- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087714890
作品紹介・あらすじ
人生、まだ、続いていくから。裏稼業コンビ「溝口」と「岡田」をめぐる全五章。
感想・レビュー・書評
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悪事の下請けで食いつなぐ、なぜだか憎めない小悪党の二人組。
「実は浮気してました」なんてあっけらかんと告白しちゃう父親と一緒に
怪しげなメールで「友達になりましょう」と言ってきた男の車に同乗してしまう家族。
親に虐待されているらしいこどもや、車のトランクに押し込められる女性。
問題児とされる同級生の一挙一動が気になってしかたない小学生。
ちょっとタガが外れているような人や、ワケあり感満載の人が織りなす
ジグソーパズルのような、お馴染みの伊坂ワールドが展開します。
天下の大悪党になってやる!などという野心はカケラもなく
「へへ、俺ってしょうもないやつだよなぁ、でも許してね♪」と心底思ってそうな溝口、
柳のように風の吹くまま、といった風情で何を考えてるか今ひとつ伝わってこないのに
縁もゆかりもないこどものために骨を折ったり、変なところで繊細な一面を見せる岡田。
万が一捕まって刑務所に入っても、
「お前らそんなチンケな犯罪しかしてこなかったのか・・・」
とため息をつかれそうなせこい犯罪を重ねるふたりを
好きにならずにいられないのが不思議。
第一話と最終話をメールという小道具で繋ぐ小粋な企みも
『明日に向かって撃て!』に情けなさと苦笑と脱力感を10%ずつプラスしたような
人を喰ったラストシーンも楽しい、愛すべき小悪党物語です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
伊坂幸太郎さんの作品の登場人物は、実際にいたら面白いけれど、あんまり関わりたくないな、と思う人がしばしば現れる。今回登場する、溝口と岡田も、そんな感じの人たちだ。
でも、小説の中の彼らが何気なくつぶやく言葉が、ものすごく心の奥に届くことがあったりして、だからいいんですよね、と毎回思う。
そんな中、クスッと笑ってしまったのがこの部分。
『問題児とはいったいどういう意味なのか、僕は実はよく分かっていなかった。「問題」児がいるのであれば、「答え」児もいるのではないか、岡田君が問題を出し、別の誰かが答えるのではないか、と発想したほどだ(P136)』
きっと問題児と言われている子は、「答え児」と出会ってしまったら、居心地悪くなるだろうなぁ。 -
あまり大きな声では言えませんが…
伊坂さんの作品に出てくる”悪人”が好きです。
犯罪なのに「まぁいっか」と思わされる世界。
溝口と岡田がいい。
とくに、虐待されている少年の救済計画「タキオン作戦」がよかった。
伊坂ワールド全開といったかんじ。
とにかく溝口語録がツボで~。
「飛んでも八分、歩いて十分、
二分しか変わらなくても、俺なら飛ぶぜ。
飛べたらやっぱり嬉しいだろうが。」
飛びたくなります。
いいかげんで、めちゃくちゃな理屈にくすっと笑わされ、知らず納得させられてしまう。
再読。
暑い中、本棚を整理してたらこの表紙が目について、
かき氷食べたいなぁと、そのまま読んでしまった一冊。
ふっと肩の力が抜けて、
些細なことにこだわっていた自分が、ばかばかしくなりました。-
2019/09/06
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伊坂幸太郎の描き出す不思議な世界をようやく発見。
伊坂幸太郎作品、二作目である。
以前読んだ「夜の国のクーパー」は、鼠が主人公の寓話、ファンタジーであり、リアリズム派である私にとってはかなり苦しく、なんとも評価の難しい作品だった。
ところが、これは面白い。
出だしからして奇妙奇天烈な展開。
冒頭、両親と高校生の娘の家族三人が父親の離婚を契機に別れ別れになる前日、三人が集まる最後の日に父親の携帯に突然送られてきた「友達になりましょう」というメール。
普段ならこんなメールは軽くスルーだろうが、父親が「一人になってしまうから友達が欲しい」と言い出し、そのメールに返信し、送信相手と一緒に四人でドライブする羽目に。
その相手というのが、チンピラの下請けのような、違法な仕事ばかりを請け負っている“小悪党二人組み”の片割れのお兄ちゃんというユニークな設定。
さて、この四人の旅の行き着く先は? と俄然興味が湧く。
五本の短編は、その“子悪党ペア”が起こす様々な事件についての話がメイン。
彼らは誰が見ても悪者には違いないのだが、なぜか憎めない一面を持っている。
特に五十を超えたいい年の親父で兄貴分でもある溝口さんのやんちゃ坊主のような惚けた感が笑いを誘う。
小悪党なのに何故か甘い物に目がない溝口さん。
考え方が短絡的で、行き当たりばったりで生きている溝口さん。
自分に都合が悪いとすぐ他人に責任をなすりつける溝口さん。
何かをやり遂げたいと思い、漫画『ゴルゴ13』を全巻読破する溝口さん。
会話も地の文もお笑いセンスが抜群で、思わず噴き出す場面も度々。
ほーお、伊坂幸太郎というのはこういう小説を書くのか、と唸ってしまった。
この可笑しさにはどこかで出会ったことがある、とずっと考えていたのだが、ようやく思い出した。
中学高校時代に読み耽った小林信彦氏のユーモア小説に近いセンスだ。
「オヨヨ大統領」シリーズとか、あそこまでハチャメチャで荒唐無稽ではないけれど、文章から醸し出されるユーモアセンスは彼の作品に似ている。
こういう作品は個人的に大好きなのだ。
お酒を飲んだあと無性にラーメンを食べたくなるように、私の身体はこういう小説を欲しがっている。
それに、最後の上司とのやり取りの中での大どんでん返し。いやあ面白かった。満点です。
久々に腹の底から笑える、愉快な小説でした。楽しい気分になりたい人にオススメです。-
koshoujiさ~ん、こんにちは~♪
どこにお返事しようかと探していたら、見つけました~。
いいね!ありがとうございました。
溝...koshoujiさ~ん、こんにちは~♪
どこにお返事しようかと探していたら、見つけました~。
いいね!ありがとうございました。
溝口さん、最高ですよね!
フェリーからメッセージ、嬉しいです!
お天気はいかがですか?揺れてませんか?
こちらはずっと雨模様です。
ドキュメンタリーもありがとうございます。
お時間のある時にぜひ。
さっき、もう記事がアップされてるかと思い、早速伺ったんですが、気が早かったですね。
そのまま戻るのも、と前回の旅日記をまた拝読してきました。
そうです!あのフェリーはいずこへ…。
何事にも用意周到なセンパイのことですから、今回は歯ブラシその他大丈夫ですね。(笑)
今度は名古屋で何を召し上がるのか、楽しみです。
そしてもちろん、センパイの旅に欠かせない、”全力疾走”も!
久しぶりに悪魔のしっぽがピーン…(笑)
では、旅のご無事をお祈りしています。(*^-^*)2016/09/23 -
うさこ様、さすが、わが後輩です。
よくぞ、こんな的確なタイトルを見つけてコメントを。
まさにバケーション真っ只中です。
で、先ほど河北...うさこ様、さすが、わが後輩です。
よくぞ、こんな的確なタイトルを見つけてコメントを。
まさにバケーション真っ只中です。
で、先ほど河北ブログに簡単にアップしました。
長く書くとまた前回みたいに船が戻って来なくなる恐れがあるので。
今回はさらりと書くつもりです。(^O^)/2016/09/23
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久々に伊坂さんらしい軽快さと言葉遊び、伏線回収の妙技を見た。
家族離散のときに「実はお父さん、浮気をしていました!」とカミングアウトしてしまう父(しかも、離散の理由がそれなのだから周知の事実)。
若い男が適当な番号に宛てた「友達になろう」というメールに返信してしまう父。
恐喝など悪事の下請けで食っている男たち。
父親から酷い虐待を受けている子供。
スイーツのレポブログ。
実は後輩思いの男。
名言も多く、読み返したくなる。 -
うまいなぁ。
すごいなぁ。
家族会議中に突然届いた1通のメールからぐいっと物語のペースに巻き込まれて、最後まだ降りたくないのにポイッと放り出されるまで、ドキドキワクワクドギマギの読書体験だった。
第一章の「残り全部バケーション」が1番好き。
早坂さん夫婦のノリの良さが好き。
岡田さんの「音楽性の違いとか?」というボケも楽しい。
何よりも残り全部バケーションていう考え方が好きだなぁ。
そして「罪を憎んで人を憎まず」
これがなかなか出来ません。
むしろ真っ先に相手に対してマイナス感情を持ってしまう。
でもこの物語の不思議な大らかさは「罪を憎んで人を憎まず」の精神が土台にあるみたいだ。
かなり危ない状況にいるのに何故か飄々として見える登場人物の皆さんの心には、ガバッと大きなスペースがあるんじゃなかろうか。
私もそうでありたい。
カラリと明るくて、口笛でも吹きそうなくらい軽い、そんなノリで生きていきたい。 -
伊坂幸太郎らしい短編連作。
小悪党の溝口とその手下の岡田をめぐって~とぼけたテンポで淡々とユーモラスに、ちょっとブラックに、ちょっとだけリアルに。
このテイストが好きなら★5つでもいいよね~うーん、4.5ぐらい?
タイトルは好きだなあ!
第一章「残り全部バケーション」
早坂沙希の両親が離婚することになり、マンションを売る日。
「最後に何か一つ秘密の暴露をしあおう」と言い出す母。
「実は浮気をしていました」と明るく言い放つ父。
いやそれは離婚の原因だから秘密じゃないって。
そこへ「友達になりませんか」という見ず知らずの人間からのメールが入り、一家は皆でドライブに行くことに。
このメールをしたのは岡田で、その理由とは‥
第二章「タキオン作戦」は、溝口と組んで仕事をしている岡田が、ある目的のために、はめようとしていた人間の協力を依頼する。
たまたま知り合った小学生が虐待されていることに気づいたためだった。
最後の一行にある暗示が。
第三章「検問」は、溝口と太田が乗っている車が検問に引っかかるが、無事に通った後になって、トランクに大金が見つかる。
いつ入ったのか、誰の物か、なぜ検問で見つけられなかったのか?
第四章「小さな兵隊」は小学4年生の男の子の目を通して。
お父さんとなかなか会えなくなり、何か秘密の仕事をしているらしいという謎を抱えている。
岡田君という子がクラスにいて、問題児だと聞くが意味がわからない。
岡田君がきびしい母親のことを語るのが切ない。
担任の由美子先生に困ったことが持ち上がり、岡田君は‥?
第五章「飛べても8分」
溝口は高田と組んで仕事をしているが、毒島の入院している病院で、事件がおき‥?
溝口の真意は‥
大物の使い走りや当て逃げなどをやって生きている、まったく当てにならないがどこか憎めない溝口。
無表情で取るに足りないように見えるが、実は何か芯がある?かもしれない岡田。
溝口の手下は、次々に代わっていきますが~
岡田は足を洗いたいと申し出て、その結果‥
岡田の過去の出来事も出てきて、どこでどう繋がるのか‥
伊坂作品だと、ブラックのまま終わってしまう可能性もあるので、どのへんが着地点かなと見定めつつ、ちょっとした描写を楽しみました。
ネットの「食べ歩き日記」を愛読していたりする~溝口のおしゃべりが伊坂さんらしいなあ。
読後感はかなりよかったですよ! -
記念すべき、100冊目の登録。
伊坂さんの作品は、どれもこれも教訓にあふれている。得体の知れないキャラが取る不可解な行動には、必ず筋の通った信念がある。
裏家業コンビ、溝口と岡田。
「相手が辛そうにしてるのを見るのって、あんまり楽しくない」という理由で、足を洗おうとする岡田。
「人をだますには真実とか事実ではなく、真実っぽさが重要」だとの岡田の信念に基づき、ボスである毒島をだまして、岡田のかたきをとろうとする溝口。
全五章からなる作品のうち、前の四章で取られる彼らの行動や発言が、すべてラストの章の伏線になっている。見事としか言いようがない。
飛んでも八分、歩いて十分、メールは一瞬。だとしても飛べるなら飛ぶべきか。-
PKは訳わからんかったけど、本作は綺麗に伏線が収まったね。但し各章毎の面白さは「バイバイ、ブラックバード」の勝ちかな?ラストの余韻はいい勝負...PKは訳わからんかったけど、本作は綺麗に伏線が収まったね。但し各章毎の面白さは「バイバイ、ブラックバード」の勝ちかな?ラストの余韻はいい勝負。どっちなの?エンジンかかったの?焼肉なの?いつもホンマにけったいな設定を考える人。堪能しました。2013/05/27
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bandit250fさん>確かに確かに。
「バイバイブラックバード」の繭美と星野の掛け合いの面白かったことといったら!!
私はエンジンはか...bandit250fさん>確かに確かに。
「バイバイブラックバード」の繭美と星野の掛け合いの面白かったことといったら!!
私はエンジンはかかったと思いますし、ちゃらん、と鳴ったメールは焼肉屋ではなかったと思います。2013/05/27
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