新・日本の階級社会 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 71
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062884617

感想・レビュー・書評

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  •  直接的なタイトルに手が伸びやすい一冊だと思う。最近出版されているこの類の例に漏れず、個別のサンプルデータを統計的に処理した結果から見える状況の説明である。
     本書の特徴としては、階級社会への議論を導く印として、女性を17種類に分けて、それぞれの特徴を細かく分析していることにある。確かに、これらの分析を読んでみてよくわかることがある。ただ、その分類は配偶者の立ち位置に強く起因していて、少し運命論的なようなところもあり、本当にそうなのかと疑うぐらいがちょうどいいかもしれない。サンプルデータというのはその切り方でどうにでも見せることができるという一面があるからである。
     問題設定そのものは、これからの日本社会にとって非常に重要である。比較的余裕がある専業主婦グループが、非正規・アンダークラスグループよりも人数が少ないということも驚きであり、かつて日本社会を構成していた勢力は既に主力の座にはいないのである。
     本書が提示する対応策については、これらの現状認識の下、建設的な策を模索してはいるものの、現時点においては打ち手が少ない結果になっている。ベーシックインカムなど以外になかなかこれといった方策が見つけられないでいる。それだけ厳しいということである。

  • 格差を認識しているのは主にアンダークラス(負け組)であること。
    “自己責任論”はアンダークラスが自分自身をさらに追い詰めてしまうイデオロギーであること。
    “新中間階級”の親に育った子どもが“新中間階級”になれず、強い敗北感を感じていること。
    女性は、結婚相手の階級に依存せざるを得ないこと。

    書かれていた内容が、共感できることばかりで、
    そして、誰にも言えなかったことばかりで、
    言えたとしても、負け組同士で愚痴り合うことしかできなかったことばかりで、
    なぜ、こんなに私たちのことをわかってくださるのだろう、と。

    “アンダークラスの労働も評価されるべき。”

    誰も言ってくれないことを、なぜ言ってくださるのだろう、と深く感銘を受けた。

  • 「橘玲/言ってはいけない 残酷すぎる真実」を読んだ時と同じような気分になるが、良書、ただこれだけの分析が出来た上で、今後の対策がこれなのは現状の問題の深さをより深く感じました。

  • 格差の拡大、固定をデータで示す。
    資本家階級、専門家・管理職、正社員の収入が増える一方、アンダークラスとされる非正規の収入は減少。かつての中間階級層であった個人事業主も、いまは貧困層に近い。だが時間の自由はあるので、生活の満足度は高い。

    子は父親の出身階級になりやすい。
    アンダークラスは親もアンダークラス、高等教育を受けず、学校でいじめられ、遅刻や不登校などの問題行動が多かった。そして支持政党もない。要するに、社会の動向に無関心。配偶者の有無や、夫の収入次第で、女性はとくにこの階級格差を受けやすい。

    著者は解決策として、金融資産への資本税導入や、ベーシックインカムを推奨する。が、すでに手垢のついた解決策。

    じつはこうした格差論が、階級出身者を見分けやすくしていて、高所得者層は低所得者層を遠ざけている要因になることもありうる。高価そうな車や服を着ているが、話したら教養がなくて幻滅されるなど。すでに中間層以上の親は、子どもに貧困層と接触させないために、公立の学校にも行かせず、エリート校が囲い込む。

    この手の社会格差の論者は富の再分配を語るが、本当に必要なのは、高所得者にも気に入られる礼儀と教養なのである。その意味で教育は必要なのだが、教師の質が低いから駄目なんだろうな。

  • 日本が階層社会になっていることを理解できた。また、各階層の特徴を政治的主張や支持政党という切り口で論じていることは興味深かった。格差拡大が日本人全体にとって不利益であるということは知識としてないことだった。

  • 階級ごとの特質が細かに分析されていたと思う。

    専業主婦以外の無職のグループはどういう類型が出来て特徴はあるのかどうか知りたいと思った。

    あと、最終章のところで自己責任論を乗り越えるためには階級というよりもリベラル派の結集が大事というふうにも読めた。

  • 所得格差に触れる本はたくさんあるが、これは世帯所得に対して男女による分析行うなど詳細なデータがあり説得力があった。今日の日本の問題である累進課税や消費税に関する問題による階級の継続性の考察は他の本とあまり差はないが、政治的思想の分析は興味深かった。自己責任論と格差拡大の認識、この2つは重要なキーワードとなる。確かに自分も自己責任論は支持する傾向にあったが、格差拡大の認識でその意識も変わった。これを政治的に反映できる政党があれば。。。

  • 豊富なデータに基づき、現在の格差社会の現状を明らかにする。もはや、格差社会ではなく階級社会である。
    アンダークラスに陥った場合、再び上昇することは難しい。無機質な数字が、恐ろしく見えてくる。

  • 筆者は、資本家階級、旧中間層、新中間層、労働者層(うち正規労働者と非正規労働者が分かれる)に日本社会を分析して、資本階級、旧・新中間層と労働者階層の分断が、日本社会に深刻な断絶を生んでいるとしている。

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著者プロフィール

橋本 健二(はしもと・けんじ):1959年生まれ。早稲田大学人間科学学術院教授。専門、社会学。

「2023年 『階級とは何か』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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