- Amazon.co.jp ・本 (395ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480435620
作品紹介・あらすじ
大好評の『絶望図書館』第2弾! もう思い出したくもないという読書体験が誰にもあるはず。洋の東西、ジャンルを問わずそんなトラウマ作品を結集!
感想・レビュー・書評
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頭木さん編集2冊目。「元気なときにお読みください」とあとがきにあってももう読んじゃった‥どれも強烈だが比較的好きなのは原民喜、フィリップ・K・ディック、筒井康隆。直野祥子、李清俊、フラナリー・オコナーは印象に残る。深沢七郎は苦手。
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頭木弘樹・編『トラウマ文学館 』ちくま文庫。
『絶望図書館』の第2弾らしい。『絶望図書館』は未読なので、近々読んでみたいものだ。古今東西の嫌な後味を残し、トラウマを感じるような短編ばかりを集めたアンソロジー。
なるほどと納得したセレクトもあれば、あれれと疑問を感じたセレクトもある。自分がトラウマ短編を1作選ぶとしたら、原田宗典の『エンジェル・エンジンの話』かな。
直野祥子『はじめての家族旅行』。少女漫画。1971年の作品。貧しく暮らす両親と娘の三人は、はじめての家族旅行で九州へ。娘の不安と家族を待ち受ける不幸……神様も仏様も助けてはくれまい。
原民喜『気絶人形』。児童文学。恐怖と平和の絶妙なバランス。勿論、恐怖の要素の方が強いのだ。
李清俊『テレビの受信料とパンツ』。韓国文学。どこがトラウマなのか解らない。自分が韓国嫌いというのもあるが、こういうつまらない作品は収録してもらいたくない。
フィリック・K・ディック『なりかわり』。正統派SF。アルファ・ケンタウリから地球に来た異星人は人間そっくりのロボットを送り込み、人間に成り代わるが……
筒井康隆『走る取的』。追い掛けられ系の傑作ホラー。取的とは幕下力士のこと。取的に怒りを買い、目を付けられた男たちがひたすら追い掛けられる。
大江健三郎『運搬』。現代文学。こちらも追い掛けられ系。無謀にも闇取引で手に入れた子牛の肉を自転車で運ぼうとする二人の男。
フラナリー・オコナー『田舎の善人』。少々鈍い感じの聖書売りの青年の本質は……さらっとした雰囲気の中に言い知れぬ恐怖がある。
深沢七郎『絢爛の椅子』。無差別連続殺人犯となった青年。そんな理由で、そんなに簡単に……現代では珍しくなくなった事件。そういう点では現代の方が怖い。
ドストエフスキー『不思議な客』。『カラマーゾフの兄弟』より。前出の深沢七郎の作品とも似ている……
白土三平『野犬』。漫画或いは劇画。白土三平ぽくない作品。この結末は……
夏目漱石『首懸の松』。『吾輩は猫である』より。てっきり夏目漱石なら『夢十夜』の1作が掲載されると思ったら、意表を突かれた。
ソルジェニーツィン『たき火とアリ』。僅か1ページの作品。 -
前作の『絶望図書館』がすごく良くて、同じ頭木弘樹さんの編集であるこの本を購入。
前に書いたかもしれないが、今までアンソロジーってなんか中途半端な感じがして苦手だった。
けれど、テーマに沿って集めるということが、こんなに技巧的(という表現が合っているかは分からないけど)で面白いものなんだと衝撃を受けた。
直野祥子「はじめての家族旅行」
まさかの漫画スタート。
かつ、「なかよし」って児童向け雑誌のイメージだけど、この話はハードすぎる。
はじめての家族旅行が決まって、大喜びで準備をする主人公の女の子。
船が出る段になって、アイロンの電源を消し忘れていることに気付くのだが……という話。
ここだけを書くと、確かにそうなんだけど、女の子の内に色んな想いが駆け巡るシーンと結末のオトしどころは、確かにトラウマ。
筒井康隆「走る取的」
この話をしていると「それ、確か、世にも奇妙な物語でやってたよ」と言われ、その人の中にも残っているんだと驚いた。
バーにやってきた相撲取りを見て、常連客二人がこっそりからかうのだが、相撲取りがじっと見つめてきて、怖くなる。
店を変えようと外に出ても、ひたすら取的は無言で追いかけてくるのだった。
シチュエーションが訳分からんけど、怖すぎる!
私にもちょっと経験があるんだけど、自分が標的になっていると分かりながら、ただひたすら逃げるしかない、という切迫感と恐怖たるや。
ドストエフスキー「不思議な客」
『カラマーゾフの兄弟』中の挿話らしい。
こんな話あったっけ、と、もはやうろ覚え。
自分の卑怯さから、軍団を辞め、聖職者になるつもりでいる「私」は周囲に賞賛を受けるようになる。
そんな彼の元に、秘密を抱えた男が訪ねて来る。
男は秘密を抱え続けることに苦しみ、大衆の前で懺悔するべきかと考える。
真実の話が、真実と受け止められる訳ではなく。
偽りの話と知りながら、それを楽しむこともある。
夏目漱石『こころ』の先生を彷彿とさせた。
他に……
原民喜「気絶人形」
李清俊「テレビの受信料とパンツ」
フィリップ・K・ディック「なりかわり」
大江健三郎「運搬」
フラナリー・オコナー「田舎の善人」
深沢七郎「絢爛の椅子」
白土三平「野犬」
夏目漱石「首懸の松」※『吾輩は猫である』より
ソルジェニーツィン「たき火とアリ」 -
誰しも、子供の頃などに読んで、トラウマのようになってしまっている物語があるもの。そんな物語ばかりが集めてある文学館。ここを訪れてしまったら、出てくるときには、もう前と同じ自分ではいられない…。(e-honより)
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酷いけどちょっと笑ってしまうタイトル。
好きなフラナリー・オコナーもよかったし、李清俊も面白かった。白土三平、夏目漱石もひしひしと迫る。そして、ソルジェニーツィン。
酷いのに何故か心に残っている話というのはあるもので。
世の中やジンセイは、やっぱり理不尽だったり説明がつかなかったりということでえてしてあるものですよね。 -
トラウマって人それぞれだと思うんだけど、編者とイマイチ感性が合わず…どの話も嫌感があんまりなかった。
ディックのimpostorは多分うんと昔に別訳で読んだことがあるのを覚えてる…ってことはトラウマになってる? -
何とかなって欲しい時に何ともならない絶望。
これは知っておくに越したことはない。
知る事で現実の機微な幸運に気づけるようになる。 -
まず冒頭の漫画、「はじめての家族」がものすごく恐怖の話である。私としては、韓国の話「テレビの受信料とパンツ」がえげつなくて印象的。NHKとの攻防戦をしている人もこういう感じなのかも。
まず、謝らねばなりません。
実はこの本、まだ読んでないんです。積読本なんです。
読んでないのに勢いで...
まず、謝らねばなりません。
実はこの本、まだ読んでないんです。積読本なんです。
読んでないのに勢いで薦めてしまい申し訳ありませんでした。
星新一は『ひきこもり図書館』にも入ってましたね。印象に残るものが多いんでしょうか。
原民喜はまだ読んだことありませんが、気になっています。
読んでくださり、ありがとうございました。
さっきコメント欄見てたらあれれ⁇5552さんは⁇と思ったんです(笑)
でも積読本でも...
さっきコメント欄見てたらあれれ⁇5552さんは⁇と思ったんです(笑)
でも積読本でもおすすめしてもらうのは嬉しい事ですよ。
星新一や筒井康隆はカラッとした怖さで私的には大丈夫でした。原民喜はちょうど穂村さんの本でも紹介されていて読みたかったのでよかったです。優しいお話です。直野祥子さんと深沢七郎は‥正にトラウマになりそう。