向日葵の咲かない夏 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (470ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101355511

感想・レビュー・書評

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  • どんでん返しのある作品はもちろん好きなのだけど、それを宣伝文句にすることの是非を考えさせられた気がする。
    やっぱり帯に書くのは違うよなーーーー!と。
    何だかとんでもない猟奇殺人があってその犯人がめちゃくちゃ意外な人で最後に全ての点が線で繋がってスッキリ事件解決して...!みたいなミステリを希望している人には、オススメできない作品。
    しかし私は好きです。

    ただ、オススメされた時に期待していた「猟奇的な描写」は、あったものの、物足りない。でも万人が読める描写なんだろうなと思う。
    死体損壊の描写がな〜主に動物だしなぁ。もっとグロくてよかったのに〜と思いつつも、まあそしたらそっちメインになっちゃうもんな...と納得しておく。


    私の感じたこの本の感想は、「切ない」。
    読み進めながらずっと感じていたモヤモヤ。違和感。その理由がラストでわかって「ああ...そういう...」と何とも言えない気持ちになりました。

    小学生であるミチオの心が壊れていたということがまず切ない。プロローグでの「また自分が壊れてしまう」の「また」の意味がわかって...。でも、「妹は四歳になってすぐに死んだ」と思っているということは、ミチオの心は大人になっても壊れたままなんだなあ。それもまた切ないね。

    そして、物語はミチオの主観である描写が多いために、結果として描かれることの多いミカもSくんも、全てミチオの妄想に過ぎないということも大変に切ない。Sくんなんて、作中で本人のセリフとして描かれてるの(おそらく)「僕に死んでほしいの?」くらいじゃないか?何だよそれ...悲しすぎるだろ。
    あとは全てミチオの脳内...。蜘蛛になったSくんの話し方とかが妙に明るかったのは、ミチオの理想、なのかなぁ。いじめられていた子にしては、明るすぎるよね。
    ミカなんて、生まれてすらいないのだから、話し方から何から全てミチオの創り出したものなわけで。だから3歳とは思えぬ達者な口振りなんだよね。
    同じく壊れてしまったミチオの母も可哀想だし、父親も可哀想。可哀想な人ばかり出てくる。


    ただ唯一!可哀想でもなく、おいお前ー!ってなるのが、岩村先生な!
    やばい変態が途中から完全に放置されてるのほんと笑ってしまう。いや「ミチオの物語」の都合上、退場させるしかないのはわかるのでいいんだけど、お前実は1番やばいやつじゃないか!?とw
    そこだけどうしてもツッコミたかった。先生のその後が気になるが、「ミチオの物語」から関係なくなってしまったからには仕方ない。


    読みやすく、楽しく一気読みできました。
    どんでん返しというより、「切なさ」を楽しむお話だと感じました。

  • 夏休みを迎える終業式の日。欠席した友達の家を訪れた。友達の家から奇妙な音が聞こえる。友達は首を吊って死んでいた。その衝撃も束の間、彼の死体は忽然と消えてしまう。一週間後、友達が「あるもの」に姿を変えて、ぼくの前に現れて、「ぼくは殺されたんだ」と告げる。ぼくは、彼の無念を晴らすため、事件を追い始めた。

    ぼくの道尾秀作さんデビュー作。前情報を知らずに、本作を手に取ったぼくは、「向日葵。夏。爽快感ある系のミステリかな?」と思っておりましたが、まったくもってそんなことはない。ゾクゾクする展開。どことなく不気味。そして、登場人物の心理描写が秀逸で世界に引き込まれる。

    少年が事件解決に奔走する姿や、えも言えぬ世界観は、ホリージャクソンさんの「自由研究には向かない殺人」に似たものを感じます。個人的には、大満足です。

    向日葵の咲く季節は過ぎてしまいましたが、みなさんもぜひ、手に取ってみてくださいね。

  • 相当変態な世界観で好き嫌いがかなり分かれると思われるミステリー。私は苦手だった。
    ミステリーの完成度自体はデビュー作と言えど流石の道尾クオリティ。まんまと騙された。

  •  主人公ミチオは学校の帰りに友人S君の首吊り死体を発見してしまう。その後、あったはずの死体が姿を消す。そんなミチオの前に、自殺した友達が蜘蛛の姿となって現れる。そして、S君(蜘蛛)から自殺ではなく他殺である、自分の死体を探してほしいと言われたことで、事件の真相を調べ始める。

     S君の証言をまるまる信じて先生が犯人なのか〜と思って読み進めてたら全然違う展開だった。

     登場人物それぞれが歪んでたけど1番怖かったのは主人公。

     最後の最後で、人間だと思ってた人が人間じゃないことにびっくり。普通に会話してるから気が付かなかった。

    2022年8月21日

  • 最初から最後まで気持ち悪くて、最高に後味悪い、人生でいちばん好きな本

  • 読後まで不気味さと違和感を持ち続けていた。
    その出来事は本当にあったことなのか?私が感じていることは本物なのか?
    何も信じられない。
    でも、新しい事実が浮かぶたびに驚いてしまう。
    読みやすくて引き込まれてあっという間に読んだ。
    終わりにかけては特にスピードが速かった。
    ほんタメでたくみさんがおすすめしてるから読んでみたけど、たくみさん変態じゃん……って思ってしまった。
    そのおすすめ通りに面白かったのは事実!
    面白かったけどね!?この気持ちは!?となってしまう作品でした。

  • 今まで読んだ本の中で一番好きです。
    ハラハラドキドキしながら一気読みしました。
    向日葵が咲かない理由、分かった瞬間の鳥肌が凄かったです。
    登場人物全てが怪しく見えて、早く最後まで読み進めたいと必死になってました。お気に入りの一冊です

  • え、え、え、え、えーーーーーーーっっっ!!
    ?????
    ((((;゚Д゚)))))))
    (°_°)???

    …???

    以上、感想です笑
    小説苦手意識あり→好きになったきっかけの一冊。
    途中から読む手が止まらなくなって一気に駆け抜けた小説はこれがはじめてでした。
    道尾秀介様、楽しませてくれてありがとうございます。映像じゃないから楽しめると思わせてくれて、小説の良さを教えてくれて、ありがとう。。

    周りの人に「この本オススメだよ!」とは言いにくいけど笑 でも「小説って楽しい!」って意味ではすごく薦めたい。

  • ハラハラドキドキが堪らず続きが気になり眠れなくなった1冊。

    この本を通して作り上げた自分の固定観念が何回も騙されました!

    最初は誰が一連の犯人なのか確固たる証拠や要因があり、完全に信じきっていました。
    しかし、あれよあれよと出てくる矛盾点やその他の要因。
    7月20日のあの日からこんなにも複雑に物事が動いていたのかと驚いた。
    そもそも、あの事件よりもずっと前から狂い始めていたんだなぁと今になっては思います。

    良い意味で非常識で面白い展開!!!

  • ホラー系は初めて読みましたがとても面白かったです。トコ婆さんの所は見事に騙されました。

  • 道尾秀介作品はカラスの親指以来2作目。
    カラスの親指の
    どんでん返しが好きで買ったけど
    ずっとずっと積読になっていた作品。

    小学生の主人公の少年は
    友人のS君の死体を発見してしまう。
    しかし、その衝撃も束の間
    彼の死体は忽然と姿を消してしまう。
    1週間後、S君はあるものに姿を変えて
    「僕の死体を探してくれ」と訴える。
    S君と妹のミカと共に事件を追い始めるが…

    このあらすじだけ見ると
    小学生の探偵物語かなーなんて
    思ってしまう。
    私はむしろ
    湯本香樹実さんの 『夏の庭』っぽい
    話なのだろうと考えていて
    手をつけるのが遅れていた。

    でも
    あるYouTubeが
    いやミス(サイコミステリーだったかな?)で
    最も好きな作品として
    これをあげていて
    そういえばと思って引っ張り出して
    読んでみた。

    いやいや
    なるほど。
    なんというか。
    どんでん返しにも程がある!
    と思うほどの作品。

    ずっと感じてた違和感は
    だからだったのか!
    と腑に落としてくれる。

    こんなジャンルの本は読んだことなかったかも。
    イヤミスというか
    サイコミステリーという
    かホラーサスペンスというか。

    主人公小学生なのに笑

    道夫さんの世界観
    ちょっと恐怖笑
    そして
    あれを見ると
    どうしてもS君かもと思ってしまうのは
    私だけではないはず…。

    どんでん返しが好きな人は
    一度読んでみても
    損はないと思います!

  • 感想は、まさかのそうきたかー!でした。
    飽きずに読めました。

  • 本を読んでいる最中に内容に対して疑いを持つタイプではないので特にここが引っかかる、モヤモヤするなんて事はなくただただ騙されたー!という気持ちになりました。最後の1ページは一読するだけでは完全に理解することが出来なくて頭を使う物語だなと感じました。胸糞悪めの話だったけどとても面白かったです。


  • 3年前に読んでからずっとお気に入りの作品。
    感想をしっかり書きたいと思い、再読。

    叙述トリック作品が紹介されるネットのページでは
    必ずと言ってもいいほど名前が挙げられているが
    「なるほど…」と頷けるほど
    衝撃度の高いストーリーを楽しむことが出来る。

    読む人によっては
    「このラストは狡い!」と思うかもしれない。
    それもちょっと分かる。
    個人的に好きな要素は
    インパクトを十分に持ちつつ、矛盾が特に無い点。
    ラストの印象のためだけに
    矛盾だらけで仕上げられているような話では無い。

    矛盾が無い分、気持ち悪い要素は多いし
    (あれもこれも本当だとしたら…という)
    人によっては受け付けないかもしれないけれど、
    サイコホラー好きには恐らく刺さると思う。

    自分が、叙述トリックを好いている理由は
    騙された感を心地よく味わえるからで、
    同じ作品を3回以上読むことはあまり無いけれど
    この作品は、何度も読んでいるし
    読めば読むほど好きになる。

  • こちらも友人に貸して頂いたので、読んでみました!

    ラットマンの後に読みましたので、、少しラストは
    イマイチでした笑笑、ですが少しファンタジーのような
    表現の仕方もしておりましたので面白かったです。
    (ミチオ君がサイコ野郎と気づく前ですがね笑)

    登場してくるキャラクターは、みな狂ってるように
    見えましたね僕的にはですけども。。

    また、叙述トリックをしておりましたが。。
    我孫子さんの作品である“殺戮にいたる病”を既に読んで
    驚嘆しました。今回の小説のトリック具合を比べると
    個人的にはそこまででした。

  • 割と厚めの本なのにあっという間に読み終わった。
    のめり込む。
    衝撃の展開、真実に目を見開く。
    最後には茫然と、最初の文を見返す。

    演劇が嫌?
    嘘じゃないか。

  • この本の書評はとっくに書いたし読んだのに、書評があれ~~ナイ、面白くて道尾さんを読むきっかけになったのにと。あわてて雑木林状態の昔のブログから見つけて来た。


    この本は 千街さんのあとがきが詳しい。もう何も言うことが無いほどきちんと分析、解説されている。今頃やっとミステリ評論家千街昌之さんという名前を覚えた。この解説を読んだだけでどういう傾向のものかよく分かる。

    ミステリの解説はあとから読む方がいいみたいだが、つい癖でちょこっと覗いてしまうけれど。

    本格ミステリといわれているが、そうともいえない幻想的でサイコっぽく、背景は現実と幻想のパラレルな世界が広がってもいる。こんな小説の世界が大好きな人も多いだろう。私もそうなので読みたいと思っていて道尾さんの名前を探した。
    売れていたし、このミス一位の本はどのくらい面白いのか、読んでみた。

    最後に全てが収束する、非常に巧妙な語りが面白かった。



    あの事件が起きた夏、ボクは小学四年生だった。ボクには当時、三歳の妹がいた。月日が経って、僕は大人になったけれど、妹はならなかった、事件のちょうど一年後、四歳の誕生日を迎えてすぐに、彼女は死んでしまった。

    まずこうして始まる。
    読み進むとどうも現実とは矛盾していると思えるシーンが続いて、そこから展開する作者の意図が少し分るが。多少ストーリーがから滑り気味で進んでいく。

    ミチオのクラスでいじめられっこのS君が死んだ。欠席していたので宿題を届けに行って僕が発見する。窓から、揺れているS君が見えた。その窓の外には一列に並んだ向日葵が咲いていた。

    担任の先生と警察官に知らせたが、なぜかS君の姿が消えていた。 そしてS君は蜘蛛に生まれ変わってミチオの部屋に入ってくる。ミチオはS君である蜘蛛をイチゴジャムのビンで飼い、何時も話をしている。

    「僕の体を見つけて」と言う蜘蛛になったS君の頼みで探しはじめるが、先生や出遭った老人は怪しいが、決め手が無く見つからない。

    しかし別のシーンで犯人は確かな存在になり、最後はミチオを巻き込んで収束する。

    そして、ミチオの周りに漂っていた異世界は現実にひきもどされるが、その後もミチオの中で薄くファンタジックな尾を引きながら現在に繋がっていく。


    S君がなくなる前から頻繁に起きている犬や猫のむごい殺しは誰がやったのか。S君の体はどこにいったのか。最後はいつの間にかどこからか生まれて、現実に入り込んだ世界に飲み込まれたように終わるが。
    何時も一緒にいる妹、先生の性癖、お母さんのミチオに対する異常な言動、父親の無関心。
    こんな日常が、異界とつながったような話に入りこませる筆力は興味深かった。

    今日は「光媒の花」の感想を書くつもりだったのに、ここにきて「向日葵」がなかった。落し物が多いし忘れ物も届かない。

  • 初めては9年前ぐらいに読んだのかな?
    最近、友達と話ししてる時に今までで印象に残ってる本ってなに?って聞かれてこの本がすぐに出てきた。
    でもあの描写と読み終えた後、頭が混乱してたことしか覚えてなかったのに、強烈に印象に残ってるって話ししながらまた無性に読みたくなって再購入。
    読み終えた瞬間、
    「あっぱれ」そう言いながらこの本読み終えた後、あたし最後に拍手してた笑
    小説読むのが億劫になってたから、久々に読めるかなぁって不安になって読み始めたけど、はやく!はやく先が知りたい!って無我夢中になって読んでました。
    序盤、これ映画化してくれないかなぁ?なんて思ってしまったけど、小説だからこそ描ける!って言うのを思う存分思わせてくれて、小説自体をものすごくまた読み始めたいと思わせてくれた作品でした。
    物語の好き嫌いを問われるとなんとも言えないけど…でも作品としてめちゃくちゃ素晴らしいと思った。またすぐ読み直したい気持ちと、読み直したくない気持が入り混じってる変な感じですが…また夏になったら必ず読みたくなるんだろうなぁ、思い出すんだろうなあって。そんな作品です。
    そして、この本を読んだ方々のレビューを見たくなる作品です笑

  • ネットの小説ランキングで見て読んでみたくなった小説

    ファンタジー?っていうのかわからないが、非日常の出来事が織り込まれた話しだった

    自分の理解力が足りないせいでもあるが、最後がよくわからない

    妹の発言が3歳の子供の発言とは思えない内容だったり、虫に生き返ったり
    自分には合わない内容の小説でした。

  • 自分が初めて触れたイヤミスの類だと思う。
    正直初めて触れるにしては衝撃すぎる内容だったと思う。
    読了後、嫌な気分になったけれどそれほど読者の感情をかき乱すストーリーは圧巻。

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著者プロフィール

1975年生まれ。2004年『背の眼』で「ホラーサスペンス大賞特別賞」を受賞し、作家デビュー。同年刊行の『向日葵の咲かない夏』が100万部超えのベストセラーとなる。07年『シャドウ』で「本格ミステリー大賞」、09年『カラスの親指』で「日本推理作家協会賞」、10年『龍神の雨』で「大藪春彦賞」、同年『光媒の花』で「山本周五郎賞」を受賞する。11年『月と蟹』が、史上初の5連続候補を経ての「直木賞」を受賞した。その他著書に、『鬼の跫音』『球体の蛇』『スタフ』『サーモン・キャッチャー the Novel』『満月の泥枕』『風神の手』『N』『カエルの小指』『いけない』『きこえる』等がある。

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