スロウハイツの神様(下) (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062765572

感想・レビュー・書評

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  • 人と人とが支え合っている、影響し合っている事がなんて素晴らしいだろと気づかしてくれた作品。コウちゃんの「久しぶりです」の意味がわかった時心が温かくなりました。

    会話と会話の間にある情景や描写がキャラクターの感情を表現していたり、問題提起をしていたりと読んでて飽きない。

    辻村深月さんの作品大好き。

  • こんなに大円団っていいのか!っていうくらいできすぎた終わり方だった。いいんだよ!小説なんだもん!みんなが幸せになれて本当に良かった

  • 上巻のレビューにも書いたが、赤羽環の描かれ方にとても好感が持てる。下巻では特に以下の場面がとても心に残った。

    物語の後半に、環が「アメリカへ行く」ことを同居する友人達に伝えるシーンがある(P.281)。
    自分がアメリカへ行くことの理由を、彼女は「もうずっと前から考えていて、最近ようやく自分を受け入れてくれる先が見つかった」と語っている。しかし、スロウハイツは、オーナーである環が強力な個性と牽引力をもって運営してきた共同住宅だ。だから、オーナーである自分が居なくなれば、自然と解散してしまうことは彼女にも分かっていたはずだと思う。
    しかし、彼女は(自分自身を含めた)スロウハイツの住人全員が、もうスロウハイツがなくても独り立ちできるようになったことに、誰よりも早く気付いたのだと思う。だから、彼女はあえて、率先してアメリカ行きを決め、スロウハイツに自らを幕を引いたのだと思う。環の、友人達に対する愛情のかけ方が、とてもいいなと思った。

    最終章で、一気に(しかし丁寧に)伏線が回収されるところも良かった。それにしても面白かったなぁ、スロウハイツ。初めて辻村深月の小説を読んだけど、読みやすいし、とにかく面白かった(この本を私に勧めてくれた友人に感謝したいと思う)。この機会に他の作品も読んでみようと思う。

  • 下巻は一気に読んでしまいました。

    やられましたねー。半分くらいの伏線には気づいたけれど、そこまで張ってあったのかってくらいに、怒涛の回収ラッシュ。しかも、拾い方がとてもおしゃれなんですよね。さりげなくてね。

    上巻で大きな山場をもってくることなく、我慢して溜めて下巻でガッと動かす。なかなか勇気のいる構造だと思います。絶対に上巻で切らせないような興味の引き方をしていて、みごと成功させた辻村さんの力量はさすがです。

    内容に関しても、芸術家たちの内面のややこしい(笑)葛藤を描きつつも、決して飽きさせないように話を展開させていきます。心情描写は軽めですが、ひとつひとつのエピソードが際立っているので、そこから読み取れる人は読み取れるのかもしれない。

    とかなんとか言いながらも、この作品の一番良いところは、やはり主人公たちの住むスロウハイツの暖かさでした。作中でも、優しさとか、厳しさとか、甘さとか、偽善だとか、怒りだとか、愛情だとか、相手に勝ちたいとか、馬鹿にされたくないとか、本当にいろいろな感情がピックアップされていて、それらが真剣に語られているのですが、スロウハイツとそこに住む人々は皆、間違いなく優しい。ほんとうに素敵な世界です。こんなところに住みたい。こんな友人達と夢を追いたい。

    読後感がさわやかで、一抹の寂しさと大きな希望を残して終わる、素晴らしい作品でした。

  • クリエイター(とその卵)たちが集う、トキワ荘のようなスロウハイツ。
    クリエイターはみんなこうなのだろうかと思うほどに、ふだん鈍感に生きているわたしには、彼らの鋭敏なアンテナは時に鋭い刃物のような緊張をも強いるけれど、そのなかにある互いへのリスペクト、強さと優しさ、不器用さが読み手を苦しくさせるほどに押し寄せてくる。

    そして、登場人物を丁寧に描いた(特に大きな事件もない)上巻に比して、下巻の展開の早さ、驚くほどの伏線の回収には、もはや「やられた!」という気分。
    can、ableには鳥肌です。

    絶望のあとの希望が素晴らしくて、ラストのほうはページをめくる手が止まらなかった。
    上巻で登場人物のキャラクターをしっかり押さえていられたからこその下巻だと思う。辻村深月さんは、きっとスロウハイツにぴったりの作家さんなのだろうな。
    ある意味では、スロウハイツの住人達はクリエイターであり役者でもある。すべてわかったうえで、「あ、ここにもヒントがあったのか!」と楽しみながら再読してみたい。

  • 自己実現という知恵の実を食べて目覚めてしまった人間は、もうただ生きるために生きていくことなんて、できない。苦しくて、でも追い求めないではいられない。求めるあまりに己を欺瞞の中に置く人、嘘でもいいからすがる人。挫折して折り合いをつける人。考えるのをやめてしまった人。
    作家だけに言えることじゃない。何かを追い求める人、なし得たいと思ってる人の話である。

    小説を酒に例えた漫画がありましたが、その通りだと思います。自分の中にある殺意だの希望だの愛だの欲望を、小説の力をかりて強くする。
    強くする力を持っている。

    この小説は、世界一可愛いツンデレと、世界一素敵なストーカーの愛の話である。

  • 環の神様、コーキにとってもまた環が神様だった。
    これは環とコーキのラブストーリーだと思った。2人が今までの経緯をカミングアウトしないとこが、第三者にはもどかしく、奥ゆかしく、2人が愛らしく奥深くステキに思える。

    伏線もたくさんあって、ひとつひとつが明らかになっていくのが心地よい。
    コウちゃん、全然手に負えない子ども大人じゃないじゃん!

    すっかり辻村ワールドにはまり、次読む作品を考えている…!

  • 北海道出張のおともに上下巻持って行ったのだけど…、一気読みしてしまった。最終章あたりの一番盛り上がるところを丁度帰りの飛行機で読んだのだけど、途中感心するから感動するやら何度も「落ち着け、ページを繰り急ぐな、ここ大事に味わうところやからゆっくり読めって俺」って自分を制御しようと本から目を離し深呼吸して…機内で挙動不審のおっさん化してもうた。

    上巻含め前半あたりは「トキワ荘物語」+「東京バンドワゴン」みたいなイメージで、これって辻村深月が書く小路作品みたいな感じやなぁと、登場人物のキャラクターを味わって、群像劇的な読み方をしてたのだけど。

    後半の謎解き(?)とスロウハイツ解散の危機あたりで、種まきというか風呂敷をこういう風に広げてたんだと気付く。そこあたりからの収束への進み方が上手い、後で冷静に考えたら、予想できる謎解きだし、展開も推測しやすい類のものだと思えるんだけど、物語との波長が性にあったんだろうなぁ。

    コーキの復活、ケーキの謎、図書館の蔵書や駅のテレビの件、いちいち「そうか、これか」と得心が行き、その都度ため息をつき…

    落としどころに向かって収束まで上手に構成された小説を読む醍醐味を、存分に味わえて幸せになれる作品でした。

  • 相変わらず伏線がすごい。
    これも伏線だったの!?と思う所がありすぎ。

    もどかしくて、早く結末が知りたくて、でも終わってほしくない。
    ずっと続いてほしいと思ったお話。

    コウちゃん、それ完全にストーカーでしょw

  • 停滞はよくない。

    いい男に釣り合いたいなら、自分の力で、まず頑張るべき・・・。

    ありのままの自分を大切にするのは良いことだと思う。でも、自分の未熟な部分を放置してしまうようではいけないなと思った。

    生きている限り、成長し続けたい。それがどんなに些細な事でも。

    人に頼ったり、甘えたりする事も大事だと思う。
    でも、それが楽なことに気付いて、相手に寄りかかることだけを考えるような人にはなりたくない。

    相手に縋る前に、まずは努力する人でいたい。
    自分の力で頑張ることが出来る人でいたいと思った小説でした。

  • 上巻では謎だった事柄がどんどん明らかになって、おもしろい!

    チヨダコーキ目線の過去のお話、すごい好き。
    他の人から見たら「?」と取られる行動が、全部優しさによるものだったんだなあ、と気づかされ目頭が熱くなります。

    上巻で好きだと思った登人物達がより一層好きになってしまいました。

    同じ事や同じ物でも人によって捉え方が違う。
    良く思われたり悪く思われたりするけど、それを周りの空気に乗っかってなんとなく良く言ったり悪く言ったりって良くないな。
    とこの本を読んで改めて思いました。
    ちゃんと自分を持っていられる自分でありたい。

  • 登場人物全てがだいすきになった。
    こういう終わり方で本当によかった。

  • ラスト、怒涛の展開。
    すごい、力というか、信念というか、情念というか、強いものを感じさせる。
    みんながちょっとずつ幸せになっていて、うれしい。

  • 2014.04.04読了。上巻から想像してたよりもよっぽど良かった!正直上巻では退屈と思っていたのですがw、進めるにつれてどんどん引き込まれ一気読み。夢だと思ってたら、愛がテーマでした。自分の作った作品で、読者が集団自殺(他殺)をしてしまった過去を持つ登場人物チヨダコーキがいて、思い出す。確かドラマ『ギフト』でキムタクが持っていたバタフライナイフに憧れて、少年犯罪が起こって、それ以来再送中止、DVDとかにもなってなかった。あれ好きだったんだけど、メディアが持つ影響力って、やっぱり、すごい。いい意味でも悪い意味でも。そして、この作中でも触れられているけど、いい影響はそこまで取り扱われないのに、悪い影響は、いつまでも、しつこく、取り扱われる。同じものからいい方向へ進んだ人の方が、多いかもしれないのにね。
    辻村作品で同じトリック少なくとも4回目なのに、見破れず、不覚。

    • ラスカルさん
      素敵ですよね。この作品が一番好きです。
      素敵ですよね。この作品が一番好きです。
      2014/05/17
  • おもしろい❗️
    久しぶりにのめり込むように読んだ。最初から伏線バリバリのこの話。すごすきます。最後には絡まった糸が見事にほつれていくようだった。長いけど、長さを感じない内容の濃さ。ハマった!

  • 最高に面白かった。
    久しぶりに寝るのも飯食べるのも忘れるほどのめり込んだ小説に出会えた気がする。
    伏線回収が気持ち良い作り込まれたシナリオもさながら、それぞれの登場人物にとても惹かれた。作家、脚本家、漫画家、映画監督、写真家など、ものを作り出す人間とはこういう者であるという作者の強いメッセージがこの物語の登場人物として形になっているように思う。様々なタイプのクリエイター達が一つ屋根の下で暮らし、それぞれに影響を与えながら、物語が展開していく。『氷のくじら』でもそうだったように、作者は藤子・F・不二雄が好きなんだなと思った。この物語に出てくるスロウハイツは、完全にあのトキワ荘をモチーフにしているからだ。クリエイター同士が意地を張り合い、ときには喧嘩をしながらもお互いを高め合っていく。そんな日常が少しずつミステリー調にゆがんでいき、その中でそれぞれの登場人物の過去が明かされて行く。スロウハイツを中心に、思いも掛けない思惑が見え隠れし、それぞれの人物の心情があらわになっていく。最後は快晴の青空のように気持ちのいいラストで締めくくられ、読後はしばらく放心状態になってしまった。
    純粋に、この物語に出会えて良かったと感じさせてくれた。
    ぜひ、一読あれ。

  • 本当に良かった!!辻村ファン必読。

  • さすが辻村さん、の一言に尽きる。
    上巻を読んだだけでは物語がどこに向かうのか全く予想がつかなかったが、結末はなるほど、という感じで、これでもかというほど伏線が散りばめられていたことに気付いた。
    現実にもこんな素敵な出来事があればいいのにと思う一方、たとえそんなことが起きても本人たちにはその事がわからないだろう。
    これは傍観している読者にしかわからない、小説ならではの面白さであると思う。

  • チラチラとふせんがあり最後につながったときによかったと思った
    この単調な文で泣くとは思わなかった

  • コウちゃん!
    とにかくコウちゃん大好き!愛おしすぎるよ、あなたは!

    途中先が読めたから、余計に嬉しくって、でも切なくて泣けた。
    お互いが支えとなってて、生きる活力になってたなんて…!

    読み終えてすぐ上下巻とも読み返す。
    ますます辻村ワールドにハマりそうです。

    あ〜すごーーく幸せ気分!

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著者プロフィール

1980年山梨県生まれ。2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。11年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、12年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、18年『かがみの孤城』で第15回本屋大賞を受賞。『ふちなしのかがみ』『きのうの影ふみ』『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』『本日は大安なり』『オーダーメイド殺人クラブ』『噛みあわない会話と、ある過去について』『傲慢と善良』『琥珀の夏』『闇祓』『レジェンドアニメ!』など著書多数。

「2023年 『この夏の星を見る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

辻村深月の作品

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