「利他」とは何か (集英社新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087211580

感想・レビュー・書評

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  • 「利他」のマインドセットではなく、「利他」そのものについて紐解かれた新書。5人の方が書かれているが、特に編集者の伊藤亜紗さんの著作がすうっと心に入ってきた。
    「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教える」に納得。魚を与える方法では利他にならず、悪しき依存を生み出すだけ。落ちこぼれを防止するためにアメリカにおいて施行された小中学校での学力共通テストが教師や校長の昇給を左右するインセンティブにもなったり、授業時間を共通テストのある数学と英語ばかりに費やし、他の科目をおろそかにするといった教育内容を歪ませたことも興味深い。さらにテキサスとフロリダでは、学力の低い生徒を「障害者」にカテゴライズすることによって評価対象から排除し、全体の平均点をあげるというとんでもない出来事が起こった。「数字が人を見えなくする」怖さである。数値化によって利他の感情が消える例である。日本の学力テストでも同じようなことがあったと聞いたなぁ。そんな学力テスト、誰得なの?

  • 近代的な「主体」を前提とした「利他」は利己の変奏に過ぎない。では、利他がたちあがる場とはどのようなものか。そのことを5人の論者がそれぞれのフィールドに引きつけて読者にわかりやすく説いてくれている。5人話はどれも本当に面白い。

  • 「利他」には常に裏鏡としての「利己」が見え隠れする。で、その実相に迫るためにはいくつもの回路があってー倫理、哲学、心理学、文学…ー本書はそのいくつかのレンズを与えてくれる。善悪とか美醜とか正義とか、周辺の概念を考える手前で考えておきたいテーマ。

  • 善とは利他のことではないかと常々考えていたところにぴったりの名前の本を見つけたと思い読んでみた。目論見は外れたものの、著者ごとの角度から面白い知見を得られた。特に國分氏の古代ギリシャには意思がないというのは興味深く、人間に自由意志はないとする話を思い出した。

  • 最後の会話が口論でいいのか
    断っても「これ美味しいから一口だけでも食べてみなよ」は、利他が利己になった
    能動と受動、中動態 意志の所在

  • 世界的コロナ禍の危機において注目される「利他」という考え方。その意味するところを各界の論客が説く。宗教、哲学、文学などの分野から具体例を出しながら説明する。やや学術的で日常生活と照らし合わせるには分かりづらい箇所もある。

  • 利他主義、重要性、可能性、負の側面、危うさ。
    5人の利他をめぐる思考。

    伊藤 亜紗、中島 岳志、若松 英輔、國分 功一郎、磯崎 憲一郎

    NOTE記録
    https://note.com/nabechoo/n/n8ef70156840a?magazine_key=m9672e1d4fe74

    利他について、何となくの理解でいて、
    真剣に考えた事もなかったが、
    改めて、この5人の考えを聞くことで、
    腑に落ちたり、新たな発見したり、
    少し利他の本質を理解できた気がする。
    (結構、難解で理解できない部分もあったが)

    本当の利他は、「うつわ的利他」で、「余白が必要」
    そして、「人知を超えたオートマティカルなもの」ではないかと。

    若松英輔さん、去年辺りから
    好きになりつつあって、この本買う
    きっかけにもなったんだけど、
    今回ちょっと難しめ。でも好きかも。
    それより、國分功一郎さんの中動態の話、
    興味深いが、全然分からない笑 難しい…。

    こんなに「利他」を考えると、
    深いものなのか。

    真の利他性を持って生きたいものだけど、
    なかなか難しいか。
    「個の道は真の意味で利他に通じる」
    が、理想的っぽい。

  • 利他とは?を、異なるバックグラウンドの複数人の観点から追求した結果、様々な料理や素材を受け止めるような「うつわ」であると結論づける本。個人的には自分と他人を一体として捉えた自然への同化と解釈した。

  • 医師は患者さんのために働くし、産業医は働く人のために働くので、利他的な職業でありそうですが、そこで利己的な利他を発動しがちなのもまた真だと思うので、メタな視点ってやっぱ重要なんだなあ、と思いました。

  • 2021/10/10(日)夜読了。honto電子書籍にて。

    読書は好きですが、哲学とか人文系どころか文系の教養が自分にかなり少なくて、
    本書に対する私の評価が★3なのは、どう考えても私の側に問題がありますので、もっと素養のある方は、安心して本書をお読み下さい。
    書の内容は、面白く、大変興味深かったのですが、なにせこういった分野の文法のようなものを私に身についてないがために、どうしようもなく消化不良で、その印象が★3なだけです。
    もっと易しい本から入って、しっかり勉強してからまた本書に戻ってきたいと思います。そういう意味では、「読了」と書くのはおこがましいですね。私の側の責による「読書中止」というのが実態に近いでしょうね。

    ※ちなみに、余談で近況で、私は時間を使うことにかけては相変わらずうまくなくて、気づくと時間が過ぎていて何も達成していなくて悲しいことが多いですが、そんな中、会社がudemyやらグロービスやらに補助してくれるもんですから、ただでさえ積読の電子書籍が多い中にまたコンテンツを買い込んで背負った形となり、「読了」とか「コース修了」とか、せめて◯%まで読み終わったとか見終わったとかそういうのがないと、人生(?)にくじけてしまいそうです。

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著者プロフィール

東京工業大学科学技術創成研究院未来の人類研究センター長、リベラルアーツ研究教育院教授。マサチューセッツ工科大学(MIT)客員研究員。専門は美学、現代アート。東京大学大学院人文社会系研究科美学芸術学専門分野博士課程修了(文学博士)。主な著作に『ヴァレリー 芸術と身体の哲学』『目の見えない人は世界をどう見ているのか』『どもる体』『記憶する体』『手の倫理』など多数。

「2022年 『ぼけと利他』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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