- 悩んでも10秒 考えすぎず、まず動く! 突破型編集者の仕事術
- 松田紀子
- 集英社 / 2019年11月26日発売
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今年から松田さん(ジョンさん)と一緒に働いていて、普段からそのパワフルさや朗らかさ、かつ周囲へ細やかな気遣いを忘れないお人柄の恩恵を受けています。そんなジョンさんの人生の軌跡を知れたことはもちろん、これから30代
、40代の女性として仕事を続ける上で肝に銘じたいことがたくさん詰まっており、とても勉強になりました。
読みながら自分自身のキャリアを思い出していたのですが、私も雑誌編集者を目指していた時期がありました。そしてその憧れを抱えたまま、平日は会社員、土日はzineの編集というダブルワークのようなことをしていたこともありました。私がいつもジョンさんのことが眩しく、とても憧れるのは、「自分が突き詰めもせずに手放してしまったもの」を、強くて明るい太陽のような意志を持って、真っ直ぐに実現されている方だからなんだなと、と今回著書を読んで思いました。
「なりたいもの」を強く持てなかった私が、巡り巡ってジョンさんと同じ職場だというのは不思議なご縁ですが、同じコミュニケーションプランナー職だということをとても誇りに思います。「人生は今が一番若く」、何も遅くはないのだと信じて、「昔からずっと好きだったもの」をひとつずつ取り出して、自分なりのペースで磨いてみようかなと思います。
2019年12月21日
- 散歩のとき何か食べたくなって (新潮文庫)
- 池波正太郎
- 新潮社 / 1981年10月27日発売
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読んでいるだけでお腹が空いてくる…。こういう人のことを、美食家と言うのだろう。出てくるお店は、必ずしも高級店だけではないけれど、どれもとても美味しそうで、そしてそれは単に食べ物の味が良いだけではなく、お店の佇まいや、主人のこだわりや、そこにいる人々の会話や、それらが作り出す空間とそこで過ごす時間全てが、「美味しい」のだと思う。
そして、馴染みのない店や時代なのに、描かれた情景がどこか懐かしく感じられるのは、亡くなった祖父と著者が同世代を生きた人だからだと気づいた。いつのまにか、祖父がお酒を飲むと時折語ってくれた昔話と重ね合わせて読んでいた。東京の西の郊外の貧しい家の出で、家族の誰よりも倹約家だった祖父は、きっとこんなに豊かな外食の経験はなかっただろう。けれど、美味しいものをつまみにお酒を飲む幸せは、戦争を経験しているからこそ、より一層強く感じていたのだと、今振り返ると思う。祖父にこの本を渡して、感想を聞いてみたかった。
「オリムピック」が、「科学とマシンと錯覚」が、東京を、そして日本の都市のあちこちを破壊してしまったと著者は言う。この本が書かれた30数年前は、まだ今よりは「良い時代」だったのではないかと思ってしまうけれど、それでも、日本に活き活きと根付いていた食文化は、既に刻々と変わり続けていたのだろう。そして、きっと著者は呆れるだろうけど、二度目の「オリムピック」がやってくる。私たちはまだ、破壊を続けているのだろうか。それとも、少しは何かを取り戻そうとしているのだろうか。
決して美食家ではなくても、お酒を飲み歩ける年齢になると、「この店は無くしちゃいけない」と思う店にたまに出会うことがある。でも、だからといって、その店が変わらずに永遠に続いてほしいと願うのも、無責任なことのかもしれない。ただできることは、通えるときに好きな店に通い、その味や時間を、しっかりと記憶しておくことだけなのだと思う。
2019年3月3日
- ミラノ霧の風景: 須賀敦子コレクション (白水Uブックス 1057 エッセイの小径 須賀敦子コレクション)
- 須賀敦子
- 白水社 / 2001年11月1日発売
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大学時代、比較文化論の教授か、感度の高い友人に勧められて読んだのが最初だったように思う。当時はイタリアの地名にも人名にも馴染めず、理解の助けとなるはずの歴史や文学の教養もなく、かろうじて頭に残ったのは、「サバ」という詩人の名前くらいだった。
今回再読してみて、この美しい小説のような、映画のような物語が、ひとりの女性の人生の追憶だということに改めて驚く。須賀敦子さんがイタリアで暮らし始めた年齢は、いまの私の年齢とそう変わらない。30歳前後という、「大人」になることを否が応でも覚悟していく年代から、意を決して異国に移住し、新しい言語や街の空気を飲み込んで自分のものにして、身体ごと異文化に馴染んでいく経験ができることがとても羨ましく、同時に、どれだけ不安だったのだろうか、どれだけわくわくしたのだろうかーと、同年代の友人の生き方を見るように、思いを馳せることができた。
もちろん楽しいことばかりではなくてーご主人が若くして急逝されたことは言うまでもなくーかつての友人や心を捧げた活動もゆっくりとかたちを変え、衰退し、いつのまにか人生から姿を消してしまう。もし、須賀さんが30代、40代でイタリアについて書いていたら、全く違う作品になっていたのではないだろうか。もしかしたら瑞々しい別の魅力があったのかもしれない。しかし、全てが夢のように通り過ぎて、生々しい喜びも痛みも自分自身の「物語」として受け入れ、隠されていた「運命」に気づき、日本で霧を見ながら思いを馳せるイタリアだからこそ、こんなにも美しく、哀しいのだと思う。円熟、というのは、まさにこの人のためにある言葉なのだな、と思った。
2019年2月10日
- 停電の夜に (新潮文庫)
- ジュンパ・ラヒリ
- 新潮社 / 2003年2月28日発売
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尊敬している年上の友人から勧められ、初めて手にしてから10年近く経った。その間折に触れて読み返しているけれど、少しずつ好きな話や共感する登場人物が変わってくる。
20代の初めに読んだ頃は、『セクシー』のミランダの取った選択に励まされ、『ピルサダさんが食事に来たころ』の「わたし(リリア)」に自分の幼い頃を重ねた。その後は、表題作の『停電の夜に』がとても好きになり、カップルが迎えるどうしようもないすれ違いに、自身の恋愛を投影して胸を痛めたりもした。
そして30代に入り、たまたま結婚もし夫のいる生活になったいま、頭から全部読み返すと、それぞれの話の機微がより解像度高く理解できるようになった気がして、嬉しく思った。人の体温のあたたかさと冷たさ、周囲にひとり馴染めないことの哀しみ、異質なものを排除する人間のありふれた残酷さ、一方でそれを垣根なく受け入れる包容力、異国の地でも家族を築いていける人間の強さ。それぞれの短編の人々は誰もがとても人間らしく、だからこそ哀しくて、優しい。
インドの文化はもちろん、イギリスやアメリカ文化さえもわたしにとっては異文化だけれど、こうして人間同士として相手の感情に思いを巡らすことのできる想像力こそが、ラヒリの小説が引き起こしてくれるものなのだろうと思う。
編によって一人称、三人称と視点が変わるのも、読むたびに新鮮な視点を楽しめる要因なのだろう。今回、改めて凄さに気づいたのがラストの『三度目で最後の大陸』だった。こんな短い文章で、夫婦の歩んできた人生が垣間見えるほどの厚みがある。ラヒリは長編もいくつか読んでいるけれど、それらの核になるものは既にここにあったんだな、とようやく気付いた。
最後に。”A Temporary Matter”を『停電の夜に』と訳された小川さんはとても素敵だと思う。これだけで売り上げがだいぶ変わったんじゃないか。そういえば、この本を初めて読んだのは3.11の直後で、日本のあちこちが停電していた頃だった。
2019年1月13日
- マーケティングの仕事と年収のリアル
- 山口義宏
- ダイヤモンド社 / 2018年10月17日発売
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「マーケティング」という幅広い領域に関するキャリアの作り方を、丁寧に紐解いてくれていてとてもありがたい本。次のキャリアを考える大きなヒントになりました。
2019年1月1日
- 欲望する「ことば」 「社会記号」とマーケティング (集英社新書)
- 嶋浩一郎
- 集英社 / 2017年12月20日発売
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実務家と研究者が交互に論じていくスタイルが良かった。社会記号がどのように作られていくかが整理できた。
2018年7月22日
- SHOE DOG(シュードッグ)―靴にすべてを。
- フィル・ナイト
- 東洋経済新報社 / 2017年10月27日発売
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まるで、革命家の冒険談を読んでいるようだった。信じたことを生涯をかけて貫きとおす人の物語は、とても眩しく、炎のように力強く温かい。ブランドというのは、こうしてできていくのだなと思った。
2018年6月30日
- ファンベース ──支持され、愛され、長く売れ続けるために (ちくま新書)
- 佐藤尚之
- 筑摩書房 / 2018年2月10日発売
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恩師の著書です。とても親しみやすい語り口で、進む道を穏やかに照らしてくれる。何のためにマーケティングやってるんだっけかな、と悩んだら手にとってほしいです。
2018年3月4日
仕事も含めた日常生活で、同じ思考回路ばかり使っているとそれ以外の思考の存在すら忘れてしまう。「当たり前」だと思っていることに風穴をあけ、違う景色を静かに、お茶目に示してくれる本。
2018年3月4日
- あなたを選んでくれるもの (Shinchosha CREST BOOKS)
- ミランダ・ジュライ
- 新潮社 / 2015年8月27日発売
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The Futureを観終わった後、どうしても晴れなかった曇り空のような気分に、ようやく収まりどころが見つかった。もがいてもがいてもがいて、ただ自分の信念だけを信じて次の日には自信を失くして、なんとか手がかりを手繰り寄せてまた信じて、ミランダがようやく手に入れた小さな光は、びっくりするほど暖かいものだった。
喪失の先に何があるんだろうといつも思っていた。最愛の人を亡くしたその後の人生を生きていくことができるんだろうかと、いつも恐ろしかった。それでも、誰かを信じて愛したという記憶は、なくなることはないんだと、何よりもリアルなストーリーで教えてくれたミランダとそのインタビュイーに、心から感謝を込めて本を閉じた。
2015年11月17日
細野さんの言葉や生き方は、本当に細野さんの音楽そのものだなあと思う。若林恵さんによる構成もこの本の魅力のひとつ。
2015年8月14日
- 生まれた時からアルデンテ
- 平野紗季子
- 平凡社 / 2014年4月24日発売
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一ページ目から絶句して、深夜のスターバックスで途方に暮れた。自分の生きてきた26年間はなんだったのだろうと思った。言葉選びのセンス。ユーモアと素直さと色気。習慣は最強の武器だ、って、確か伊坂幸太郎の言葉だったと思うけど、それはまさにこういうことなんだろうなと思った。好きだから続ける、に勝る動機はない。
2014年6月19日
- somewhere [DVD]
- ソフィア・コッポラ
- TCエンタテインメント / -
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主人公の心境の変化を、丁寧に追っている。長回しのカットがとても美しい。護るべきものに気づいた人間は、こうやって自分自身を救っていくんだ、と思った。
2013年2月3日
- ティファニーで朝食を (新潮文庫)
- トルーマン・カポーティ
- 新潮社 / 2008年11月27日発売
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イノセンスへの憧れ、大人になり過ぎて振り返るおとぎ話
2012年10月10日
- 現代アートビジネス (アスキー新書 61)
- 小山登美夫
- アスキー・メディアワークス / 2008年4月10日発売
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現代アートビジネスとはなにか?ということの入門編として、とてもいい内容。わかりやすく、かつ現場で働いている方ならではの活き活きとした文章で、一気に読み終えることができた。
2012年7月12日