墨のゆらめき

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104541089

感想・レビュー・書評

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  • 男同士の友情…
    30代半ばでこんな風に築ける関係性がすごくいい!
    猫のカネコ氏や小学生の三木君の存在も微笑ましくて、温かい心持ちで読了。

  • 真面目なホテルマン・続力(つづきちから)とマイペースで奔放な書道家・遠田薫。性格がまるで正反対なコンビのやり取りはとても軽快で読みやすかった。
    しをんさんの描く男性コンビの物語はいつもいい味を出していていい。読んでいて映像が浮かんでくる。
    今回はホテルと書道家、という普段馴染みのない2つの職業の仕事内容も面白かった。

    「手本なんか参考程度にしときゃいい。大事なのは文字の奥にあるもんを想像することだ」
    「書は、書いたものの心を映す鏡」

    「風」というよく見る一文字が、書き手によってこんなにも多様で生き生きと躍動した「風」に生まれ変わるなんて素敵。
    遠田の書く実際の文字も見てみたくなった。
    あと遠田家になくてはならない猫のカネコ氏。カネコ氏のふてぶてしさがたまらない。
    ぜひシリーズ化してほしい作品。

  • 西新宿の三日月ホテルは昭和感あふれるこじんまりした俺の職場。
    顧客の評判もよくて安定した経営が続いている。その反面任される仕事はおかげで多岐に亘る。

    そのホテルの宴会場が契約している、招待状など筆耕してもらう筆耕士の新規先として遠田薫なる人物とコンタクトを取るべく俺が出向くところから物語が始まる。

    筆墨の魅力を上手に展開する構成がなかなかに良いし、2人の深まっていく関係性も人としての各々の個性をうまく絡ませていて興味深い。
    そして書道教室の小学生徒たちがよいバイプレイヤーを演じてます♪

    後半 遠田薫の意外な人物像が明らかになってきて俄然ストーリーが緊迫感を帯びて来て、2人の関係性と友情の行方に焦点があてられる展開になってくるのが上手いですねえ♪

    京王線下高井戸駅から程近い辺鄙な場所にある遠田書道教室が主舞台になっていて、ほっこり出来る現代版の下町人情物語といった作品ですね♪

  • 新しく登録された筆耕士の人品骨柄を見定めるべく、住まいの書道教室を訪れた、三日月ホテルの続力。
    現れた遠田薫は、男前だが、先代とは違っていて……。

    奔放で、常識の枠からどこかずれた遠田と、生真面目にツッコむ力。
    書道教室の子供たちも含めたやり取りが、コミカルで楽しい。

    コミカルなだけではなく、書に向き合う姿は真摯で、最後にはシリアスな場面も。

    遠田本人は〈猿真似〉と言うが、さまざまな人になりきって書体を駆使するのは、魔法のよう。

    筆跡を真似るのが〈憑依〉なら、力が依頼人になりきって、手紙の文言を考え出すのも〈憑依〉。
    変わった依頼に、個性的な手紙と、代筆屋としてのふたりの仕事ぶりも、面白かった。

  • 読書備忘録796号。
    ★★★★★。

    795号に続き、超大満足!
    やっぱりしをんさんやなぁ~。

    東京西新宿の高層ビルに囲まれるように建つ老舗三日月ホテル(房総ちゃいますよ)。
    ホテルマンの続力(つづきちから)は、お得意様が亡くなられ、お別れ式の案内状準備の為、ホテルが登録契約している筆耕士の遠田薫を訪ねる。
    ご遺族の方々が、遠田の筆跡に一目惚れしたのだ。

    遠田の自宅は本人からの連絡によると「下高井戸の駅から玉電沿いに5分ほど歩いたところにある一番ぼろい家」とのことで、住所も電話番号もない。

    力が下高井戸の駅からワンダーランドに紛れ込んで迷子になるくだりから始まる物語は、さすがしをんさん!ワクワク感半端ないです!
    ほうほうの体でたどり着いた遠田薫の自宅兼遠田書道教室。遠田は小学生を相手にした書道教室の真っ最中だった。
    そして、力は遠田の不思議な佇まいと、得体の知れない人間性に戸惑いつつ、いつの間にか唯一無二の友人という感覚を覚え始める・・・。

    力と会ってすぐ、チカというニックネームを付け、小学生からは若先(亡くなられたおじいさんが先生だった訳です)と慕われ、猫のカネコさんにも慕われている薫とのゆるやかな交流が心地よい。
    薫が先代からの引継ぎでやっている代筆。文面を持ち込まれる場合は問題ないが、依頼者の思いを文章にするところからの依頼は苦手で断っていた。
    依頼者が憑依し(笑)、気持ちを文章にすることに意外な能力を発揮したチカは、薫から頼られるようになっていく。

    ただ、チカは薫が普段何をしているのか全く知らないことに気づき、薫の買い物に付き合うことにした。
    そして、買い物を企画したことが、運命の扉を開くことになる・・・。
    買い物の途中に薫は偶然旧知の高齢者に出会う。薫の雰囲気が突然変わる。薫の過去に大きく関わっている方なのだとチカは思った。

    そして突然、薫から筆耕士の登録解除の連絡が届く。
    何が起きたのか?
    薫の過去に何があったのか?

    居てもたってもいられないチカは薫を訪ねる。
    そこには画仙紙が5枚並べられ、人名がしたためられていた。これは何事か!
    そして、語られる遠田薫の衝撃的な過去!
    怒涛の後半の盛り上がりです!

    ただ、しをんさんです。
    エンディングが気持ちよくないはずがない!
    だって、しをんさんは読者が気持ちよく読了してくれることを何より願っているから(と信じているから)。

    これから先、薫とチカの関係は揺るぎない。
    そして小学生たちは5年後には高校生になり、それでも書道教室に通い、代筆を頼み続ける。お小遣い値上げ交渉の代筆を。笑
    5年後には三日月ホテルとの登録契約も復活し・・・。

    しをんさんの描く、下高井戸から玉電線路沿いのワンダーランド五叉路からの暗渠道に佇む書道教室には陽の光が降り注ぎ続けることでしょう!

    しかし、グーグル先生の地図を見ても玉電沿いの道は物語の通り線路から斜めに外れていくところまでは事実なですが、その先に暗渠道が・・・。あるにはある。
    ただ、ここは五叉路じゃないよね・・・。
    ワンダーだ。

    • shintak5555さん
      ゆーきさま
      そんなん言われたら、読み終わった「スワン」の評価をどうしたら良いか悩んでまう!笑笑
      ゆーきさま
      そんなん言われたら、読み終わった「スワン」の評価をどうしたら良いか悩んでまう!笑笑
      2024/01/26
    • ゆーき本さん
      悩ませてしまった!笑
      思いのままに☆つけてください笑
      悩ませてしまった!笑
      思いのままに☆つけてください笑
      2024/01/26
    • shintak5555さん
      うううう。
      やっぱ5つかな。( ^ω^ )
      うううう。
      やっぱ5つかな。( ^ω^ )
      2024/01/27
  • 浩太さんや他の方の本棚から
    図書館予約待ちきれなくて買ってしまった
    三浦しをんさん
    表紙はあまり好みではないです

    すごく面白くて一気に読んだ
    いつもながら男性二人の設定がいいね!

    でも、期待しすぎて 
    いや うん?

    書家遠田の生い立ちにどこか無理があるように思ってしまった

    「書」の描写には心が揺さぶられた
    すごい!

    ≪ その思い 文字に託され 時空超え ≫
      (カバーより)

    • 浩太さん
      あまりハマらなかったですか。購入させて申し訳なかったです。
      書家遠田の生い立ちは確かに飛び過ぎ感がありますね。ホテルマンとの対比を狙って、...
      あまりハマらなかったですか。購入させて申し訳なかったです。
      書家遠田の生い立ちは確かに飛び過ぎ感がありますね。ホテルマンとの対比を狙って、掛け離れさせた職業にしたのかも知れないです。
      書道は高校時代に1年間だけ部活動の経験があり、興味があったので、仕事を引退後に古文書の講習会、その後の古文書の会に入りました。
      時すでに遅し、一度見た書体が思い出せ無いことが何度もあり、脱落してしまいました。現在は、書として見るだけに止めています。
      2023/10/26
    • はまだかよこさん
      浩太さん
      三浦しをんさんの作としては、がっかり感がありましたね。
      でも「書」の世界はすごいです!
      浩太さんも!!
      しかも「古文書」で...
      浩太さん
      三浦しをんさんの作としては、がっかり感がありましたね。
      でも「書」の世界はすごいです!
      浩太さんも!!
      しかも「古文書」ですかぁぁぁ
      書を観るのは好きで時々足を運びます
      何が書いてあるのか分からないものも多いですが(笑)
      『墨のゆらめき』は感じます

      またエッセイが発売ですね
      うーん、どうしようかなあ

      コメントありがとうごじました
      2023/10/27
  • Audible書き下ろし 三浦しをん 新作長編『墨のゆらめき』本日配信開始|Audible, Inc.のプレスリリース(2022年11月17日)
    https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000155.000036126.html

    三浦しをん 『墨のゆらめき』 | 新潮社
    https://www.shinchosha.co.jp/book/454108/

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      三浦しをん「墨のゆらめき」 音声配信先行で新たな発想 - 日本経済新聞(2023年6月6日 有料会員限定)
      https://www.nik...
      三浦しをん「墨のゆらめき」 音声配信先行で新たな発想 - 日本経済新聞(2023年6月6日 有料会員限定)
      https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD101L80Q3A510C2000000/
      2023/06/06
  • 今回のしをんさんの新作は、ホテルマンと書家の物語。

    一見、接点がなさそうに思うが、よく考えてみれば仕事上でお互いなくてはならない存在なのだ。

    本作の書家、遠田は、書家らしからぬ一風変わった人物。
    真面目でお人好しで、誰からも話しかけられやすいホテルマン、続(つづき)は、最初は警戒するが、だんだんと彼の振る舞いと書に引かれてゆく。

    本作を、全く前知識なく読み始めたのだが、これはしをんさんの真骨頂、「まほろ」を彷彿とさせるではないか!

    書を通して二人の男が繰り広げるやり取りは、可笑しくもあり、せつなくもあり、グッとくるところもある。

    しをんさんの文章は、息を吸うように、身体にスッと入ってくる。
    だから物語にどっぷりとハマることができる。
    大好きな作家さんだ。

    鼻の下にヒゲのあるカネコ氏共々、この先をもっと見てみたいと思った。

  • 人がよくて、真面目にやっていることなのに、なんだかおもしろい主人公って、三浦作品の定番。今回のホテルマンももちろんそう、自分が努めるホテルを愛しまくっている。もちろんストーリー全般にクスッと笑える小ネタも満載。
    こういう人物が主人公の話は、読んでる間も楽しいし、間違いなく読後がしあわせ。今回もたっぷり癒やされました。

  • とてもほっこりする良い話。登場人物がそれぞれに味があり魅力的(猫のカネコ氏も含む)で、30代後半の筆耕士(書家)とホテルマンの交流を描くという話の設定も面白かった。続編に期待!

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著者プロフィール

1976年東京生まれ。2000年『格闘する者に○』で、デビュー。06年『まほろ駅前多田便利軒』で「直木賞」、12年『舟を編む』で「本屋大賞」、15年『あの家に暮らす四人の女』で「織田作之助賞」、18年『ののはな通信』で「島清恋愛文学賞」19年に「河合隼雄物語賞」、同年『愛なき世界』で「日本植物学会賞特別賞」を受賞する。その他小説に、『風が強く吹いている』『光』『神去なあなあ日常』『きみはポラリス』、エッセイ集に『乙女なげやり』『のっけから失礼します』『好きになってしまいました。』等がある。

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