うしろめたさの人類学

著者 :
  • ミシマ社
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本棚登録 : 2021
感想 : 140
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784903908984

感想・レビュー・書評

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  • 私の考えてたことをもろ言語化してくれたような本だった。そして最後に"国会前デモ云々"が全然違う文脈で出てきて、多分あのときの私達のことなんだろうなぁってな

  • 友人に勧められて読んだ本。つまらなかった訳では無いけど期待していた内容とは違った。学術的なものではなくて、典型的な大学生活を送りがちな日本の大学生に向けた啓蒙書といった感じ。もっと視野を広げてみよう、的な。
    個人的には、日本はもう他の国に対してうしろめたさなんて感じてる場合じゃない気がするけどなあ、なんて思ったり。

  •  勉強好きの母親に勧められて読んだ。
     印象に残る文章が非常に多い本だった。

     「交換」のモードに支配された現代の日本。対価がないかぎり、相手に何かを与えることに抵抗を感じてしまうと著者は言う。この「交換」のモードは、人間同士の「共感」を抑制する。たとえば物乞いにお金を恵みたいという気持ちがあっても、対価のない贈与は相手のためにならないなどと反射的に理由をつけて、実行に移すことができない。共感が不足した社会は全てが合理的で滞りないが、冷え冷えとしている。
     著者はエチオピアでの生活を通じて、この「交換」のモードからいかに抜け出せるかを考察する。
     新しい命の誕生の瞬間、そこに格差も生まれる。恵まれた環境に生まれた人間と、そうでない人間がいる。そこに因果関係は何もない。あるのは、事実としての圧倒的な格差だけだ。自分が人より恵まれて生まれてきてしまったことにうしろめたさを感じたとき、何かをしなければ、という思いが生まれる。その思いに素直になることが、「交換」のモードからの逸脱につながる。
     
     ホームレスの人が「ビッグイシュー」を売っているのを見かけたら必ず買うようにしていた時期があった。大学の頃、文化人類学の授業が好きで何タームか連続して履修した。もうだいぶ昔の話になってしまった。確かにあの頃の方は今より、内側から自分を突き動かしてくるような思想があった気がする。不安定だったけど、いろんなことに敏感だったし、そうあろうと努力していた。
     ちょっと取り戻したいな、とこの本を読んで思った。

  • 面白かった。

    社会や国家、市場といった、手の届かない(と思われている)いわば、大きな壁に対して、個人がどのように干渉できるのかということを、筆者がフィールドとしているエチオピアでの経験を用いながら提示している。

    無関心が壁の前に立つ個人を無力なものにしているが、壁自体が個人の意識的な、あるいは無意識的な関与によって形づくられていることをしめす。
    その上で、公平な社会を作ることにむけて、うしろめたさ(格差への自覚)を足がかりにできるのでは、と主張している。

    社会や、国家など大きな壁の前に無力感を抱いている人、そのようなものに対してどう、関わればいいのかと考えている人におすすめ。

    (たしか)糸井重里が、電車で席を譲らない人を詰るより、自分がまず席を立ちたい、といっていた。
    こういう働きかけが壁を揺るがすことにつながり得ることを提示しており、なんというか勇気が出る。

  • うしろめたさを格差の中で感じると、贈与して解消しようとする。エチオピアを旅して感じたことも綴っている。

  • 人類学という視点が難しかった。エチオピアの話は興味深い

  • ほとんどの内容が想定していたものと異なっていた。しかし絶対自分から得ようとする内容ではなかったから、それはそれでよかった。終章の最後の最後でようやく期待していたことに触れていた。ハッとする1文があったり、納得をすることも多々。しかし難しかった。

  • うしろめたさというのは日常で色々感じる事あります。
    その「うしろめたさ」から始まる人や社会との関わり方を、エチオピアと筆者がフィールドワークで関わる過程で感じたものと照らし合わせたものです。
    「贈与」というものについて真剣に考えたことは無いし、経済的なものと切り離して考えるのが普通ではないかと思っていました。
    自分の方が豊かで恵まれていることに対してのうしろめたさから発生する贈与。でもその施しをするという行為自体が自分を上に置いているような気がして二の足を踏むのが日本人です。これは自分がそうだからよく分かります。
    公正、公平ではないと感じた時に感じる「うしろめたさ」。その気持ちだけはしっかり自覚していきたいと思いますが、なかなかざっくりしていて難しいテーマだなあ。

  • 「うしろめたい」は気づきのきっかけ。
    国を批判するだけではなく、自分の行動が何につながっているかを日々考える。
    贈り先を意識できる仕事をする。
    エチオピアへのアメリカの支援の内幕は知らなかった。
    むかし観たドキュメンタリー映画でアフリカの政府機関の人が「先進国が寄付と称して物品を送ってくるのは、国の雇用機会をうばうからやめてほしい」といっていたことを思い出した。

  • 人類学や社会学の知見を平たい文章で、知識のない人でも肝に落ちるよう丁寧に書かれた小品。筆者は主にエチオピアでのフィールドワークを行なっているが経済、社会、国家の成り立ちと個人の関係をエチオピアと日本の具体的な違いを使って紐解いていく。この本の趣旨とは関係ないが科学技術の発達がこれらとどう結びついているのかも勉強したいと思った。学生に読んで欲しい本。

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著者プロフィール

松村 圭一郎(まつむら・けいいちろう):1975年熊本生まれ。岡山大学文学部准教授。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。専門は文化人類学。所有と分配、海外出稼ぎ、市場と国家の関係などについて研究。著書に『くらしのアナキズム』『小さき者たちの』『うしろめたさの人類学』(第72 回毎日出版文化賞特別賞、いずれもミシマ社)、『旋回する人類学』(講談社)、『これからの大学』(春秋社)、『ブックガイドシリーズ 基本の30冊 文化人類学』(人文書院)、『はみだしの人類学』(NHK出版)など。共編著に『文化人類学との人類学』(黒鳥社)がある。


「2023年 『所有と分配の人類学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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