希望が死んだ夜に (文春文庫 あ 78-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167913649

感想・レビュー・書評

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  • まさに社会派ミステリー。いやぁ面白かった。
    共通点が無いはずの2人。「優等生」が「問題児」に殺された。一体何故?という話。
    ミステリー初心者にも読みやすくて、これは伏線?みたいなのもわかりやすいのも良かった。

    ときあかされる真実がしんどくて……ほんともう……。見えてる世界だけが真実ではないよな。
    何より、ネガの描写には自分に悲しいかな覚えがあるから、本当に見ていて辛かった。
    終わり方も、現実味しかない。読んだ後凄くずんとして考えさせられてしまう良作だった。

  • ずっと前に「謎解き広報課」を読んでいて、(重さ的に)そのくらいかな~と思って読み始めたけど、ゴリゴリに社会派ミステリじゃん…。本の解説?で「面白い作家がすごい作家になった」と言ってる人いたけど完全に同意。
    久しぶりにミステリーで泣いた。切ないとかいうレベルじゃない…むごい…
    テーマは「こどもの貧困」だけど、そのこどもの口から貧困を批判する言葉が出てくるのが余計に刺さる。上辺だけで何かした気になる大人に「そんなので救った気になるな」と言えるくらい賢くて強い子でも、環境がよくなければ努力することすら叶わない。大人って本当に子どものこと見てないし、都合のよいところしか見てないし、良いように解釈したがる。事件の真相を大人が誰もわかってないの、子どもが絶望して当然。
    「希望が死んだ夜みたいなこの国で」って言いながら子どもが死んでくの、決して大袈裟ではないんだよな。
    大人に対して怒りが湧くけど、大人の方にも事情があって余裕がないという「貧困の連鎖」にもちゃんと触れていたり、この先「幸せになれる」と言ってあげられないラストがめちゃくちゃリアリティあって良かった。良くないんだけど。
    主人公の刑事が成長していく姿に好感がもてて、続き読みたいなと思ったら、あるらしい。読んでみよう。

  • ストーリーがスマートで、読みやすくテーマ性もあり読後感が良かったです。

    アニメ化などしたらはえる作品かも、と思いました。
    良い意味で登場人物がアニメっぽいというか。
    例えば自分がネガちゃんだったら、こんなにまっすぐで無垢でいられるだろうか、とか考えてしまって、頭の中で想像しながら読んでいて、いつのまにか実写でなく勝手にアニメになっていました。
    作中では、登場人物の所作や特有のクセみたいな動きのある表現が控えめなこともあって、キャラクターデザインができて実際に画になると、より登場人物の魅力が増したりして…なんて空想してしまいました。

    現代社会ににおいて重大な問題の一つである貧困というテーマを掲げるのに、メディアミクス展開したら若年層に届きやすそうだな、なんて思いました。

    そして終始謎めいた城戸のことがとても気になる。

  • ため息が出るほど素晴らしい作品だった。ネガが頑なに殺人の動機を語らないのは単に言いたくないだけと思っていたが、事件の捜査と並行してネガ視点の物語が進むにつれ、そもそもネガに殺人の動機がないことが考えられた。その後、事件の真実に向けて夢中になって読み進めた。ネガはのぞみの死が自殺ではなく殺人だと思い、自分が殺したと言い張ることで、警察によって調べられることを望んでいたという事実に驚いた。さらに、のぞみの死は自殺ではなく、友達の母親によるものだというどんでん返しにはやられた。物語後半の事実解明、どんでん返しの場面のスピード感はとてつもなく、とても引き込まれた。

  • 久しぶりに一気読みした。

    本作は、貧困、ひいては子どもの貧困について書かれている。
    衣食住はギリギリ満たすことができているが、経済的に困窮している家庭に育った子どもは、自己肯定感が低いという。ほかの子ども達の"普通にできること"が、自分にはできないから。新しい服を買う。旅行に行く。習い事をする。何をするにもお金がかかる。だから、できない。子どもに原因があるわけではないのに、その『自分はほかの子と悪い意味で違う』という思いが子どもの将来を狭めてしまう。
    自己肯定感の低さは学力にも影響を及ぼす。学力が低下すると、就学に影響が及び、それが今度は所得に影響を及ぼす。負の連鎖がどこまでも続き、貧困は代々受け継がれていく。

    冬野ネガの家庭も、そうだった。
    それに加えて虐待も連鎖しており…ここでは書かないが、母親の無自覚な虐待には恐ろしさのあまり鳥肌が立った。家庭はブラックボックスだ。自分の過ごした環境が"普通"だ。だから自分が娘を追い込んでいたなんて、思いもしないのだろう。

    あまりにも暗く、救いがない。
    『希望が死んだ夜みたいに真っ暗なこの国』にも、光はあるのだろうか。仲田巡査部長のように、誰かの苦境に思いを馳せることができれば、寄り添うことができれば、光となって道を照らすことができるのだろうか。
    できるのだと、思いたくなる終わり方だった。


    『俺は、「母に楽をさせたい」という一心で、勉強しかしていなかった。母にだけ苦労をかけて、自分は努力する余裕があったのだ。』

    『飢え死にしそうにならないと、不幸だと思っちゃいけないわけ?』

    『わたしは死ぬのがこわいから、仕方なく生きることにしたのです。』

  • 真壁刑事の考えが変わっていくのが一つの楽しみやった
    特に"母を楽にさせたいから努力していた"あの時は
    "母にだけ苦労をかけて自分は努力する余裕があった"からって気付く考えがよかった

    物語上だけじゃなく現実にもありそうな話で
    先生の"アフリカの子供達は"って言う比較も
    特に考えず発する人、言葉にはしなくても考えてる人はおるんやろうし
    貧困から逃れた犯人がお金で解決しようとしてるのも
    そこでのぞみちゃんが「かわいそう」って言うのも
    最後の"私より貧乏人どもの言うことを信じるの"ってセリフも現実味があった

    遺書での、"ありもしない希望を抱かせてしまった"ってのぞみちゃんの言葉が凄い心にきたし
    ただでさえ"希望が死んだ夜みたいに真っ暗なこの国"で
    親友を失った主人公がどうなるのか最後が書かれてない終わり方も好みやった

  • 神奈川県川崎市多摩区のとある空き家で、女子中学生による女子中学生殺人事件が発生。

    神奈川県警刑事部捜査一課の真壁巧が、現地多摩警察署の生活安全課少年係の変わり者仲田蛍とペアで捜査をする事となり、取調べを行う。

    犯人は冬野ネガ14歳、被害者は同級生の春日井のぞみ。冬野ネガ本人は犯行を認めており、ロープで首を絞めて殺害したらしい。しかし、動機については黙秘、その他にも不自然な点が多い。

    物語は、真壁たちの捜査と、冬野ネガに起きていた過去の出来事が交互に語られ、隠された真実が解き明かされていく。





    ミステリー的に見ると、伏線回収は出来過ぎで無理矢理な感じがしたし、ここまで謎をスッキリさせておいて結末は読者に委ねる終わり方というのは少しモヤモヤしてしまった。

    登場人物では、警察官として実績はあるが同僚には疎まれている仲田蛍は、「想像」によって犯人の心情を理解することで、事件を真実に導くという個性的な人物だが、これだけ特殊なキャラクターなのに過去の事件や本人の生い立ちについては語られなくて、結局よく分からないままで残念に感じた。

    しかし、冬野ネガと春日井のぞみが打ち解けて二人で青春してる感じは微笑ましく、逆に希望が一つ一つ崩れていく絶望感、その落差で人は簡単に生きる意味を見失うという事。現代の経済格差によって、生活保護を受けられない環境。残酷で自分勝手な人間の愚かさ等、中々考えさせられる内容だった。

    また、解決したかに思われた事件の先に、まだ真実が隠されていて、最後の方は夢中になっていたようで、あっという間に読み終えてしまった。

  • 貧困をテーマにした社会派ミステリ。

    母一人子一人で生活している中学生のネガ。
    母は働いてはいるものの生活は苦しく、情緒も安定していない感じ。
    そんな中、ネガと同級生の望の死体が発見され
    ネガは自分が殺害したと証言している。

    シングルマザー家庭の貧困は取り上げられることも多いけれど、シングルファザーの場合だって
    貧困に陥る事もあるんだよな、と少し考えれば分かるような当たり前のことに気付かされる。

    この問題は一概に誰が悪いと言いきれない分、切なさが増すけれど、
    少なくとも子供たちは未来を見ていた。
    大人たちがそれに気付けなかったのが何より残念。

  • 同じ中学に通うネガとのぞみ。
    のぞみを殺害したと自供して逮捕されたネガ。
    同級生という以外に接点のなさそうな2人の本当の関係がわかっていき、そして本当のことが明らかになる。

    なんてつらい、かなしい話だ。
    私はもう40のおばさんだけど、中学高校時代の友達と一緒に過ごしたわくわく感を、ふたりの関係性が明らかになる中で感じていた。
    本を読みながら、私もネガと同様に希望を感じでいたんだ。
    そして、そこからの落差を私も味わった。
    どん底にいつづけることより、希望を知ったあとに、その希望が失われたときのほうがつらい。
    誰かに希望を味わわせてしまったことは、罪なのだろうか。

    貧困と、行き渡らない社会保障。不都合なことはなかったことにしようとする大人達。
    希望が失われたこの世界で、わずかな希望をたぐりよせようとしていた少女たち。
    のぞみの死は、避けられないものだったんだろうか。私はそうは思わない。
    のぞみがネガとお菓子食べながらおしゃべりできていたら、ネガの顔を見ることができていたら、思いとどまれた可能性が高いと、私は思う。
    死ぬのが怖いから仕方なく惰性で生きている感覚、私も分からなくはない。惰性の生の中で、ちょっと笑えることとか、少し元気が出ることがあって、そんな些細なことに多くの人は生かされている。
    そういう1日1日が積み重なるなかで、楽しいと思えるものや、大切だと思えるものに出会え、生きる目的がみつけられる。私の人生はそうだった。
    だから、私はのぞみを殺した犯人を許せない。どうせ死ぬつもりだったなら…なんて動機にならない。憎い。
    もしのぞみの計画通りに運んでいて、ネガとお菓子食べながらおしゃべりしていたら、のぞみは生きていたと私は思う。私はそう思いたいのだ。

    このシリーズ、本当に好きなんだけど、つらいなぁ。

  • タイトルがいろいろ含んでいる感じがしてすごい。
    主人公ネガにとって親友のぞみはまさしく希望だったんだろうし。
    その希望が死んでしまった夜の話で。
    そして2人が自殺を決意したのも、生きる希望がなくなったからだろうし。

    いろんなことがタイトルに暗示されている気がした。

    親友に死んでほしくないから、自分の死に様をみて死に恐怖に感じてほしいという思いはものすごく残酷だなと思った。
    歪んでいる感じがリアルでこわい。

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著者プロフィール

1978年生まれ。メフィスト賞を受賞し、2010年『キョウカンカク』で講談社ノベルスからデビュー。近年は『希望が死んだ夜に』(文春文庫)、『あの子の殺人計画』(文藝春秋)と本格ミステリ的なトリックを駆使し社会的なテーマに取り組む作品を繰り出し、活躍の幅を広げている。

「2021年 『Ghost ぼくの初恋が消えるまで』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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