自閉症の僕が跳びはねる理由―会話のできない中学生がつづる内なる心
- エスコアール (2007年2月28日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (175ページ)
- / ISBN・EAN: 9784900851382
作品紹介・あらすじ
養護学校中学2年(当時)の著者が自閉症について「どうして目を見て話さないのですか?」「手のひらをひらひらさせるのはなぜですか?」等50以上の質問に答えます。
巻末には短編小説「側にいるから」を掲載しています。この小説は著者の家族に対する愛情に満ちあふれた内容です。
感想・レビュー・書評
-
内容紹介 (Amazonより)
養護学校中学2年(当時)の著者が自閉症について「どうして目を見て話さないのですか?」「手のひらをひらひらさせるのはなぜですか?」等50以上の質問に答えます。
巻末には短編小説「側にいるから」を掲載しています。この小説は著者の家族に対する愛情に満ちあふれた内容です。
著者は子供と同じような歳なんですよね...なんだかいろいろ考えてしまいます。
Wikipediaで検索してみると 作家、詩人、絵本なども書かれていて 筆談から始めパソコンで意志を伝えれるようになるまでには 並大抵な努力ではなかったのかと想像します。
読んでみると いろんなことを考え感じているのだなぁとよくわかります。知らなかった、わからなかった感情が書かれていて 知ることが出来て良かったと思いました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
自閉症とのかかわりは もう20年以上前になるのかなぁ?
当時は学術書のようなものを読んだりしていましたが
この本は 本人が書いています。
時々読む「ビッグイシュー」という
雑誌にも連載が掲載されているので
とても、理路整然と書いているので 自閉症といっても 軽い人なのかしら?と
思っていました。
彼は書くことによって 自分の気持ちを表現できるようになったそうです。
この本は多くの人に読んでもらいたいですね。
そして 自閉症とは こういう理由があって アクションを起こしているという事を
わかれば お互い良い関係を築いていけると 思いました。 -
子供の頃、近所に自閉症の子がいて、よく一緒に遊んでいました。その頃にこの本を読みたかった。その子にはまともな知能がないと思っていたし、大人になって再会したときにその子のご両親が「ちゃんと覚えてて、喜んでいるのよ」と言ったのをすごく意外に思った、その前に読んで知っておきたかった。自閉症の人は言葉や身体を思う通りに操れないだけで、頭の中には色んな気持ちや意見がちゃんとあって、やりたいことや学びたいことがいっぱいあるんだ。それがあるからこそ、できないことが苦しく悲しい。筆談という心のうちを外に発信できる手段を、この本の著者は手に入れて、こうして私にも彼の心のうちが垣間見られるようになりました。文字って素晴らしい。私が「どうせ分からないだろう」と思ってしたことが、あの子を傷つけていただろうなあ…と十数年を経て反省。今年の20年早く読みたかった本ナンバーワン。
-
自閉症スペクトラムの人が何を考え、何を感じているかの一端がわかる画期的な本。この本が、業界に与えた影響は大きいのではないだろうか。特に、発達障害を持つ児童に関わる人や支援者は絶対に読んでおくべきと思う。
本書では、自閉症スペクトラムで見られる特徴についての質問に、中学生である筆者が一つ一つ答えていく形式を取っている。答えも簡潔に、平易な文章で短く書かれているので非常に読みやすく、自閉症スペクトラムについての知識がない人でも、とっつきやすいと思われる。
しかし、とっつきやすい=単純に書かれているというわけではない。傍から見ると解りにくい思考や感覚について、痒いところに手が届くように、丁寧に書かれている。
例えば、「Q31 偏食が激しいのはなぜですか?」についての回答。「食品は味も色も形もひとつひとつが違います。普通はそれが楽しみなのですが、自閉症の人にとっては、自分で食べ物だと感じたもの以外は、食べてもおいしくありません。それは、まるで原っぱでままごとのご飯を食べさせられているように、つまらないものなのです。」
この文章を読んではっとした。私は、それまで、偏食があるのは自閉症スペクトラムの特徴の一つである「こだわり」から来るものなのだろう、くらいにしか考えられていなかった。
著者が語ってくれているような心象世界の一端を解っているのと、解っていないのとでは、接し方に大きな違いが出て来るはずである。
他にも、自閉症スペクトラム児に関わる人は、以下の部分だけでも押さえておくべきと感じた。
Q9より「普通に返事をするだけでも、「はい」と「いいえ」を間違えてしまう」(…Yes,No質問で聞けば必ず正しい答えが返ってくるというわけではない)
Q13より「ひとりが好きだと言われるたび、僕は仲間はずれにされたような寂しい気持ちになるのです」(…一人でいるからといって、一人でいたいわけではない。放置しないように)
Q53より「もし、人に迷惑をかけるこだわりをやっているのなら、何とかしてすぐにやめさせて下さい。人に迷惑をかけて一番悩んでいるのは、自閉症の本人自身なのですから」(…他人に乱暴を振るうようなこだわりはやめさせるべき。本人も本当はやりたいわけではなく、後から傷つく)
Q56「(視覚的なスケジュールは)やる内容と時間が記憶に強く残り過ぎて、今やっていることがスケジュールの時間通りに行われているのかどうかが、ずっと気になるからです」(…もちろん視覚的スケジュールに救われている子はたくさんいるだろうが、本人達がどう感じているのか、視覚的スケジュールに頼り過ぎていないかという視点は必要と感じた)
このように、自閉症スペクトラムに関わる人達や、もしかしたら当事者にとっても実用的に役立つ本であるが、視点を変えると、本書は自閉症スペクトラムに関係なく、哲学書とかそういう本としても読めるように思う。
自分のことをこれだけ客観的に見つめ、なおかつ人に説明することが、振り返って、中学生の時の自分に出来ただろうか?中学時代どころか、今でさえ私には無理である。
自分の行動を、内面を、思考を、外国人なり、異世界人なりに説明しなさい、と言われて、著者のように説明できる人が果たしてどのくらいいるのだろう。
そういう意味でも、本書には驚嘆するばかりである。 -
僕が作者(東田直樹)のことを知ったのは『ビックイシュー』誌(日本版)の連載のコラムでした。
正確には彼の言葉に出会ったというべきかもしれません。
それは精神科医山登敬之との往復書簡という形でしたが、掲載される文章は毎回千文字に満たないものの、必ず僕の心に引っかかってくるフレーズがあって、心地よい消化不良というのは形容矛盾かも知れませんけど、なぜだか日常生活の中でふとしたタイミングで腑に落ちるというか、なるほどそういうことなのかという理解が訪れる、つまり彼の言葉には幸福な気づきの予感が埋め込まれているのだと思いました。
この本が書かれたのは養護学校の時(14歳頃?2007年)で彼は自閉度も重度と思われるカナータイプの少年でした。題名のように、突然、跳びはね、立ち上がって歩き回ったり、会話もままならない従来なら知的障害を伴った自閉症。にもかかわらず母親の献身により「パソコンおよび文字盤ポインティングにより、援助なしでのコミュニケーションが可能」になったそうです。
本書は質問に答える形で、自らの住む自閉症の世界が語られています。僕は以前、高機能自閉症やアスペルガー症候群の作家あるいは学者が書いた本をいくつか読んだことがあります。それらの大人の人たちの文章と比べてても彼の言葉は論理的かつ客観的で非常に高い知性を感じさせます。さらに詩的で感受性豊かで実際、本書の巻末には短篇小説『側にいるから』が納められています。それ以前にも彼は童話を創作し中学生以下の部門で大賞を取っています。
このような既存の自閉症スペクトラムに当てはまらない非常に稀有、まさに奇跡的な事例については専門家や自閉症の子を持つ親たち、施設関係者の中から懐疑的な声もあります。
多くの人が彼を知ることになる大反響のあったNHKのドキュメンタリー番組「君が僕の息子について教えてくれたこと」、僕は見ていませんが、自身自閉症の息子をもつアイルランド在住の作家デイヴィッド・ミッチェル氏による翻訳がきっかけで本書は20ヵ国以上出版されているそうです。
彼の言葉は希望として、自閉症の子どもをもつ、世界中の数多くの家族に届けられ救いとなっているのです。だとしたそれがフィクション(母親との共作=創作)であって何の不都合があるというのでしょう。僕が受け取った彼の言葉は真実であるのに間違いないのですから。
いくつか紹介したいと思います。
「僕たちが話を聞いて話を始めるまで、ものすごく時間がかかります。相手の言っていることが分からないからではありません。相手が話をしてくれて、自分が答えようとする時に、自分の言いたいことが頭の中から消えてしまうのです」
「僕たちは、自分の体さえ思い通りにならなくて、じっとしていることも、言われた通りに動くこともできず、まるで不良品のロボットを運転しているようなものです。いつも」
「自分の気持ちを相手に伝えられるということは、自分が人としてこの世界に存在していると自覚できることなのです。話させないということはどういうことなのかということを、自分に置き換えて考えてほしいのです」
「僕らが見ているものは、人の声なのです。声は見えるものではありませんが、僕らは全ての感覚器官を使って話を聞こうとするのです」
「体に触られるということは、自分でもコントロールできない体を他の人が扱うという、自分が自分で無くなる恐怖があります。そして、自分の心を見透かされてしまうかも知れないという不安があるのです」
-
自閉症の作者がその心の内側を、質問に答える形で詳らかにした画期的な本。
自閉症の子はコミュニケーションが苦手で、
自身の気持ちや要望を伝えることが難しいため、
その心の中を覗くことはできなかった。
この本を読んで、我が子の気持ちを初めて理解した親御さんがたくさんいるそうだ。
その中の一人、アイルランド存住の作家により英訳された本書は、
イギリスやアメリカでベストセラーとなり、
自閉症の子を持つ世界中の多くの家族を救っている。
まず13才の作者の紡ぎだす言葉が、限りなく優しく詩的であり、
かつ言葉に表しづらい感覚の違いについても、
比喩を用いてとても解りやすく書かれていることに驚く。
曰く、「僕たちは、自分の体さえ自分の思い通りにならなくて、
じっとしていることも、言われた通りに動くこともできず、
まるで不良品のロボットを運転しているようなものです....
僕たちは話さないのではなく、話せなくて困っているのです。
自分の力だけではどうしようもないのです」
彼らは自分のせいで他人に迷惑をかけたり、嫌な気持ちにさせることが
いちばん辛く、そのためについ一人になろうとするのだという。
本当はみんなと一緒にいたいのに。
「自ら閉じる」という意味合いを連想させる「自閉症」という言葉は、
彼らに対する誤ったイメージを社会に植え付けることにもなり兼ねないため、
考え直すべきではなかろうか。 -
読んでから気がついた。中学校のクラスのあいつはたぶん自閉症だったんだ。微動だにせずいつも黒板をじっと見つめていた。話しかけると真っ赤になり困ったような感じで黙っていた。つまらなかったのであまり相手もしなかった。この本でいろんなことがようやく分かった。いろんなこと敏感に感じていたんだ。考えていたんだ。もう一度あいつと話してみたいなと思った。
-
著者は1992年生まれの詩人・作家。5歳のときに自閉傾向があると診断され、小学5年生までは普通学校に通うが、以後、養護学校に編入して中学までを過ごし、その後、通信制の高校を卒業している。
パソコンや文字盤を使って外部とのコミュニケーションを行うという。
自閉傾向は強いが、知的障害はさほどないとのことで、絵本やエッセイなどの著作もこれまでに何冊かある。
本書は2007年初版刊行でさほど新しくはないのだが、図書館の予約が非常に多く入っていた。自分もかなり前に予約したので、何を見て興味を持ったかよく覚えていないのだが、新聞記事か読書コーナーで紹介されていたのかもしれない。
数年前の本がなぜ注目を浴びていたかといえば、多分、テレビ番組で取り上げられていたことが大きかったのだろう(すでにDVDが発売されているようだ)。内容としては、本書が、自身も自閉症の息子を持つ英国人作家の目に留まり、英訳されベストセラーになる経緯を追ったものであるようだ。
本書は副題の通り、著者が中学生のときに記されたもの。質問に対する答えの形式で、1,2ページの短いエッセイが、60ほど収録されている。その他、短編小説やショートストーリー、ちょっと言いたいことが挿入される。
質問は、自閉症について、一般の人が疑問に思いがちなことであり、例えば表題にも採られている「なぜ跳びはねるのか?」をはじめ、「どうして耳をふさぐのか?」、「どうして目を見て話さないのか?」、「どうして繰り返し同じことをするのか?」といったものがある。
直接の会話は苦手だが、筆談やパソコンでならこうした質問にも答えられるということのようだ。但し、著者も相当の訓練を積み、お母さんの助力も大きかったようで、自閉症の人の誰もがこうした能力を身につけられるというものではもちろんないのだろう。
内容としては、端からこのように見えるかもしれないけれども、実際にはこう思っているんだ、という、いわば自閉症の心の内の通訳ということになる。
実際には、著者の言葉を読んでいただくのが一番よいのではないかと思う。
全般としては、ある意味、自分の内部に閉じ込められ、外とのつながりを作るのに非常に努力を要する状態なのかな、という印象を受けた。外の刺激が強いと感じたり、恐怖心をあおられたりということが、自閉症でない人よりも甚だしいのかもしれない。
自分の身近に自閉症の人がいなかったこともあってか、今ひとつぴんと来ないことも多いのだが、日々、近くで接しているような人だと「あの行動はそういう意味か」など、納得できる点が多いものなのかもしれない。
声を発しにくい立場の人の内部からの声という点で、貴重な本なのだと思う。
*ショートストーリーの中の「カラスとハト」が印象に残りました。
*自閉症の動物学者、テンプル・グランディンを思い出します。 -
突然飛び跳ねたり会話もまともにできない重度の自閉症の少年が、筆談でのコミュニケーション方法を得て書きつづったエッセイとショートストーリー。
描かれる世界のみずみずしさに胸が打たれました。
特に「手をひらひらさせるのはなぜですか?」に対しての文章に感動しました。
「これは、光を気持ち良く目の中に取り込むためです。/ぼくたちの見ている光は、月の光のほうにやわらかく優しいものです。そのままだと、直線的に光が目の中に飛び込んで
来るので、あまりに光の粒が見えすぎて、目が痛くなるのです。/でも、光を見ないわけにはいきません。光は、僕たちの涙を消してくれるからです。(以下略)」
8年前に出版されたこの本が自閉症児を持つ作家により海外で翻訳されて世界中に読まれるようになり、それがNHKのドキュメンタリーで取り上げられた・・・というのはこの本を読んで、レビューを読んではじめて知った話。
youtubeでそのドキュメンタリーを見られると知って見てきましたが、それを見た上で改めて文章を読むとさらに深い感動を受けます。
たくさんの人にぜひ読んで欲しい1冊です。