コーカサス国際関係の十字路 (集英社新書 452A)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087204520

感想・レビュー・書評

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  • タイムリー.

    グルジアなんかに興味がない人でも,
    外交という理解し難い営みの催され方について学べるかも

  • 地政学の入門書とも思えるほど、懇切丁寧な解説。
    コーカサス地域関連のニュースのよくわからなかった点が、この本を読むことで雲散霧消する。
    むしろ、政治や国際情勢に興味の無い人にこそ読んでほしい。

  • グルジア対ロシアの開戦直前という絶好のタイミングで刊行されたカフカス情勢の解説本。ジャーナリスティクな視点の目立つカフカス関連本のなかでは、どちらかというと教科書的な書で、だからこそ状況の整理に有用でもある。何故ロシアはカフカス地方にこんなにこだわり、紛争の火種が山のようにあるのか。エネルギー政策の観点から語られることの多いこの地方の事情がうまくまとめらた一冊なので、グルジア戦争でカフカス地方に興味を持った方は、この本をまず手に取ることをおすすめします。

  • アゼルバイジャン、グルジア、アルメニアの3国からなるコーカサス地方だが、多様な民族・言語・宗教の交錯するこの地域のありようは、私(たち)の想像を超えて複雑でなかなかに理解がとどかない。アゼルバイジャン国内には〈ナゴルノ・カラバフ共和国〉、グルジア国内には〈アブハジア共和国〉と〈南オセチア共和国〉という「未承認国家」が存在しているということだけでも、この一帯の不安定さを表していよう。さらにカスピ海周辺のエネルギー源をめぐる周辺国の思惑が加わって戦争状態が収まらない現状をわかりやすく整理してくれ、現代世界のありように眼を開かせてくれる好著である。

  • 北京オリンピック直前のタイミングでグルジアが軍事行動を起こした。世界の耳目が集中する時に図ったようににコーカサスや北朝鮮などで騒動が起きた。エネルギー問題などを中心に南北コーカサス地方をわかりやすく説明してくれた入門書。門外漢の自分が驚いたのはその構成。北京五輪のタイミングで出版、弾薬庫のようなコーカサス、そして終章では2014年のコーカサスにある冬季五輪開催地ソチへつなげていく。大きな流れや読みは的確、と思わせる組立てです。

  •  静岡県立大学准教授のコーカサスに関する概説書。コーカサスについて新書で読める点、また彼女の前著のように限られた地域ではなくコーカサス全体(南北)を概説している点は、非常に評価できると思う。学部生や社会人がコーカサス地域について知る良い本。個人的には、コーカサス研究者の多くは歴史研究ということもあり、濃すぎて一般の人には「マニアック」としかうつらない現状もある中で国際政治や現代の問題意識とコミットする書籍はもっと出るべきだと思う。
     但し、廣瀬先生は北コーカサスは門外漢なので、いくつか誤りも・・・。俺の専門とするチェチェンに関する記述では、バーブ教という表記があったけど、これは『アラーの花嫁』の著者ユリヤ(ロシア人ジャーナリスト)自身あるいは邦訳書が間違っていて、チェチェンでバーブ教なるものは浸透していない。バーブ教とはそもそもイスラーム・シーア派で異端視されている宗派の一つで拠点はイラン中心、しかも現在はかなり衰退しており、ほとんどイラン国内外問わず教徒もいない(すでに絶滅したという噂もある)。仮に、イランで異端視されているバーブ教を異端という意味で過激派とするのであれば、まあ理解出来ない事もないが、スンニ派のチェチェンでシーア派のバーブ教が影響を持つことは宗派的にあり得ない。これは単純にワッハーブ教徒(サウジアラビア起源のイスラーム過激派)の誤訳(あるいはユリヤの誤認)である。
     またダゲスタンの民族問題や衝突の危険性として、99年のバサーエフとハッターブのダゲスタン侵攻、及びそれと関連したイスラーム過激派の動向のみをあげているが、これは最近見られたものに過ぎず、基本的には他の少数民族間の対立(アヴァール人とダルギン人の対立、アヴァール人とクムク人の対立、アキ・チェチェン人とラク人の対立、レズギン人のダゲスタン及びアゼルバイジャンにおける統一運動等々無数ある民族対立)の方が構造的な問題としてダゲスタンにあるはずである。まあ、北コーカサスを研究する人が日本ではほとんどいない上、現在の紛争を取り扱う事は政治的リスクもあるので、誤認や理解の不足は仕方ないとも思う。

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著者プロフィール

政治学者。

「2023年 『高校生と考える 21世紀の突破口』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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