読していることがわかるのだった。

 著者の書く文章も平易だが洗練されており、知性の高さをひしひしと感じた。

以下、一点だけ引用。

 ”私は、教養とは、情報(データ)や知識(インフォメーション)が元の形のまま集積したものではなく、人間という入れ物の中で知性(インテリジェンス)に変換された人間性の一部ではないかと考える。  では、人間の本質を見極めることがなぜ必要なのか。それは自分の中に、ぶれない軸を作る必要があるからだ。”

2013年8月22日

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読書状況 読み終わった [2013年8月22日]

スタンフォード大で行われた講義をまとめたまとめたもの。心理学や脳科学に基づきながら、リラクゼーションや瞑想のやり方なども紹介されている。
意思や自制心に関しての考察は的確で鋭かった。意思の力は増減する。使い果たすこともある。エコな製品を購入することで逆に自分に甘くなる、モラルライセンシングということがおきる。など。
スタンフォードで行われた講義では、毎週課題が与えられ、1週間自分の行動を替える実験を通して、受講者たちは実際に日々の週間を変えていったという。確かに、この講義の課題をじっくり取り組めば、セルフコントロールが上達するだろう、と思わされた。
それぞれの章のエピソードが、実験や研究の結果を元に話が組立てられており、ある程度信用できることも、その一因だ。そして、具体例として扱いやすいのであろう、甘いものを報酬とする実験やダイエットに結びつく話題が多く、実際にダイエットに取り組んでいる人にはすぐにでも役立つ。 まさに今の自分の状態なのだった。。。

2013年7月28日

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読書状況 読み終わった [2013年7月28日]

岡田斗司夫氏は内田樹先生のファンということでこの対談は実現している模様。2人がこれからの時代を生き抜いていくための知恵を出しあうような体裁で進行する。
しかし、熱く語る岡田氏に対しての内田先生のやんわりとした受け答えは、どう考えても岡田氏と意見を異にしていると思えるものが多く、実はこの対談は失敗しているのではと思った。
一つ一つの考え方やキーワードは面白く、ヒントになるものもあるが、ちょっと飛躍しすぎている部分もあった。典型的なのは、岡田氏のFREEexという会社では社員が月1万円出して岡田氏と仕事する権利を買っているという話だったが、私には理解し難いものだった。
お二人共それなりに好きな作家なだけに残念。

2013年7月27日

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読書状況 読み終わった [2013年7月27日]

記憶術のノウハウ本ではなく、著者が実際に記憶術を習得し、全米記憶力チャンピオンになるまでを記録した経過と、記憶術にまつわる人物やエピソードが書かれている。

マインドマップで有名なトニー・ブザンとも実際に交流があるようで、胡散臭い人間と評し、マインドマップにより記憶が10%増強される研究成果があるものの、トニー・ブザンが言うような革命的なものではないとも。

また、エピローグでは、実生活や仕事の上では記憶術を使う機会が少ないとしながらも、「記憶」が「人格」を作っているという結論も述べている。

以上のようにクールでシニカルな論調の中に著者独自の視点や主張があり、読み応えがあった。ただ、こういった参加型ジャーナリズムの翻訳本は冗長に感じられた・・・。

2013年7月28日

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読書状況 読み終わった [2013年7月28日]

ちきりんの本はちょくちょく読んでいる。
今回の本は自分にとっての「これからのキャリア」を考える上で必要と思い、あっという間に読んでしまった。
・どんな職に就くかの前に、「働き方」を考えてみてはどうか。新卒で入った会社で定年まで働くだけではなく、10年働いて1年旅行や子育てをしそれから復帰するなど。市場に需要のある仕事をしている人は既にそういったことを可能にしている。
・老後や将来の心配は、いくら貯蓄があっても、長生きするほど増大する。現在の貯蓄如何にかかわらず、心からやりたいことをやることがもっとも不安を無くすことができる方法だ。
・生き残るために市場の中で「稼ぐ」力を磨くことが一番のリスクヘッジ。
私も仕事への態度をもう少し柔軟に考えて、人生を楽しめればと思う。

2013年7月11日

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読書状況 読み終わった [2013年7月11日]

本好きの会でいただいた本。悪いグループとのしがらみ、仲の良かった友達とのギクシャクした関係、自分の関係する人たちだけとの世界などが描かれ、中学生のもやもやした感情を思い出させてくれる。
ギクシャクした関係が描かれているようで、登場人物それぞれが思いやりを持っていることがわかるラストの流れによって、非常に良い読後感だった。

2013年7月7日

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読書状況 読み終わった [2013年7月7日]

有名なブロガーの、若い時からの海外旅行で感じたことのエッセイ。職業柄経済的な観点が多い。
ピラミッドをはじめ、多くの文化遺産が、おびただしい名もなき奴隷によって成立しているクダリは、モダニズム以前の建物を見るにつけ私も常々感じていることだった。
私も学生時代の貧乏旅行で、ドメスティックな価値観がいい具合に壊された時のことを思い出した。

2013年6月3日

読書状況 読み終わった [2013年6月3日]

クスッと笑える、日常の「食」にまつわるエッセイ。不覚にもこのシリーズをいままで読んだことなかった。コンビニのおでんを買う顛末を2回分も使って書くとは。。。確かにあのおでんを初めて買った時はドキドキしたような気がする。

2013年5月6日

読書状況 読み終わった [2013年5月6日]

「弾言」と同じく、kindle本で100円セールだったので、買って読んでみた 。Q&Aで、人生、仕事、子育てなどの決断について答えていく形式。 持ち家を買うには自分のことをバランスシートで捉えられるようになってから、というように、人生を定量的に見ることが、前作と共通した著者の主張の一部だろう。「弾言」のほうが読み物としては まとまりがあった。

2013年5月4日

読書状況 読み終わった [2013年5月4日]

言語学の巨人ノーム・チョムスキーや遺伝子分野の第一人者ジェームズ・ワトソンなど、インタビューの相手は現代の知性を象徴するような学者ばかり。
MITの教授であり、インターネット企業アカマイ社を設立した、トム・レイトンの話が最もエキサイティングだった。アカマイ社がiTunesでのコンテンツ配信などを支えていることや、やインターネットでのセキュリティがますます重要になっていることなど。。。
ほとんどの学者が宗教は否定しないが、自分は無宗教、という態度を示していることも、当然ともとれるが、興味深かった。

2013年7月29日

読書状況 読み終わった [2013年7月29日]

動物写真家で知られる岩合氏の本。カメラに関するテクニックについてほとんど書かれておらず、猫との仲良くなり方とか、猫の気持ちについてのことがほとんど。イタリアやスペインなど海外での取材についての話や、猫科ということライオンについての話などもあった。

2013年5月5日

読書状況 読み終わった [2013年5月5日]

ロシアの料理は貧しいのではないかというイメージがあるので、面白いかどうか心配だったが、思いの外、抱腹絶倒。
外国でいかに日本食が恋しくなるか、童話に出てくる食べものにまつわる話など、実体験を交えて面白く書いてある。

ロシア語通訳者ならではの話も。ゴルバチョフやエリツィンとも食事の席を共にしたことがあるのだろうか、ゴルバチョフは刺身・鮨はだめだがすき焼きはOK、エリツィンはなんでもよく食べるそうだ(それが改革の度合いに比例するかのように)。

次の引用は、本当に共感できる。
「私の親類縁者には無類の食いしん坊が多く、しかも美味しいものを発見すると、それを他人にも食べさせたいという強烈な情熱に駆られる習性がある。それが人を幸せにする最も確実な方法と思い込んでいるのだ。」

食べることが好きな人におすすめの本。

2013年5月4日

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読書状況 読み終わった [2013年5月4日]

Kindle本で100円だったので購入してみた。友達関係その他を定量化するためにカネで換算したり、自分自身の能力をバランスシートで捉えたりと、下手をすると反感を買いそうな内容。しかしながら論理的な破綻がなく、ユニークな思考がダイレクトに伝わってくる熱さがあり、一気に読めた。各章最後のブックガイドも良し。

2013年5月2日

読書状況 読み終わった [2013年5月2日]

電子書籍で購入。私と同年代の著者の、実際の経験を通して語られる教育論。自己肯定感が大事という考えは特に新鮮ではなかった。障がい者の不利や不幸を感じたことなく明るく生きてきた著者だが、自分の子供が扇風機に手を突っ込みそうになったのを助けることができないことを感じた時、初めて苦しさを感じたという。子供に対しての無力感はどんな親も感じることの一つかも知れない。1人の同世代のエッセイとしては楽しめた。

2013年4月7日

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読書状況 読み終わった [2013年4月7日]

上巻読了後、下巻に入った時点で仕事が忙しくなり、なかなか読み進められなかったが、連休を利用しなんとか読了。
レビューを見ると一気に読めたという人が多いが、下巻に入ってから若干飽きてしまったのも確か。困難に立ち向かい、理想を掲げ、困難を乗り越えて行く。理想に共感した周囲や、時には敵とも言える者も味方になり、話が展開していく。一流の人間の仕事人生というのはこの繰り返しなのかもしれない。
全編を通して人間の精神が、いかに強くなれるか、いかに崇高になれるかを感じることができた。
最後は、最初の後ろ盾や、長年共に戦った直属の部下、最初の妻などとの関係が別れや回想などと共に描かれ、爽やかな感動を味わえる。

2013年5月5日

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読書状況 読み終わった [2013年5月5日]

とりあえず上巻読了。
永遠の0の著者による、出光創業者の物語。
誰よりも世の中のためを考え、あらゆる困難にめげずに、商売の哲学を貫いていく主人公。
このような人間を今この日本で描くということに非情に意味があると思った。
下巻も楽しみだ。

2013年2月24日

読書状況 読み終わった [2013年2月24日]

日刊ゲンダイに連載されていたという、都内を中心とした、個性的な本屋のガイド。一店舗あたり2〜3ページと短く、内容は掘り下げられないものの、店主との会話からいろいろなものが伝わってくる。
本の束が山積みの昔ながらの古書店から、代官山蔦屋まで、紹介されている本屋はバラエティに富む。
本の匂いのするあの空間に行ったような気になれた。内容が短いことは、気になった店には自ら行きたいと思わせる効果もあった。

2013年5月19日

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読書状況 読み終わった [2013年5月19日]

2007年の本なので少し古いがKindleストアで安かったので購入してみた。
もっと自慢話的に鼻につくかと思ったが、
空間・情報・思考の整理というように章立てが整理され、
自身の代表的な仕事を例にとってそれぞれの整理術を説明しており、わかりやすく、読んで損な気はしない本だった。
ユニクロのブランディングについてページが割かれていたが、
柳井氏とどのようなやりとりをしたかがわかって興味深かった。

2013年2月11日

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読書状況 読み終わった [2013年2月11日]
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