文体練習

  • 朝日出版社
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  • Amazon.co.jp ・本 (195ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784255960296

感想・レビュー・書評

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  • 文体練習

  • 翻訳とはある種の叛逆、て、岡倉天心が言ってたけども、この翻訳は確かに叛逆

  • 2011/02/02 12:12:03

  • 同じ出来事をいろんな文体で書いてみた。というのは簡単そうだけど、その数、99。無茶な内容もあるけど、面白い。しかし、翻訳がうまい。ソネットなんか、驚異的。
    しかし、ふだん、意識していないけど、内容にあった文体を書けるようになりたいなあ。

  •  とあるひとつの日常的な風景を99通りの文体で書き表してみました、といった内容の本。
     文体、とはいってもアナリズムやリポリズム、自由詩、短歌、子音交換や複式記述(「頭痛が痛い」的な表現)、さらには確率論や幾何学を利用したものなど、「文体」とは言えない手法も混ざってはいる。
     読んでいてまず感じるのは、「これ、本当に翻訳が大変だったろうなぁ」ということ。
     あとがきを読むと「問題はひとつひとつのことばの意味ではなく、全体としての変換のルール」なのであり「翻訳の作業はほとんどゲームの様相を帯びてくる」つまり「ゲームのルールは原文に指定されており、そのルールを使ってどれだけ『日本語』で遊ぶことが出来るか」が大切であり、章によっては「元のルールを日本語に合うように修正したローカル・ルールによるもの」とのこと。
     ここだけ抜き出してもわかりにくいかと思うが、実際に本書を読んでみると、実に的を射た表現だな、と思わせてくれる。
     中には「これ、翻訳じゃなくて創作だよね」という章もある。
     イギリス人がなまりの強いフランス語をしゃべっている、なんて文章を日本語に翻訳する、なんてことはどだい無理な話である。
     それを、苦し紛れな手法もあるが、とにかく完訳しただけでも、物凄い労作であろうことには間違いない。
     それにしても実に様々な文体(あるいは手法、はたまた変換方法)がある。
     例えばスネイクマン・ショーの「こなさんみんばんは」や、テレビドラマ「トリック」で上田教授がよく口にしていた「ばんなそかな」、桑田佳祐が作る歌詞「You gotta(夕方)」や「I Could Never(愛苦ねば)」といった英語による日本語っぽい表現、さらに邪推すれば、業界用語と言われている「ギロッポン」「シースー」、そして「まいうー」すらも、この文体練習を元にしているのでは、なんて考えが浮かんでしまう。
     要するに、上記のような「文体練習」も出てくるのであり、章によっては暗号の創り方にも使用できそう。
     機械的な置き換えと思えるものもあるが、解説を読む限り「最終的にはクノーの言語感覚と遊びの精神によって制御されているのであって、けっして機械的な変換がなされているわけではない」とのこと。
     面白い章もあれば、正直どこが面白いのかさっぱりわからない章もあるが、すべての章を読み終えて、結果として再認識できたのは、「日本語」という言葉の面白さ、柔軟性、特徴、欠点、そしてなんといっても奥深さであった。
     蛇足ながら、僕はこの本をブックオフで税込で「1,750円」で購入した。
     古本で集めた書籍の中では二番目に高い金額だった。
     実際に定価でこの本を買おうとすると消費税8%で計算して「3,669円」になる(小数点以下切り捨て)。
     変則的なサイズであり、ところどころ凝ったつくりにもなっているし、間違いなく労作なのだが、195頁の本としては、いささか高額なように思えるのだが……。

  • 原題:Exercices de style
    著者:Raymond Queneau
    訳者:朝比奈弘治

    http://www.asahipress.com/bookdetail_lang/9784255960296/

  • 1つのちょっとした話が、99通りの文体で繰り返し語られる。同じ物語でもこんなに多様な表現の仕方があるのかと感動するような章もあれば、アナグラムなど「文体」とは言えない(しかも出来上がった文は意味不明)ものもある。暗号のような文も、試みとしては面白いと思う。
    訳者のあとがきもかなりしっかりした分量があり、翻訳の裏話が読めるのも嬉しい。

  • すんごい遊んでる。訳した人、おつかれさまでした。

  • 2016.4.23市立図書館
    日本で言えば井上ひさしあたりがやっていたような試み。一つの内容をさまざまな言葉遊びやパスティーシュなどで変奏してみせる文体見本帳。フランス語の原著を日本語に翻訳する段階で翻訳不能なものももちろんあるが、そこは訳者の工夫で日本語での似たような遊びに変換したりしていて(というあたりはルイス・キャロルやジェイムス・ジョイスの翻訳の苦労に通じる)、おもしろく読ませる。
    こういうのをうまく訳して読者を楽しませることができたらまさに翻訳者冥利なのだろうなあ。

  • 知性とユーモアに溢れていて素敵!すごい発明!

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著者プロフィール

一九〇三年ル・アーヴル生まれ。パリ大学で哲学を学び、シュルレアリスム運動に参加。離脱後、三三年に「ヌーヴォ・ロマン」の先駆的作品となる処女作『はまむぎ』を刊行。五九年に『地下鉄のザジ』がベストセラーとなり、翌年、映画化され世界的に注目を集める。その後も六〇年に発足した潜在的文学工房「ウリポ」に参加するなど新たな文学表現の探究を続けた。その他の小説に『きびしい冬』『わが友ピエロ』『文体練習』『聖グラングラン祭』など、詩集に『百兆の詩篇』などがある。一九七六年没。

「2021年 『地下鉄のザジ 新版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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