さ
2017年6月9日
浮世絵の終焉を描いた傑作。三代歌川豊国の跡目を誰が嗣ぐのかという興味を縦糸に、円熟期を過ぎ行く浮世絵界の人間模様が描かれていく。史実に基づいて肉付けされたであろう登場人物達の愛憎が生き生きとして語られ、読み始めたらやめられなくなった。
やがて明治、瓦版は印刷機械を使った新聞に変わり、まず彫りや摺りから熟練の職人が廃業していく。江戸がなくなり、明治となった世で江戸絵と言われる浮世絵は残せるのか。歌川一門は守っていけるのか。二代国貞、清太郎の迷いを激動の時代の中で浮き彫りにする手腕は見事。
著者の他の作品と同様に登場人物たちの造形はすばらしいが、中でも八十八と芸妓みな吉が秀逸。八十八が両手で清太郎の右手を持って絵を描かせようとするシーンには目頭が熱くなった。また著者には珍しくみな吉との色っぽいシーンがあるのも見逃せない。この二人には、スピンオフ短編などでまた出会いたいものだ。
各章のタイトルには梅がつく言葉が並ぶ。物語中にも清太郎が梅を愛でるくだりが現れるが、梅堂、梅蝶楼と号した二代国貞をもじっているのだろうか。
扉絵は一ノ関圭である。絵師の迫真を描いた見事な絵だ。『茶箱広重』や『鼻紙写楽』を再読したくなる。
2015年11月1日
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ふしぎの国のバード 1巻 (ビームコミックス)
- 佐々大河
- KADOKAWA/エンターブレイン / 2015年5月15日発売
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明治11年といえば西南戦争の翌年、文化的にはまだまだ江戸。未開のワンダーワールドをイギリス人探検家の目を通して描かれる日本の姿が実に興味深い。なにしろ日本語の会話はほにゃらら的に一切わからないw
車夫の全身刺青、大名が停泊した本陣でもノミだらけ、西洋人に対する不躾な興味、早すぎる女子の成年など、いろいろと辛辣かつ素直な西洋人の日本観が面白い。バードの日本紀行記には批判もあるようだが、この漫画は当時の日本人の優しさと矜持もちゃんと描いているところがすばらしい。春が髪結いするシーンには誇らしさすら感じた。
2015年7月19日
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ランド(1) (モーニング KC)
- 山下和美
- 講談社 / 2015年4月23日発売
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すごい。村の因習により運命を分けた双子の娘二人、アンと杏。全篇を覆う獣臭いおどろおどろしさと鷲につかまって飛翔するシーンの気持ちよさ。物語は終始スリリングに進んで驚きの展開を迎える。今後どうなるのか予測不能のすばらしさ。
2015年5月3日
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桃のひこばえ 御薬園同心 水上草介
- 梶よう子
- 集英社 / 2014年9月26日発売
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御薬園同心シリーズの2作目。キャラがきちんと役をこなして笑わせてくれるんだが、それぞれ少しずつ成長していて思いがけない展開が新鮮なのは連作作品の楽しさ。
水草同心草介はぼんやりに輪をかけて朴念仁。しかし、植物の知識で騒動を解決するただものなさもあいかわらず。
中でも「くららの苦味」が好きだ。第1作で目をつけた剪定ばさみを苦労してやっと手に入れる。たかがはさみを遊女の落籍にみたてて恋焦がれるんだから恐れ入る。しかも手に入れたと思ったらたった三日で失せてしまう草介に親近感覚えることしきりだ。
いつも御薬園で土いじりをしている草介も、たまには日本堤を歩く姿も見てみたいw
2015年1月23日
次郎長の義侠心を確かに受け継いだ養女けんの目を通して、時代を生き抜いた人々の生き様がていねいに語られていて、感動した。
実在の人物に加え、貧しく名もない人たちにも等しく向けられるけんのまなざしは、著者のまなざしとしてどこまでも暖かく、たとえ悲惨な結末が語られていても、人々のささやかな人生に寄り添う視線に読んでいてどこかほっとする。
思い入れられる登場人物は多いのだが、特に初志郎には目が放せなかった。
2015年1月22日
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ケダマメ 1 (ビッグコミックス)
- 玉井雪雄
- 小学館 / 2014年12月26日発売
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なにがなんだかよくわからんが、おぞましさと虚仮丸の異形の強さに瞠目しつつ一気読み。
2014年12月28日
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赤猫異聞 (新潮文庫)
- 浅田次郎
- 新潮社 / 2014年12月22日発売
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早々と結末は見えてしまったが、語りのすばらしさが面白かった。 士官学校教官となった七之丞が生徒の質問に回答した負け組の兵学がしみた。
2014年12月30日
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ポム・プリゾニエール La Pomme Prisonniere
- 鶴田謙二
- 白泉社 / 2014年12月25日発売
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ネコおかしいw
2014年12月24日
言うことありません。面白すぎます。一気読みです。
2014年12月24日
律子のこわれっぷりに溜飲が下がる第1部、地味な捜査がスリリングな第2部まではよかったが、犯人がネタバレしてからは普通に終わってしまったな。
2014年12月22日
なんというおぞましさ、なんという面白さ。戦国ホラーつんだろか。読み出したら止まらずに一気読み
2014年11月24日
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セロニアス・モンクのいた風景
- 村上春樹
- 新潮社 / 2014年9月26日発売
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一冊の本の作りとして、どうなのよ
2014年11月9日
面白かった。
兄を盛信を思い、家族を殺され国を亡くしても、信玄の娘という誇りを捨てずに、過酷な八王子へ逃避行する松姫のまっすぐさがすがすがしい。旅で出会う困難にやがては生くべき道を見つける。 凄惨な描写のなかに窪田獅子之助との淡い恋物語が心温まる。
八王子千人同心の祖が、松姫警護の御寮人衆だった。絹織物産業が松姫由来だった。など、トリビアもある。
2014年10月12日
私生活がほとんど知られていないという西鶴をいきいきと描き尽くした手腕はみごと。
公儀への反骨は小気味良く、市井の人への人情味あふれるまなざしは暖かい。江戸中期の巨人の姿が娘おあいを通して完璧な上方言葉でつづられる。ユーモアに富むリズミカルな言葉の応酬にするする読み進められる。
同時代に生きた芭蕉に対する敵愾心も、どことなくおちゃめで憎めない。
おあいは盲目ゆえの差別を受けつつも、実は家事をやらせば適うものなし。そのスーパーウーマンぶりに胸がすく。
父に字を教わり、幼くして別れた弟にかな一行の手紙を送るくだりは、目頭が熱くなった。
2014年9月28日
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乱丸 下 (文芸書)
- 宮本昌孝
- 徳間書店 / 2014年2月1日発売
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上巻を読んだのは 3月なんだが、面白くて下巻500ページを一気に読んでしまった。できすぎの感はあるが森蘭丸がまっすぐですがすがしい。もちろん本能寺の変の謎解きは大きな興味なんだが、ちょっとスケール小さい
2014年8月17日
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月に捧ぐは清き酒 鴻池流事始
- 小前亮
- 文藝春秋 / 2014年3月24日発売
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山中鹿介の長男として生まれ、武士を捨てて商人となり、清酒を生み出し、鴻池財閥の礎を築いた男の物語。サクセスストーリーの王道を行ってて面白かった。
読み所は多いが、大坂冬の陣を前に、本田正信に嫌疑をかけられ召喚されたときの申し開きが感動的。
2014年7月21日
松本清張賞受賞した「一朝の夢」の続編、といっても時代は5年遡る。
安政の大地震と地震後の復興描いた快作。風采の上がらない興三郎がお救いどころ閉鎖に際した言葉がしみる。
若き日の河鍋暁斎が大活躍するのもうれしい。できれば暁斎の鯰絵載せてほしかった。
ミステリーとしても一級品。
2014年7月16日
信長登場前の戦国前期はほとんど知らないんだけど、三好元長の天下統一の夢をドラマチックに描いて面白かった。最後に松永弾正が登場して義輝、信長の後期を予感させる
2014年6月15日
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主婦40歳、復職めざしてます (メディアファクトリーのコミックエッセイ)
- 現代洋子
- KADOKAWA/メディアファクトリー / 2014年3月20日発売
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ぜんぜん立場違うのに、けっこう入り込んでしまった。面白がりながら、復職の困難な事情がよくわかる。リアルなエピソードが描かれているなと思ったら、作者経験談とかw 復職に悩んている人は、これ読むと元気でそう。
雇用する側としても興味深かった。
2014年4月6日
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雪まろげ: 古手屋喜十 為事覚え
- 宇江佐真理
- 新潮社 / 2013年10月22日発売
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1巻目と比べると格段に面白い。やはり捨吉の存在が大きい。以前は鼻についた喜十のリアリストぶりもいい感じで味になっている。
唄の好きな子どもとはいえ、覚えるのがはじめは木遣り節、次はおたふく女郎粉引歌って、どんなんやw 順調に悪たれに育っていて先が楽しみ。
2014年3月12日
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ジョン・マン 青雲編
- 山本一力
- 講談社 / 2013年12月25日発売
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マサチューセッツ州フェアヘブンのホイットフィールド船長宅で暮らし始める最初の3カ月半が描かれる。2カ月間を地元の小学校に通って英語、数学、理科を学び、その後バートレット・アカデミーを受験する。
偏見や差別はもっと過酷だったのではないかと思うのだが、比較的さらっと描かれて、理解ある周囲にサポートされ、また万次郎の勤勉さと潜在能力で軽々克服してしまい、少々、拍子抜け。本当の差別は、上位学校に進んでからの次巻かもしれないが。
2014年3月9日
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美雪晴れ: みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-11 時代小説文庫)
- 高田郁
- 角川春樹事務所 / 2014年2月15日発売
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「一柳」主人から求婚されていた芳が結論を出し、澪はいよいよあさひ太夫の身請けに向けて始動する。
鼈甲珠を売り出す「ひとすじの道」は、そのまま長編のモチーフになりそうな成功譚で、『銀二貫』を彷彿とさせる。
最後に小松原数馬が登場するおまけ「富士日和」が収録されているのもうれしい。
なんと、次巻で完結だそうだ。発売予定の8月が待ち遠しい。
2014年2月17日