うしろめたさの人類学

著者 :
  • ミシマ社
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本棚登録 : 2021
感想 : 140
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784903908984

感想・レビュー・書評

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  • 何度も読み直したいと思った本だった。
    世の中の仕組みとか、格差とか、すごく変えられない大きなものだと自分も感じていた。
    何もかも自己責任と言われがちで、人が孤独で、窮屈だと感じてしまう世の中を、自分もすごく怖く悲しいものだと思っていた。でも、人の気持ちのもちようでなにか変えられるかもしれないと、少し希望を持てたし、そう考えさせられた。読んで良かった。

  • 毎日出版文化賞特別賞受賞(2018年/第72回)
    キノベス!第6位(2018年/第15回)
    ビブリオバトルチャンプ本('19.4 教員大会)

  • 自分が恵まれていることにうしろめたさを感じることが良くあったから、この本に興味があって読んでみた。

    良い考え方だなと思ったことをメモしておく。

    ・うしろめたさは自責にすること、他人に対して負い目にしてはいけない。

    ・たとえば商品交換と贈与の境界線をずらす行為が、他人のうしろめたさ(行動や思考の促進)に影響する。
     本の中の例で言えば、教員である著者は、教育を授業料に応じた行動ではなく贈与の行動と捉えていて、受け取った学生それぞれに何らかの感情を引き起こす媒介と捉えている。

    ・誰になにを贈るために働いているのか。まずはそれを意識することから始める。「贈り先」が意識できない仕事であれば、たぶん立ち止まったほうがいい。
    「わたし」の日々の営みが、市場や国家と結びつき、世界の格差や不均衡を生み出している。市場や国家というシステムを「わたし」の行為が内側から支えている。それがわかれば、国の政治が政治家だけの仕事ではないことに気づくことができる。市場に、いまとは違うやり方をもち込む余地があることも見えてくる。

  • 自分がこの世界で胸を張って生きるためにも、当たり前にとらわれず何度でも境界線を引き直し続け、ずれを探して、自らの手で社会をつくるスキマをみつける。人類はこのときのために知性を育んできたのか。

  • あぁ、私が移住したのは「うしろめたさ」からなのだと実感した。
    そもそも、多分人より「うしろめたさ」を感じやすいのかもしれない。
    小さな頃から
    ・不自由なく暮らせる環境
    ・障害のないカラダ
    ・殺される危機や恐怖を感じなくて良い生活
    という、当たり前といえば当たり前のことに、多分「自分は恵まれている」という「うしろめたさ」があったのだと思う。
    そんな感覚だったから、今でも自分の選択一つ一つに若干「うしろめたさ」があって、
    (割り箸使うたびにごめんなさいと思う…みたいな)
    それは、ネガティブな事なんだろうと思ってたけど、
    そう思う事で自分はバランスを取ろうとしてて、それは悪いことではないのかもしれないと、かなり気が楽になった1冊でした。

  • 抜群に良かった。エチオピアでの共感や対感覚を基盤にして社会や世界を読み解くという姿勢自体にもインスピレーションをもらう。贈与、社会と世界、身体性、共感…気になるキーワードがアフリカでの物語を介して有機的につながる感じ。手元に置いて何度となく読み返したい本。

  • 筆者は「構築人類学」というものを提唱している。社会や国家や経済といったものが人類の活動によって「構築されている」という前提に立ち、人類が構築したものであるのなら、よりよい方向に構築し直すこともできるのではないかという立場である。

    筆者自身、今の社会に窮屈さを感じているらしい。同様に感じている人も多いだろうと考えている。
    目指すべきよりよい社会については、「努力や能力が報われる一方で、努力や能力が足りなくても穏やかな生活が送れる。一部の人だけが特権的な生活を独占することなく、一部の人だけが不当な境遇を強いられることもない。誰もが好きなこと、やりたいことができる。でも、みんな少しずつ嫌なこと、負担になることも分けあっている。」ものと位置づけている。
    よりよい社会に向けて不均衡をなくしていくためには「うしろめたさ」が原動力になる、ということらしい。

    目指すべき社会像については完全に同意できるが、肝心の主張がぼやけていて、何をするべきなのかがはっきりと提示されていない感じがした。

    エチオピアのエピソードは興味深かった。

    その他印象に残った箇所
    ・市場と国家は対立するものではなく、お互いに必要とし合っている。また、どちらかが強くなりすぎないようにバランスを取り合っている
    ・市場は根本的な格差を是正できず、それは国家が補う
    ・市場が限られた企業の独占状態にならないために、国家がルールを作る
    ・資本主義こそが反市場である。独占を志向するものであるから
    ・貧困があるから食糧援助がなされているわけではない。国内農産物を価格を維持するための、余剰農産物が援助に回されるに過ぎない

  • フィールドはエチオピア。著者のエチオピアでの日記に自分の学生時代の経験を重ねて読み進めていった。援助の背景の解説が良かった。期待が高すぎたせいか、全体的な内容はあまり。先進国に生まれた私たちは、途上国に後ろめたさを感じるときもある。国と国の関係でなくても、例えば自分の方がたまたまラッキーでいい思いをすると、他の人に対して後ろめたい気持ちになることがある。そういった現象を人類学の視点から掘り下げてくれるかと期待していたが、そうでもなかった。全体的に文章が周りくどくて私の頭ではわかりにくいと感じてしまった。

  • 感情、関係、常識、世の中のあらゆる事柄は様々なものとの関わりを通して構築されていく。確かにそうかもしれない。普通じゃないもの普通も、それをを作り出しているのは私たちの関わり方次第なところがあって。人との関係もその人との関わりの中で作られていくもので。プラスにもマイナスにも。そう考えるといろんなことがもっと良くなるような気がする。

  • タイトルに惹かれて購入。同著者の「文化人類学の思考法」よりもテーマは限られているが、読みやすかった。交換と贈与の意味合いの違いが主な主張だったかと思う。確かに贈与は人との繋がりを生むものだとしても、「関係を脅迫的に迫る危険性もあるのでは?」と思ったが、その点にも触れられていた。

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著者プロフィール

松村 圭一郎(まつむら・けいいちろう):1975年熊本生まれ。岡山大学文学部准教授。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。専門は文化人類学。所有と分配、海外出稼ぎ、市場と国家の関係などについて研究。著書に『くらしのアナキズム』『小さき者たちの』『うしろめたさの人類学』(第72 回毎日出版文化賞特別賞、いずれもミシマ社)、『旋回する人類学』(講談社)、『これからの大学』(春秋社)、『ブックガイドシリーズ 基本の30冊 文化人類学』(人文書院)、『はみだしの人類学』(NHK出版)など。共編著に『文化人類学との人類学』(黒鳥社)がある。


「2023年 『所有と分配の人類学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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