うしろめたさの人類学

著者 :
  • ミシマ社
3.82
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本棚登録 : 2021
感想 : 140
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784903908984

感想・レビュー・書評

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  • 商品と贈り物を経済と非経済として考えたりするのは面白かった。交換と贈与は違う、とか。ただ日本にいたらこう感じるだろう、みたいな偏見や飛んでる論理を感じてあまり読み進められなかった。
    結論があるわけではなく、一緒に考えてみましょう的な感じなので考えるのが好きな方には良いと思う。私は、あなたの結論は?みたいに思ってしまうのでダメだった。まえがきに"見取り図を書きたい"ってあって、中盤に"大きな目標を掲げてしまって苦労している"とあり、連載で一緒に考えるならいいんやけど、私の求めていたものとは違いました。

  • 感情を通じて個人・社会・世界・市場を捉え直せる本。個人を出発点にするとこんな切り分け方もできるのか!と驚く。
    あまり「うしろめたさ」について深堀りしているわけはないけれど、なぜ人類学を学ぶのかののひとつの入り口としてよかった

  • ・経済
    交換と贈与の違いを生み出すのは時間。
    交換モードによって、じぶんが恵まれている事実を納得させる。
    ・感情
    環境で、感じ方は変わる
    共感
    ・関係
    関係は人と人の間にある事象で、決定される。
    キスをしたら恋人だし、肩をくめたら友達
    ・国家
    社会主義は中央集権して、不満も一挙に集める。
    民主主義は市場に適正の判断を委ね、自己責任とする。
    判断をした人に、責任を感じるのが人。
    今の現状は判断が、原因にあると感じる。そもそも論で辿るとそうなる。

  • 389

  • 社会という大きなもの、遠いようで近いものと
    無理だとは思わずに、繋がろうとすること
    うしろめたさを感じる人間として生きていくこと

    うしろめたさを感じることも悪くはない

    人類学を学んでいくことで、目指すものが見えたような

  • 「うしろめたさ」めちゃくちゃ感じながら、見て見ぬふりをしてきた。行動に移せる人を他人事のように眺めていた。私が動かなくても世界、社会は回っていくし、成り立っている。変えられないと嘆いて動かない人達と自分にモヤモヤしながら、どうせ変わらないとも思って。
    薄くなっていく繋がりと、遠くに感じる国家や市場。世界を見て視野を広げたつもりになって、足元が見えなくなっていく。繋がりを取り戻す、繋ぎ直す。足元の繋がりを丁寧に辿っていけば、遠くに思えた市場や国家に結びつく。
    国家を市場を社会を構築している一人だという自覚を持つと、構築し直せる一人なのだという感覚を持てる。どうせ変わらない、なんてことはないのだと思わせてくれる。

  • 著者の松村圭一郎は「構築人類学」を提唱する。内容は聞いてみると構造主義なのだが、「構造」というと所与のもので変えられないという側面が強く出てしまうけど「構築」といえば作ったもので変えられるものというニュアンスが出てくるから。なるほど。
    エチオピアでのフィールドワークで見つけたことを、7つの切り口で捉えなおす。経済/感情/関係/国家/市場/援助/公平。いずれも、日本人が当たり前に存在していて自分がそれを維持しているとは思ってないもの、すでに存在していて変えられるとは思っていないもの、一つしか有り様がなく疑う余地なんてないもの。ところがエチオピアでは違う。
    本書に出てくる奇妙な事例を読んだ後には違和感を感じる。エチオピアのエピソードや事例に共通する感情に「うしろめたさ」と名前をつけて、それを大切にしようと呼びかける。それを手がかりに「つながりを取り戻そう」と呼びかける。

    著者は明記していないけれど、私が思い出したのはポストモダン思想の「脱構築」。脱構築が目指したのは構造の解体とそれに変わる何かの提唱だったが、実際には構造を破壊してそれっきりになってしまった。ポスト・ポストモダンの世界には何もない。だだっ広い荒野になっている。その二の舞は踏むまい、という意思表明を感じた。

    そして素晴らしいことに、本書は編集者や読者による「つながり」があちこちに派生している。出版元のミシマ社がもともと「そういう出版社」ではあるけれど、毎日出版文化賞特別賞に関連した記事、有名私立中学校の入試問題の採用、それを解説するブログ記事、人類学者による書評など数十の記事を読んだけれど、どれも概ね好意的で、かつての人類学徒として嬉しく思う。
    松村さん、いい本をありがとうございました。

  • 請求記号 389-MAT
    https://opac.iuhw.ac.jp/Otawara/opac/Holding_list?rgtn=1M024803
    エチオピアをフィールドに研究する人類学者の著者が、「うしろめたさ」をキーワードに、人と人との関係を作り直すための「倫理」を考える。エチオピアと日本の価値観の違いから、日本が陥っている「閉塞感」の正体をわかりやすく浮き彫りにしている。

  • 世の中には守らなくてはいけないたくさんのルール、越えてはいけないたくさんの境界線がある。でも、何かおかしいって思ったら、破ってもいいし、はみ出してもいい。その一歩を後押ししてくれる一冊。

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著者プロフィール

松村 圭一郎(まつむら・けいいちろう):1975年熊本生まれ。岡山大学文学部准教授。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。専門は文化人類学。所有と分配、海外出稼ぎ、市場と国家の関係などについて研究。著書に『くらしのアナキズム』『小さき者たちの』『うしろめたさの人類学』(第72 回毎日出版文化賞特別賞、いずれもミシマ社)、『旋回する人類学』(講談社)、『これからの大学』(春秋社)、『ブックガイドシリーズ 基本の30冊 文化人類学』(人文書院)、『はみだしの人類学』(NHK出版)など。共編著に『文化人類学との人類学』(黒鳥社)がある。


「2023年 『所有と分配の人類学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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