新装版 ぼくと、ぼくらの夏 (文春文庫) (文春文庫 ひ 7-5)
- 文藝春秋 (2007年5月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (329ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167531058
作品紹介・あらすじ
高校二年の夏休み、同級生の女の子が死んだ。刑事の父親と二人で暮らすぼくは、友達の麻子と調べに乗り出したが…。開高健から「風俗描写が、とくにその"かるみ"が、しなやかで、的確であり、抜群の出来である」と絶賛され、サントリーミステリー大賞読者賞を受賞した、青春ミステリーの歴史的名作。
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
樋口有介のデビュー作。
1988年のサントリーミステリー大賞、読者賞受賞作。審査員であった故開高健氏に「コクとキレのある文体」として絶賛された。私が樋口有介さんのファンになった作品でもあります。
それ以降、30年ほど経ちますが今でも大ファンです。彼の作品は単行本で37作ほど出版されていますが、全て読みました。この作品は夏になると毎年読み返します。
輝いていた青春時代に自分を戻してくれる素敵な小説です。
是非皆さまご一読ください。<(_ _)>
※ちなみに彼の最新作「うしろから歩いてくる微笑」 は7月20日に発売になります。待ち遠しいです。 -
初めて読む作家。
夏は終わってしまったけれど、夏の作品が読みたくなって手に取りました。
一言で言うとかなり好みな文章。
ミステリーと謳ってはいるけれど、それ程ミステリ色が強いわけではなく、軽快な語り口調が読んでいて気持ち良かったです。
夏のあの気怠い感じが良く出ていて、うまいなぁと。
解説にも書いてあったけれど、古さを感じさせない一冊だと思います。
これは他の作品も読んでみなければ! -
高校生の夏。
暑い風、茹だるような、退屈で、騒がしくて。
会話が利いていて、殺人事件を扱っているけど、
どこかニヤリとする。
好きだなこの感じ。 -
なるほど、これは名作。
文庫解説で、全く古びていないと大矢博子が冒頭で
感嘆しているように、驚くほど古さを感じさせない。
ただ、ミステリーとしてはそれほど驚きや精緻さがあるわけではなく、
「夏の日の1993」のような90年代のJ-POP、
すなわち、ある種の時代を超越した青春・恋愛模様を
小説化したような空気感にこそ、
この作品の良さがあるように思う。 -
ディスコやら公衆電話やらが出てくるので昭和をテーマにして書かれた作品なのかと思っていたら、自分が生まれる前に書かれていたというのは衝撃だった。
軽めのミステリー+甘酸っぱい恋愛物語という感じで読みやすさはよかった。
サクサク読めるので、電車の中やスキマ時間に良い一冊。 -
不思議な人間関係。詳細に関係性が書かれていないため、想像が膨らむ。頭の中でドラマのように映像が浮かび上がった。終わり方は好みによって分かれそう。
-
おもしろかった。
少年少女が息をするように喫煙・飲酒し、女は子どもも大人もショートパンツを履き、ディスコぐらい誰だって行くし、アドレス帳を持っていないのはおかしい世界…
途中で一度、発行年を確認、2007年。まあいいかと読み進め、解説を読んで驚きました。発表されたのは私が生まれる何年も前だ!笑
それにしては全然古さを感じない文章で、とても読みやすいです。シニカルなジョークを交えたやりとりもおもしろい。
はじめは、なぜか美人な女に好かれまくる無気力系主人公に、なんやこいつ…と思っていましたが、まあハードボイルドならしかたない。最後の最後まで彼はハードボイルドだったし。 -
瑞々しい青春ミステリ……と思いきや、全編を通してどこか退廃的な空気が漂っている。理由の一つはキャラクターの行動にあり、未成年でありながら、当たり前のようにビールを飲んで煙草を吸っている描写があるのが非常に良かった。それは非行的な意味合いを持って書かれていなくて、本当に自然に描かれている。夏の茹だるような暑さ、陽炎のような儚さはその文体からもひしひしと感じ、読後感と相まって何とも言えない余韻を残している。やや掴み難いキャラクターや、話の重さと文体の軽さの噛み合わなさに少々戸惑うかもしれないが、それでも小説全体を通しての『夏』感は素晴らしかった。個人的には、女性キャラよりも、うだつの上がらない冴えない父親のキャラクターが素敵に思える。