- Amazon.co.jp ・本 (410ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062194853
作品紹介・あらすじ
青春は、謎と輝きに満ちている――
台湾生まれ、日本育ち。超弩級の才能を持つ「このミス!」出身、大藪賞受賞の異才が、はじめて己の血を解き放つ!
何者でもなかった。ゆえに自由だった――。
1975年、偉大なる総統の死の直後、愛すべき祖父は何者かに殺された。
17歳。無軌道に生きるわたしには、まだその意味はわからなかった。
大陸から台湾、そして日本へ。謎と輝きに満ちた青春が迸る。
友情と恋、流浪と決断、歴史、人生、そして命の物語。
エンタメのすべてが詰まった、最強の書き下ろし長編小説!
感想・レビュー・書評
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R3.6.1 読了。
1975年、台北。内戦で敗れ、台湾 に渡った不死身の祖父は殺された。誰に、どんな理由で? 無軌道に過ごす17歳の葉秋生は、自らのルーツをたどる旅に出る。台湾から日本、そしてすべての答えが待つ大陸へ。激動の歴史に刻まれた一家の流浪と決断の軌跡をダイナミックに描く一大青春小説。第153回直木賞受賞作。
以前から気になっていた。序盤はなかなか読み進まず、時間がかかってしまった。
主人公の祖父を殺したと思われる犯人の目星のついたあたりから一気に面白くなった。日中戦争、中国と台湾の関係性などの歴史についても触れられており、勉強にもなった。あの戦争がなければ、生まれなかったストーリーなのかもしれない。幽霊騒ぎ、ヤクザにさらわれた友人奪還のための抗争や幼馴染との淡い恋など、設定はとても興味深く、内容も面白かった。
ただ、自分は外国人の名前を読むのが苦手なことを痛感した。今回のこの作品でいえば、全部の漢字の名前にルビをつけるかカタカナ表記にしてほしいとさえ思ってしまった。
・「『魚が言いました…わたしは水のなかで暮らしているのだから、あなたにはわたしの涙が見えません。』王璇:「魚問」より」
・「人の世はもとより苦しいもの、早く悟れば傷つかずに済む。」
・「ささいなことで自分のかわりに怒りをぶちまけてくれる者がいると、わたしたちはいつでもすこしだけやさしくなれる。そういうものなのだ。」
・「心から願うものが手に入らないとき、わたしたちはそれと似たもので満足するしかない。もしくは、正反対のもので。そしていつまでも、似たものを似たものとしてしか認めない。それを目にするたびに、妥協したという現実を突きつけられる。だけど、ほとんどの人は気づいていない。その似たものでさえ、この手に掴むのは、ほとんだ奇跡に近いのだ。」詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
台湾本省人に関する本は何冊か読んでいたが、外省人が主人公は初めてかも知れない。日中戦争時は日本だった台湾が、戦後、蒋介石率いる国民党が政権を取り、本省人は更に辛い時代に突入した。その為、本省人と外省人間のお話しかと読み進めていった。
本文から外れるが舞台が中国、台湾、日本と変わり当時の時代背景も懐かしく思い出される。
戦争がもたらした(戦後にも起きた)様々な殺戮は時代の流れと共に薄らいでいく。しかし当事者には生きている限り消える事はない。外省人の立場の主人公が、実に冷静な目で世の中を見、辛くても大好きだった祖父の過去へと旅をする。戦争は人間の憎悪を生むだけの手段としか思えない。 -
正直苦手な部類でした。
満場一致で直木賞受賞した作品なんだから、さぞかし面白いのだろうと期待度マックス。
ところが読み始めたのはいいものの、全然進まない。
結局一週間はかかったんじゃなかろうか。
苦手な要因その1
登場人物の名前が覚えられない。
苦手な要因その2
歴史物がそもそも得意ではない。
苦手な要因その2
やんちゃな若者の青春ものが好きではない。
ないない尽くしで私にはハードルが高かった模様。
直木賞受賞したからといって万人するわけじゃないのね、あたりまえだけど・・・(笑)-
vilureefさん、こんにちは~♪
同感です。
図書館で予約待ちをして、ようやく自分の所に回ってきた本。
読む気満々で読み始...vilureefさん、こんにちは~♪
同感です。
図書館で予約待ちをして、ようやく自分の所に回ってきた本。
読む気満々で読み始めて…
全然進まなくて、今の自分に合わないのかもと、
他の本を間に入れてみたりして、数回チャレンジしました。
でも読了できませんでした(^_^;)
私も受賞作や、有名作家さんの一押しが合わなかったりがよくあります。
そのつど「読み方が浅いのかな~」なんて思ったりして。
そうですよね、万人受けするとは限らないですもんね。
vilureefさんのレビューに、ほっとしている自分がいます(#^^#)2015/10/27 -
杜のうさこさん、こんにちは(*^_^*)
いつも花丸とコメントありがとうございます♪
おー!私と同じ人がいる(笑)嬉しい~
男っぽ...杜のうさこさん、こんにちは(*^_^*)
いつも花丸とコメントありがとうございます♪
おー!私と同じ人がいる(笑)嬉しい~
男っぽい作品が苦手なので、読み始めてすぐ「あ、だめかも」とは思ったのですがなんとか読み終わりました(^_^;)
最後はそれなりにグッときたし、作品としての良さも分かるのですがイマイチ楽しめなかったかな。
でもそう言うことってありますよね。
私も杜のうさこさんの意見を聞いてほっとしていますよ~。2015/10/28
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直木賞受賞作との事で気軽に手に取ってしまったが、難しかった!でも「つまらない」わけでは決してない。中国や台湾の歴史をきちんと勉強しなかった私が悪い。蒋介石率いる国民党と中国共産党の確執とか日本の台湾統治の時代の事やら、分かって読めたら、きっとこの歴史の疾走感にしびれたことだろう。
戦争と政治。
一族の血、哀しみや誇り。
日本人の思想とは離れていて完全には理解できていないだろうが、読み応え十分な物語でした。
中国も台湾も子供の頃から政治が生活のすぐ側にある。
日本人は政治のことなんて何も分からなくても、迫害されることもないし、祖国日本を追われることもない。日本人として日本に生きることは、本当に恵まれた平和なことなんだなーと実感しました。 -
「流」(東山彰良)を読んだ。
え!? え!? な、何!? え!?
という感じだったよ。
作品から溢れ出す熱き魂を抱きとめられるのかを試されていような読書体験。
すごいものを読んでしまったな。
お気に入りの一文をここに引く。 『それは素晴らしいことをたくさん予感させる、春の嵐のような涙だった。』(本文より)
この小説の熱量は真藤順丈さんの「宝島」を思い出させる。
あー面白かった! -
第153回直木賞受賞作。
台湾生まれで日本育ちの作者が描いた作品。
重いものを含んでいますが、濃厚で勢いよく、エンタメ性にも富んでいます。
1975年。
台北の高等中学に通う葉 秋生(イエ チョウシェン)は17歳。
台湾の総統・蒋介石が亡くなって一ヵ月後、祖父が殺されてしまう。
かって中国大陸で激しい国共内戦があり、敗れた国民党は台湾に渡って「外省人」と呼ばれていました。
(もともと台湾に住んでいた人々のことは、本省人だそう)
そのへんの成り行きをあまり知らないので、実感を伴う描写に圧倒されます。
秋生をかわいがってくれた祖父は、戦時には大陸で悪名高い存在だったらしい‥
秋生は成績優秀だったのだが、ひょんなことから迷走する青春を送ることに。
幼馴染の悪友・小戦や、年上の初恋の女・毛毛(マオマオ)との関わり。
もっと恐るべきろくでなし達も出入りし、こちらも熱気溢れる展開。
1970年代の台湾って、こんなに凄かったの?
日本へ、そして大陸へ。
怒涛のような勢いで、命のやり取りも含む危機が描かれます。
そして結局‥
共産党と国民党の戦いの本質とは?
たまたま親しかった人のいる方の、味方に付いただけとは。
年月を経て許されることと許されないこと‥
ある感慨に胸を打たれます。 -
台湾を舞台にした小説。1975年に何者かに殺された祖父を発見した秋生の半生を中心として描かれた物語は、当時の台湾と中国の情勢などを描きながら、泥だらけ傷だらけの青春小説であったり、幽霊が登場するホラー的な部分があったり、ミステリ的な部分もあったりします。激しく切なく、しかしどこかしらユーモラスな部分もあって引き込まれました。
苦手な人は注意だけれど……ゴキブリ大量発生のくだりがなんだか笑えてしまったのは私だけなのでしょうか。ホラー的な怪奇現象でもあるはずなのだけれど、怖いというよりはあまりにぶっ飛んでいて笑いが。もちろん、あんなの目の当たりにしてしまったら恐ろしくて仕方がないはずです。
さまざまな苦難に見舞われる秋生の人生に寄り添いながら、やがてたどり着く祖父の死の真相。祖父自身の送ってきた苛酷な人生と、そしてまた祖父を殺した者の人生もまた重苦しいもので、ただし当時の情勢からすると彼らの行動にはある程度仕方のなかった部分もあるのかもしれないのですが。それを仕方なかっただけで済ませることができない哀しみが印象的でした。 -
熱っぽくて、湿気があって、濃い。南米の物語とか、アメリカ南部の物語を読んだ時に感じる色彩に似ていて、でも少し夜の薄暗さに滲んで見える灯りが重なって見える。
台湾で外省人といわれる人たちの見てきたもの、の血の色に気圧される。一筋縄ではいかない、人と人とのつながりのじっとりと湿り気のある重さが両掌に載せられる。
読み終わると、少しぼんやりとしてしまう、熱量でした。
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台湾人青年の1970~80年代における青春記とちょっとしたミステリーを交えた小説。
当時の台湾と中国の関係も綿密に描かれている。
読む前は、台湾建国時を記した一代サーガの小説家と思っていたが、実際は主人公葉秋生の半生記だった。
敬愛する祖父を殺した犯人を捜し求めることや、真剣に愛した幼馴染との理不尽な別れ、悪友とのスリリングな事件等、様々なことがおこるのだが一貫して秋生は冷めている印象を受けた。
文章は読みやすく、ぐいぐい読める。祖父を殺した犯人がわかり始めるあたりから、ちょっとしたミステリー要素も入ってくるので、読む速度が加速した。 -
魚が言いました…わたしは水のなかで暮らしているのだから あなたにはわたしの涙が見えません
この詩に尽きる。
良い本とは、読む手が止められない、再読したくなる、本の中のフレーズが残る この3点だと思うが、私にとってこの本は全てを含んでいる。
犯人は途中で分かってしまったが、それはどうでもいい。
みんなきっと魚の涙が見えず、自分だけが大変だと思って生きているんだろうな。
私も…