帰ってきたヒトラー 上

  • 河出書房新社
3.68
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感想 : 110
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309206400

感想・レビュー・書評

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  • 現代に蘇ったヒトラーを描く風刺小説。
    従来ヒトラーを扱うときは彼を一種の怪物として登場させる。しかし、著者のヴェルメシュ氏はアドルフ・ヒトラーを人を引き付ける人物として描いた。これは、人々が狂気に囚われた人間を選ばず、魅力的に映った人物を選ぶはずだという考えに基づいているからである。読者は物語が進む中でヒトラーの快進撃を目撃し、ある種の高揚感や期待を感じさせる。しかし、ふと我に返るとまさに「それ」こそがヒトラーが行っていた手口なのだと気づく。現代でも通じてしまう危うさがあるのかもしれない。

  • 「帰ってきたヒトラー 上」
    ドイツで話題になった本書を遂に!読みたかったが放置が多すぎな件に遂に着手中であります!


    帰ってきたヒトラー。ウルトラマンじゃないんだからと言うのが当初のぱっと浮かんだイメージ。ドイツでよくヒットしたな、と言うのが、次に考えた感想だった。


    理由は明白で、ヒトラーを題材にしているからである。ヒトラーはドイツにとって見ればかなり扱いが難しいはずだ。それは世界でも同義で、日本でも変わらない。そんな中で帰ってきたヒトラー。しかもノンフィクションではなくフィクション。更にコメディタッチ。海外の場合、歴史上の人物を扱う際は、大抵風刺を込めていると言うのは勝手な理解だが、本書もそれに該当するに違いない、と頭の隅に置きながら読んだ。


    目覚めたヒトラーは何も覚えていないが、なんとなく目覚める前の状況から違うのは即座に理解する。とは言えお偉いさんである。私に対して何事か!精神で突っ走る。しかし、ツッコミ満載な変わり者として、周りの人々に扱われる。着ている服をいじられ、顔がヒトラーに似てると言われ、本名言ってよ、ヒトラーじゃなくてさ、等言われる。しかし、ヒトラーは怒らない。時代を越えた故に性格まで変わったのか。


    徐々にこのヒトラーは使えるぞ、と言う輩に担ぎ上げられていくヒトラー。ガムくちゃくちゃ女に、は?とまで言われながらも、ウィキペディアに感涙し、アドレス設定で揉めるヒトラー。いかん、若干かわいいキャラに見えてきた。後半にこのキャラが加速するのだろうか。

  • 現代にきたヒトラー。
    回りの目を気にせずに、堂々としているヒトラーが、好きになりました。
    回りの人から意見を聞き、ドイツを良くしようと一生懸命考えてる姿が見え、多少ズレている所が笑えました。

  •  終戦直前に自殺したはずが突然現代に蘇ったヒトラー。彼はヒトラーをまねて振る舞う芸人としてテレビに出ることになるが。。。(レビューは上下巻まとめて)

     これはすごい作品である。大戦時の信念のまま現代に適応したヒトラーは時にズバズバと筋の通ったことを言い、人間として、オピニオンリーダーとして魅力的ですらある。
     もちろん、ヒトラーの負の部分にもしっかりヒトラー本人を向き合わせている。全体主義が時に心地よく、時にその暴走した姿に恐怖を覚える。
     おそらくこの作品のヒトラーの様に、本物のヒトラーも怪物ではなかったのではないか。だが、それは怪物ヒトラーが第二次大戦を起こしたと考えるよりもずっと怖いことだ。
     
     ラストで、ヒトラーがかつて自分が倒そうとしたユダヤ人の姿をいわゆる1%の富裕層に見て、彼らの打倒を誓うのは少し痛快でさえあった。

     衝撃的な一冊。世界中の人に読んでもらいたい。

  •  突然違う時代に蘇り幾多の困難な状況に直面しつつ、それでも自分の信念を貫き通そうとする総統の健気なまでの純粋さについつい感情移入して、「ヒトラーって案外いい人じゃん」などと思ってしまうかなり危ない本です。

     ドイツの歴史や政治の知識がないので面白さが理解出来ない場面があるのが残念!

  • 古すぎず、新しすぎず、若すぎず、年寄りすぎずな人物のタイムスリップもの。
    タイトル通りで、ニヤニヤ。
    感想は下巻で。

  • これクスってくるけど、同時になんかぞっとする。
    どっちがおかしいんだ、ろ。

  • 2011年8月。ベルリン。
    突然、あのヒトラーが目を覚まし、この世界で再び活動し始めたら・・・。
    そんな「if」を通して、著者なりの理解によるヒトラーの人間性と、現代の社会風刺をユーモラスにかつ鋭く描く。

    復活したヒトラーは60年間の間に生じた変化に対して、かなりのジェネレーションギャップに遭遇するものの、冷静かつ超前向きに現実を受け止め、素早いけど若干ズレている理解で現実に適応し始める。
    そんな彼を、テレビのプロダクション会社が「ヒトラーのそっくりさんを演じるコメディアン」として拾い上げるところから、再びヒトラーは世の中に対して発信を始める。

    ヒトラーのやり方は往時と同じで、現実の社会や政治の不条理や、人々の不満を発見し、「敵」を設定して徹底的に攻撃することで自らの地位を明確にしていくことである。
    でもこれが案外でたらめでなく、人々の生活をしっかり観察し、突撃インタビューを実施するという、地に足ついた方法で進めていく。
    往時と同じように、「庶民の不満の代弁者」として徐々に庶民の支持を取り付けていく。
    こうして段々と民衆が魅せられていき、マスコミもそれを煽って、彼をヒーローに仕立てていく・・・。往時、なぜ彼が公正な選挙を通して政権を掌握できたか、という疑問に対する答えを、読者は民衆の一人として追体験できるというのが本書の特徴の一つ。

    もう一つの特徴は、何といっても、時代錯誤だけど至って大真面目なヒトラーと、登場人物とのズレてるんだけど何故かかみ合う会話という全編に行きわたるユーモアにある。
    例えば、彼が主張する政策は、ドイツ民族の優等性という歪んだ理念が大本にあるものの、表面的には(将来の兵士になるから)子育てを優遇する社会を推進し、(将来のドイツ国民の土地とするために)自然を保護しエコを推進することを提唱するのだから、案外現代の要望に適合してしまったりする。
    サインを頼まれて、服の上に鍵十字を書いてしまい、廻りの人間はキツいブラックユーモアとして喝采するものの、本人は至って大真面目だったり。
    「かみ合わない」笑いというのは、ドイツでもやっぱり受けるんだなと実感できる。

    ヒーロー(独裁者)が誕生する過程を知る面でも、ユーモアの面でも、かなり上手くいっているし、大変読みやすいため、実にお勧めしやすい一冊になっている。

  • 上下巻とも読みました。

    『我が闘争』が発禁となっているドイツで、ベストセラーになった小説です。あのヒトラー本人が、現代によみがえって再度帝国の覇権を目指すお話。
    ドイツ人でもヨーロッパ人でもないなら、深く考えずに
    楽しむことも出来ると思います。

    上巻が既に手元にないので正確な引用ではないですが、「最初はヒトラーを笑っていたはずの読者は、いつの間にかヒトラーと一緒に笑っていることに気づくだろう」と冒頭にありました。その通りでした。

    思考や政治的思想はともかくとして、ヒトラーという男は、国民をあれほど熱狂させるだけの魅力と表現力を持っていたわけです。彼がもし数百年に一度現れるレベルの「人を惹きつける力を持った人間」だとしたら、そんな力を持たない普通の政治家たちは、かつても今も、太刀打ちできるはずがない。

    かつてヒトラーがやったことは肯定できませんが、全否定して目をそむけてしまっては彼があれだけの力を持てた理由が分からないし、分からなければ同じ轍を踏む可能性が人間にはあります。

    なぜ彼は現れたのか。なぜそこまでの人気を得られたのか。なぜ止められなかったのか。
    それを理解するための小説だと思いました。
    そしてもし正しく理解できていたとしたら、そこはかとなく薄ら寒いような気がします。

  • 現代のベルリンに突如よみがえったアドルフ…ヒトラー。奇想天外な設定のこの小説は、ユーモアの中に深い恐怖と警鐘を潜ませている…はずである。下巻へ。

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著者プロフィール

1967年、ドイツのニュルンベルク生まれ。エルランゲン大学で歴史と政治を学ぶ。ジャーナリストとしてタブロイド紙や雑誌などで活躍。その後、『帰ってきたヒトラー』で一躍有名になり、映画でも大成功を収める。

「2020年 『空腹ねずみと満腹ねずみ 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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