- デザインのデザイン Special Edition
- 原研哉
- 岩波書店 / 2007年10月25日発売
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全ての人に読んでほしい超名著。
私にとっては、所謂、人生を変えた一冊。
2018年3月14日
- [新装版]ナチュラル・ステップ-スウェーデンにおける人と企業の環境教育
- カール=ヘンリク・ロベール
- 新評論 / 2010年10月14日発売
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持続可能な社会にむけて活動する組織「ナチュラル・ステップ」の創設者である著者が、自身の思考を語る。
環境問題についての論議を表面的なレベルにとどめないためには、ものごとの複雑さを認めたうえで、持続可能な社会のために満たされるべき基礎的な条件について考えるべきだと説き、その条件を明らかにしていく。
後半の約3割は、主に自身の思考の科学的な背景について説明している。
2017年11月18日
- 戦略的デザインマネジメント: デザインによるブランド価値創造とイノベーション
- ブリジット・ボージャ・ド・モゾタ
- 同友館 / 2010年1月1日発売
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デザインとは何か。分析してまとめ、さらにその運用、マネジメントの仕方を概観的に解説している。
企業の個別的な事例や、他の書の引用を分けて豊富に挿入しているが、日本語版にあわせてか、さらに数ページを使って、ホンダや無印良品など、日本企業の事例も紹介し現実性を持たせている。
デザインの意味するところは曖昧だなどと言われたりするが、この本を読むとだいぶ輪郭が見えてくる。原作は1990年の発行のようだが、デザインに関する情報の取りまとめは十分な質で整っている。この本ほど的確にデザインを定義しているものを、私は他に知らない。
2018年4月15日
- 生きのびるためのデザイン
- ヴィクター・パパネック
- 晶文社 / 1974年8月1日発売
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要約
デザインは表面的な面白さのためだけでなく、安全や社会の問題のために用いられるべきである。
社会の問題を解決し、持続可能にして行くには、分野を乗り越えた協力が必要であるが、デザイナーは多分野を媒介するために役立つことができる。
あと、教育はやっぱり大事。
——————
社会の問題のためにデザインが使われるべきであることを説いている。まさに先見の明。サステナブルデザインの必要性を明らかにした本では、おそらくかなり早期のものだと思う。
当時のアメリカの状況を例にとって批判しており、その時代観は結構古いが、多くのデザイナーがこの書から学びを得ていることを考えると、読んで損はないかな、と思う。
分野の統合、教育の重要性といった点では、バックミンスター・フラーの『宇宙船地球号操縦マニュアル』とも関連している気がする。
2018年3月14日
- 日本空間の誕生: コスモロジー・風景・他界観
- 阿部一
- せりか書房 / 1995年2月1日発売
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日本において、空間や場所はどのように認識され、意味を持っていたか。歴史的に振り返って考察している。
阿部一さん初の著書。
縄文時代から弥生、古墳への移行で、神の場所が発見されたこと。シマのコスモロジー。
「風景」というものの誕生。
天・海「アマ・アメ」といった、地下と天の水の領域の他界から、山中他界感の成立。
など。
和歌や道教、さらに無の禅宗なんかも絡めて解説。以上などがさらりと連結しながら、日本の空間像を広げていく。
それから、日本のそれらの「見かた」に共通して見られる傾向としては、母性的なものが強いという見解で、最後にまとめあげている。
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知らない歴史知識は出てくるけど、基本的にはとても読みやすい。章末ごとに「まとめ」があるおかげで、反復して内容を理解できるのもやさしい作りだと思った。
日本の原初の世界観に迫っているが、大陸からの文化によって起こった変化が、日本人のルーツに食い込んでいるのが大きいのはやはり無視できない。日本人の根っこにあるのは神道、とどこか単純に整理していた気がして、「おっと」と思った。神道ばかりなわけはない。
表紙写真撮影=著者
装丁=工藤強勝さん
2019年2月18日
- 「読まなくてもいい本」の読書案内:知の最前線を5日間で探検する (単行本)
- 橘玲
- 筑摩書房 / 2015年11月26日発売
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様々な知の分野をつないで行き、最後には全てが連結する。 1章に「複雑系」を取り上げるこの本は、人類の知識や学問といったものも、一つの複雑系のスモールワールドのような全体像として浮かび上がらせる。この本で取り上げる知の分野は、重要な知のハブなのであり、この本自体も様々な書や学問のハブとなる一冊となっている。
古い哲学を一蹴するのは大胆で少し焦るが、異なるカテゴリを並べ配置してくれたおかげで、専門的な領域に分化せず、偏りのない概観を得ることもできたし、各分野に興味が湧いた。
ここにあるオススメ本をたどっていると、だんだん無知だった自分が恥ずかしくなってくる。
既出のレビューにある通り、読まなくていい本をひたすら並べるわけでも、読まなくていい理由をじっくり説くわけでもないので、やや誤解を生むタイトルではある。
しかし、これから幅広い知識の世界に歩みだそうという若者にとっては、結局同じ需要を満たすことになるから、そんなに問題は起きない気もするが。
私にとっては、これを読まないといつまでも知れなかったろう内容が多く、本当に助かった。ここに載っている内容だけが最重要な知の世界とは限らないと思うし、誤解しないようにしたいが、ここに出てくる知識はザックリとでも記憶必須な知の分野な気がしている。
2019年7月17日
数多く出版されている『女生徒』だが、この本は特にブックデザインが目を見張る。文の見開きと写真2枚の見開きが交互に繰り返され、小説の内容の情緒性を引き立てている。
写真 佐内正史さん
装丁 葛西薫さん、池田泰幸さん
2018年1月29日
- 清貧の思想 (文春文庫 な 21-3)
- 中野孝次
- 文藝春秋 / 1996年11月8日発売
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清貧など、馬鹿な考えだと思う人がいる。いろんなものに触れ、所有する生活の方がどう考えても豊かではないかと。
たしかに、この本に書かれる清貧を現代で実践するのは困難だろう。大半の人にはもはや体質や価値観を合わせることができなかろうし、できたとしても多くの苦痛を伴う。だから、そのまま見習おうというのは無理がある。が、大いに参考にすることができる。これからの「清貧」はむしろ快適で、安定し、多様な価値観に接触し得るものになるだろう。いや、そうならなくては社会が持続できないのではないか、とすら考える。
もうどっかあちこちで指摘されているだろうが、この「清貧」というワードについて、「清」がイイ子ちゃん感に見えたりしてちょっと嫌だし、「貧」がもうストレートにステキに思えない、というのは問題な気がする。認識を共有できてる間柄でなら問題ないだろうけど、今後キーワードとして掲げ、実用するなら、「スマート」とかもうちょっと別の言葉の方が馴染みやすいと思う。世間一般には。「ロハス」だとちょっとまだキモさが見え隠れしちゃうから甘いな。
とはいえ、日本の歴史を振り返って散見される、ザ・清貧なスタンスは参照する価値があるし、少なくとも実践を伴った上でそこに豊かさと美しさが見出されていたということは、事実として認められて良いとは思う。割と、理解できない人は知人にもいる。いや、むしろ反射的に、清貧的なパラダイムを愚かしいものと卑下してすらいる人も少なくない。価値観には育ちの環境のことも大きいと思うから難しいのだろうが、なんとか想像力をもって理解してもらえないものだろうか。僕にも彼らの気持ちは正しくは理解できないんだよ。異文化交流くらいのレベルといっていい。
2019年6月2日
- 資本主義の終焉と歴史の危機 (集英社新書)
- 水野和夫
- 集英社 / 2014年3月14日発売
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経済成長の神話を否定し、その根拠を経済の視点から説明している。近年のデータのみならず、他国の過去の事例も多く提示しているのが特徴的。
経済成長は常に周辺を必要としているが、周辺が開拓され尽くした現状、成長の余地はなく、無理な金融政策はバブルとデフレを生むだけだと明かす。
よって、より理想的なのはゼロ成長ということになるが、その社会の仕組みはどんなものか、どのようにシフトしていけば良いかについては、具体的には書いていない。そのことに不満を持つ読者もいるのかもしれないが、今だに経済成長が多くの人に信じられている現状を考えれば、ゼロ成長の可能性を根拠を持って解き明かしているというだけでも、充分知る価値のある内容だと思う。
私は自然環境や物資資源などの見地から現在の社会の危うさを指摘する書は読んだことがあったが、経済の視点に絞って解説している本はあまり読んでいなかった。経済に詳しい人には、むしろこういう本の方が分かりやすいのかも。
2018年1月29日
- アンバサダー・マーケティング
- ロブ・フュジェッタ
- 日経BP / 2013年10月3日発売
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企業を応援する顧客、アンバサダーが、企業にとってどれほど良い効果をもたらすものか説く。
アンバサダーは口コミ、ネット上での書き込みによって他人に商品やサービスを勧め、時には批判者から企業を守ろうとする。
現状、生活者は企業が出す広告よりも、他人からのオススメを信用する傾向があり、アンバサダーの影響力は一層強い。
アンバサダーらの行動は無償であり、無報酬であるからこそ彼らの意見は信頼される。
本書では事例を挙げつつ、アンバサダーの性質や、彼らをマーケティングに取り入れるにはどうすればいいか、質問の仕方やお礼についてなど解説している。
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ネット上を口コミやレビューが活発なことには私も気づいているつもりだったし、知人からの推薦されたものをチェックしたくなる感覚は自覚していたが、改めて納得した。
また、人が企業のメッセージを受けどのような反応をするのか、繊細な問題だが、実はこういった考察の視点は、私たちの普段の人付き合いでも応用が効くことに思われる。人の心理について認識を深める本としても読める気がする。
それから、私自身も生活者の一人として、好きな企業をもっと応援してみたい気分になった。好きな企業が発展したり、その企業から感謝されたら、当然嬉しい。
本にも書かれているが、アンバサダーの増加は現代の一次的な流行というより、人としての必然なのだろう。
2018年4月15日
- かないくん (ほぼにちの絵本)
- 谷川俊太郎
- ほぼ日 / 2014年1月24日発売
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2018年5月12日
- ムーミン童話限定カバー版 全9巻BOXセット (講談社文庫)
- ト-ベ・ヤンソン
- 講談社 / 2014年8月3日発売
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デザイン 菊地信義さん
巻末に二人ほどの作品評、解説が付く。
2018年5月12日
- 世界最後の日々 (CUE COMICS)
- 山本直樹
- イースト・プレス / 2010年7月8日発売
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鈴木成一さんの装幀と、タイトルの謎めいた感じに興味が湧いて読み切った。
きっかけは『鈴木成一デザインの手本』
これって、エロ漫画?というより、性行為漫画とか言ったほうがしっくりくるかな。性行為の外見のインパクトを見て、目の刺激を得られる漫画、という感じがした。それと、妙な悲壮感がいちいち新鮮だった。
エロ漫画にも、山本直樹さんにも詳しくないから、何を言っても浅い感想にしかならないが、この独特の雰囲気が結構気に入ってしまいそう。
とはいえ友人の前で「僕もエロ漫画読んだことあるんだ」なんていうと、盛大に誤解を生んで面倒だ。いや「エロ」が嫌いというわけではないのだが、「スケベ」というわけではないんだよなあ。うまくいえなくて都合が悪い。
2018年12月8日
- どろろ コミック 全4巻 完結セット
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2019年6月19日
- MONSTER 全18巻 完結コミックセット(ビッグコミックス)
- 浦沢直樹
- 小学館 / -
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子供の精神的危うさが狂気に転じ、その歪みが大勢の大人たちをも巻き込んでいく。
人間の顔は一つでない。環境の圧力で変化したり、異なる本性や悪意を隠し持っていたり。人が思いがけない側面を見せるときの、気持ち悪さや、裏切られる恐怖が次々に展開する。
2018年10月18日
- 恋愛 L'amour
- アンドレ・ブルトン
- エクリ / 2006年10月30日発売
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2018年6月23日
- 四畳半神話大系 (角川文庫 も 19-1)
- 森見登美彦
- 角川書店 / 2008年3月25日発売
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アニメ版を先に見たのだが、はっきり言っってアニメ版の改編のしかたはかなり良く、そちらの方が好き。
「夜は短し」とも共通する純粋な恋愛感情の賛美。
パラレルワールドを用いた大胆な構造は奇怪というより楽しげ。
2018年8月18日
- 終わりなき近代 アジア美術を歩く2009-2014
- 黒田雷児
- grambooks / 2014年10月14日発売
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日本を含むアジアを見渡すアート批評。
連載記事をまとめた本らしい。一定の量の文が連なっている。
著者本人は割と飄々としている、と見せかけてバシバシ作品や作品を取り巻く状況の良し悪しを言い放つ、パワフルな文章でもある。
なのだが、私があまりに現代のアートに疎いため、全く記憶に残らなかった。図版はあるが、モノクロで、資料程度のもの。知識をちゃんと持って読むと、面白いのだろうが、入門のつもりで手にとっても弾き返されるのみ。
しかし、批評の言い方のニュアンスで、この人気になるな、というアーティストも見当たったので、ちょっと調べてみて、再読したいと思う。
こんな無知な私がこの本に体当たりなどしたのは、ひとえに装丁が気になったため。
ジャケットは帯まで一続きになっていて、内側は中で取り上げている地域を示した地図になっている。デザイナーの中野さんらしい、インフォグラフィックス的な仕掛けが、親切に、半分お節介な具合で盛り込まれている。
アジアの生命力や洗練しきっていないゴチャゴチャ感を反映してか、細かい写真を1ページにワッとたくさん散りばめたり、小口には建物の窓の写真が入って、複雑さをかさ増ししていたりと要素は盛りだくさん。
紙の色・文字の色は30ページくらいごとに切り替わり、ガンガン変化する。
あとがきにもあるように「凝りまくりのデザイン」だ。
街中のガヤガヤと騒々しい感じのように、氾濫する文字・画像の情報にまみれたみたいな感じがする。
ブックデザイン=中野豪雄さん
2018年10月17日
- 「無」の科学
- ジェレミー・ウェッブ
- SBクリエイティブ / 2014年7月19日発売
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「科学」とつくだけあって、哲学とか詩的な内容ではなかった。装丁がかっこ悪いなどという意見もあるけど、…確かにそうなんだけど、何かカッコいい叙情的な内容などではなく、あっけらかんとした科学の知識をポンポン提示する内容という意味では、このある意味ニュートラルで情感のないデザインはあっているのかも。
それで、内容はといえば、無にまつわるいろいろな科学の知識を、複数人の専門家たちが代わる代わる教えてくれる。といってもカテゴリはある程度絞られていて、宇宙の誕生、真空、無意識、絶対零度、ゼロの概念、などである。
どれも世界の認識が変わるような、驚きのある情報で、割と科学初心者がバランスよく知識を取り入れるのにいい感じ。
「無」という漠然とした概念にちょっと深い認識が付け加わったように思う。
どう認識が更新されたかというと、いや、漠然としていることには変わりないんだけど、無いという状態はそう簡単に理解できるような状態ではないんだと思うようになった。例えば、真空、と言っても、純粋な真空なんて滅多になくて、水素とか何か物質が壁をすり抜けていたりする。
あと、ビックバン以前の宇宙は、時間も空間もない無だったと説くが、そんな真の無など、ヒトの感覚からでは想像もできない。
日常で「無」と言うとき、本当に無なのか、正しい意味で使えているか、すこし注意深くなった。
2019年7月14日
- はてしない物語 (エンデの傑作ファンタジー)
- ミヒャエル・エンデ
- 岩波書店 / 1982年6月7日発売
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装丁それ自体が、内容と切り離せない関係にある書籍であり、その驚きがあった。中身でその本自体の装丁の意味を語る例はあったが、ここでは、それがより強く意味を持ち、読書体験自体を作りだしている。
「赤金色の本」がバスチアンの手に入るとき、ファンタージエン国の中に現れる時、そこに不思議な入れ子構造を感じるのである。まるで、木の年輪のように、一定の間隔で同一の層(赤金色の本のカバー)が現れるが、それらは内側に囲む情報量の差という点で、どの層も異なる。外側の層がより多くの内側を包んでいるという構造をなしている。新たな読者が現れるたびに、層は外側へ重なり、広がっていくのだ。この本の読者は読書を通じてその最外層に触れることとなる。現実と架空が地続きとなり、驚くべき体験をする。だがそれは、この本のテーマである、現実世界と想像の世界の関係と同じものなのだ。
2019年7月14日
- S 夜の森番たち 3冊セット
- 斎藤純
- 双葉社 / 1997年6月1日発売
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森、山、マタギ等の知識がかなり充実している。森を歩いていく描写が、恐ろしくリアルだった。
もちろん、取材を重ねているのだろうが、自身でも森を体感しているらしい。
森林伐採の問題に触れているのは面白く、ヒトという立場で、どのような視点で森を尊ぶのか、その姿勢についても考察しているのは興味深い。新書系の本であれば、経済や、物質的な持続可能性の観点から語ることが多いが、ここでは、さすが小説だけあって、といおうか、自然とその時間の感覚的な美の迫力が、自然の価値に説得力を感じさせる。
また一方で、性的な描写がちらつくのも意図的に感じる。官能小説ではないと思うが、性の感覚の意外な結びつきが、独特の色を生んでいるということは間違いないとおもう。
装丁は葛西薫さん。中畑貴之さんプロデュース。
2019年2月1日
- おやすみ、リリー
- スティーヴン・ローリー
- ハーパーコリンズ・ ジャパン / 2017年4月15日発売
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犬を飼ったことはないし、妄想癖もないし、ゲイの気持ちもわからない。でも面白がれた自分がちょっと意外だ。
割と最初は細かい説明がなくて、読み進めないとわからない仕組みだ。察せはするので詰まりはしないが、あとで真実が明かされて驚かされたりする。
ゲイだというのが全然わからず、途中までいわゆる「ボク女」なのかと思ってた。私の周りではゲイを見かけないからか、全然察せなかった……のは若干私の読みの甘さな気もするが。
犬が喋るというのは、あまりにも飼い主の独りよがりすぎる、といつもなら言いたくなるが、主人公のテッドが妄想癖だということで自然に納得できた。何より、文章が結構おもしろいリズムや言い回ししてて、楽しませてくれるのが良い。
私が気に入っている装幀家の鈴木成一さんと、前から気になっていたイラストレーターの西川真以子さんというコラボに惹かれ、購入した。
西川さんはデッサンしっかりしてるけど、ゴッホみたいに情動的で感覚的な、線の脈打つ感じがイイ。そんなイラストと、キュートな赤と水色との組み合わせが意外で、すごくキマっている。
色彩とその配し方だけで見ると、葛西薫さんっぽいな、という気がするが、参考にしたのかな。(『人生を三つの単語で言い表すとしたら』の装幀、マナスクリーンのポスター)
買ったのは、ほぼ物欲だった気もするが、内容も良かったと思っている。
2018年12月8日
- 法のデザイン—創造性とイノベーションは法によって加速する
- 水野祐
- フィルムアート社 / 2017年2月24日発売
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豊かで健全な文化の発展のために、法律がどう関わるか、非常に多面的に考察している。
創造性を生むには、既存のものがオープンで利用しやすい状況が良いという、ローレンツ・レッシグさんとも共通した見解。必然的に著作権の話題が充実しているが、それに限らず、宿泊施設や政治参加といった問題も扱っている。
冷静で真面目な口調だが、わかり易く、言い回しも豊かで読み心地が良い。
一章は総合的な話をして、2章はアート、ゲーム、ファッションなど分野別に言及し、それぞれ多視点的に述べている。
個人的には、ついつい2015年の五輪エンブレム問題に触れたところが痛快だった。
「五輪エンブレム問題は、法律が設けている最低ラインがサイバーカスケード/ネットリンチという、他者への不寛容や暴力が一種の祝祭的な盛り上がりのなかで増幅する快楽主義的なネットのアーキテクチャにより大きく引き上げられうるという事実を露呈した。」(p28)
自分がクリエイターというのもあり、鬱憤はたまってたから、こういうまとめかたがされていると、やっぱり気持ちがいい。
装丁=佐々木暁さん
角が直角の並製本に、ビニル質(?)のジャケットがついてきっちりガードしている、珍しい組み合わせ。黒に金の箔押しな表紙がかっこいい。帯はジャケットの内。ジャケットが透明なので見えるし、傷つかない。
2019年2月28日